This is my essay.







 私の家の近くにいくつか蕎麦屋があるが、なかでも私たち夫婦が気に入っているのが、錦鯉のいる蕎麦屋である。もちろん、蕎麦を食べながら錦鯉を眺めるのは楽しいが、実はそれだけではない。ある日、ここでたまたま、カレー南蛮なるものを食べてみてからというもの、その絶妙な味に感激して、それ以来、こればかりを注文して今に至っている。我ながら、何年経っても、なかなか飽きないのである。

 というのは、ふつうの蕎麦屋のカレー南蛮の場合は、どちらかというとカレーの味が勝ってしまって、蕎麦を食べているというよりカレーを食べているという感がするのが一般的である。ところがこの蕎麦屋、確かにカレーの味はするものの、その一方で確かに蕎麦のダシの味もするから不思議である。つまり、口に含むとカレーの濃厚な味が口腔いっぱいに広がるのであるが、しばらくしてそれが消える頃に今度は昆布のダシの味がじわじわとする。いつもその繰り返しで、気が付いてみるともうほとんど平らげているというわけなのだ。何だか、うまい具合にだまされた感すらするものだから、面白い。要するに、カレーと蕎麦つゆという二つの個性的な味が、お互いを消し合わずに共存している。これこそ、料理人の腕というものである。

 最近、別の食べ物で同じような経験をした。オフィスの近くにあるので普段よく行く山形県のアンテナ・ショップ「山形ゆとり都」というところで、チョコレート・ブロックなるものが売られている。最初にこれを見つけて買ってきたのは家内である。私は当初、そんなお菓子などと思って全く気にもしていなかったのだが、あるときお腹がすいてたまたまこれを口に入れた。すると、確かにチョコレートを食べているのだけれど、その中に砕かれたピーナッツが入っていて、確かにピーナッツを食べているような感触も味もするのである。これも、二つの味がうまいこと共存している例である。

 ちなみに、このチョコレート・ブロック、我々夫婦だけでなく、もういい歳になった息子も大好物で、居間に置いておくと、その数がいつの間にか減っている。数が少なくなっていたときなど、申し訳なさそうに、たった一個だけ残してあるのが、かわいい・・・。ということで、一家揃ってこれを口にするようになったが、幸いなことに、これが自宅近くのスーパーの二階に売られていた。そこで、家内がその補給に努めていたものの、ごく最近、競争相手がいるとみえて、このチョコレート・ブロックが置かれたと思ったら、次の日にはもう売り切れるということを繰り返していた。ということで、近くのスーパーになかったら、私がそのアンテナ・ショップに買いに行っていたのである。

 しかし先週行ってみると、どうしたことかそのアンテナ・ショップには、同じ会社の違うお菓子が置かれていて、私の目指すチョコレート・ブロックが消えてしまっていた。その陳列をやめたらしい。これは困ったと思い、試しにインターネットでその会社「でん六」(注)というのを検索してみると、そのサイトがすぐに出てきた。どうやら、豆から始まって、おつまみ全般に手を広げているような会社らしい。うれしいことに、通信販売をやっていて、そこにそのチョコレート・ブロックがあった。チョコレート部門の最初に掲げられていたので、人気があるのだろう。通信販売の最小単位は、1ダースである。これを12個、2650円分も買ってどうするのかとも思うが、致し方ない。余ったら、娘に送ったり近くの人に差し上げてもいい、そういえば、私の秘書の女の子も大好物だった・・・ということで、注文することにした。明日の夜もまた、一家三人そろって、これをポリポリやっていることだろう。平和というか、何というか・・・。



(注) でん六 のサイト     http://www.denroku.co.jp/




(平成17年6月 5日著)
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悠々人生・邯鄲の夢





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(出典) 錦鯉(季節の窓 様), うどん屋・蕎麦(うみもるサービスエリア 様)