悠々人生エッセイ



デジタルアート・ミュージアム




 チームラボ・ボーダレス 2019年( 写 真 )は、こちらから。


 トランプ大統領歓迎晩餐会の席で、たまたま隣り合わせたアメリカ政府高官(女性)から、お台場のデジタル・ミュージアムに行ったという話を聞いた。その興奮冷めやらぬようで、「あれが次世代の美術館だわ。素晴らしかった」とまで言う。それまで私は、「どうせプロジェクション・マッピングの室内版だろう」と思っていたので、あまり行く気がなかったが、それではと俄然行く気になった。

 まずは、予約する必要がある。チケット・サイトを開き、日付をチェックし、クレジットカードで支払う。すると、メールが届く。普通ならそれが入場チケットなのだが、前日にならないと貰えないという。そうする必要性がよくわからないが、確かに前日になってメールが来て、そこに書かれていたアドレスをクリックすると、入場チケットになるQRコードが出てきた。それを持って出掛けた。

 場所はお台場のパレットタウンで、ゆりかもめ青海駅で降りて観覧車の下を通って入る。正式には「森ビルデジタルアートミュージアム:エプソン チームラボ ボーダレス東京」というらしい。長い名前で覚えにくいから、表題は「チームラボ ボーダレス」とした。会場は、外国人観光客も多くて、いやもう、大変な人だかりだ。入り口で傘やら荷物やらを預けて会場に入る。中には微かな光があるだけで、真っ暗だ。でも、だんだん暗さに眼が慣れてきた。


デジタルアート・ミュージアム


デジタルアート・ミュージアム


 入場して早々に写真を撮ろうとしたのだが、後ろから次々に観客が押し寄せるからカメラのボタンを設定している暇がないし、暗いからボタンもはっきりと見えない。手探りでやっている過程で、変なボタンを押してしまったようだ。構えてもちっとも撮れない。諦めて下に向けるとシャッターがおりる始末だ。だから、しばらくの間は、全く撮れなかった。そのうちようやく少し明るい所に出たので、カメラの設定を見たところ、どういうわけか、セルフタイマーになっていた。

デジタルアート・ミュージアム


デジタルアート・ミュージアム


 それから撮り始めた。床が平らでないところに行くと、壁からその盛り上がった床に掛けて水が流れるような所があり、それにカラフルな花の画像が混じって次々に流れていく。非常に幻想的な光景である。たまたま白い服を着た女性にその光が当たると、またそれも光景の一部となる。女性が動くとゆらゆらと揺れて、なかなか美しい。2階に上がる階段の壁にも、お花でいっぱいの画像が走る。くっきりしてこれも綺麗だ。

デジタルアート・ミュージアム


デジタルアート・ミュージアム


 長い廊下の壁には竹林の画像と、蛍のような黄色い点が飛び交う。丸いドームのような床に、火の鳥がキラキラと光跡を残し、羽根を広げたり閉じたりして飛ぶ。また、別の鳥が飛んできた。見ていて飽きない。壁の方に眼をやると、大きな鯨みたいなカラフルな動物が豪快に泳いでいる。見ていて楽しい。

デジタルアート・ミュージアム


デジタルアート・ミュージアム


 大きな瓢箪をひっくり返したようなものがたくさんある部屋に行った。それが青色、赤色、昼光色、オレンジ色と様々に変わる。その次の部屋では子供たちがぴょんぴょん飛び跳ねると、それに応じて下の模様も変わる。小さな子も大きな子も、皆夢中になってやっている。結構なことだ。

デジタルアート・ミュージアム


デジタルアート・ミュージアム


デジタルアート・ミュージアム


 次の部屋に入ると、大人も子供も一生懸命に何やら書いている。壁をみると、海の動物がたくさん動いている。ただ、よく見ると、あまり洗練された絵ではない・・・一体、何だろうと思ったら、これらの中には名前が書かれているものもあったから、観客が描いた絵だったと気が付いた。観客参加型か・・・これは、面白いことをする。

デジタルアート・ミュージアム


 歩き疲れたので、ミュージアム内の喫茶店に入った。それも、真っ暗な中にある。入り口で茶葉が入った小さな瓶を買い、それを持ってひとりひとり案内される。「何でこんなに暗いのだろう、人の顔もロクに見えない」と思った。やがて頼んだお茶が来て、その理由がわかった。お茶の表面にプロジェクターの光が当たるようになっていて、お花の模様などがカラフルに浮き出てきたのである。実に綺麗だ・・・ここまで徹底しているとは思わなかった。確かに、来てみてよかった。

(平成元年6月16日著)
(お願い 著作権法の観点から無断での転載や引用はご遠慮ください。)





 チームラボ・ボーダレス 2022年( 写 真 )は、こちらから。

人々のための岩に憑依する滝


 お台場のチームラボ・ボーダレスには、2019年(令和元年)6月に行ったことがあるが、その後は2020年から22年にかけての新型コロナウイルス騒ぎもあって、すっかりご無沙汰していた。ところが、このボーダレスがあるお台場のパレットタウンそのものの再開発計画が持ち上がり、22年8月末をもって閉館となるという。また、隣のヴィーナスフォートに至っては、今月末で閉館とのこと。それなら、これは行っておかないと後悔すると思い、出掛けていった。ちなみに、チームラボ・ボーダレスは、来年(2023年)に、改めて東京の都心で開業するそうだ。

 そのHPによると、「チームラボボーダレスは、境界のないアート群による『地図のないミュージアム』として、2018年6月に東京・お台場にオープンし、その後国内のみならず世界から多くの人々が訪れた。初年度の年間来館者数は、ゴッホ美術館を超えて、単独のアーティストのミュージアムとして世界最多規模となる約230万人を記録。また、2019年の来館者数においては、単一アート・グループで“世界で最も来館者が多い美術館”として世界記録に認定された。数々の国際的な賞も受賞するなど国内外で評価されていた」とのこと。人気があって、誠によろしい。

人々のための岩に憑依する滝


 まず最初は「人々のための岩に憑依する滝」という前回と同じもので、赤い花が描かれた壁を背景にして、上から滝のように落ちてくる光が岩場のようなところに当たって輝くという趣向である。ああ滝だと思えば、違和感なく見ていられる。その岩を模した高い所を目指して、子供や大人がちょっと登って行く。白っぽい服を着ていたなら、光が当たって虹色に輝いてみえる。ああ、とっても綺麗だ。HPによると、「人が作品の上に立ったり、作品に触れると、水の流れを変える岩のように、その人自身が岩となり、水の流れが変化していく。作品は、人々のふるまいや、他の作品の影響を受けながら、変容し続ける」という。


 まっ黒な廊下を進むと、鳥のような、羊のような動物が、のっしのしと歩いて行く。赤や紫そして黄色とカラフルで、美しい。しばらくして、前回と同じ、色とりどりの風船が浮かんでいる空間に出た。「重力にあらがう呼応する生命の森」だそうだ。分け入っていくと、下に転がっている小さな風船と、天井から吊り下がっている大きな風船とが同期するようにその色を変えていく。

重力にあらがう呼応する生命の森


 前回はパスした「お絵かきファクトリー」に来た。前回は水族館だったのに、今回は違うようだ。でも、何か書いてみようかなと思い、立ち寄った。渡された紙には種類があり、それぞれ花、蝶、蛇、ヤモリなどの輪郭が書かれている。私は、ギフチョウと書かれた紙を手にして途方に暮れる。確か、紫が基調で黄色の点のあったような気もするけど、まあ良いか、適当で。それなら、派手なものが良いと思い、原色で塗り絵をした。ふと隣の人を見ると、桔梗の花を描いている。お上手で、何よりも品が良い。私のとエラい違いである。

お絵かきファクトリーでの私の拙い蝶の絵


私の拙い蝶が飛んで行く


隣の彼女の桔梗の花が飛んで行く


 ほぼ同時に描き終わって、係員に渡すと、スキャナーで読み込んでくれた。すると直ぐに、その描かれた絵が、床に投影された。蝶がまるで生きているように、スーッと飛んでいく。隣では、桔梗の花が重なり花束になって優雅に動いている。ああ、これは綺麗だ。なるほど、こうなるのか。ヤモリが手足を動かしながら通り過ぎた。ヘビが、ニョロニョロと出てきてあっという間に消えた。前回のようなカラフルなクジラがゆっくりと動く。

ヤモリが手足を動かしながら通り過ぎ


カラフルなクジラがゆっくりと動く


スイカが爆発した


 隣には、滑り台があって、3人ずつ滑り降りる。そうすると、花火が上がり、花が散らばる。スイカが出てきた。すると、スイカが爆発した。おお、これは派手だ。最後に、前回と同じく「ENTEAHOUSE 幻花亭」に立ち寄った。HPによると、「一服の茶を点てると、茶に花が生まれ咲いていく。花々は茶がある限り無限に咲く。器の中の茶は、花々が咲き続ける無限の世界となる。その無限に広がる世界をそのまま飲むティーハウス」であり、カラフルなお茶を楽しんできた。

ヴィーナスの泉


 さて次に、今月末に閉館となるヴィーナスフォートに立ち寄った。ヴィーナスの泉は相変らずで、美しい。これらがなくなるのかと思うと、寂しくなる。せめて、この泉くらい、記念に残せないものか。でも、そういう感覚をノスタルジーというのだろう。案外、再開発が完成したとき、そんなものを忘れて、あっけらかんと新しい世界を堪能している自分がいそうだ。

自由の女神と河津桜


 最後に、ゆりかもめで新橋に帰る途中、お台場で降りて、自由の女神の方に歩いて行った。赤みの強い桜が咲いている。河津桜が満開なのだ。ちょうど良い時に来た。河津桜が入るように、自由の女神を撮ってみた。



(令和4年3月5日著)
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