早いもので、「iPhone 4G」を買ってから、もう80日が経過しようとしている。掌に載るこの小さな情報機器は、もうすっかり私の手の一部となっている。たとえば、買ったばかりの頃は、私の太い指ではなかなか押せなかったあの小さい小さいキーボードが、いまや何の問題もなく押すことが出来ているのを見ると、慣れとはおそろしいものである。こんなことすら自分は出来るのだから、もう世の中の人に出来て自分に出来ないことはないとまで思わない・・・わけでもないのはご愛嬌だとして・・・それでは、このスマート・フォン「iPhone 4G」との付き合い方を、特に有用でいつも使っているアプリを中心に、この段階でまとめてみることにした。 一番よく使うのが、メールとSMSである。私は4つのアドレスを使い分けているが、それらに来るメールはすべて、このiPhone 4G上で一度に見ることが出来る。しかも、わざわざ自分でメールの来着を確認しなくとも、プッシュ式といって常に自動で受信メールを15分ごとに更新し続けてくれているから、手間はかからない。ただし、外国で同じようにすると、データ通信料が天文学的な数字になるから、その場合は手動で確認するように設定している。なお、先般の外国旅行先のイギリス・ロンドンで使った結果としては、わずか1週間の滞在だったというのに、メール、SMS、それにインターネットのマップなどの通信料がすべてを合わせて77,062円も課金され、そこから1日当たりの上限額1,480円を設定できた提携通信事業者のデータ通信分の割引きを差し引くと、それでも定額制以外で27,406円もかかってしまった(注1)。これというのも、海外で提携外の通信事業者に勝手に繋がってしまい、手動でキャリアを選択できなかったというiPhone 4Gの仕組みのせいではないかと疑っている(注2)。 メールのほか、SMSとMMSという携帯電話時代からの通信手段があるが、私の場合、これらはもっぱら家族間のコミニュケーションで使っている。というのは、通信内容の表示が、会話方式のようになっているのが気に入っているからである。つまり、日本語で「吹き出し」、英語で「バルーン」という、漫画によく出てくるような、登場人物の発言内容を表わすかのごとき形式で表示されるのが良い。こちらのメール内容が緑色で、あちらからのものが白色でそれぞれ表示される。まるでお互いに会話をしているようで、面白い。また、同じ人物とのやりとりは自動的にまとめてくれるので、これも使いやすく、見やすい点である。 連絡先つまりiPhone 4Gの住所録は、筆まめの住所録を、ひと月半ほどかけてようやく移行した。「グループ」と書かれている最初の画面には、「iPhone上のすべての連絡先」と、Exchangeによる「Contacts」とを置いている。前者は、このiPhone上だけにある連絡先で、すぐに参照できるようにと、家族と日常の仕事先の電話番号とメールアドレスだけを入れてある。これらの人に対して連絡するには、こちらを使う。それに対して後者は、筆まめの住所録そのもので、自宅と勤務先の電話番号、メールアドレスそして住所という本格的な住所録になるようにしている。空いた時間を使ってコツコツと入力したところ、500人分を超える数となった。入力に結構な時間がかかったけれど、すべて完了したときには、それこそ達成感があった。いちいち、「いま、あの人はどうしているかな」などと思いながら、相手先の現況を調べていったせいでもある。ちなみに、これはGmailの連絡先と完全に同期している。したがってこれからはGmailの連絡先をメンテナンスしていけば、このiPhone上の連絡先も自動的にメンテナンスされるから、それはすなわち、バックアップになるという仕組みである。 iPhone 4Gのカレンダーも、Gmailのカレンダーと完全に同期している。だから、パソコンのないときにはiPhone上の予定を変更すれば、パソコン中のGmailの予定表が直ちに変わるし、その逆もまた可能である。しかも、iPhoneに15分前、30分前などと登録しておくと、その時刻になったらチャイムが鳴って事前に通知してくれるから、何かに気をとられて予定時刻に遅れるという心配もなくなった。これが一番、重宝している。また、連絡先に入れておいた誕生日なども同期できるから、これも便利である。ちなみに、現在の私にはこのアプリでちょうど良いのだが、若い頃の私がそうだったように、一日の予定が分単位でぎっしりと詰まっているような人には、これだけの機能では不満かもしれない。そういう方は、「To DO」のアプリを買うとよいだろう。 私の場合、私有の携帯電話番号宛に掛けて来るのは家族くらいのものだから、話は簡単で、iPhone 4Gに架かってきたときには緑のバーをタップするだけで話せる。こちらから架けるときは前述の「連絡先」の電話番号をタップするだけでよい。そのほか、一般の携帯電話と同じく、留守番電話など色々と仕組みはあるが、外から掛けて来られた場合を除き、私はあまり使っていない。 インターネット電話のスカイプだが、iPhone 4Gにインストールできるアプリは、Wi-Fi経由だけでなく3G回線も使って一般電話宛にも電話できるというのが売り物である。これを利用して遠くの実家に電話したところ、いつも通り母が出てきて普通にしゃべることが出来たし、お互いにちゃんと聞こえたという高性能な電話である。その実用性には、疑問の余地はない。ただ、母が言うには、「番号が非通知扱いとなるので、最初は知らない人からの電話かもしれないと身構えたわよ」というので、これはいけないと思って、それからは実家への電話に使わないようにしている。ただ、要するに無料で電話できるので、外国に気軽に電話するようなときには、重宝している。たとえば、ロンドンのホテルに電話したが、よく向こうの言っている話が良く聞こえたし、こちらがしゃべった内容も伝わった。ただ、以上は自宅のWi-Fi接続を使ったときのことで、最大で54メガバイトも出ているからかもしれない。一度だけだが、これを回線速度が極端に遅い3G回線で、外国向けに試してみたことがあるが、最初の数分は問題がなかったものの、しばらくしてこちらの言っていることが伝わるのにタイム・ラグを生ずるようになって使えなくなり、切らざるを得なくなった。だから、外国にある固定電話や携帯電話とほんの数分程度、話す分には3G回線を使ってもよいかもしれないが、基本的にはWi-Fiを使うべきものではないかと思われる。 iPhone 4Gに搭載しているカメラは高性能なので、これについては色々なアプリがあって、私もよく使っている。標準で搭載されているカメラは、タップするとそこに焦点を併せてくれるという優れた機能で、これはたいそう気に入っている。しかし、画面にグリッドが欲しいときとか、全画面のどこでもシャッターにしたい場合、手ぶれ補正が必要というときには、この標準のカメラアプリにはその機能はない。そいうときに使うのが、「Genius」つまり天才という名のアプリで、そのような機能をすべて備えており、これは素晴らしいアプリだと思っている。しかしその兄弟ソフトの「Genius Scan」というアプリは、もっと凄い。これは、カメラで撮った写真から必要な部分を切り取り、それを強調表示してカメラロールに保存するアプリである。つまり、スキャナーに相当する役割を果たしている。ちなみに、これとは異なる「Turbo Scan」というアプリもその種のスキャン・アプリなのであるが、「SureScan 3X」というのを動かすと、同じ被写体を3回撮れば、それをソフト上で統合して、はっきりした画像を作り出すのである。だから、ぼやけた被写体でも、細部まで明確に映る。どういう仕組みなのか想像がつかないが、これは読みにくい被写体を写すのによく使っている。 この2ヶ月あまりの間、私はカメラを日常の記録メモ代わりに使ってきた。最もよく写す被写体は、新聞や雑誌の記事である。つまりは、デジタルの切り抜きを作っているようなものである。さきほどの「Genius Scan」を使い、1日当たり平均で5〜6枚ほど撮ることが多い。こうすることによって、あとから見られるようになる。時間の空いた時の暇つぶしにそれらを見返していると良く頭に入るので、これから起こりそうなことを考える材料になるし、自分の日常生活を振り返るよすがにもなる。記事のほかにどんな写真があるのかといえば、たとえばお昼に行ったおいしかったレストランの店構えやメニュー、それに出された料理の写真もあれば、ソニー・プラザの前の熱帯魚の水槽のビデオなどもあるし、ロンドンに行けばテムズ河の風景なども撮って入れてある。それだけでなく、仕事上で珍しく思った文書を記録代わりに撮ることもある。要するに、何のためか、後からどうするのかなどということはまったく気にしないで、何でも雑多なものを撮りまくっている。強いていえば、ああ面白いとか、これは珍しいとか、とても美味しかったというのが、こうした写真を撮る動機である。 「Evernote」というのは、本当によく出来たアプリである。こういうものが無料で利用できるなんて、信じがたい世の中になったものだ。なぜかといえば、思いついたこと、撮った写真、見つけたホームページ、それに音声に至るまで、Web上で保存してくれる。そしてそれを、パソコンとiPhoneの双方からアプローチして、書き込んだり、追加したり、変更を保存してくれて、しかも同期してくれるのである。だから、気になった情報、思いついた文章、考えをまとめる際のヒントなど、何でもかんでもここに入れ込んでおくと、そのうちこれさえ見れば、思考の材料となって役立つというわけである。いままでは、何か思いついても、手元にメモを置いておかなければ、そのまま雲散霧消してしまうし、「あれ、何だっけ」と思うこともあったが、それが載っていた新聞雑誌は当然、手元にないし、そもそも切抜きはしないという方針だから、どうもうろ覚えで探そうにも探せない、だから自信がなくて引用も出来ないという事態で停止していた。ところが、Evernoteがあれば、必ずどこかに入れてあるし、検索も簡単というわけだ。もっとも、無料版は、容量に制限があって、月40MBしかアップロードできない。iPhoneの写真を20枚ほど入れると、もう容量の心配をしなければならないので、これからの使い方如何では、有料サービスに移行するつもりでいる。 「Dropbox」というアプリも、「Evernote」とともに本当によく出来ていると、ほとほと感心している。これは、パソコンからでもiPhoneからでも、まったく同じファイルをその場で参照できるからである。もっとも、そのファイルを操作したり書き込んだりするには、iPhoneではだめで、パソコンでなければ行い得ない。すなわち、iPhoneから見ると、ファイルを参照することしか出来ないという制約はある。それでも、自宅のパソコンで作ったファイルをいつでもiPhoneで見ることが出来るという安心感は、私のように文章で生きている人間には誠に心地よい。しかし私は、このソフトはiPhone上というより、自宅とオフィスのパソコン相互間で、よく使っている。 「支出管理」というアプリは、単に何にいついくら支払ったかを記録しておくためだけのものである。いわば、電子家計簿支出編のような役割を果たしている。それがどういう費目で使い、それらの計が予算との対比でどうかなどを表やグラフで示してくれる。私はこれまでこの種の家計簿なるものを付けたことはない。また、別にこのアプリでもって現在の消費態度を変えたり、はたまた節約したりしようなどという気は、もとよりさらさら起きないのだけれども、試しにiPhoneを買って以来、これに日々の支出内容を記録するようにした。 「iPod」もなかなか単純な構造ながらiTuneと組み合わせれば非常に使いやすい。まあ、もともとパソコン以外のアップルによる一連の製品は、そもそもこれから始まったので、使いやすいのも当然といえば、当然である。一曲当たり150円程度で簡単にダウンロードできる。前回の説明で、手持ちのCDだけでなく、図書館からもCDを借りてきて、それをiTuneに写し、このiPhoneに同期するという使い方について書いたが、引き続きこれらの作業を行っていったら、数にして1000曲、容量にして8ギガバイトを超えてしまった。全体が30ギガバイトもないというのに、これは多すぎる。しかもその大半が、クラシックと昔の日本のどうでもいい曲である。だから、もうそろそろこれで打ち止めにしようかと思っている。 お遊びのアプリであるが、「Star Walk」というのは、誠に素晴らしいと思う。iPhoneでこのアプリを起動すると、その場で見える天空の写真と、数々の星座、そして惑星の軌跡などが一覧できるのである。こうなると、東京のように明るくて空の星が見えないとか、今晩は雨だから空を眺めることができないなどということもない。つまりこれは、地上で使う「マップ」の地図+航空写真の天空版といってよい。iPhoneを掲げてあちこちの方向を見ると、それだけでその方向に見える星座や惑星が見えるのである。これと、「NASA」の公式アプリと併せて使うと、それだけで1時間ほどは優に暇がつぶせる。天文学が好きな私にとっては、宝物のアプリである。そうやっていると、この季節、その時間、そちらの方向に見える星座などの名前を自然に覚えてしまう。ただ、ひとつだけ問題は、このアプリを立ち上げて聞こえてくる音楽が・・・まあ何というか、趣味がよくないというか・・・ちょっと妙なのである。 ところで、「iPhone 4G」を使っていて、これだけはどうにかしてほしいと思うのは、Wi-Fi接続である。自宅の無線LANに接続しているのだが、ときどき不安定となって、うまく接続できないことがある。そういう場合に、どうかすると妙なところに繋がることがある。たとえば、「Free public wifi」というのが現れて、いつの間にかそちらに繋がってしまう。表示される電波強度も強い。ところがその内容を見ると、からっぽなのである。これはトロイの木馬の一種かと思い、なるべく繋がないようにしていたところ、いつの間にか消えていった。これって、いったい何なのだろうと思っている。それからしばらくして、今度は電波強度は弱いのだけれど、パスワードのない数字の羅列のアドレスに繋がってしまうのである。誰か近所の人でITに弱い方がパスワードを施さないで設置した無線LANではないかと思うが、これまた、それが現れたらすぐに消すようにしていたら、やはりしばらくして消えた。まだこの2件だけだが、これらが実際にトロイの木馬だったとしたら、大いに問題である。話は変わるが、脅威といえば、最近、秋葉原でWEP暗号を解読できる機器が3000円程度で売られているという報道があった。それは我々iPhoneユーザーにとってはパソコンのガンブラー・ウィルス並みの大きな問題である。近く、暗号強度を上げるなどの対策を何とか打たなければと思っているが、アップル側でもっと強度の高い暗号に自動接続できるようなアプリを開発してユーザーに提供してくれたら、大いに助かるのだが・・・。
(平成22年10月 1日著) (お願い 著作権法の観点から無断での転載や引用はご遠慮ください。) |
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