悠々人生エッセイ



あっぱれ吉沢屋




 大道芸・さいたま新都心( 写 真 )は、こちらから。


 2020年(令和2年)の年が開けた。「2」が続くので、覚えやすい。だから、令和から西暦を計算するには「2018」を足す、逆に西暦から令和は同じく「2018」を差し引く、これも簡単だ。18と覚えればよい。昭和と西暦は、25だった。終戦の年である昭和20年が1945年なので、これもわかりやすい。ところが、平成は途中で西暦2000年をまたいでしまったから、ややこしくなった。「平成12年が2000年なので、それまでは88、それを越すと12を差し引くと西暦、ではその逆は・・・ああ、面倒だ。スマホの換算アプリを使おう。」となってしまう。

 ところで、正月休みを除いて新年最初の三連休だ。何か催し物はないかと思って調べると、東京ドームで「ふるさと祭り」が開催中だ。私は、平成23年に見に行った。えーっと、2011年か。今から9年も前のことだ。そのとき見たのは、秋田の竿燈、高知よさこい「ほにや」、盛岡のさんさ踊り、飯田燈籠山だった。日本各地にこんな面白いお祭りがあるなんてと、実に感激した。感激が高じて、秋田の竿燈、青森のねぶた祭り、仙台七夕祭りなどの東北三大祭りを実際に見に行ったほどだ。これが契機となり、それ以降、岸和田のだんじり祭り富山県八尾おわら風の盆などと、私のお祭り行脚が始まった。では今回の「ふるさと祭り」はといえば、高知よさこい「ほにや」がまた来てくれているが、二度目になる。仙台すずめ踊りか・・・日本橋で見たことがある。高円寺阿波踊りねぇ・・・これは、ご当地だから、何回か見たことがある。新居浜太鼓祭りと牛深ハイヤ祭り(天草)は見たことがないが、残念ながら全国的には、あまり知られていない。

 それとは別に、本日はもう一つ、「大道芸フェスティバル」が、さいたま新都心で開かれるという。私は埼玉方面には不案内なので、「埼玉県」に「新都心」なるものがあるとは、ついぞ知らなかった。これは何だとウィキペディアで調べてみると、「東京都区部以外で首都を補完し地域の中心となるべき都市として、閣議決定により再開発・土地区画整理事業が行われたもので、旧国鉄大宮操車場などが有効活用された」という。「JRさいたま新都心駅」という駅までできている。そこで、やっと思い出した。中央省庁の関東地方出先機関が、全部ここに集められているのだった。立川とともに、大震災などで都心が壊滅したような場合に、そのバックアップ機能を果たすところだ。では、一度は見て来ないといけない。そのついでに大道芸が面白ければ、見物して来ようと思った。

 上野駅から宇都宮線で、23分でさいたま新都心駅に着いた。京浜東北線だと、更に10分ほど余計にかかるようだが、23分というのは、首都圏の感覚では近い方だ。降りてみると、例の通り、パイプとガラスの建築ばかりだ。こんなにガラスが多くては、大地震が起こったら、ひとたまりもないと思うのだが、今度、どなたか建築家に会ったときに真っ先に聞いてみたいと思っている。

 南北に走るJRの線路を挟んで、西側には、さいたまスーパーアリーナ、けやき広場、サンクンプラザ、中央省庁合同庁舎があり、東側には、コクーン1・2・3と、大きなショッピングモールがあって、両者を自由通路が繋いでいる。NTTドコモや保険会社の高層ビルが建ち並ぶ人工的な空間だ。これは、相当なお金が投入されたと思われる。しかも、周りにはなんにもない。敢えて言えば、田圃の中に蜃気楼のようにフッと浮かぶ高層ビル群だ。

 そこのあちこちで、大道芸が開催されている。私は「中国雑技団」の演技を見たかったので、コクーン1に急いだ。実は私は、中国雑技の演技は、1985年に中国で、2009年に本厚木で、2018年に横浜中華街で、それぞれ見たことがあるし、そのほか高円寺でも何年か前の暑い盛りにやっていたような記憶がある。今回も、楽しみだ。


SUKE3&SYU


SUKE3&SYU


 現場に着くと、雑技団の前に「SUKE3&SYU」という二人が演技中だった。その説明によれば、「なんかイケメン!でもなんかおバカ。派手な技の数々と迫力満点のアクロバットをユーモラスにお届けします」とのこと。二人は大柄と小柄の人で、もちろん小柄の人が上に乗って、二人で、色々な力技に挑む。脚を絡み合わせて水平になる演技が素晴らしかった。今日は気温が10度くらいと寒いので、こうした身体を張った動きには不向きな日かもしれないが、よく頑張っていた。

中国雑技芸術団


中国雑技芸術団


中国雑技芸術団


 次は、いよいよ「中国雑技芸術団」だ。「驚愕の技の数々で圧倒的な光景を生み出す。中国四千年の歴史が誇る一大エンターテインメント」という。中国服を来たおじさんが司会を務め、いよいよ始まる。まず出てきたのは、一瞬で顔の仮面が変わる「変面」だ。何しろ、手が一瞬、顔の前を通っただけで、次から次へと顔のマスクが変わる。それも全部違うマスクなので、これは驚く。マスクのパターンが何十もあるのではないか。役者が観客席を回って、私からつい1メートルほどの所に来て、そして一瞬でマスクが変わったけれど、よく見ていたつもりだったが、どういう仕組みなのか、見当もつかなかった。最後にお面を脱いで、精悍な中年男性が素顔を見せてくれた。

中国雑技芸術団


中国雑技芸術団


中国雑技芸術団


中国雑技芸術団


 次の演技は、若い体操選手のような人。まず、観客の目の前で、前方1回宙返りを見せる。そして、中国雑技の定番である、椅子を積み上げていく技だ。これは、1985年に北京の劇場で見たことがある。椅子を一つ一つ積み上げ、もう8個に達した。これで終わるかと思いきや、最後の椅子をもらうと、それを斜めにし、その上で力技の演技を見せたので、観客のやんやの喝采を浴びていた。ああ、これで終わりか。30分があっという間に経ってしまった。

あっぱれ吉沢屋


あっぱれ吉沢屋


あっぱれ吉沢屋


 その次の大道芸は、「あっぱれ吉沢屋」。これが面白かった。「豪華絢爛な衣装で演じる和の雰囲気いっぱいのマジックショー。歌舞伎とマジックの不思議な融合で歌舞いて歌舞いて虜にいたします」という。確かに、歌舞伎の衣装を身に付けた男女のペアのパフォーマーが、マジックを演じる。歌舞伎だから、「見得をきる」ポーズをしたら、「あっぱれ」と叫べと観客にお願いする。観客も、最初はぎこちないが、次第に熱が入ってくると、それなりに大きな掛け声になって、盛り上がるという仕組みだ。なかなか上手い。マジックも、ハンカチを一枚を二枚にしたり、大きくしたりという小技から、小箱に入れた数個の提灯を一瞬で消すという中技、そして派手な色付きテープや何やらをどんどん繰り出す大技まで、カラフルかつ立体的で、なかなかよかった。

あっぱれ吉沢屋


あっぱれ吉沢屋


あっぱれ吉沢屋


あっぱれ吉沢屋


 それから、自由通路を渡ってさいたまスーパーアリーナの方へ向かった。途中、大道芸人「コバヤシ ユウジ」さんが演技中で「街角に立つクローズアップマジシャン、トランプからホラー系マジックまで、何が飛び出すかはお楽しみに」とのことだったが、人だかりがしていたし、トランプを操っているときで、しかもそれが小さくて見にくかったことから、次に向かった。

コバヤシ ユウジ


AYACHYGAL


 すると、「AYACHYGAL」が始まったばかりで、女性の歌、男性の演奏という組み合わせである。「ピアノとヴォーカルの本格的なシャンソンショー、愛と笑いと痛み、その他色々な感情を届ける音楽絵巻」とのこと。女性ヴォーカルは、艶のあるなかなか良い声で、これまた多くの見物人を集めていた。

Juggler Laby


 けやき広場で演じていたのは、「Juggler Laby」で、「ジャグリング個人部門の元日本チャンピオン」とのこと。玉を一つ、二つ、三つと使い分け、また棒を使って縦に落ちるようで、浮かんでくるように見せる技などで魅了した。

HARO


HARO


HARO屋


 その頃、にわか雨が降ってきた。ポツポツという程度で、大したものではないと思ったが、これは中止になるかもしれないと思い、やや疲れたこともあって帰ろうとしていた。その時、遠くから薄緑の不思議な大きなものが近づいてきた。「HARO」で、「風をはらみ、風を感じ、風を受ける。うつろう風の動きを印象的に心に残す。羽ばたき舞う美しき精」という。両脚別々に、高下駄どころか、人の身長ほどもある長い人工の足を付け、おそらく両手にも長い棒を付けてその先端にパステルカラーの若草色の緑を基調としたフワフワの衣を結び付け、それを身にまとって、ヒラヒラさせながら闊歩している。簡単に倒れてしまいそうだが、倒れずに歩く。それだけでも、これは凄い技だ。衣を翻して軽々と歩く姿は、確かに風が舞うようだ。素晴らしい。でも、どうやって投げ銭を貰うのだろうと思ったら、ちゃんと普通の人が、箱を持って彼の後を付いて回っていた。

nanisole


nanisole


 そうして驚くやら呆れるやらで、唖然としていると、今度はもっと奇っ怪なパフォーマーが現れた。やはり、長い人工の足を付けているのは同じだが、こちらは、両手が鳥の羽、顔の真ん中からは鳥のようなとんがった嘴(くちばし)が出て、しかも時々、「フガー、フガー」と鳴くという凝り様だ。「nanisole」で、名前からして「何、それ?」と、人を喰ったネーミングだ。「発明した道具の数々を身にまとい、頭から煙を噴き出しながら歩き回る不思議な存在。果たして見事羽ばたくことができるのか?」・・・うーむ、これには参った。コメントをしようがない。大道芸は、なかなか奥が深い。ということで、非日常的な一日が終わった。








(令和2年1月12日著)
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