1.アメリカ・アップル社は、2014年9月9日(日本時間10日)、新型携帯端末のWatchとともに、スマートフォンのiPhone(アイフォーン)シリーズ最上位新機種である「iPhone6」と「iPhone6プラス」を近く発売すると発表した。前者の「6」が4.7インチ、後者の「6プラス」が5.5インチと、従来の「iPhone5」の4インチから、ひと回りもふた回りも大きくなった。ところが私はこの発表のときには、むしろWatchの方に気をとられていた。そしてiPhoneについては、「ああ、iPhoneが大きくなるのか、これで買い替え後は現在のiPhone5の4インチという、あんな小さい画面を見なくて済むなぁ」という程度の感想だった。 そう考えていたところ、新聞によるとiPhone6は世界中で人気を博していて、12日に予約を開始したら世界中で24時間に400万台もの予約注文があったそうな。とりわけ大型の「6プラス」は、画面が大きいだけに生産工程での歩留まりが悪くて、2ヶ月待ちだろうという。私の現在のiPhone5についての2年契約が切れるのが今年の11月だから、それまでに2ヶ月ある。とすれば今は9月中旬だから、ここで申し込んでおくべきだろうと考えた。でもauのショップに足を運ぶ暇はないなと思いながらauのWebサイトを見てみたところ、インターネット申込みというのがあった。そこでは料金プランなども合わせて申し込めるから、時間の節約になる。よし、これでいこうと思って、家内のものと合わせて2台分を申し込むことにした。それが13日(日本時間)の夜のことである。今から思うと、アップルが予約を開始した、まさにその日だった。 まず機種は、5.5インチという大型のiPhone6プラスにした。これまで、小さな画面のiPhone5をいつも覗き込んでいて、こんなことをしていては、そのうち目が悪くなると思っていたからである。次に料金については、au特有の妙な用語、例えば「カケホとデジラ」などというのは馴染みがないものの、説明を読んでいくと何だ、簡単なことだった。結局、私はかけ放題+定額データ通信5GB、それにiPad用のテザリングオプションとし、家内のはかけ放題+定額データ通信2GBにした。私たちは家のWifiを使うことが多いから、定額データ通信の容量はあまり多くなくてよいのである。予約の台数はdocomoでは一人1台に制限されていたが、auでは、二人分を一緒に申し込めた。ありがたい。これが全て終わったのが、9月13日の土曜日の真夜中のことである。さてこれから、2ヶ月後の吉報を待っていようという気持ちであった。 2.私は、iPhone6シリーズがいつから発売になるのかよく知らなかったけれど、どうやら19日(金)からだったらしい。この間、日本のdocomo、auそしてSoftbankの携帯大手3社は、この発売直前まで、料金設定や端末の下取りキャンペーンなど、顧客獲得に向けてぎりぎりの駆け引きを続けたようだ。まず最初、auとSoftbankの2社が、接続料金や端末の価格と割賦販売条件を発表したが、docomoは決めきれなかった。かつてdocomoは、iPhoneの取り扱いを巡ってアップルと大いに揉めた。その結果、Softbankと数年遅れでそれに続いたauに後れをとって顧客の大量流出が続き、文字通り一社負けの状態となっていた。それが昨年ようやく取り扱いに参入することが出来て、流出に歯止めがかかりつつあるという土俵際の状態である。そういう訳で、まさに今が顧客の獲得の正念場となっているから、慎重になっていたのだろう。そして、あっと驚く旧端末の下取りキャンペーンを発表した。他社のSIMロックがかかったiPhoneを、しかも元の値段の半額という高額で下取りするというのである。考えてみれば当たり前で、そうしないと他社から乗り換えさせることができないからだ。 するとその直後の9月17日、Softbankも、他社のSIMロックがかかったiPhoneを下取りすると発表した。これはdocomoと全く同じ内容である。さて、私がWebで申し込んだauはどう出てくるかな、同じ内容を出さないと独り負けだろうな・・・などと思いつつ、同じ17日の真夜中にauのWebページを調べたところ、対抗策が書かれていた。「下取りキャンペーン」として「他社の携帯電話をご利用中のお客さまが、MNPを利用して2014年7月25日以降発売の4G LTE対応のauスマートフォンを新規契約いただいた場合、他社の携帯電話を最大4万3200円相当で下取りするおトクな特典」を付与するそうだ。額も内容も全く同じだ。消費者にとって、これは大歓迎するところである。それにしてもiPhone5の64GBが3万2400円、iPhone4Sが2万4840円なので合計すると5万7240円だって・・・そんなに・・・買ったときの半額に近いではないか、これを大盤振る舞いと言わずして何と言おうか・・・まるで仁義なき闘いだなと他人ごとながら心配するけれど、新興国にでも持っていくのであろうか。それにしても、通信業界というのは妙な世界だ。 3.まあ、私は門外漢だからどうでも良いし、そもそも手に入るのはかなり先だから、その間にまた状況は変わるだろうと、のんびりと構えていた。すると、9月18日の午後2時40分、突然次のようなメールが入った。 【au予約商品入荷のお知らせ】iPhone 6 Plus ゴールド 128GB 大変お待たせいたしました。ご予約いただいておりました以下の商品が入荷いたしましたので、ご来店をお待ちしております。 予約番号 :85XXXX 予約店舗 :ビックカメラ 予約機種 :iPhone 6 Plus ゴールド 128GB 申込内容 :MNP新規 予約商品のお受取りにあたり、来店予定日のご登録をお願いいたします。http://au-order-mail.kddi.com/ なお、お取り置き期間は明日より3日間とさせていただいております。やむを得ず、お取り置き期間の3日を超過する受取りを希望される場合、お手数ですがご予約店舗までお問い合わせください。また、事前準備をお済ませのうえ、ご来店いただくとスムーズに商品のお受取りができます! ・料金プラン、オプションサービスの事前登録 ・データのバックアップ ・契約に必要なご本人さま確認書類等の準備 事前準備の詳細は、以下URLにアクセスしてご確認ください。詳細はこちら http://au-order-mail.kddi.com/ 【その他のご案内】ご来店の際には、本メールならびに契約に必要なご本人さま確認書類等を必ずご持参ください。 そして1分後に今度は家内の分について同じ内容のメールが入った。入手出来るのは2ヶ月くらい先だろうとのんびり構えていたので、これには驚いた。でも、最新版が入手できるこんなまたとないチャンスを逃すことはない。善は急げとばかりに翌日の昼に引き取りに行くこととして、その旨を登録した。他方で現在のiPhone5のバックアップを済ませ、その日のうちにSoftbankの店でMNPつまり電話番号の転出証明書を貰った。その費用は、MNP証明書の作成に2160円、iPhone5の残債が1万2000円、2年契約中途での解約ペナルティが1万260円の、合計2万4420円である。それに家内の分は残債がないので、1万2420円だった。合わせて、3万6840円か・・・ならば、私の古いiPhone5の64GBの下取り価格3万2400円と大差ない。なるほど、こういうところに下取りが効いてくるのかと感心した。 4.それで、翌日19日のお昼にビックカメラに行って、iPhone6プラスを2台、受け取ってきた。あらかじめ契約内容を登録して行ったから、確認されることも特になく、スムーズに手続きが済んだ。そのとき、既に下取りキャンペーン対象のiPhone5の64GBと、iPhone4Sを初期化(リセット)し、かつ買ったときの化粧箱に入れて持って行った。ところが、化粧箱は必要ないといわれ、本体だけで良かった。しかもその場でちょっと動かしてみる程度のチェックだった。しかし、その場で約束した額の半額をポイントとして与えられるにとどまり、残りの半額はチェックの上で来年2月にauWalletに入金するという形で交付するそうだ。auWalletというのは何なのかよく分からないが、コンビニか何かの支払いに使えるらしい。それで下取りキャンペーンなどというのは、いささか誇大広告のように見えるけれども、実質的にSoftbankからのMNP証明書代金と2年契約の違約金が出れば、それで良しとしよう。 ところで、これで月額の費用はどうなったのかというと、私はかけ放題、接続料金、定額データ通信5GB、それにiPad用のテザリングオプションでそれぞれ2700円、300円、5000円、0円(2年間)、家内のはかけ放題+定額データ通信2GBで2700円、300円、3500円。だから、合わせて月に1万4500円だ。これから、固定回線とセットで、私から1410円、家内から934円が割り引かれるから、結局、1万2156円となる計算である。このほか、分割支払金が、私が4140円、家内が3555円なので、先の分と合わせると、月に1万9851円となるはずだ(ただし、下取りがあるので、当初3ヶ月ほどは分割支払い金は請求されない。)。従来は、月に1万6000円から1万8000円くらいだったから、まあ、そんなものかもしれない。 5.新聞によると、アップル表参道店では19日午前8時の発売開始を前に1000人以上が行列を作り、開店と同時に店員がハイタッチで客を出迎えたという。中には16日午後2時から並んでいた会社員もいたらしい。しかし、私が行ったビッグカメラでは、お昼に行ったせいか行列もなかったしそんな高揚感を全く感じさせられることなく、ほとんど待たされないでカウンターに行けた。だから、今でもそんな狂想曲騒ぎがあったなんて本当かなという感じである。ところがそれどころか、22日になってアップルは、「iPhone6」と「iPhone6プラス」の合計販売台数が、19日の売出し日を含めて発売後3日間で1000万台を超え、過去最高を更新したと発表した。私と家内のは、そのうちの2台だ。そんなつもりはなかったとはいえ、狂想曲に加担したかと思うと、いささか面映ゆい。iPhone6のひとつ前の世代である「iPhone5s」と「5c」のときは、発売日を含めて3日間で900万台超を販売していたが、「6」と「6プラス」はこれを上回る販売台数である。主要市場の中国ではまだ販売していないというのに、滑り出しはなかなか好調ではないか。 参考までに、スマートフォンの各社のシェアをIDCの調査でみてみた。2014年4〜6月の統計で、まず日本では、アップル(iPhone)43.6%、ソニー18.3%、シャープ14.3%、韓国サムスン10.2%、京セラ6.1%で、アップルが圧倒的なシェアを誇る。ところが世界では、アップルは韓国サムスンの後塵を拝している。つまり、韓国サムスン24.9%、アップル11.7%、中国ファーウェイ(華為技術)、中国レノボ6.7%、韓国LG電子4.8%で、日本勢は影も形もない。 6.さてそれでは、「iPhone6プラス」の使い勝手はどうかというと、電話にしては大き過ぎるというのが第一印象である。とりわけ、合わせて購入した手帳型カバーのスピーカーに相当する部分に穴が開いていないので、電話をするときに、いちいちカバーを開けて喋らなければならないのは不便だ。まだ発売されたばかりだから、カバーのチョイスが少ないのは仕方がないけれど、もう少し経って適当なカバーが出たら、買い換えようと思う。あるいは突飛なようだが、スピーカー部分に道具で穴を開けてしまうのも手だ・・・と思って、翌日パンチ穴を開ける機械で本当に横長の穴を開けた。すると綺麗に出来て、音が良く聴こえるようになったのは、まるで笑い話のようである。 その反面、情報端末としては、これに勝るものはない。何しろiPhoneだから、従来からのアプリはそのまま使えるし、検索その他何もかもスピードが速くなった。電池の持ちも良くて、これまでは6時間も使えば終わりだったが、半日は持ちそうだ。積んでいるメモリーもかなり大きいようで、情報量が多くてメモリーを食うEvernoteやi手帳もサクサク動くし、いくつアプリを開いても、落ちることはなくなった。これなら、重たくて持ち歩きにくいiPadを開く回数が減りそうである。それから、これはiOS8に変わったからだろうが、「メモ」に写真を貼り付けられるようになった。これは便利で、何かを思いついたときなど、写真とともにメモを取ることができる。ますます活用出来そうである。 それに、TouchIDつまり指紋認証機能は使い勝手を非常に良くしてくれている。最初の立ち上げの画面でホーム・ボタンを押したらそのまま指紋認証となって直ちに開始することができる。加えてこの機能はKeeperなどのソフトも連動しているから、それらにいちいち数字を打ち込まなくてもよい。また従来は、新しいアプリをインストールするたびにアップルIDを入れる必要があり、そのほかも何かと数字を打ち込む場面も多かったが、これもTouchIDで済ますことができる・・・というわけで、こんな便利な情報端末はないと思っている。ただ一つ困ったことは、大き過ぎてワイシャツのポケットに入らない。ズボンのポケットも、腰周りがゆったりとしているズボンはともかく、ジーンズのポケットに入れるのは、とても無理だ。背広なら内ポケットに入るけれど、夏の省エネ・スタイルの時は困ってしまう。いっそ、首にでもぶら下げたい気分である。 【後日談】その後1週間ほどして、「iPhone6」と「iPhone6プラス」を入手したレポーターから携帯大手3社を比較した記事が書かれるようになった。その人によっていろいろで、それぞれ注目している点が違うが、ここでは、価格と通信速度を取り上げよう。 まず価格は、当初2年間の支払い総額に限っていうと、auが圧倒的に他社より安い。例えば他社からauにMNPで乗り換えるケースでは、docomoが17万8740円、Softbankが14万8889円に対し、auは11万3490円となっている。これは、私が当初、自分で試算したものより、「auにかえる割 Plus」というものがあって、要するに「LTEプラン」の月額基本料934円(税抜)を最大24ヶ月間にわたって無料にできるからである。大盤振る舞いもいいところで、これこそ文字通り、うれしい誤算というものだ。
(平成26年9月26日著、27日追加) (お願い 著作権法の観点から無断での転載や引用はご遠慮ください。) |
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