作 品 集
(その1)

東京の風景







ゆりかもめの乱舞


 2月半ばの小春日和、不忍池のほとりを通りかかると、池の隅の方でゆりかもめが群れている。まるでヒッチコックの「鳥」を思い出させるような鳥の乱舞である。こわいもの見たさにその場所に行ってみると、中年のおじさんが空に向けて餌を投げ上げていた。鳥たちはそれを目当てに集まっていたのである。私はしばし、それに見とれていた。 (2001.02.18)





東京タワーのライトアップ



 東京タワーのライトアップといっても、最近は夜になるとずっと点灯しているので、東京っ子にとっては別に珍しいことではない。しかし、2001年2月8日と9日は、日本とイタリアの修交を記念した行事として、特に派手にライトアップされた。そういえば、途中に緑色のライトを当てて、イタリアの国旗に似せてある。私もそういう記事を新聞で読んで、これは記録せねばと増上寺に駆けつけて写真を撮った。ところが、夜間撮影モードはあるものの、シャッターを長く空けておくので、その間にどうしてもブレてしまい、何枚も撮ったのにまともに写っていたのは、この一枚だけであった。
 しかし、現物は非常に美しかった。帰って家内にそのことを話したところ、「そうね。夜のネオンに輝く飲み屋さんって雰囲気ね」というので、非常に面白く、大笑いをしてしまった。 
(2001.02.09)





ホンダのロボット


 青山の交差点にホンダの本社ショールームがあり、そこに「アシモ」くんというロボットが紹介されている。昨年秋に、有明の展示場でこのアシモくんが動いているのを見て、そのスムーズな歩きに驚いたものである。そういえば、昨年見たアメリカの映画で、アンドリューという名の家事手伝いロボットが知性を得て、人間の女性に恋するとともに人間性を得ていくというSF物語があった。アシモと最近のコンピューターの発達からすれば、今世紀中にそのような人間らしいロボットが実現していることは、まず間違いのないところである。そうすると、3K職場などは、これからはロボットに任せるということになるかもしれない。いや、ひょっとするとそれは希望的観測で、人間が3K、ロボットが知能労働などと主客転倒することにならないことを切に祈りたい。(2001.02.04)






都心の大雪


 1月27日の土曜日、前夜から降り続く雪で、東京は真っ白くなってしまった。都心では、結局のところ、7センチの積雪であったが、それでも朝から交通機関が混乱した。家の前の道路には、トラックが「ジャリ、ジャリ、ジャリ」というチェーンの音を響かせて通り過ぎるし、子供が歩道に出て、雪だるまを作り出していた。こういう風景は、久しぶりのことである。転ばないようにと、気を付けながら歩いた。まだ雪が湿っているときは良いが、これがいったん溶けて再び凍ってしまったような場合は、革靴は最悪である。靴底に滑り止めの溝がないのでつるつる滑るからである。雪に慣れていない東京の人には危ないだろうなと思っていたところ、隣の台東区で歩道を歩いていた60歳代の女性が滑って転んで重体となり、ほどなく亡くなったというニュースが流れていた。それだけでなく、雪国で家の回りの雪かきをしていた主婦が忽然と姿を消した。家の者が探し回ったところ、玄関前の屋根から落ちた雪の下敷きとなって発見されたという。全くもって、罪作りな雪である。合掌。(2001. 2. 2)




中央省庁の大改革


 2001年1月6日をもって、中央省庁の組織の大改革があり、それまでの1府22省庁の体制から、1府12省庁の陣容へと大きく変わった。まさに21世紀を迎えるにふさわしい行政改革である。とりわけ、省庁の数が半減し、大蔵省、通産省などの人口に膾炙した役所の名前がなくなったのは寂しい限りであるが、新しい財務省、経済産業省、それから複数の省が合併した総務省、文部科学省、厚生労働省、国土交通省、格上げされた環境省の今後の活躍を注目していきたい。
(2001年 1月26日撮影)




神田明神のお正月






 私の家では、お正月の季節になると、北にある根津神社から南へ下っていき、湯島神社を通って神田明神までお参りをする。片道30分の気楽な散歩である。お正月といっても今年は多少行くのがおくれて、14日の日曜日になってしまったが、かえってそれがよかったのか、お参りの人の数は適当で多くも寂しくもなく、出店が出ていて奉納の獅子舞があり、そのほかいつもの猿回しなどがいた。また、七福神の格好をした神主が、道行く人に即席のお祓いをしていた。
 今年の特筆すべきことは、巫女リカちゃん人形である。タカラという玩具会社と提携して6千体作ったそうである。お守りも入っていてなかなかかわいらしかったので、思わず求めてしまった。
 また、甘酒の天堅屋もいつも通りであった。ここの甘酒は、江戸時代から店の地下に掘った穴蔵で発酵させているようで、それが売りものである。もっとも、甘いものが一般的になってしまった現代では、こういう伝統的な甘味をとりたてておいしいとは思えないのが残念ではある。

(2001年 1月14日撮影)




恵比寿ガーデンプレースのクリスマス


 恵比寿ガーデンプレースは、元ビール工場の跡地に建てられた高層ビル群で、その中庭に当たるところのデザインは、とても都会的でセンスがいい。実はこれは、私の知人のデザイナーである福井さんの企画によるもので、ここに行くたびに、その福井さんのひげの顔を思い出してしまうのである。

 これは、クリスマスの夜に、バカラの大シャンデリアを展示したもので、縦6メートル、直径3メートルの豪華なものである。暗い中にまばゆくきらめくその光は、まさに聖夜にふさわしいものである。

(2000年12月24日撮影)






レインボー・ブリッジ


 お臨海副都心は、東京で誠にエキサイティングなスポットである。そもそもは鈴木都知事の時代からその開発を始め、それがある程度整備されたところで世界都市博を開催しようとしていたところ、青島知事となってそれが中止されたという事件があった。関係者にとっては断腸の思いであったと推察するが、それはともかく、既に1兆円もの投資をつぎ込んだこの地区には、ようやくいろいろな建物がそろい始めた。

 この写真は、お台場のデックス東京ビーチのテラスから、レインボー・ブリッジを眺めたものである。右にあるのは第三台場であり、海に浮かんでいるのは「竜馬」という水上バスである。この写真は昼に撮ったものであるが、夜間にここから都心部の方向を見ると、まるでニューヨークの夜景とそっくりである。
(2000年12月 2日撮影)





皇居のお堀端

 皇居の周辺のお堀端は、私の大好きな散歩コースである。かつてはよくその周囲を歩いたものであるが、非常に残念なことに、最近ではその周りを走り回る自動車の排気ガスがひどい。そこでこれを吸わないようにと、やむなく自粛しているところである。

 このお堀端を歩いていると、春は千鳥ヶ淵の桜花、夏は暑くてたまらないが、秋は馬場先門の銀杏の黄葉、冬は皇居前広場の松に積もった雪など、その季節によって見所がある。この写真はそのいずれでもなく、いつの季節もこの緑は美しい。
(2000年11月30日撮影)




日比谷公園の噴水にかかる虹


 20世紀末の年の晩秋、お昼に日比谷公園を通りかかると、黄色く色づいた銀杏の木を背景に噴水が勢いよく水しぶきを上げていた。近づいていくと、見る角度によって、噴水に美しい虹がかかっていたのである。そのひととき、心が和んだのは、いうまでもない。これから長い冬に入る。新年になれば、さあ、いよいよ21世紀である。(2000年11月30日撮影)





東京の写真散歩を始めるに当たって
 東京は、1200万人の人口を抱える世界でも有数の大都市であるだけでなく、日本の政治経済の中核たる存在であることはいうまでもない。しかしその実像はさまざまである。たとえば一方では世界でも珍しいほどのコスモポリタンの姿を見せているかと思うと、その他方では江戸開府以来の古い伝統をいくらでも垣間見ることができる。加えて、東京という都市の大きな特徴は、無秩序ともいえる変化の激しさとそのダイナミックさである。昨日まであった建物が、もう翌日には忽然と消えてなくなっているという例には事欠かないし、休日ともなれば、あちらこちらで思いも寄らない催しが行われている。ともかく、エネルギーに満ちあふれている都市なのである。

 私は、青年時代にたまたま上京して以来、わずか数年ほど外国暮らしをしたほかは、好んでこの大都会に住み続けている。良きにつけ悪しきにつけこのメガポリスは、私が家族と一緒に住み、ともに成長し、しばしば明け方まで働き詰めに働いた、甘く、ほろ苦く、又なつかしの故郷となったのである。私がその故郷の四季折々の姿をカメラに収めて、記録しておきたいと思ったのは、ごく自然の成り行きである。

(お願い 著作権法の観点から無断での転載や引用はご遠慮ください。)







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