悠々人生エッセイ



ペンギンに餌をやる飼育員さんたち




 すみだ水族館( 写 真 )は、こちらから。


 我が第三の人生は(残念ながら)まだ本格化していないので、この時とばかりに退職者の特権を味わっている。今日は、午後から事務所に行くことになっている。だから、午前中はフリーだ。そこで、数日前に、「アソビュー!」から来たメールを思い出した。これは、いわゆるチケットサイトで、私はこれまでモーターショーなどのチケットを数枚、購入したことがある。そのおかげで、ポイントが貯まっているが、それを使わないと、数日内に失効するというのである。

 そこで、そのポイントが何に使えるかと思ってサイトを眺めてみた。もちろん色々な施設の入場券なのだけど、その中に「すみだ水族館」というのがあった。これは、我が家から30分程度だし、スカイツリーの建物の中にあるから、できたばかりの8年前に2回行ったことがある。そのときは入場料が確か2000円くらいで、展示の数の割には高いなと感じたことがある。それ以来、行っていない。たぶんこの価格は、東京スカイツリーにやってくる一見さんに対する値付けだと思われる。

 その後、展示内容が変わったかもしれないから、また行ってみるかと思って、このサイトから申し込んでみた。すると、やはり同じような値段だったが、ポイント数の範囲内であったから、それを使って購入できてしまった。こんなに簡単なものなのか・・・閑散期のサービスかもしれないと思って、そのまま放置しておいたのだが、今回、iPhone上にその電子チケットを表示してみた。どうやら、使えそうだ・・・というわけで、カメラを担いで行ってみることにした。

すみだ水族館入り口


 「すみだ水族館」の公式サイトを見て、営業時間を確かめ、「乗換案内」のアプリで行き方を調べる。千代田線の北千住で東武線に乗り換えて、「とうきょうスカイツリー駅」で降りると良いらしい。朝のラッシュとは反対側なので、千代田線の車内はガラガラ、東武線は混むかと思ったら、区間急行浅草行き、つまりこの区間は鈍行だから、これまたガラガラだ。乗っている人達もあくせくする風もなくて、実にゆったりとしている。そういう様子を見て、今まで私が過ごしてきた世界は何なんだという気がする。東京に、二つの世界が重複して存在するかのようだ。

すみだ水族館のチケット、右は入場前、左に入場済みのスタンプ


ミズクラゲ


クラゲのシーネットル。猛毒


 すみだ水族館に着いた。入口で、係員にiPhoneのチケットを見せたら、ひょいひょいと操作してくれて、iPhone上のチケットに入場済みのスタンプが押された。平日朝一番だから、ほとんど人がいない。おかげで、カメラを構えて、ゆっくりと同じ水槽の前に居られる。まずは、ミズクラゲ。白い体を水の流れに合わせて、ふわふわと漂う。隣にいた女性たちから、「わあ、癒される」という声が上がる。癒されるかどうかはともかく、確かに、見ていて飽きない。身体を伸び縮みさせているから、てっきりプランクトンを食べているのかと思ったら、そうではなかった。持っている毒で獲物を刺し、弱らせて捕食する肉食のようだ。見かけによらない。隣に、身体に黄色い筋のあるパシフィック・シー・ネットルが浮かんでいた。これは、猛毒を持っている。

ハナカサゴ


ベラの一種か?


アナゴ


ナポレオン・フィッシュ


目の大きな赤色の魚


ヒブダイ


 ピンクのハナカサゴだ。まるで花魁道中のようであるが、昔々に父と海釣りに行ったとき、これに刺されると大変だと聞いたことがある。サンゴの水槽が3つあった。手前が小型の熱帯魚、真ん中がアナゴ、奥の水槽が大型の熱帯魚だ。小型の魚は、身体が小さい上に、動きが速いから焦点を合わせにくくて、なかなかカメラで捕捉できない。それに、反射光が写り込んで、上手くいかない。次のアナゴは・・・砂から身体を出して、なかなか可愛い。しかし、何しろ小さいから、マクロレンズでもあれば別だが、写真は上手には撮れない。奥の水槽のナポレオン・フィッシュ(メガネモチノウオ)は、大型で堂々としているから、私好みの大型熱帯魚だ。ところがこの魚、意外と臆病で、いきなりカメラを向けるとそのレンズが大型の魚と目と勘違いするのか逃げて行くので、まずはしばらく顔を合わせる。しかる後に、徐々にカメラのレンズを見せ、慣れさせてから撮ると、うまくいく。沖縄で市場に行くと、この魚を売っていた。全身青い色の魚だから、私なぞ、全く食欲がわかないが、現地の人は美味しいと言っていた。その他、目の大きな赤色の魚がいるし、まるで笑っているような魚(ヒブダイ)もいる。見ていて飽きない。

人懐こいペンギン


突き出した陸地にいるペンギン


餌やり


 それから下の階に行くと、いよいよ「ペンギンの水槽」だ。向かって左手の所に突き出した陸地が作ってあり、そこから海を模したプールがある。私が行った時は、ほとんどのペンギンが陸地にいて、プールにいたのは、ほんの数羽だったが、女性飼育員が3人出てきて、「さあーっ。みんな朝ご飯だよ。」と叫ぶと、次々にプールに飛び込んだ。こちらの観客席側にいた飼育員さんによると、「いつも、ご飯前には、こうやって飛び込む。」のだそうだ。逆ではないかと思うのだけど、自然の中に生活するときは、もちろんこうやって飛び込んで、海の中に潜って魚を採るのだから、反射的な行動なのかもしれない。

餌やり


どういう餌を何匹あげたのかを判別し、記録している


 プールから陸地に上がってきたペンギンたちに、女性飼育員さんたちが餌(魚)をあげ始めた。「マカロン、ビタミン1匹」「いちご、同じく2匹」などとやっている。驚くことに、個々のペンギンの顔を記憶していて、どのペンギンにどういう餌を何匹あげたのかを判別し、記録しているようなのである。マカロンといちごは名前、ビタミンはビタミン入りの餌の魚という意味らしい。ペンギンの肩には色付きの識別票はあるが、飼育員さんに聞くと、「ペンギンの顔は、全て覚えています。」とのこと。そして、手元の記録と対比して、餌をあげ足りないペンギンを皆で探し、「今、プールで泳いでいます。」とか何とかやっている。つまり、やり残しのないように、詳しく管理しているのだ。これこそ、プロフェッショナルの技だ。子育てに手を抜いている人間の親がいたとしたら、見習ってほしいほどだ。

琉金


丹頂


 その隣には、「江戸リウム」という金魚コーナーがあって、和金、丹頂、琉金、蘭鋳、出目金、コメットなどが展示されている。金魚の系統図があり、中国鮒が突然変異を起こして赤い和金となり、そこから次々に突然変異を起こして、遂には琉金に至る過程が図になって示されていた。金魚というのは、遺伝子が四倍体のため、変異を起こしやすいそうだ。その中から選別して育てたものが、今のような多様な種類となった。その代わり、すぐに先祖返りをしてしまうため、いつも管理していないとだめだという。

東京大水槽


 2階分を貫く「東京大水槽」があって、底からブクブクと泡が出ており、その周りを魚が巻くように泳いでいる。見事なのだが、全体に暗くて、しかも遠目なので写真を撮るのはなかなか難しい。あとは、ペンギン水槽の裏にオットセイがいたが、これまた暗い中を高速で泳ぐし、だいたい身体が真っ黒なので、これも写真を撮る気が失せてくる。ただ、狭い所に押し込められている感がなきにしもあらずで、いささか可哀想になる。

 というわけで、短い散歩は終わった。ペンギン水槽の脇で昼食代わりに何か食べようとしたら、食べられるものといえば、「カメロンパン」つまりメロンパンに亀さんの頭、手足を付けたものしかない。それを紅茶で流し込んだ。甘くて閉口した。同じ長テーブルに、1歳を過ぎたくらいの男の子を連れたお父さんがいる。甲斐甲斐しくお世話をしている。見たところ、お母さんと育児休暇を交代したばかりのようで、ぎこちない。「ほら、お母さんが作ったお握りだよ。美味しいね。」と子供に語りかけるのだけれど、子供は無視して、「やだーっ、やだーっ。」と叫ぶ。親の心、子知らず。可哀想にお父さん、どうして良いか分からずに呆然としている。わかるなぁ、その気持ち。娘からいきなり4歳のやんちゃな男の子を預けられて、はて、どうしたものかと戸惑った自分の経験からして、よくわかる。まあ、これも人生、つまりは運命、ただただ「頑張ってほしい。」としか、言いようがない。





(令和2年1月21日著)
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