大学院法務研究科に係る一連の事態をうけての再発防止策等について

                                    掲載日:2007/09/08

 慶應義塾大学大学院法務研究科は、これまで法科大学院の理念に則り、その教育を進めて参りました。その中で、平成19年2月から3月にかけて行われた、当時同研究科教授の地位にあった植村栄治氏による新司法試験考査委員としての不適切な行為により、法科大学院教育及び新司法試験など新たな法曹養成システムに対する社会の信頼を損ね、法科大学院関係者並びに法曹関係者に多大なご迷惑をお掛けしましたことを、慶應義塾として深くお詫び申し上げます。

  なおこの件につき、慶應義塾は、平成19年8月3日に法務省司法試験委員会から、また、平成19年9月4日に文部科学省から再発防止の要請を受けましたことも重く受けとめております。 これら一連の事態をうけての再発防止策等について、慶應義塾として以下のとおり発表いたします。

1.植村元教授の引責辞職について

 すでに発表いたしましたとおり、慶應義塾は、大学院法務研究科から植村氏を懲戒処分(解職)とするのが適当との上申書の提出を受けましたが、同氏から深く反省しその責任をとるとして引責辞職の申し入れがあり、種々の点を勘案し、平成19年8月3日付での退職願を受理しました。

2.再発防止策について

 慶應義塾は、今回の件を真摯に反省し問題を究明するとともに、今後は初心に帰り率先して再発防止に万全を期し、法科大学院教育及び新司法試験など新たな法曹養成システムに対する信頼回復に努める所存でおります。 法務研究科は、平成19年9月3日、以下の項目を骨子とする再発防止策を策定し、本年度の秋学期授業開始日(9月22日)から施行、早急に再発防止の体制の確立を目指すものとします。

(1)「教育指導上の不適正行為の防止のために法務研究科教員が遵守すべきガイドライン」を策定し、これを厳格に遵守すること

(2)「ガイドライン」の遵守を通じて不適正行為が再び起こることのない学内体制を早急に確立すること。それまでの間、法務研究科専任教員は新司法試験考査委員への就任を自粛するものとすること

(3)不適正行為が再び起こることのない学内体制の確立、「ガイドライン」の遵守に関する監督と指導、研究科委員会への意見の具申等の権限を持つ新たな委員会を設置すること

(4)第1項の「ガイドライン」遵守状況及び前項に基づく学内体制が正しく機能しているか否かを定期的に調査確認できるようにするため、外部委員をもって構成する委員会を設置し、この委員会が調査を行い、その結果を報告するものとすること

3.慶應義塾におけるその他の対応

 前述の再発防止策に加えて、慶應義塾においては、自らの責任を明らかにするために以下のような対応をとっております。

(1)平成19年度大学改革推進等補助金(専門職大学院等教育推進プログラム)について、文部科学省に対して、平成19年9月4日付で申請の辞退を申し入れました。

(2)法務研究科現委員長は、文部科学省における法科大学院教育関係の一切の審議会委員等の公職への就任を控えることとし、9月4日に文部科学省にその旨申し入れをしました。また、問題発生当時、委員長の職にあった同研究科前委員長は、すでに中央教育審議会法科大学院部会委員につき辞意を表明しております。

(3)法科大学院協会に対しては、平成19年8月30日付で、法務研究科現委員長が法科大学院協会の理事を辞任するとともに、同研究科は協会における活動を当分の間自粛することを申し入れました。なお、同協会理事会からは、平成19年9月1日に、1年間の協会会員資格停止処分を受けました。

(4)司法研究室の改革について

 慶應義塾は、同大学法学部の付設機関である司法研究室において法科大学院の学生及び修了生が指導を受けているとの実態に鑑み、法学部と法務研究科との連絡協議会において、司法研究室改革小委員会を設置し、同研究室の組織及び指導のあり方の見直しを協議し、平成19年8月17日、研究を中心とした組織への改編及び新司法試験の受験指導の廃止等を柱とする改革案を策定しました。今後はこの案に沿って改革を進めて行く所存です。