悠々人生のエッセイ








東京スカイツリー( 写 真 )は、こちらから。

 今頃と言われそうだが、先日、家内と東京スカイツリー(634m)に昇って来た。勤めているオフィスから、夏休み休暇の最後の日を消化してほしいと言われて、それではと応じたのはよいが、さて、どうしようと思っていた。すると家内が、去年5月に東京スカイツリーが完成して以来全く昇ったことがないから、一度は行ってみたいという。そうだ、確かにその工事中は、もう何メートルまで出来たなどと大いに関心があったのに(245m511m609m)、完工してからは大混雑だという話を聞いて、そもそも行こうという意欲が失せてしまっていた。では行ってみようということになり、その提案に乗ってみることにした。もちろん平日の朝だから、もうそれほど混んではいないだろうという計算もあった。

東京スカイツリーの入場までの列


東京スカイツリーは、千代田線沿線の我が家からは大手町回りでも北千住回りでも、30分もかからないで行ける。しかし、朝一番で日本橋のデパートに行って紳士服を買おうとしていたので、そちらに回っていたから押上駅に着いた時には、既に午前11時を過ぎていた。もうその頃からスカイツリーへの入場を待つ人の列は延々と続いていて、入場待ちの建物から、もう少しではみ出しそうなくらいだった。なんとかその最後尾に付いて表示を見ると、70分待ちだそうな。家内にどうするかと聞いたら、雑談しながら待ちましょうということで、そのまま、うねうねと果てしなく続く行列の中にいることにした。周りの人たちを見ると、年齢層も国籍もバラバラ。我々もそうだけど、その人たちもまあ、忍耐強く待っていること。思わず感心してしまうほどだ。

東京スカイツリーの入場までの列


 やがて最前列に来たかと思うと、直ぐに呼ばれて二人分の入場料5000円を支払った。そうすると、直ちにエレベーターのところに案内されて、気が付いてみるとその扉の前に立っていた。エレベーターは直ぐに来て、そのまま上へと一直線に昇ったのである。途中で籠の中から真上を見上げると、スカイツリーの網目状の構造が良く見える。わずか50秒という文字通り瞬きするほどのわずかな間に、展望台である天望デッキに到着した。ドアが開くと、そこはもう地上350メートルの世界だ。エレベーターのドアから降りると、目の前に東京のパノラマ風景が広がる。この日は晴れていたとはいえ、遠くは霞んでいる。その中で家内が「あれは、富士山ではないかしら」と指差すので、その方向を目を凝らしてよくよく眺めると、霞の中で水墨画のごとくにそれらしき山が浮かんでいる。「そうそう、山の形といい、方向といい、あれは富士山以外にはあり得ないね」などと言ってから、目を凝らさなければ見えなかったのは、近頃、法律の文章を読み過ぎたことによるものかと反省した。

東京スカイツリーから見た富士山



東京スカイツリーからの眺め、不忍池ほとりの高層マンション


 入場するときにいただいたパンフレットと実際の風景を照らし合わせてみる。まずは、分かりやすい上野公園方面にある我が家の方向である。これは、上野公園の緑と不忍池の畔に立っている高層マンション、さらにはその左隣にある東京大学医学部附属病院の新棟を目印にすればよく、すぐに分かった。すると我がマンションは、あの辺りかと、目星がついた。撮った写真をあとで拡大して見てみると、やはり写っていた。それもそのはず、私のマンションの屋上から何の障害物もなくスカイツリーを眺められるから、建物を直接見られるのは当たり前なのだが、こうやって確認できると嬉しい。

東京スカイツリーからの眺め


東京スカイツリーからの眺め、隅田川〜東京タワー方面



東京スカイツリーからの眺め、新宿副都心方面


 そのようにして、おおよその方向を見定めた上で、あれはなに、こちらはなに、というように見知った風景を確認していった。知っている風景とはいっても、それは地上から間近で見たものだ。ところが地上から相当高く、しかもこれだけ離れていると、やはり高層ビルでなければ容易には分からない。新宿の都庁をはじめとする高層ビル群は良く判別できたが、驚くほど小さいのである。東京湾方向に目を転ずると、レインボーブリッジがあるし、それにお台場のフジテレビの丸い球体に太陽の光がキラリと反射しているから判別しやすいのだけれど、これも相当に小さい。さらに左手をみていくと、初孫 ちゃんとよく行く葛西臨海公園はすぐに分かった。公園中央の吊り橋と観覧車が見えたからである。それでは、ディズニーランドが見えるはずだと思ってそのさらに左手に目をやるとスペースマウンテンの屋根とディズニーシーのプロメテウス火山が見えた。近くでは、隅田川に掛かっている「X」字の形をした桜橋が目立っている。荒川が東京の外側を大きく回り込んでいるのがよく分かる。確かに、この堤防が決壊しようものなら、東京は水浸しになるだろう。ただでさえ、地下鉄のトンネルで繋がっているから、ますます危険だ。

東京スカイツリーからの眺め、葛西臨海公園



東京スカイツリーからの眺め、ディズニー・リゾート


 それはそうと、皇居がもっと大きく見えるかと思ったが、そうでもなく、かなり小さかった。また、スカイツリーの足元に目をやると、道路と街並みが碁盤の目のようになっている。関東大震災か東京大空襲のときにでも整備されたのだろうか。それにしても、大空襲のときにはこのスカイツリーの真下を流れる北十軒川には、被害者の方々が折り重なって浮かんでいたそうだなどという話を聞くと、我々はそのような痛ましい歴史の上で、束の間の繁栄を謳歌しているのではという思いがしてならない。

東京スカイツリーの天望デッキ(350m)と天望回廊(450m)



東京スカイツリーの天望デッキ(350m)と天望回廊(450m)


 それはともかく、家内がもっと上に昇ってみようという。確かに、70分も待った末にここで帰るのは意味がないことから、さらに一人当たり1000円を払って地上450メートルの天望回廊に行った。眺めは更に遠くまで見渡せるようになったものの、何かが抜群に良くなったというものではない。それでも、この天望回廊の売りはそのガラス張りのスロープにある。スカイツリーの外側をカタツムリの殻のように巻き付いているこのスロープをゆっくりと下りながら景色を見ていくと、大空を歩いているような不思議な感覚に襲われる。


東京スカイツリーからの眺め


 ということで、空中散歩は終わり、家内と二人でまた、地上に戻って来た。やはり、こちらの方が落ち着く気がする。雲の上は、あまり性に合わないようだ。さて、東京プチツアーは、これでお仕舞いとしよう。




(平成25年10月 7日著)
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