悠々人生・邯鄲の夢エッセイ



円形水槽




 アート・アクアリアム( 写 真 )は、こちらから。


 この夏は、まだ始まったばかりだというのに、猛烈な暑さである。7月の平均気温は平年より2.8度も高い。一時は絶対値で40度もあったほどだ。ということで、せっかくの土曜日だから、出掛けるにしても、暑くないところと考えて、日本橋の三井ホールで行われている「アート・アクアリウム 2018」に行くことにした。

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 入場すると、廊下の天井に格子があって、その一つ一つに琉金が入ってゆらゆらと動いている。背景に立体的な鏡があるので、その姿があちこちに反射して、何尾もいるように見える。江戸時代に、紀伊国屋文左衛門という目端の効いた商人が、大火で焼け野原になった江戸の町へ、木曽の木材を運んで大儲けした。大金持ちとなった文左衛門は、その屋敷の天井にギヤマンつまりガラスを張って、金魚を浮かべて悦にいったと聞いたことがある。それはこういうものだったのかと思ったのだが、この展示は、まさにその話をヒントにしたようだ。

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 会場に入ると、全体に暗くしてあって、色々な形の水槽があり、そこに当たる光の色が刻々と変わる。オレンジ色、紫色、青色、緑色、赤色、昼光色と、様々で、もちろんそれに応じてその色を反射する金魚や緋鯉の見え方も変わっていく。写真を撮る時はこれがカメラマン泣かせで、昼光色の光が当たっていないと、色がめちゃくちゃになってしまう。例えば、真っ赤な模様のはずの金魚が、何とまあ、真っ黒な模様に写ってしまうのである。そんな中で何とか写すことができたのが、別途の写真である。

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 ちなみにこの会場に入る時に確かめたところ、ビデオやフラッシュによる写真だけが禁止されていて、あとは良いという。インスタ映えを狙っているのだろう。「花魁」のイメージが元に作られた不思議な形の水槽などは、インスタグラムに写真を載せれば、確かに見栄えがする。

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 最初に、緋鯉が立派なのには驚いた。それもそのはずで、これらは緋鯉の本場である山古志村の産だという。値段を言うのも品がないかもしれないが、一匹が何百万円もしそうだ。

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 金魚は、2000年ほど前に、中国南部の鮒の一種(ヂイ)から偶然に赤い個体が生まれ、それが代々にわたって飼育され、新品種が選び抜かれて今日に至っている。日本に渡来したのは今から1500年ほど前の室町時代である。その時は、今でいう「和金」つまり流線形をした赤い小さな魚だったという。それが、今では多くの品種に分かれている。

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 「水泡眼」は、ほっぺたが膨らんで、ゆらゆらと揺れている珍しい金魚だ。「琉金」は、口が突き出た卵で尾が短めのスカートをはいているように見えるありふれた金魚だが、観ていて飽きない。「蘭鋳」は、まるで卵に飛行機の尾翼を直接くっつけたような金魚だ。よくこんな姿で泳げるものだ。

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 黒の「出目金」は、横から見るとまるで怪獣映画に出てきそうな剣呑な顔つきをしている。紫色の照明に照らされて、ますます不気味に感じる。ところが、水槽を上から覗き込むと、印象は全く変わって、よちよち歩きの幼児のように可愛い。その次のスマートな流線型で尾びれが長いのは、いわゆる「コメット」だ。欧米に渡ってからその地で作出された品種らしい。

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 琉金タイプの金魚にも、色々ある。赤白黒の色の派手な金魚は「キャリコ」である。頭に何か被り物をしているように見える金魚は「オランダ獅子頭」だ。その泳ぎ方を見ていると、実に可愛いのである。最後は、頭だけが赤くて、後は真っ白の「丹頂」である。一見して涼やかで、凛々しい。

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 私などは、こうして緋鯉や金魚の種類だけを鑑賞して十分に楽しんでいる方だが、このアート・アクアリウムは、更にまた水槽の形や照明で飾ろうとする。これを「アート」というのか、魚にとっての「迷惑」というのか、私にはよくわからない。





(平成30年8月4日著)
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