東京ビッグサイトで開催されている東京モーターショーに行ってきた。モーターショーは、その時々の自動車産業の技術的な課題と自動車会社の戦略が如実に現われるので、メカ好きにとって、これほど心が踊るほど楽しいものはない。今回は、「スズキ」が気を吐いていたし、「ホンダ」が自動車の原点のような「走る楽しさ」のようなものを見せていたのが印象に残った。それに、乗用車ではないが、「三菱ふそう」のまるで千手観音のような作業車が、実に面白かった。
まず「トヨタ」だが、プリウスの最新型が置かれていて、燃費性能をさらに向上させて目標40km/リッターとしたようだ。面白かったのは、「KIKAI」で、メカがそのままむき出しになっている車だ。説明によると「機械は本来、人間の思想や情熱や知恵が生み出す愛すべき身近な存在です。クルマを人の手が生み出す“機械”と捉え、その美しさ・精巧さ・動きの面白さなど、豊かな魅力を伝えることを目指した『TOYOTA KIKAI』。 このクルマを通して、今まで見えなかったものに気づき、モノに触れる暮らしのよろこびを発見して欲しいとの想いを込めました。 従来のクルマの常識にとらわれない、新しい魅力の提案です。」ということだ。しかし、20世紀前半にまた戻ったような、骸骨のようなメカがそのまま見えるこんなスタイルに、人々が馴染めるかどうかは別問題だろう。でも、時計でいえば、その中の歯車などがそのまま見えるようなもので、私には、興味深いものだった。
トヨタ・レキサスブランドの「RCF」というスポーツカーは、なかなかスタイリッシュで、素敵な車である。
「三菱」も、かなり頑張っている。Mitsubishi eX Concept(冒頭の写真と上の写真)は「三菱自動車が提案する電気自動車のコンパクトSUVです。三菱自動車ならではの電動化技術と四輪制御技術をはじめ、コネクティッドカー技術と予防安全技術を組み合わせた自動運転(準自動走行)技術などを採用しています。デザインは、コンパクトSUVにシューティングブレークのもつ上質さとクーペスタイルを融合させ、キビキビと街を疾走するスポーツクロスオーバースタイルを提案しています。また、フロントはデザインコンセプト『ダイナミックシールド』をベースに新しいデザインを提案。エクステリア、インテリアのすべてでこれからの三菱自動車のデザインの方向性を示しています。」とのこと。ただし、あまりに技術的・感覚的な物言いで、何を言っているのか、よくわからないのが難点だ。もう少し、素人にもわかるような表現にしてもらいたい。
「スズキ」は、エアトライサーというミニバンが非常に目新しかった。というのは、駐車中に座席配置を自由に替えられるのである。「扱いやすいボディーサイズに、プライベートラウンジをコンセプトとした広い室内空間とこだわりのシートアレンジを備えた、新発想のコンパクト3列シートミニバン。駐車中には、シートを対面に配置するリラックスモードや、コの字型配置のラウンジモードにアレンジが可能。また、Bピラーから天井までつながる大画面モニターでスマートフォンのコンテンツを楽しむことができる。移動中だけでなく、駐車して仲間と過ごす時間も考えた、これまでになかったミニバンを提案する。」とのこと。
そのほか、軽自動車でも、車椅子を乗せることができるものがあるとは、知らなかった。高齢化社会を迎えて、特に地方では重宝すると思う。
「ホンダ」では、まず、燃料電池車の「クラリティ」が目に入った。「Hondaは、自由な移動の喜びと、豊かで持続可能な社会の両立を目指して、水素をエネルギーとして、CO2や排出ガスを一切出さない「燃料電池自動車(FCV)」を1980年代後半から研究開発に取り組んできました。そして2015年、東京モーターショーにおいて、ガソリン車同等の使い勝手と燃料電池自動車ならではの魅力を融合した「新型FCV(仮称)」を提案します。Honda独創の技術により、市販車として世界初、セダンのボンネット内に燃料電池パワートレインを集約し、大人5人が快適に座れるフルキャビンパッケージを実現。さらに、700km以上の航続距離や、短時間での水素タンク充填、高出力モーターが生み出す爽快な走りを可能性にしました。」という。これからの車社会が、電池自動車に行くのか、燃料電池車に行くのか、それとも水素自動車なのかはまだわからないが、実用的という意味では、燃料電池かもしれないので、期待できそうだ。
「Honda WANDER WALKER CONCEPT」というのは、「自由に移動する喜びをもっと広げたい。移動することで出会う発見やドラマをもっと多くの人に体験して欲しい。そんな想いからHondaは”WANDER=自由に動き回る”をコンセプトにしたモビリティー開発に取り組んでいます。大人2人が並んで乗車できる空間をコンパクトなボディーの中に実現し、全方位駆動車輪機構『Honda Omni Traction Drive System』を応用。細い路地にも気軽に入れて、前後、真横、斜めへの移動も自由自在、新感覚のドライブフィールを味わえながら、自動運転モードに切り替えることも可能です」ということだが、都会の狭隘な路地をチョコチョコ動き回るという発想か。私の住んでいる東京の下町など、ちょうど良いかもしれない。
ああ、これが復活したNSXかと、思わず嬉しくなった。昔、最初にこの初代が発売されたときは、とうとう車のボディがアルミになったかと感動してものだ。「ドライビングプレジャーを追求しつづけるHondaのひとつの到達点、それが新型『NSX』です。初代NSXのDNAを継承し、徹底して軽量化を図ったボディーに新開発の縦置き直噴V型6気筒ツインターボエンジンをミッドシップに配置し、走りと環境性能を両立した革新的な3モーターシステム『SPORT HYBRID SH-AWD』を搭載。エンジンと、高効率モーターを内臓した9速デュアル・クラッチ・トランスミッションを組み合わせるとともに、前輪を左右独立した2つのモーターで駆動させ、四輪の駆動力を自在に制御するトルクベクタリングを実現することで、全速度域でのラインとレース制を画期的に向上させています。」との由。かなり進化したようだ。
「ベンツ」では、すごい外見の車を見た。コンセプトカー「Vision Tokyo」で、正面から見ると噛みつかれそう、横から見たら窓がない。後ろから見ると、まるでロケットの噴射口のようである。でも、あまりにも説明不足で、この車は何のコンセプトか、今一つ分からなかった。動くラウンジとでも言うのかもしれない。
「三菱ふそう」では、「スーパーグレートV スパイダー」が、感動するほど面白かった。作業車なのだけれど、まるで、千手観音のような車両だからだ。「ナックルブームクレーンを4基搭載し、多機能でパワフルな『働くクルマ』をイメージしたコンセプトモデルです。ナックルブームクレーンは、作業用途に応じてアタッチメントを選択・交換することで、マルチに作業をこなします。」。つまり、作業台に4本の柱があって、それぞれに腕が出ていて、その先にあるものを取り換えれば、工事現場の大抵の作業ができるようだ。パケットなら土すくいと移動、ドリルなら穴掘り、6本アームなら掴むこと、4本アームだと丸太掴みなどで、なんでもできそうだ。これは、凄いの一言である。
「トヨタ車体」が、「コムス コネクト」という「ビジネススタイルや生活スタイル、街づくりまで変わっていく未来。パーソナルモビリティの先駆者であるトヨタ車体が思い描く、人とクルマと社会をつなげる、マルチパーパス超小型モビリティ」なる車を出店していた。一人乗りだが、座席が真横になるから、斬新なデザインである。
「アルファード エルキュール コンセプト」というのも、「南欧のヨットハーバーへ向かう途中、心地よい潮風を感じながら仲間とシャンパングラスを傾ける。そんな休日の過ごし方が似合う、開放感に満ちた上質な室内空間を備えたオープンクルーザー」ということで、座席がまるで航空機の座席のようだし、屋根の後ろ半分からリア・ウィンドゥにかけて、蛇腹になっているから、太陽を燦燦と浴びることができそうだ。真夏の日本では無理だが、春や秋には気持ちよく走れるだろう。
「日産車体」の「NV200タクシー」は、ニューヨークへの売り込みに成功したイェロー・キャブを思い出させるタクシー仕様の車だ。天井が高いし荷物がたくさん積めるから、なかなか実用的だ。そういえば、先日、赤坂見附の交差点を歩いていると、この車が走っていて、その側面には「この車は普通の料金です」と書いてあったのには、思わず笑ってしまった。料金が高いのではないかと利用者が警戒するらしい。
「アウディ」の「Audi R8 V10 plus」は、前部から見るといかにもドイツ社らしい質実剛健な車だが、後部はポルシェを思い出させる華やかさがある、なかなか面白いデザインの車で、見ていて飽きない。2台の車に乗っているようなお得感がある。日本のメーカーには、なかなかこういうデザインはできないだろうと思う車だ。「Audi史上もっとも速く、もっとも運動性能に優れたロードカーがこの新型Audi R8です。2006年に初代がデビューして以来9年ぶりのモデルチェンジです。初代の技術的特徴であったミドシップレイアウト、ASF(アウディスペースフレーム)による超軽量ボディ、自然吸気のV10エンジン、quattroフルタイム4輪駆動システムなどは継承しつつ、すべての点で進化を果たしています。ボディは、従来からのアルミに加えて、乗員セルの主要部分にCFRPを用いることで、重量をさらに削減すると同時にボディ剛性を高めています。5.2 FSIエンジンは、449kW(610PS)、560Nmを発揮し、新型Audi R8を静止状態から100km/hまでわずか3.2秒で加速、330km/hの最高速を可能にしています。」とのこと。ドイツのアウトバーンを走るのには、ふさわしい車だろう。
「Audi A4/A4 Avant」も、デザインがなかなか素晴らしい車だ。「Audi A4の新世代モデルです。従来どおりボディはSedanとAvantの2タイプで、アウディらしい優美さとスポーティネスを兼ね備えたそのスタイリングは、クラス最高のCd値0.23(Sedan)を実現しています。ドライブシステムは、FWDとquattroフルタイム4輪駆動システムの2タイプ用意され、両仕様ともエンジンは2.0 TFSIユニットが搭載されますが、パワーは140kW(190PS)と185kW(252PS)の2種類を用意。従来比で燃費効率を大幅に改善し、あるいは出力を大幅に向上させました。」という。ただ、展示では、車よりも可愛いモデルさんの方が、皆さんの気を引いていた。
「ポルシェ」の「パナメーラ S E−ハイブリッド」は、いかにもポルシェらしい車だ。「ポルシェはパナメーラ S E-Hybrid はラグジュアリークラスで世界初 となるプラグインハイブリッドモデルです。最高出力 416 PS 、電気モードでの航続距離は最大 36 km に達します。 燃料消費量(NEDC)がわずか 3.1 l/100 km 、CO2 排出量はわずか 71 g/km に抑えられ環境性能はコンパクトカーと同等レベルながらポルシェの名にふさわしいスポーツ性能を誇ります。その驚くべき効率とスポーツ性能はポル シェの誇る駆動テクノロジー、パッケージ ング、バッテリーソフトウェアのノウハウにより支えられています。」
だそうだ。
昔、某産油国の首長の弟の家に行ったら、ポルシェが大好きなようで、色とりどりのポルシェが何台も、その家の前に並んでいたことを思い出す。会って話してみると、ややシャイな普通の人という印象を受けた。しかし、それからしばらく経ってから、その当時、財務大臣となっていたその人が、国家財政に何千億円もの穴を開けたという話が新聞に載っていたので、驚いたことがある。現在は欧州に滞在しているという話を聞いたが、趣味はポルシェにとどめておけばよかったのにと思う。
「NISSAN CONCEPT 2020 VISION GRAN TURISMO」は「『ニッサン コンセプト2020 ビジョン グランツーリスモ』は、『グランツーリスモ』シリーズを開発したソフトウェア会社『株式会社ポリフォニー・デジタル』と日産の協力のもと、『プレイステーション 3』専用ソフトウェア『グランツーリスモ6』の『ビジョン グランツーリスモ』プロジェクトの一環として制作されました。多くのプレイヤーがヴァーチャルな世界で、日産ならではの卓越したパフォーマンスとイノベーションを体験しています。」
とのことである。
「マツダ」の「Mazda RX-VISION」は「新しさの中にスポーツカーの正統を感じさせる、マツダのスポーツカーの歴史を凝縮させたようなスタイリングを備えたモデル。東京モーターショーにおいて、デザインの全容を公開する。」という事前の触れ込みであったが、なるほど現物はなかなか素晴らしい車だった。それにしても、せっかく開発した断面がおむすび型のロータリーエンジンは、確か燃費がすごく悪くて、販売を中止したが、それからどうなったのだろうと思う。改善したのだろうか? なお、この車の写真を撮ったら、天井からの光が一部に当たって、光り輝いていた。
(平成27年11月 8日著)
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