いまはやりのiPhone 4Gは、日本では6月24日から発売されるということで、その前に予約を入れておいたのだが、当日の夕刻に行ってみると、ソフトバンクのサーバーがストップしていつ再開できるかわからないという。予約が殺到して捌ききれなかったようだ。そこで出直して数日遅れで改めて予約を入れておいた。するとようやく2週間遅れで連絡があったので、おっとり刀で販売店に駆けつけてiPhone 4Gの32GBタイプへの機種変更を行った。3日前のことである。ちなみに32GBは、16GBタイプより人気なので、品薄らしい。記憶容量は多いほどよいから、それも当然だろう。 それはそうと、私はもともと、ソフトバンクの922SHという携帯を持っていたから、iPhone 4Gの購入といっても、単なる機種変更で済む。しかも、以前の922SHという機種を購入してから既に2年が経過していたので、ちょうど切り替え時だったといえる。この機種は、キーボードが付いていて入力しやすいし、ワンセグを高精細の液晶で見られる。その上、名刺の読み取りが非常にやりやすくて、とても便利に使っていたのである。 ところが、やはりこれも、いわば家電などによくありがちなように、ユーザーとして自由にカスタマイズが出来ないのが不便だなぁと、かねてから思っていた。確かに、勝手にカスタマイズされては、メーカーとして責任が持てないということだろう。しかし、パソコンでは、その時々の必要に応じて自由自在に好きなソフトウェアをインストールして使っている。そういうことで、この種のマシンはカスタマイズして使い勝手をよくしていくという習慣が身についてしまっている。だから、なぜ同じことが携帯ではできないのかと、ついつい思ってしまう。こうしたちょっとしたことでも積り積もれば、ユーザーの不満として噴出しやすい。 それに、私にとってもうひとつの不満は、既存の携帯電話によるインターネットの閲覧が非常に制限されていることである。たとえば、ブラウザの表示が実用に耐え得ないほど遅すぎるし、サイズが少しでも大きなページだと途中で切れてしまう。それに何よりもJava Script がまったく動かない設定になっているので困る。たとえば私のHP(悠々人生)では、トップページから各記事へとリンクを張るのにJava Scriptを多用しているから、それが動かないというのは、もうそれだけで致命的な欠陥となる。これというのも、ドコモのような通信会社の方で、iモードなどといって、閲覧させるインターネットのサイトを囲い込もうとする意識が強すぎたのではないだろうか。 要するに、日本の企業は、携帯電話の通信会社にしてもメーカーにしても、携帯電話をまるで家電と同じように考えて、何でもお仕着せのものをユーザーに押しつけるという発想から一歩も出ていない。だからそういうインターネット時代のユーザーに積もり積もった不満に配慮するというセンスが、あまりにもなさすぎたと思うのである。それに比べて、アップルの戦略は、元々パソコンのマックがマイクロソフトのウィンドウズで圧倒されて苦労してきただけに、刮目すべきものがある。それは、iPhoneにアプリとよぶプログラムの組み込みを許し、全世界の人に、プログラムの作成と販売を呼び掛けたからである。その結果、何十万という数のアプリが集まった。無償のものも有償のものもあるが、その中には人気をよんで大勢のユーザーにダウンロードされ、これで一躍、億万長者になった幸運な人もいるという。つまり、ユーザーにとって、自分のiPhoneをカスタマイズできるし、普通の人が趣味で作った初めてのプログラミングでも、それが大勢の人に支持されて購入されれば一攫千金も夢ではない。それに、その配信でアップルもちゃんと儲けられるという仕組みである。まさにインターネット時代ならではのビジネス・モデルである。 その一方、日本の企業は、ワンセグだの高級カメラだのと携帯のハードとしての性能向上ばかりに目が行って、そういうソフト面を重視した会社がまったくなかった。これは、本当に情けないと思うのである。かつて、世界に先駆けてウォークマンを発表したのはソニーだったが、その座はいつの間にかアップルのiPodに奪われ、いままた、携帯電話とパソコンの融合マシン・・・スマートフォンというらしいが・・・、それを再びアップルのiPhoneに取られようとしている。ソニー・エリクソンが独自のスマートフォンであるエクスペリアをドコモ向けに販売し始めたり、他の日本の携帯会社も、同種のスマートフォンを準備中というけれども、すでにiPhoneには何十万という数のアプリ資源がある以上、相当の努力をしても、そう簡単に追いつけるものでもあるまい。 さて、長くなったが前置きはそれくらいにして、買ってから三日目となるiPhone 4Gの使い勝手はどうかというと、これがまた、問題の発生と、対応策の研究と、それを何とか解決するという苦戦の連続である。自分で言うのも何だが、パソコンを使って20年以上というキャリアを誇り、使い慣れているはずの私でもこうなのだから、最初から何の問題もなく使えたという人は、珍しいのではないだろうか。これもまた、パソコンの世界と良く似ている。 だいたい、購入直後から、こんなことが起こった。第一は、既存の携帯からの乗り換えとなるので、アドレス帳を iPhone 4Gに移行しなければならない。買いに行ったソフトバンクの販売店によると、移し換えのソフトを用意しているという。それは、アドレス帳をいったんソフトバンクのコンピューターにアップしてから、それをiPhone 4Gに読み込ませるというものである。その前にまず、SMS/MMSでソフトバンクあてにメールを送り、その中に書かれたパスワードを使って店頭の端末を自分で操作して読み込ませよという。 そこでマニュアルに従い、そのメールを送って返信を受け取ったが、その中のパスワードを一瞥して、ひどく嫌な予感がした。というのは、その英数字から成るパスワードの中に、一本の縦の線から成る文字が2つもあったからである。しかも、そもそもパスワードの文字が非常に小さい上に、iPhone特有のピンチアウト(2本の指で広げる動作)をしても、文字は大きくならない。 これではその二本の縦棒が、果たして「l」(エルの小文字)なのか、「I」(アイの大文字)なのか、それとも数字の「1」なのか、さっぱりわからないではないか・・・。そういう困り顔の私を見て、ソフトバンクの販売店員も近寄ってきた。しかし彼も、このパスワードを見た瞬間、やはり私と同様、その三つのうちのどの文字なのかわからないという。「気のせいか、最初の文字はくっきりした縦棒で、二番目の方はややぼやけていますよね」というばかりだ。 仕方がないと思いつつ、店頭の端末のタッチスクリーンを操作して、これではないかと思うパスワードを一度入れてみたが、もちろん拒否されてしまった。それもそうで、3つずつ可能性があってそれが二つあるから、全部で9通りのパスワードを試してみなければならない。しかし、パスワードの入力を続けて3回失敗すると、そこでいったんキャンセルになってしまう。そうすると、もう一度最初のメールからやり直しであるとなってしまう。そのやり直しを一度やって、それでやっと、5番目の組み合わせで、パスワードが認識された。これで、かれこれ20〜30分間、格闘していたことになる。まったくこういうことは、時間の無駄遣いそのものである。そのとき思ったのだが、これに加えて数字の「0」ゼロと英字の「o」つまりオーがあったりしたら、どうなったことやら・・・。 第二は、自宅に帰ってきて、iPhone 4Gと無線LANと接続しようとして問題が起きたことである。iPhone 4Gは、普段は3Gという普通の携帯電話回線を使って音声とデータ通信に対応しているが、これではデータ転送速度が遅い。しかし、私は自宅のパソコン用に光ファイバーを引き、それにバッファローという会社の無線ルーターを繋げて室内のパソコンと通信させている。そこで、このシステムにiPhone 4Gを繋げれば、無線で高速インターネットが出来るというわけである。その繋げるやり方を「iPhoneをバッファローのAOSS式無線LANにWi-Fi接続する設定方法」というらしい。これがまた、難しくて一筋縄ではいかない代物なのである。インターネットで調べると、こういうことらしいとわかった。ちなみに、これらは、(1)初心者のためのiPod・iPhone・iPad使い方講座、(2)管理画面、(3)バッファローの三つのサイトの示唆がなければ、できなかった。改めて、感謝を申し上げなければならない。 @ ブラウザのURLの欄に、「http://192.168.11.1/」と入力する。ユーザー名とパスワードを求められるので、前者のみ「root」と入力し、後者は空欄のままで入る。すると、バッファローのHPが出てくるので、その「詳細設定」から、「無線設定」→「MACアクセス制限」→「登録リストの編集」をクリックする。 A ここで、iPhone 4Gを開け、「設定」→「一般」→「情報」の最下段にある「Wi-Fiアドレス」をメモして、それをさきほどの登録するMACアドレスの欄に入力し、「新規追加」をクリックする。 B 再び@のブラウザの画面上で、「無線設定」をクリックし、最下段にある「現在のセキュリティ情報」を見ると、そこに緑色の文字で、暗号化レベル、SSID、暗号化キーがずらりと並んでいる。説明によれば、iPhone 4Gで受信しているWi-Fiアドレスがその中に含まれているので、その暗号化キーをメモする。これがiPhone 4Gに入力するパスワードとなるらしい。 C 再びiPhone 4Gに戻り、「設定」→「Wi-Fi」→「ワイヤレスネットワークを選択」内の、BのSSIDのネットワークをタッチして「DHCP」をタッチし、次のように入力する。(「静的」に入力せよという指示もあったが、私の場合は「静的」では駄目で、「DHCP」で成功した) IP 192.168.11.5、サブネットワーク 255.255.255.0、ルーター 192.168.11.1、DNS 192.168.11.1 D 入力し終えたら、「Wi-Fiネットワーク」に戻り、鍵のアイコンをタッチすると、パスワード入力画面となる。ここで、Bの暗号化キーつまりパスワードを入力しようとしたら、問題はそれがやたら長いことである。数字や英文字がずらりと50近くも並んでしまっている。これらを私の大きな指を使って一字たりとも間違えずにあの小さなiPhone 4Gに入力しようとしたが、とても出来るものではなかった。数字だけならともかく、英字もあるし、それには大文字と小文字がある。いやはや、大変なことである。これというのも、暗号化レベルが最高度のAESなので、入力すべき数字や英文字が50近くにもなっていたからである。 E これは困った。どうしようかと考えたところ、これは暗号化レベルを落として対応するしかないと考え、若干だけだが、実際に落とすことにした。盗聴の危険は高まるが、仕方がない。このためには、Bと同じく「無線設定」をクリックし、AOSS動作設定の中の暗号化レベルを操作すると、案外簡単に出来た。そこでその短くなった暗号化キーをiPhone 4Gにパスワードとして入力していった。後から考えてみると、これが最終的に成功した一番のポイントとなった。しかし、これでは暗号強度が弱くなってしまうので、近く、別案を考えなくてはならない。最近出たばかりのWimaxの速度(上り最大40Mbps、下り最大10Mbps)がもっと早くなり、サービスエリアも広がれば、光ファイバーからそちらへ乗り換えるというのも、一案である。 F これで、iPhone 4Gがインターネットに接続できたのだが、ここでまた問題が発生した。この悠々人生のHPを見たところ、ちゃんと接続できているはずなのに、サイトに接続できないという表示が出て途中で止まってしまう。色々と考えた末、iPhone 4Gの中でWi-Fiネットワークをいったんリセットしたところ、解決した。これなどは、パソコンに習熟していたからこそ出来たことで、そうでない人には無理だったろうと思われる。 そのほか、iPhone 4Gの欠点を色々とあげつらうと、私の場合は指先がタッチパネルに比して大きすぎて、入力がうまくいかないことが多い。特にパスワードは、入力してもすぐに黒丸になってしまうから、困ってしまう。しかしこの点は、まずはメモ帳でゆっくり時間をかけて作っておき、それをコピ&ペーストして入力すると、うまくいった。そのうち専用のタッチペンが出るそうなので、それを使うとしよう。 次に、連続使用時間が短いことである。実感では、おそらく4時間程度ではなかろうか。ちょっとブラウザを見て調べるだけで1〜2時間を使ったりすることもあるから、この時間では短すぎるというものである。それに、手で持って長く使うと熱くなるので、手帳の形をしたカバーに入れて使っている。またこうすることによって、最近、巷間言われているようなiPhone 4Gの欠点、つまり左下の手で持つ部分にアンテナがあるために、普通に右手で持つと電波の感度が低くなるという問題点を回避できるという良い面もある。 ともあれ、これで環境は整った。これに次々とアプリを入れていけばよい。このiPhone 4Gと同期が出来るiTuneというアップルのソフトも、なかなかの使い良さだ。さて、これからが大いに楽しみである。その前にまず、カレンダーをiTune経由でグーグルのものと同期させてみたが、うまく行った。これで、このiPhoneを落としても、日程をすべて失うということは避けられる。また、エバーノートというアプリを使えば、メモにもなるし、写真や音声もとっておけるようだ。つまり、手帳の代わり・・・いやそれ以上のものになるというわけだ。今晩は、これを試してみるとするか。明日は、大辞林と英辞郎の辞書も入れてみようと思う。その次は、青空文庫で古典でも読むか・・・。また、自分のHPをパソコンを開くことなくいつでも見られて、日記の確認代わりになるというのも、捨てがたい魅力である。いわばポケットに入れた日記兼、写真集兼、手帳兼、辞書兼、文庫本兼、カメラのようなものである。もう少し経って、日本のワンセグ・チップを入れてくれれば、テレビにもなるので、鬼に金棒というところだ。つくづく思うに、すごい時代になったものである。 昨日、娘に連れられて、1歳半の孫が私の家にやってきた。ちょこちょこ動き回る孫は、最近はパソコンのマウスと、携帯電話に興味がある。やはり、現代っ子というべきか・・・。マウスは手に持つ程度だが、二つ折りの携帯を見つけるとそれを広げて耳に当て、「モチモチ。アーイ・アイ。ワハハッ」と大人の真似をしている。その姿をiPhone 4Gの写真とビデオに撮ってみたが、どちらも高精細のものが撮れたので、満足した。よしよしっと、これを待ち受け画面の壁紙にしてみよう。 そうそう、聞くところによると、スカイプをインストールしたら、同じユーザー同士なら国内外を問わず、会話が無料となるようだ。それどころか有料会員になると、固定でも携帯でも世界のどの電話に対してもわずかな料金を払うだけで会話できるらしい。iPhone 3Gのときは、Wi-Fi接続の場合に限られていたが、このiPhone 4Gになったとほぼ時を同じくして3G回線を使ってそれが出来るようになったという。なるほど、電話に接続できるなんて、インターネット時代にふさわしい便利なアプリである。しかしよくよく考えてみると、携帯というのは、そもそも電話ではなかったか?・・・それが自らの墓穴を掘るようなインターネット電話を可能にするなんて、そんなことを認めてよいのだろうか・・・まるで、タコが自分の足を食べているようだ・・・などと改めて思うほど、摩訶不思議な世界ではないだろうか。 ともあれ、これで毎日、私のiPhone 4Gの機能を向上させていこう。そうやっているうちに、2年後には、もっとよいものが発売されるだろうから、それにまた乗り換えればよい。こうして、果てしなく続く技術革新に追いついていかなければ、現代に生きている資格がないのかもしれない。それにしてもこの時代、社会の先端で時代に伍して生きていくということは、いやはや大変なことである。しかし、これが齢をとってからの呆けを防ぐ唯一の道なのかもしれない。
(平成22年7月15日著) (お願い 著作権法の観点から無断での転載や引用はご遠慮ください。) |
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