悠々人生・邯鄲の夢エッセイ



おとめちゃん






 7月の初めで梅雨明けも近いというのに、福岡県と大分県では記録的な豪雨に見舞われている。中でも、大分県日田市の辺りでは、林業のために植林された立派な木々が、地滑りで山とともに崩れて大量に川へと流れ込んだ。それがダム湖を作ったり、川の中の橋脚に当って鉄橋などを破壊している。テレビで映像を見ると、川か道路かわからなくなってしまったところを、濁流がものすごい速さで流れ、丸太も家も自動車も押し流している。これでは、たとえ鉄筋の建物でも、3階にいないと安心できないだろう。災害は場所と時期を選ばないというが、それにしても大変な被害が出るのではないかと心配だ。

 金曜日の朝、そんな災害の映像を見ながら朝食を食べていた。家内は、母親の様子を見に故郷に帰っているから、いない。すると、エアコンから、パタ、パタ、パタという異音がする。「あれあれ、何かの不具合かな。この暑い季節に、エアコンが故障したら、命に関わる。」と思いつつエアコンの近くに行ってみると、機械音ではなく、エアコンから水が漏れて、それが、たまたま真下にあったクッションに当たっている音だった。水滴は、エアコン下部から次々に出てくる。「ああ、これはエアコンの排水ホースが詰まっているせいだ。それなら、少し早く帰って外にある排水ホースを清掃すればいい。」と思って、その旨を家内にSMSで報告して、エアコンの電源を切って出勤した。

 さて、暗くならない内にと早めに帰宅して外のベランダに出て、その排水ホースを見てみた。すると、一見して詰まっている風でもない。ただ、ホースの途中にプラスチック製の器具があり、その中が真っ黒だ。しかし、仕組みが不得要領のままで外すわけにもいかない。一体、何の器具なんだこれは。機能がわからないで、勝手に触るのもよろしくない。家の中に戻ってエアコンの説明書を取り出してつくづくと見たが、その器具については何の記述もない。これは困ったと思っているところへ、家内からメールが入って、「近くの電器屋さんに頼みましょうか。」という思わぬ助け船が差し伸べられてきた。手に負えないから、「是非、そうして。」と頼んだら、その電器屋さんが、バイクですぐに駆け付けてくれた。

 電器屋さんが言うには、「このエアコンを据付けるときに、何か説明を受けませんでしたか?」「いいや、別に何も」というと、「これは、説明がないと、わかりませんよね。一般にマンションは気密性が高いので、中で換気扇を回したりすると、外より気圧が低くなります。そうすると、換気口が塞がっていると特に、このエアコンの排水口のホースを水が逆流して、『ポコ、ポコ、ポコ』という音を立てます。この器具はそれを防ぐものですが、ゴミがつまりやすいので、定期的に清掃するか、取り替える必要があるものです。」と言う。なるほどと、納得した。ついでに、もうかなり古くなっていたホースを取り替えてもらうことにした。全部が終わって、請求金額を見たら、9,800円とある。高いのか安いのか、わからない。ともかく、その場で支払って、お礼を言って送り出した。

 後から、アマゾンでその器具を調べてみた。すると、「因幡電工 消音防虫弁 おとめちゃん DHB−1416」、頒価543円とある、「おとめちゃん」とは、「音止め」のことだろうか、これはまた、可愛い名前を付けたものだ。エアコン排水ホースの方は、「カクダイ エアコン用ドレインホース 4380−3」、頒価532円で、合計の原価は、1,075円ではないか。それを9,800円とは、また高い工賃だったものだ。しかし、この連日30度を越す猛暑の中で、エアコンなしでは、熱中症で死にかねない。それを1時間あまりで片付けてくれたから、ありがたいと思うべきだろう。でも、次回からは、自分で簡単にやれそうだ。





(平成29年7月8日著)
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