悠々人生エッセイ



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目 次
          
       
 01    パンコール・ラウ島とは
 02    エメラルド・ビーチ
 03    ジャングル・ウォーク
 04    スパ(SPA)
 05    三種類のヴィラ
 06    カンフー式呼吸法
 07    犀鳥(さいちょう)
 08    レストラン
 09    多国籍多趣向の人種の坩堝
 10    ドリアンの選球眼


 パンコール・ラウ・リゾート( 写 真 )は、こちらから。




1.パンコール・ラウ島とは

 クアラルンプールから車で北へ3時間ほど走ると、イポー市という大きな中核市があり、そこから西へ更に1時間走ると、ルムット軍港地区に着く。ここは、マラッカ海峡で最重要の海上警護の拠点となっている。その沖合いに浮かぶのがパンコール島で、実は本土と橋で繋がっている。その島の西南に隣接している小島が、パンコール・ラウ島である。ここは、1985年から会社所有の島で、その会社が運営するパンコール・ラウ・リゾートしかない。一応、五つ星のリゾートという評価を受けている。私が一度は行ってみかった熱帯のリゾートだ。




 このリゾートに行くには、パンコール島から出ているスピード・ボートに乗る必要がある。片道20分弱の行程だが、波の上をかき分けて進むので、それなりに揺れるし、大きな波に乗る度に水しぶきが派手に上がる。そうして、パンコール・ラウ島の桟橋に着く。







2.エメラルド・ビーチ

 この島は、卵形をしていて、それを縦に割った右手つまり東側に、桟橋、ホテルのリセプション、ビーチ、プール、ガーデンヴィラ、レストランなどのメインの施設があり、さらにその南側には、シー・ヴィラ、スパ(ビーチとプールあり)などの施設が整っている。

 ところが、卵の左手つまり西側には、その真ん中にエメラルド・ビーチなるものがあるだけだという。そこで、着いて早々、水着に着替えてマイクロバスに乗って行ってみた。このリゾートには、マイクロバスの乗り場があちこちにあり、そこから電話すると直ぐに来てくれるので非常に便利だ。



 エメラルド・ビーチは、要するに「湾」で、白砂青松といいたいところだが、白い砂浜で遠浅の海岸ではあるものの、生えている木は松ではなくて白い可憐な花を付ける独特のプルメリアで、その花が浜辺に落ちると、浜辺に花が咲いているようで、なかなか風情がある。

 湾を見渡すと、晴れあがった熱帯の青空の下で、何といってもエメラルドグリーンの海の色が素晴らしい。これこそ、熱帯の海だ。エメラルド・ビーチというだけのことはある。




 そこで久しぶりに海水浴を楽しんだが、波があったせいか、クロールしようとすると海水が口に入ってくるし、得意な背泳も顔全体に海水を被る。やはり、平泳ぎしかないが、昔と違ってすぐに疲れてくる。歳のせいかもしれない。久しぶりの海水は、口に苦くて塩っぱいものだった。


3.ジャングル・ウォーク

 歩く前にガイドから、「森の中の植物には触らないこと、蛇がいるかもしれないがこちらから危害を加えないこと、猪がいるかもしれないが無視すること、出来るだけ手すりを持つこと」などの注意を受ける。

 まず最初は、プールに面した大きな木の前に止まった。良く見ると上に黒いものがぶら下がっている。これは、蝙蝠だそうだ。夕方に活発に飛び回るという。

 シー・ヴィラの最南端の所から、いよいよジャングルに入っていく。道がまだ歩きやすいところに、かつてこの地に住んでいた人々の家の土台だけが残っている。

 ジャングルの中の道は、もちろん、道なき道というわけではなく、それなりに踏み固められている。ところが、坂に差し掛かると丸太で階段を作っている程度で、そのステップが不揃いなものだから、特に下り坂は歩きにくい。下手すると転げ落ちそうになる。手すりを持てばよいのだが、それが腐食してボロボロの棒だし、肝心な所で壊れているので、役に立たない。




 途中、ガイドが立ち止まるのでその指差す方を見ると「これが自然のラタンです」と言う。これが「籐」かと思うが、思ったより太くて汚い。これを加工するのだろうか。

 上り坂に差し掛かる。両側は、熱帯にしてはやや疎らになった木や草だ。ジャングルという言葉から受けるイメージとは違う。昼なお暗いというものではないが、それでも地面は湿っていて、靴をちゃんと接地しないと滑りやすい。だから一歩一歩踏みしめながら慎重に歩く。ガイドが突然止まったかと思うと、右の方向を指さして「野ブタだ」と叫ぶ。一行がざわざわした口々に「どこだ、どこだ」と言うが、ほとんどの人が見つけられない。しかし、とある白人の中年男性が「あそこにいる」と叫ぶ。私には、何にも見えない。数分後、「ああ、あれだ」とその男性が再び叫ぶ。それにつれて私がその方角に目をやると、たまたま黒い影が横切るのが見えた。ほんの一瞬の出来事だ。私のすぐ後ろの中国人カップルは、何も見えなかったと嘆いていた。これで分かったことは、白人男性は、やはりハンターに向いているということだ。なるほどと納得した。


4.スパ(SPA)

 スパのみと、スパ+マッサージの二つのコースがあり、私はあまり身体に触られるれるのが苦手だから、前者にした。受付の中国人女性に予約してしばらく待っていると、マレー人の男性が案内してくれて、まず白い陶器の器で、足を洗ってくれる。それから、ポカポカという音を立てる木の金槌用のもので、足裏を満遍なく叩く。痛いという感覚はなく、気持ち良い。




 次にインド人女性が脱衣場に案内してくれて、上半身は裸、下半身にロンジー風の腰巻きを付けさせられた。その格好で、水のプールに入り、両脇で合計6箇所から落ちる小さな「滝」に当たれと言って、消えてしまう。なるほど、、、両肩を水流に当てると、なかなか気持ちが良い。滝の修行は、こんなものかもしれない。しばらくして、あのインド人女性がどこからともなくまた現れて、次は「日本式」だと言う。何かと思ったら、髪と背中を洗えと言って「ゴシゴシ」という表現とともにナイロンのタオルを渡してくれる。扉を開けてみると、日本式の洗い場と、桶があったので、つい笑ってしまう。

 今度は「上海式こすり」だと言って、うつ伏せに身体をマットの上に倒し、多分、塩のようなもので背中や手足を擦ってくれて、水洗いをし、ハーブティーを一杯くれる。何か、さっぱりした。そこから出ると、四隅にアロマが炊いてある四角い場所があり、それぞれに「calm」、「passion」などと書いてある。ハーブティーと同じ香りがした。それを吸い込むようにと言われる。デトックスに良いそうだ。

 最後に、温いお湯のプールに入るように言われる。ロンジーのまま入ると、これは素材が合繊のようで、大きな空気の塊が出来てスカートがプカプカ浮いているようになって、実に具合が悪い。その空気の塊を潰しているうちに、またあのインド人女性がいつの間にか消えていた。ところで、この緩いお湯のプールは気持ちが良い。周りは、熱帯の草花や竹に囲まれ、日の光がその大きな葉っぱを通して差し込んでくる。その上は青空だ。流れてくる水の音が絶えずして、気持ちが休まる。この空間に私一人なのが実によろしい。のんびりした空気、せせらぎの音、鳥のさえずりなどに身を任せると、確かにリラックスできる。贅沢な時間の使い方だ。プルメリアの花で飾ったバスタオル、長い池に悠々と泳ぐ緋鯉など、リラックスするものに囲まれて、幸せな気分になる。







5.三種類のヴィラ

 このリゾートは、「シー・ヴィラ」、「ヒル・ヴィラ」、「ガーデン・ヴィラ」から構成されている。シー・ヴィラは、海の上に浮かぶコテージ、ヒル・ヴィラは、海を見下ろす小高い丘にあるコテージ、そしガーデン・ヴィラは、受付の建物に隣接した海岸にある普通のコテージで、この順に宿泊料金が安くなっていく。




 私はその一番安いガーデン・ヴィラに泊まったわけだが、それで良かったと思っている。というのは、ジャングルウォークで一緒になった西洋人女性が「シー・ヴィラは、うるさくてかなわない。波の音が絶えずするし、夕方から夜にかけて、コウモリらしい鳴き声で、これまたうるさい」と、嘆いていたからである。また、ヒル・ヴィラも、下から見上げているうちは良く見えるが、あそこまで登らないといけない。普通の建物だと5階くらいに相当しそうだ。こんな距離を朝昼晩と登ったり下ったりするのは、たまらない。

 私が泊まったコテージは、両脇が白く塗られた階段を上がって行く。そこにはベランダがあり、日光浴のチェアが並んでいる。その左手から部屋に入る。部屋の中は、高い天井の真ん中に換気扇がゆっくり回っていて、キングサイズ・ベッドがある。隣の部屋は洋服ダンスと浴室とトイレだ。この換気扇はそれなりの雰囲気を出しているだけで、下まで風を寄越すものではない。いわばダミーというわけである。実際は、室内はエアコンが効いていて、過ごしやすい。実は、外に出るたびに大汗をかくので、帰ると直ぐにシャワーを浴びる。髪の毛を乾かして、そのままベッドに素肌で横たわると、その気持ちの良いことといったら、この上ない。これこそ、この世の天国である。

 もし、蚊が来たらどうするのだろうと気になったが、ベッドの脇に日本製のベープマットがあり、赤く点灯していた。ところが、肝心のマットがなかったので、慌てて新品を差し込んだ。これで、滞在中には一度も刺されなかった。

 ところが滞在最後の日に、明け方になって暴風雨に見舞われた。風が吹いて、バリバリバリッと何かが壊れる音がしたかと思ったら、大雨がヴィラの建物に当たる音が凄まじい。あまつさえ、雷鳴がしたかと思うと、周囲が一瞬明るくなって、バリバリ、ガッガーンと落雷がある。それも、一度や二度でなく、続けて起こるから、生きた心地がしない。昼間は天国だったが、こうなると夜間は地獄だなと呟く。諦めた頃に雷鳴は止み、いつの間にかまた寝入った。


6.カンフー式呼吸法

 リセプションで「太極拳とヨガはないのか」と聞くと、コロナ前はやっていたが、今はない。代わりに」と案内されたのが、カンフー式呼吸法である。中国語でその名前を言われたが、耳に残らなかった。行ってみると、中年の講師である中国人女性が黒い中国式衣装を着て、両足を肩幅に広げてすっくと立つ。中国の馬頭琴のようなへらへらと聞こえる音楽が優雅に流れる。その中で演技が始まる。受講生は私の他は3人で、ヨーロッパ人女性1人、中国人カップル2人である。両手を真横に広げ、上を向けて、、下を向けて。両手の肘をつけて、それを縦に上下する。いずれも親指を中に入れて、ほかの指は揃えて伸ばす。11型あるそれぞれのポーズごとに、呼吸を整える。

 それを真似するのだが、時々、講師が近寄ってきて、一人一人の手や腕の型を直してくれる。親指などは、もっと小指の方に置けとか、腕をもっと外側に捻れとか、体の硬い男性には無理な注文だが、何とか付いていく。終わった時には汗びっしょりで、身体の節々が痛い。

 終わって、同じ受講生のヨーロッパ人女性と雑談をする。退職したスペイン人で、「このリゾートにはもう16回も来たことがあり、今回は2週間の滞在。子供と甥がクアラルンプールに住んでいて、それに会いに来るついでにこのリゾートでリラックスして帰る」という。私も、「近々スペインとポルトガルを旅行するつもり」と言うと、たいそう喜んでくれた。


7.犀鳥(さいちょう)

 以前、クアラルンプールのバードパークで、嘴が大きくてオレンジ色をしたホーンビル、つまり「犀鳥」を見たことがある。これは本当に見栄えのする鳥で、犀の角のような鶏冠を持っている。その時の鶏冠は、オレンジ色で、美しいなと思った記憶がある。




 実はこの犀鳥は、この島にたくさん生息している、、、というか、たぶん飼われている。しかもそれが人懐こく近づいてきて、あちこちで出くわすのである。ある時は泊まっているコテージの上に庭にと出没し、またある時はレストランの庭先の木の上や天井の梁の上などに居るなどと自由自在だ。ただ、こちらの犀鳥の鶏冠は、オレンジ色ではなくて、薄い黄色だ。


8.レストラン

 メインの建物に、バイキング・レストラン、中国式レストラン、西洋式レストランがあり、その他、プール脇に軽食レストランがある。エメラルド湾にも、昔はバーベーキュー・レストランがあったそうだ。私のは宿泊と食事がセットになっているので、今日のお昼と夕食はどこに行って何を食べようかと頭を悩ますことはない。ただ、どのレストランにするか、予約しておく必要がある。もちろん、順繰りに予約するだけだから、そう手間はない。




 肝心の味だが、まあそれなりに美味しいもので、楽しめた。もっとも、食べる量を調節できるバイキングは別として、それ以外のレストランでは量が多いのには参った。これなら、一日2食でちょうど良いかもしれない。


9.多国籍多趣向の人種の坩堝

(1)レストランで給仕をしてくれるボーイさんに、「あなたはマレー人か」と聞くと、見事に違っていた。インドネシア人、バングラデシュ人、フィリピン人、ミャンマー人という多国籍ぶりである。「地元のマレー人は居るの?」というと、遠くの方を指さして、「あれと、あれ」と言う。このうち、インドネシア人の男性と話す機会があった。マレー語と英語のちゃんぽんである。彼は、バリ島出身で、学校を卒業して直ぐに3年契約で来ているという。人懐っこい性格で、私がバリ島に行った時の話をすると、たいそう喜んで、サービスでフルーツの盛り合わせを持って来てくれた。

(2)お客の中で、気になる男性カップルがいた。筋骨隆々のアジア人男性と、背の低いなよなよとした白人男性の組み合わせである。エメラルド・ビーチに居たとき、そのうちのアジア人男性が沖まで抜き手を切って泳いでいくのに、白人男性はビーチのハンモックで寝ていた。それだけでは何とも思わなかったが、レストランに居た時、見ているとアジア人男性が食事や飲み物を取りに行き、ただ座っているだけの白人男性の前に置いた。ああ、そういうことかと分かった。その役割分担を見ていると、どうやらLGBTのうちの「G」だろう。

 現代の日本では、LGBTと聞いても、「ああ、性的マイノリティの皆さんね」という程度の無色透明な反応だろう。私もそうだ。ところがこのマレーシアはイスラム教を国教としているので、LGBTは宗教上のタブーに明確に触れて、見つかったらとんでもないことになると思うのだが、そういう風なことを心配している様子でもない。国際的なリゾートだからだろうか。ただ、宗教の教義にからむ微妙な問題なので、誰かに聞くことはしなかった。

(3)スピード・ボートで向かい合わせに座った中国人男性と、それより背が高くて独特の雰囲気をまとった女性の組み合わせも、いささか気になった。この二人は、中国人の両親との四人家族で来ているのだが、女性が何の人種なのか分からないのである。まず、後ろから見ると、長さ1メートルはあると思われる見事なカーリーヘアがまるで扇状地のように拡がっていて、それにダブダブのズボンという出で立ちである。正面に座ると、真っ白な肌に高い鼻、左右に広がる太い眉、切れ長の目と、顔の造作が大きくて、あまり女性っぽくないのである。それに、ボートフレンドと言葉を交わしても、全然笑わない。頭の中が、クエスチョンマークだらけとなった。

 私だけでなく、他の客も同じ感想を持ったのだろう。レストランで、彼ら家族が通り過ぎた後、隣の中国人のおばさん達が、姦しい。

 「あの女性、インド人かね?」
 「あんな色の白いインド人がいるもんか」
 「あれは絶対、男性から女性に性転換したんだよ」
 「どうして? 胸は膨らんでるよ」
 「あんなの、注射でいくらでもできるよ。顔は男性そのものだよ。それに、笑わないだろう。何か心に屈託をかかえているんだよ」

 なるほど、そうかもしれない。何も知らず、私はついつい本人の顔を見てしまって、誠に失礼した。

(4)マレーシア中国人は、人懐こい。見知らぬ人でも、必要とあれば、アドバイスをくれる。スピード・ボートで桟橋に着いた時、すれ違った中年の中国人女性が私にこのように言った。「ココナツ・ミルクには、気を付けた方が良い」と。私が「何かあったの?」と聞くと、「子供達三人が、ココナツ・ミルクを掛けたフルーツを食べて、下痢を起こした。そのうち一人は症状が重くて、診療所のお世話になった」という。「貴重な話をありがとう。気をつけます」と言っておいた。






10.ドリアンの選球眼

 ところで、今はドリアンのシーズンが始まったばかりだ。旅の途中、道端で買って、食べてみた。普通なら、迷いなく最高級ブランドの「猫山王」を買うところだが、ふと、カンポン・ドリアン(田舎のノン・ブランド)が目に入った。昔むかし、ドリアンを最初に食した時には、こんなブランドなどなかった。売られている全部がカンポン・ドリアンだったからで、これを両手で持ち上げて振ったり、香りを嗅いだりして、その中から美味しいドリアンを見付けたものだ。よし、今度もそうしてみようと思って、これは良いだろうと思うものを丁寧に選び出して、それを買った。



 猫山王が1個80マレーシアドル(2,730円)だったが、これはその半額の42ドル(1,430円)だった。大丈夫かなと思って実を開けてもらった。すると、猫山王のような濃さの黄色ではなかったものの、その味はまさに天下一品で、非常に良かった。我ながら選球眼は衰えてなかったと、一人悦に入った。






(令和6年6月28日著)
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