This is my essay.








 「いよいよ」というか、「やっと」というか、私もとうとうスポーツ・ジムに通うことにした。私はこれまで10年以上も、週に一回は必ずテニスをやって来ているので、それに比べれば室内のせせこましい場所で、機械相手にあんなもの何が良いのかと小馬鹿にしていた。ところが、この連休中のとある出来事で、つくづく自分の運動不足を痛感させられることになった。

 ある日、ホテルのプールでのんびりと泳いでいたところに、小学生らしき兄弟がやってきて、泳ぎ始めた。たまたま夕方で、他にだれもいなかったことから、自然とその子たちと遊ぶようになって、ついに下の弟の方から、競争を申し込まれた。それで、ようい、どんとばかりに、50メートル・プールの向こう側まで泳ぎ始めた。そのときの私は、まあ普通に平泳ぎで泳ぎ、10メートルほどリードして悠々と対岸に達した。その第一本目の勝負は、私の勝利に終わったのである。すると今度は、上のお兄ちゃんが、僕もとかいって、また挑戦された。ところがこの子はクロールで来るものだから、それが結構早くて、ふと気が付くと、体半分リードされていた。これはいけないと、こちらも必死に泳いで、何とかタッチの差がようやく勝った。

 すると、それが大層くやしかったらしくて、それから何回も競争を申し込まれているうちに、私の息があがり、はあはあ、ぜいぜいという情けない状態になったのである。そのとき「いや、これは日頃の運動不足のせいだなぁ」とつくづく思い、「よしっ、連休明けにはスポーツ・クラブに入るぞ」と一大決心をしたわけである。

 思いついたら早速とばかりに、連休明けの火曜日、近くのスポーツ・クラブをインターネットで探した。最近は、フィットネス・クラブというらしいのである。今頃こんなことを言っているようでは、笑われるかもしれない。それはともかく、あった、あった、赤坂に二つある。そのうちの一方に電話して「おたくのセールス・ポイントは何か。近くにもう一つあるけど」と聞くと、「こちらの方が眺めがよく、また空いていますし、値段も安いですよ」という。値段を比較すると、確かに景色の良い方がむしろわずかに安い。そのときは、なぜだろうと気にはなったものの、理由がよくわからなかった。

 しかし、行ってみるにこしたことはない。お昼になって、早速、出かけてみた。まずは、地下鉄の駅から3分という、近くて高い方に行った。すると、2階建ての建物で、何やらせせこましい感じがする。ちょっと、イメージが違うなあと思って見学はやめた。それではというわけで、景色が良いという、もう一つのフィットネス・クラブを探すこととした。ところが、これが簡単には見つからないのである。変だなあ、こんな道を行くのか、駅から5分といってるのにと思いつつ、汗を書きながら、おかしな坂を上がっていくと、ぱっと視界が開けて、そこに高い建物があった。目指すところは、その最上階の23階にあるらしい。なるほど、これでは景色が良いけだ。ところがこの建物、外資系の会社が多いせいか、入り口での出入りのチェックが厳しい。そのフィットネス・クラブに行くということで、ようやっと通してもらい。上がっていくと、そのクラブがあった。

 頼んで案内してもらうと、まず着替えるロッーカールームは、板張りで非常に清潔である。プールは小さいが、これまたなんとも美しい。何よりも眺めは抜群で、ただでさえ高い建物なのに、それが丘の上にあるものだから、辺りを睥睨するかのごときである。だいたい、あまり人がいない。これはいいと、一見して気に入った。しかし問題は、あの地下鉄の駅から坂を上がって来なければならないということである。夏なんか、それだけで汗をかいてしまう。これが最大の問題である。さりとて、もうひとつの2階建ての建物でせせこましく運動するのも長続きしないだろうという気がして、こっちに決めた。通うことも運動のうち、というわけで、めでたく会員にしてもらったわけである。

 さて、その最初の運動の日、私はトレーナーの説明を受けるために、予約の時間に行った。若いお兄ちゃんがトレーナーで、もうひとり来るから待ってくれとのこと。間もなく、20代後半の女性がやってきて、二人でトレーニングジムの説明を受けた。まず、体重と身長、体脂肪率、血圧を図った。そして、そのトレーナーが何やら計算して言うには「血圧は全く正常値です。また、あなたのBMIと体脂肪率は、スポーツ・タイプです。本来なら、こういうジムに来られなくとも、よろしいほどなのですが、もっとシェイプ・アップされるのなら、お手伝いします」などと、実にお客を喜ばせることをいう。これがホントなら、もう帰ってしまうところだ。「運動すると、息が上がるようになったから、来たんだ」と言いたいところだが、まあそれは押さえて、トレーナーの話しの続きを聞く。それがひとしきり終わって、そのトレーナーの持っていた絵をみると、そこに私のデータの位置がプロットされている。ところが、である。その絵の中でスポーツ・タイプというのは青色で囲われていて、確かに私のドットは、その中には入っている。しかし、なーんだ。その隣の普通タイプのほぼ境界線に近いところにあるではないか。よく言うよ、まったく。

 最初は、エアロバイクでウォームアップをしてくれとのこと。耳に何やら夾んで、それが心拍数を数えるらしい。2分、3分とやっていると、それが徐々に上がってきて、120くらいで落ち着く。それで5分くらいやれば、もうよろしいとなった。次は、マットの上で、柔軟体操である。いろいろなポーズがあった。たとえば、隣の女の子は、ハの字型に伸ばした足の片方にその倒した胸がくっつくくらいの姿勢がとれるが、私にはとんでもないことである。これは勘弁してもらった。

 それから、いよいよトレーニング機械の前に連れていってもらって、これが胸の筋肉を鍛える機械です、という。どれどれといってやってみたが、「ええっ、こんな軽くていいの」という気がするくらいである。そのうえ「15回くらいで結構です」と言われた。ままよ、とばかりに20回くらいしても、へっちゃらであった。その調子で、お尻の筋肉、横倒しのスクアットなどとやっていった。全部終わって「何だ、こんなものか」と拍子抜けをしたくらいである。その日はサウナに入って、大人しく帰宅した。体は、まだまだ燃焼不足の感がしていた。

 ところが、その翌日、首が重い、おやおや肩も張っている、あれっ腕を捻ると痛いなどということで、満身創痍の有様であった。相手を見くびると、失敗するものだ。これから、心してかかろう。それにしても、いつまで持つか、あまり自分でも自信がない。せめて、一周年を祝うくらいはやってみたい。

(平成14年 5月11日著)


 それから、半

 私は、昨年の5月にフィットネス・クラブに入り、一週間に少なくとも2回ほどのペースで通っている。主なメニューとしては、大体こんなところである。

 (1)最初に、自転車漕ぎを15分くらい。
 (2)次に、上半身主体に、筋肉運動を20分くらい。
 (3)時に、(1)を控えて、30分くらい泳ぐ。
 (4)サウナに5分くらい入る。


 という調子なのであるが、さて、これによる効果というと、

 
【1】気のせいかもしれないが、両腕の筋肉がついたような感じがする。
 【2】いつものテニスのへなちょこサーブが、やや速度を増したような気がする。
 【3】運動後の食事がおいしくて、食欲が増進した(ただしお酒は飲まない。)
 【4】これも気のせいかもしれないが、風邪を引かなくなった。
 【5】ところが何と、2〜3ヶ月で、体重が2〜3キロも増えた!


 いやまあ、【1】から【4】までは結構なことなのだが、【5】は意外というか、想定外のことであった。おかげで、運動前のBMI指数が24.8と、肥満体グループの一歩手前だったのが、ついに境界線を超えて25.1となってしまい、正真正銘の肥満体の仲間入りをしてしまった。昨年末の健康診断では、「太りすぎです」などと言われる有り様である。

 この年末年始にかけて、つらつらとその理由を考えてみた。私は、ここ10数年来、体重はほとんど増えずに、まあまあの体型を保ってきた。特に近年は、お酒を控えるというどころか、全く飲まないようにしてきているし、、それに週に一回のテニスの効果もあったのだと思う。それがなぜ最近、よりによってフィットネスを始めてから、急に体重が増えたのだろう。どうやら、フィットネス前後の生活習慣の変化のせいではないかと思い当たったのである。

 私は、それまで、毎日、少なくとも一時間は早足で歩くようにしていた。これは結構な距離を歩くことになるから、たとえば夏などは、文字通り全身汗だくになる。ものの本によると、これは有酸素運動で、脂肪の燃焼にとてもいいらしい。それだから、長年にわたり、毎日やってきたのである。しかし、フィットネスを始めてからというもの、もちろんフィットネスをしたその当日は歩く時間もないし、それから、正式に運動しているということで安心してしまって、ほかの日も、あまり歩かなくなってしまったのではないか。確かに、あの運動のいろいろな機械が並んでいるところにいて、他人に混じって何か自分も体を動かしていると、自分は立派なスポーツマンという思い上がった気になっていたのではなかろうか。

 ということに思い当たったので、一月以来、運動のメニューを見直してみた。自転車漕ぎをやめて、ランニング・マシンを25分ほどやることにした。最初の15分くらいは時速6キロくらいの早足で歩き、残りの時間は、8キロのランニングである。両隣の人たちをみると、9キロ以上で走っていて、時に真似をしたい誘惑にかられるが、そこをこらえて、のんびり走っている。

 その成果は、というと、目算通り、2キロ減って、元の体重に戻りつつある。しかし、BMI指数を24程度以下にするには、あと5キロは痩せないといけないのだが、どうやればできるのか、皆目見当もつかない。まあそんな無理はせずに、万一病気したときの体重の削りしろとして大事にとっておくことにしよう。

(注)BMI指数=体重(kg)÷身長(m)2

(平成15年1月 1日著)
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 更にそれから、1年半後


またまたそれから、半年後







悠々人生・邯鄲の夢





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