悠々人生のエッセイ



「さくらぽっぷ」さんイラスト





  関 連 記 事
 初孫ちゃんの誕生
 初孫ちゃんは1歳
 初孫ちゃんは1歳4ヶ月
 初孫ちゃんは1歳6ヶ月
 初孫ちゃんもうすぐ2歳
 初孫ちゃんは2歳2ヶ月
 初孫ちゃんは3歳4ヶ月
 初孫ちゃんは3歳6ヶ月
 幼稚園からのお便り(1)
10  初孫ちゃんもうすぐ4歳
11  幼稚園からのお便り(2)
12  初孫ちゃん育爺奮闘記
13  初孫ちゃんは4歳3ヶ月
14  初孫ちゃんは4歳6ヶ月


 土曜日の朝、初孫ちゃんのお世話を3時間だけ、引き受けることになった。両親が帰ってくるお昼までの間、一緒に動物園に行こうという計画である。初孫ちゃんの紅葉のような小さな手を握り、タクシーに乗って近くの動物園へと向かう。まず、正面のお花の前で記念写真を撮った。以前の初孫ちゃんは、写真の被写体になろうとするその瞬間、左肘を挙げて左手でしっかりと「V」の字を作ったうえで顔を傾げていた。しかし最近では、それほど几帳面にはしなくなり、どうかすると「V」の字が一本指になってしまったかのごとくちょこんと頬に添えるくらいになってしまったのが、むしろ自然で微笑ましい。その小さなモデルさんの写真を撮った後、動物園の中をどんどん進んで行った。

 虎のところに来た。「Oh! Tiger!」と叫ぶ。インターナショナル・スクール系の幼稚園に通っているから、日英両語がちゃんぽんになってしまっている。「Tigerはどうやって吠えるの?」と聞くと、そんなに開けなくてもいいのにと思うほどに口を縦に大きく開けて、「ガ〜オー〜ッ」と叫ぶから、思わず笑ってしまう。それを見て、初孫ちゃんもその可笑しさに気付いたらしくて、今度は口を横に大きく開けて笑う。表情豊かによく笑う子だ。

初孫ちゃんが撮った自分の両足の写真


 ライオンがいる。寝ていたライオンが一瞬の間だけ起きて回りを見渡し、たてがみのある顔を直立させていたが、すぐに倒れて眠ってしまった。それを見た初孫ちゃん「Lion!」と叫ぶ。うむ、結構良い発音だ。なるほど、英語として様になっている。そのライオンを指さす姿を写真に撮っていると、カメラに興味を持ったらしくて、貸してくれという。そこで、一眼レフカメラの紐を首に掛けてあげて、このボタンを押すんだよと教えたのである。すると、シャッターを押し始めたのだけれど、レンズを被写体に向けていないから地面を撮るばかり。しかも、連写モードになっている中、強い指の力でシャッターを押し続けるからぼけた地面の写真ばかりが撮られていく。中には自分の両足を撮った面白い写真もあったが、これだけではつまらない。「いやいや、こうやって相手に向けて撮るといいよ。ほらね」と教えたら、何と私にレンズを向けたので、指で「V」の字サインを作って大きく笑った。すると、距離が近すぎて、私の顔だけが画面いっぱいに広がっている怖い写真がとれた。「おお、これはすごいね」というと、笑ってうなづく。

初孫ちゃんが撮った虎の写真


 それからというもの、ライオンの写真を撮りだしたが、これは動かないのでつまらないことに気付いたらしい。そこで、檻の中を動き回る虎の写真を撮らせたら、こちらの方がダイナミックで面白がったのだけれど、虎が自分の前を通り過ぎる頃にようやくシャッターを押し始めるから、結局のところ、虎のお尻しか写らない。そこで、虎さんがちょうどこちらにやってくる頃に構えてシャッターを押せばよいと教えたら、何枚か失敗したものの、やっと1枚、うまく撮れた写真があった。それを見つけて、2人して大喜びをした。「よく写したねぇ」というと、満面の笑みを浮かべた。

 その嬉しがっている姿をiPhoneで撮っていたら、「おじいちゃん、それ貸して」と言われた。それで、一眼レフとiPhoneとを交換した。メカが好きらしくて、画面を食い入るように見て、アイコンを触っている。携帯電話でやるように、指でギューッと押すようにするから、「いやいや、これはそっとタッチするだけでいいんだよ」と教えたら、手当たり次第にタッチし始めた。母親の携帯電話は、この調子でやられたらしい。こういう場面を予測して、私のiPhoneには、子供の興味を引きそうなものを予め入れてある。確か、金魚すくいと花火があったはずだと思って探すと、それらが見つかったので、まず金魚すくいをタッチした。すると、鑑賞モードになって、緑色の藻の下に出目金や和金が何匹かすいすいと泳いでいる。その画面をタッチすると、水面が揺らぐ。それが面白くて、初孫ちゃんは、ゲヘヘーッ、クックックと面白そうに笑って何回も試している。意外と、ゲーマーの素質がありそうだ。次に、花火のアプリは、最下段の丸やら猫やら魚からのマークをタッチすると、そういう形の花火が打ち上げられるという仕掛けで、これまた気に入って、上がる花火の色や形を楽しんでいた。

 それらをひとしきりやってみて、もう飽きた頃、「さあ、行こうか」と声をかける。「うん」と頷いて坂を下って行くと、キリンのところに出た。「背が高いねーっ」と話しかけると、頷く。柵に近づこうとして道を渡っている途中、初孫ちゃんが「ああーっ」と大きな声を上げた。そして何を言うのかと思ったら「団子虫ーっ」。なるほど、道路の真ん中に小さな小さな団子虫が一匹、這い回っている。初孫ちゃんは、小さな葉っぱを持って、それにちょっかいを出そうとしている。そして「これ、危ない?」と聞く。なるほど、かなり用心深い性格らしい。「いや、噛んだりしないから大丈夫だよ」というと、「お団子虫さーん」と言いながら、その葉っぱでちょんちょんとつついている。いつの間にか、「お」が付く団子虫になっていたので笑う。それが終わると、今度は「アリさーん」といって、視界に突然飛び込んできた蟻を一匹、眼で追いかけている。よくこんな小さい虫で、しかも早く動くものが見えるものだと驚いてしまう。いずれにせよこういうときは、「早く行こうよ」などと無粋なことは決して言わずに、好きなだけ、しかも心ゆくまで目新しいものを徹底的に観察させ、その好奇心を満たせてあげることが肝心だと思う。


初孫ちゃんが撮った花の写真


 ベンチがあったので、それに座り、傍の自販機でお茶を買った。初孫ちゃんに「お茶を飲む? 少し冷たいけれど」と聞いた。すると、「飲む、飲む」というので、蓋を開けて手渡した。口をすぼめて飲む。その様子を見つめていたら、恥ずかしくなってきたのか、リズムを付けてボトルの口を指さして、何やら歌い出した。ついには、ミュージカルみたいに両手を広げたり、体に両手を巻きつけるようにして、楽しそうだ。「それ、クラスでやっているの?」と聞くと、うんうんと頷く。この子の通っているインターナショナル・スクール系の幼稚園では体力重視のようで雨でも降らない限り、ともかく外を歩け歩けだから、手足は真っ黒になって筋肉の塊のようになっている。そうした運動に際しては、いつも何かしらの音楽やリズムが流れていて、それに乗って体を動かしているようだ。だから、何でもないときにも、体が自然に動き出してしまうらしい。ついでに、照れたときは百面相をしてくれるので、可愛い。

 ところが、ちょっとした事件が起こった。親子の熊の像がある遊び場で、少し大きな女の子が母熊の背中に乗って、降りてきた。それを見て初孫ちゃんも登る気になったらしくて、まず小熊の方に取り付いて、その背中の上に乗った。これはうまく出来たものの、少し危うい気がしたので、私が初孫ちゃんの右腕を支えていた。次に母熊の背中に飛び移ろうとしたところ、伸ばした足が届かなくてつるんと滑ってしまった。そして、大小2つの熊の間に体が落ち、私と繋がっていた腕を中心にくるりと反転して私の顔の真下に初孫ちゃんの顔が来た。私が腕に力を入れたものだから、それに支えられてそれ以上落ちずに助かったが、初孫ちゃんはびっくりして泣き出した。そこで、よしよしとばかりに背中を何回かたたいてあげると、泣き止んだ。これが今日唯一の事件だった。

 それから、ペンギンの方へ行き、その辺りに並んでる説明用の器械に付いているレシーバーを手に取った。そして始めたのが、ママへの電話遊びである。「もしもし、ママーぁ、いまね、どうぶつえん! ペンギンがいたよ」などとやっている。それがまた、真に迫って表情豊かにやるものだから、もう笑いころげてしまいそうだが、その笑いをかみころすのに一苦労だった。その電話を3回ほど、やっていた。

 それで自宅に戻り、着替えると早速サッカーの亀の子模様をした大きなビーチボールを抱えて、「おじいちゃん、サッカーする?」と挑戦的な目をして聞いてくる。「もちろん、やろう」と言った瞬間、それを待っていたかのように、その大きなビーチボールを蹴ってきた。なかなかのキック力だ。それでこちらも、ボーンと蹴り返すも、悲しいかな、あさっての方向へ行ってしまった。ちょっと、修業が足りない。初孫ちゃんは慣れたもので、3本に1本は、回転をかけずにまっすぐ飛ぶボールを蹴ってくる。そのほかの2本くらいは、ボールに回転がかかって途中で真横に行ったりする。まだ、ゴールという概念がないからいいようなものの、この調子でキックされたら当てられてしまうと思っていたところへ、初孫ちゃんが近づいてきて私に向けて蹴ったものだから、ボールが顔を目がけて飛んできた。思わず避けたが、いやいや、これは大変だ。これでまだ3歳半だから、先が思いやられる。しばらくやっていたら、さすがに疲れたものだから、私は壁に背中を付けて座った。すると初孫ちゃんからすかさず「Stand Up!」と命令が来る。「OK. Wait a moment.」といって立ち上がるものの、やれやれ、大変だ。そうこうしているうちに、やっと両親が帰ってきて、お役御免となったのである。私はそれから家に帰り、2時間ほど、ぐっすり昼寝をしてしまった。いささか体は疲れたが、孫の成長を目の当たりにして、心は本当に充実した1日だった。でも、若くないと子育ては出来ないものだと実感したのである。





(平成24年6月23日著)
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