This is my essay.








   目  次
日本版法科大学院構想
理想と現実との落差
弁護士界や財務省からの観点
法学界からの観点
二つの解決策
(1) 法科大学院の大風呂敷
(2) 早稲田大学法科大学院
(1) 素案の検討と反発
(2) 合格者数の落着
司法修習給費制の廃止       
法科大学院ピンチ
10 新司法試験の結果
(1) 第1回新司法試験の全容
(2) これからの弁護士の道
11 合格率低下と就職難
12 司法試験問題漏洩疑惑
13 第2回新司法試験の結果
14 学生と弁護士の二極分化
15 法科大学院の質
16 司法試験合格者数の見直し
17 日弁連の逆噴射
18 第3回新司法試験の結果
19 早稲田大学法科大学院が既修者枠
20 法科大学院の定員削減
21 第4回 新司法試験の結果
22 日弁連会長に反対派が当選
23 第5回 新司法試験の結果
24 法曹養成制度検討会議




1.日本版法科大学院構想

 アメリカのロースクールにならって、2004年4月より、わが国に「法科大学院」なるものが開校し、法曹養成の中核機関となることが期待されている・・・と書くと、まさに良いことずくめのようである。しかしながら、残念なことに、現実はそのようなバラ色ばかりではなく、むしろ問題ばかりが目に付くようになってきたのである。もちろん法科大学院構想は、法学界にとっては活性化の旗手となったことは事実であるし、裁判所や弁護士会にとってもそれぞれ従来の立場が維持され、現行制度がさほど変わるものではない。ところが肝心の学生、とりわけ司法試験受験生にとっては、その内容を知れば知るほど、これでいいのかといいたくなるほどの、歴史的失敗作なのではないかと思えてならないのである。一言でいえば、ギルド社会の排他性に医学部入試的な嫌らしさが合わさってしまった。まあ、過渡期でしかも特殊な世界によくありがちなことと言ってしまえばそれまでであるが、どういうことになっているのか、とりまとめてみたい。

 まず、事の起こりは、いまの司法試験のあり方が、いかにも狭すぎる門をこしらえて、新規参入者を締め出していることである。少し前までは、司法試験合格者の枠は、年間わずか500人であった。そこに約25,000人ほどの受験者が殺到するので、合格率はわずかに2%という状況であった。しかし、合格後は司法研修所の修習生となって、国家から公務員並みの給与まで与えられて厚遇される。難しすぎる狭き門なので、合格すればそれこそ古の中国の科挙の合格者にもたとえられるエリートとなる有り様となる。その司法修習生の全部が判事・検事となるのであれば、公務員の研修と同じで、それほど目くじらをたてるほどのことではない。ところが、司法修習生中で民間で弁護士になるのが8〜9割近くに及ぶというのでは、いまどき何のために税金を投入しているのかという批判が出てきて当然である。ちなみに、合格枠は、最近でこそ1200人(今年及び来年は、1,500人)となったものの、肝心の受験生の数は約35,000人となったので、あまり状況は改善されていない。

 それで、その極めて狭い枠に殺到する受験生はどうしているかというと、日本の大学の法学部の授業では、全く歯が立たないので、ひたすら塾に通い、司法試験に備えることとなる。LEC、伊藤塾、早稲田ゼミなどは、しばしば宣伝をしていて著名な司法試験予備校である。これらの塾が繁盛するひとつの理由は、司法試験の質に問題があるからだと思われる。実際に、択一試験と論文試験というこれらの問題を見てみたが、特に択一試験は、法律の専門家を自称している私でも、なかなかできるものではない。民法では重箱の隅をつつくようなつまらない条文を数多く出してみたり、憲法ではもはや何の役にも立たない明治憲法を取り上げたり、刑法では学者間のどうでもよいパズルのような議論を知らなければ解けないような仕組みである。こんな程度の低い問題を解かなければならない受験生こそ、いい迷惑というものである。出題側としては「わずか2%を合格者として振り分けるためには、他に手段がない」などと言い訳をするのであろうが、こうした瑣末な知識ばかりを詰め込むことを余儀なくされた受験生が、実社会に出て一体、何の役に立つというのであろうか。本人も困惑するばかりであろう。

 その一方で、こういう趣味的な法律知識とは無関係に、実社会での専門的な法律知識の需要は、ますます大きくなっている。渉外法務、企業法務はいうに及ばず、最近では、医療訴訟、交通事故訴訟、建築物訴訟など、特殊な専門知識が必要不可欠となっている分野が多い。ところが、こういう古の科挙的な法律受験知識しか備えていない受験生が法曹となるのであるから、裁判官はもちろん弁護士も、このような理科的な素養や専門知識が元々ない人たちばかりとなる。それであるから、専門技術用語が飛び交う訴訟では裁く側も裁かれる側も内容がさっぱりわからず、いずれの訴訟は遅れに遅れてしまうこことなり、正しい判断がされているかどうかは神のみぞ知るという状況となる。

2.理想と現実との落差

 したがって、以上のような問題を一気に片付けようと、2年前の司法制度改革の一環として大いに議論がされ、その結果、法科大学院が出来上がることとなったわけである(注1)。その骨子は、「一年で生み出す法曹の数は3,000人とし、法科大学院卒業生の8割は合格する仕組みとする」というものである。これを聞くと、まさに理想が実現したもののごとくであるが、私にいわせれば関係者間の思惑が交錯し、その結果としていかにも調整不足となったために、そのしわ寄せが受験生に及んでいるのが真相ではあるまいか。また、特に今春の開校を前にしたここしばらくの大学側の動きには、目に余るというか、教育機関として恥ずかしくないのかといいたくなるほどなのである。

 まず、「法科大学院卒業生の8割は合格する」という命題は、早々に崩れてしまった。というのは、法科大学院の設置申請が相次いだ結果、文部科学省側の「もともと20校程度を予定していた」という思惑は見事に外れて、実際には何と66校にも及び、その定員合計は、5,430人となってしまった(注2)。その一方で新司法試験の定員は、1,500人というのである。「最初から3,000人ではなかったのか」と問うと、「いやいや、それは将来の平成22年の話だ」などといわれる。そうすると、しばらくはこの定員が維持されるとして、単純に計算すると、合格率は平均でわずか25%である。ただし、もう少し詳細にみていくと、法科大学院の中でも既修者の2年コースと未修者の3年コースとがある。したがって、たぶん最初の年は、2年コースを卒業する人がおそらく約3,500人いて、それが1,500人の枠を争うのであるから、合格率は約40%強ということになる。まあまあの数字であるが、第二年目となると前年の不合格者2,000人に前年の3年コースの2,000人と、その年の2年コースの3,500人とが受験するのであるから、合格率は一挙に何と約20%へと激減してしまう。これでは、騙されたと思う受験生が多いのではないか。それではいっそのこと、3,000人という司法試験の定員を、いま直ちに増やせばすむはずであるが、それにはおそらく、弁護士界から強い反対が出るであろう。新規参入者が少ないほど、ギルド社会内の分け前が多くなるからである(注3)

 そもそも、これまでの受験生は、予備校に通い、それに1年につき100万円ほど投資をすれば、1〜3年で合格できたのである。合格したら前述のように税金で給与か支給されるので、それまでの苦労は報われるし、学部卒業後わずか1年で合格できればそれだけ予備校費用が節約できるという仕組みであった。ところがこれからは、学部卒業後、短くて2年、長くて3年は法科大学院に通わなくてはならない。私立大学では授業料だけで1年150万円というところが多い。2年としても、入学金その他を加えれば、生活費を除く学費だけでも最低400万円は必要である。しかも、それに加えて司法研修所にまた1年半も通わなくてはいけない。法科大学院では実務教育をすることになってるというのに、である。こういうものは、法科大学院でしっかりと教育すれば、司法研修所などは、少なくとも弁護士となる者には不要であろう。

(注1) 司法制度改革推進計画(抜粋)

  「司法を担う法曹に必要な資質として、豊かな人間性や感受性、幅広い教養と専門的な法律知識、柔軟な思考力、説得・交渉の能力等に加えて、社会や人間関係に対する洞察力、人権感覚、先端的法分野や外国法の知見、国際的視野と語学力、職業倫理等が広く求められることを踏まえ、法曹養成に特化した教育を行う法科大学院を中核とし、法学教育、司法試験、司法修習を有機的に連携させた新たな法曹養成制度を整備する」
(平成14年3月19日閣議決定)


(注2) 平成16年度の法科大学院の定員

 平成15年の申請数は72校の5,950人に及んだが、11月時点の認可校の定員合計は5,430人。ただし、保留2校
(専修大学が定員減で再申請中)の定員160人を合わせれば、5,590人となる。

 平成18年度2006年度)の全国の法科大学院数は、国立23校、公立2校、私立49校の計74校で、その入学定員は国立1,760人、公立140人、私立3,925人の合計5,825人。うち、実際の入学者は5,544人で、既修2,063人及び未修3,481人であると公表されている
(文部科学省「高等教育局専門教育課専門職大学院室・大学振興課大学入試室」資料 )

(注3) 友人の弁護士の言

 弁護士会の重要役職をこなした私の友人の弁護士は、いみじくもこう言っていた。
「毎年の合格者が3,000人になるのは、平成22年だって? 結構けっこう。少なくとも自分が現役の間に影響受けることはないからね」。まあ、こんなところが今の弁護士会の役職者の本音だろう。



3.弁護士界や財務省からの観点

 なお、財務省などからは、司法研修所の給与はやめて、貸与制にせよとの声があがっている。弁護士など民間に進む法曹のためになぜ国家が給与を支給するのか、などという根本問題がそこにある。正しい方向と思うが、これについては特に弁護士界に異論があると聞く。その理由は法曹一元に理念に反するというものであるが、たとえ司法研修を判検事になる者に限っても、別にその理念に反するわけではあるまい。最初から弁護士となり、その中から将来、判検事となりたいという者がいれば、司法研修を受けてもらうか、あるいは認定試験でもすれば、それでよいというだけのことであろう。むしろ、この財政緊迫化の折に、3,000人にも膨れ上がる司法研修生のすべてに、給与を支給すべきと考えること自体が非現実的ではないか。

 それにまた、この問題のしわ寄せは、受験生にも及んでいる。つまり、従来はうまくいけば、高々100万円程度の予備校費ですんでいたものが、法科大学院のために2年の余計な時間と前述のとおり最低400万円はかかるようになってしまった。家計に余裕のない人は、全額を借金でまかなうことになろう。それにまた、司法研修所で貸与される額も借金として新たに加わる。いくらかは知らないが仮にそれを400万円とすれば、その修了時点で合計800万円もの借金を背負って、弁護士という人生の出発点に立たなければならない。これは、悲劇といって差し支えないだろう。その借金分を取り返すために無理をして、違法なこと、危ないことに手を出す悪徳弁護士が出なければよいがと思っている次第である。

 いずれにせよ、こういうところが、この法科大学院構想の未熟なところである。立案の過程で、関係方面の主張をひとつにとりまとめるような、しっかりとした調整が行われなかったからこそ、こういう問題があちこちで噴出してくるのである。これは、弁護士界、財務省から見た未調整の部分であるが、これを法学界からみれば、また別の問題点が透けて見えてくる。

4.法学界からの観点

 この法科大学院構想が示されてから、設置を名乗り出た大学の数は、当初のアンケート段階では77校あり、それらの定員を合計すれば推計で1万人にも及ぶとされた。ところが実際に2004年から開設するとして申請をしてきたのが72校で、うち66校が認可された。その定員は、5,430人である。加えて、筑波大学など来年以降も新設されるところもあろうから、たとえ司法試験の定員が3,000人となっても、合格率8割などは、夢のまた夢となる。

 ところで、法科大学院には、少人数教育が求められていることから、それなりの専任教授陣と建物が必要であるので、多大な経費がかかる。にもかかわらず、これだけの大学が手を上げてきたのはなぜか。ある私大の学長に尋ねてみた。答えはいとも簡単で、「卒業生の4割も法曹になれるということは、従来の法学部にはなかったすばらしい魅力である。しかも、他学部の者も入学できるというのであるから、単に法学部のみならず、全学にわたる波及効果がある。少子時代を迎えて、これからは法科大学院のない大学は確実に淘汰されていく」ということであった。

 まさに、そういうことであろう。であるから、こういっては失礼ながら、これまで司法試験に合格した実績などほとんどない大学からも、続々と手が上がったのである。法務行政の専門家の見方では、こういうところは、合格実績が上がらないので、そのうち自然に淘汰されていくだろうとのこと。しかし、かわいそうなのは受験生で、合格率8割という触れ込みに騙されて、法科大学院にいざ入ってみても、やっぱり受からなかったという人が、初年度で6割、次年度で8割はいるだろうという残酷な現実である。したがって、各法科大学院は、特に実績のない大学であればあるほど、新司法試験に合格させることが切実な経営課題となる。そして中には、司法試験予備校と提携していることを売り物にするところまで現れたのである。

 法科大学院の設置には、文部科学省の認可が必要である。昨年5月に72の各校は一斉に認可申請をして、秋口まで認可が検討されてきた。その結果、昨年11月21日に設置認可が発表されたのであるが、認可が66校、そのうち問題点の指摘にとどまって認可されたものが53校、認可の保留が2校(大阪大学、専修大学)、不認可が4校(愛知学院大学、北陸大学、龍谷大学、青森大学)ということになった。条件付きの中には教授が高齢であるので早急に措置すべしという笑うに笑えないものがあった。ちなみに、保留の2校は専任教授の数が足りないという理由であった。

 ここまではよいとして、問題は不認可とされた4校である。たとえば龍谷大学は、司法試験予備校である伊藤塾と提携してそのカリキュラムに沿って教えるということを堂々とホームページで公開していたが、秋口になって「当大学院は伊藤塾とは関係ない」などというホームページに変わったので、不思議に思っていた。そうしたところ、案の定11月末の設置認可では、不認可となっていた。理由は、司法試験予備校との関係が払拭されていないというものである。もともと、今回の法科大学院構想は、司法試験予備校の排除がひとつの目的であったともいえるので、そういう意味では当然の判断との見方もある一方で、「酷ではないか。あまりにも正直すぎただけだ」という見方もあるのである。事実、認可を受けた法科大学院の中には、予備校並みに教えるカリキュラムがちゃんと用意されている。これでは、正直者がバカをみたという批判が案外、的を射ているのかもしれない。こういう理由ではねつけるより、教育の内容で審査すべきであると思うが、いかがか。

 ところで、その昨年11月末の設置認可を受けて、正式認可を受けた法科大学院では、12月から次々に募集が行われた。それによると、国立大学は、今年の1月25日(日)が試験日で、授業料は80万円となっている。私立大学は千差万別であり、1月11日(日)から3月にかけてが試験日で、授業料は120万円から200万円、有力といわれるところでは150万円というものが多い(これらは、私学助成予算が確定すれば、ひとり当たり10万円程度は下げられると予想されている)。

 しかし、ホームページを見ている限り、これが最高学府か驚くような学費競争があったり、妙な奨学金がはやったり、入学試験の募集要綱がおかしかったりで、てんやわんやの騒ぎなのである。しかも、見ればみるほど、医学部入試的ないかがわしさがみてとれところもある思うのは、私だけであろうか。

 たとえば、早稲田大学の学費は、当初は200万円ということであった。それが11月のある日、検討した結果これを下げるということで、120万円にした。そうすると今度は慶応大学が、出願者が集まらなくてあわてたのであろうか、願書の提出期間がもう始まっているというのに197万円を120万円へ引き下げる特別奨学金を全員に出す、成績上位の者には全額免除するということにして、これを理由に出願期間を延ばしてしまったのである。考えれば、とても妙な理由である。出願期間の延長と何の関係があるのか。

 それから日本大学の奨学金も、眉をひそめたくなるものである。募集人員は100名であり、入学金は100万円、授業料は年200万円である。そこまでは普通である。ところが、このうち成績上位の40名は授業料をただにするというのである。さきほど、初年度の合格率はおそらく40%程度と書いたが、何となくその数値と合致しているので(もちろん2年コースと3年コースとの区別はあるのが、それをとりあえず捨象するとして)、納得してしまった。しかし、かわいそうなのは受験生で、残りの6割は、新司法試験に合格しないし他人の授業料を負担するしで、踏んだりけったりではないだろうか。こういう私学の医学部的といおうか予備校的経営をしようしているところを認可して、正直に私は予備校ですと言ったところを不認可にするとは、首尾一貫していないと思うのは私だけではないだろう。

 また、国立では、大阪大学が保留になったのは解せないところである。大きな事務的ミスだろう。それに、一橋大学の英語の試験成績をめぐるドタバタもいただけない。これは、一橋大学がTOEICやTOEFLの成績証明書を求めているところから発した問題である。それだけなら、東京大学や京都大学、慶応大学もやっていて珍しくはないが、他の大学が受験者に各試験機関から送られてくる成績のコピーでよいとしているのに、各試験機関から大学に直送することを求め、しかもそれが12月26日までの到着厳守としていたからである。たとえばTOEICの11月試験を受けた人は、試験機関からの直送が間に合わないと、大騒ぎになった。それからTOEFLを受けた人も、試験機関がニューヨークにあるため、昨今のアメリカの郵便事情ではなかなか思うとおりに着かないことが多い。というわけで、不可能だとの抗議が殺到したのが12月初中旬である。それに対して大学側が、12月19日付けで「他の受験生の不公平となるから、間に合わなかったのは仕方がない」とホームページで公告したものだから騒ぎが一層大きくなり、結局ここも、出願期間が1月に延期される始末となった。それなら、最初からコピーでよいとしておけばよかったのではないか。

 ちなみに、試験機関からの直送を求めるのは受験生が改ざんすることを防ぐためにアメリカのロースクールで行われているプラクティスである。しかしアメリカの場合は、そもそも出願期間が3ヶ月以上もある上に、その直送が到着したかどうかを知らせる仕組みがあるので問題になることはあまりない。したがってこれも、あまり事情を知らないままに、アメリカのロースクールの物まねをしようとしたツケだと思われる。

 また、これは妙だと関係者の注目を集めたのは、京都大学である。12月22日(月)が出願の締め切りだというのに、その直前のホームページ上に、19日(金)午後5時現在の出願者数が出ていたのである。それによると、2年コースは、140名の募集定員に対して、出願者数は167名であるという。「このままではほぼ全員合格ではないか」という数字である。そんなに不人気だったのであろうか(注4)。少なくとも大学側は気をもんだだろう。そういえば、東京大学の説明会の説明(平成15年7月14日)の中にも妙な部分があった。「単に新司法試験合格を目指すためのものではありません。この目的に賛同される志の高い方々が多数入学されることを期待しております。・・・法科大学院に入学する以上は、新しい専門職学位課程を最後まで履修して修了されることを望みます。実際問題としても、予習・復習に十分な時間をかける必要がありますので、法科大学院在学中に旧来型司法試験を受験することは困難です」というものである。それを見て「やっぱり大学当局は、法科大学院に入っても従来通り予備校通いをする学生を予想しているのではないか」と思ったのである。

 しかしながら一部の公立も、ドタバタの感がある。東京都立大学(定員65名)のケースでは、大学院本体は認可されたものの、1月になって教授が4人も辞職してしまった。このため民法では専任教員が1人もいなくなってしまい、入試を延期せざるをえなくなったのである。既存の都立4大学の再編に伴う石原知事のトップダウンの手法に反発したものという観測があるので、法科大学院自体の問題ではないようであるが、それにしてもいただけない騒ぎである。

 受験生と法科大学院の混乱は、出願の締め切りを過ぎてまだ続いている。たとえば成蹊大学は、定員がわずか50人の小規模な法科大学院を予定しているが、そのたった50人の枠に、1,520名もの出願者が押し寄せてきてしまった。大学側は、「出願者数は予想をはるかに越えるもの」といいつつ、面接試験要員の大幅拡充を試みたりして大混乱のようである。そのホームページを見ても、いったい何を言いたいのか、よくわからないほどのカオス状態となっている。

 こうした騒ぎの一方で、法科大学院が、法学部の先生に与えたインパクトも相当なものである。言葉は悪いが、あちこちで引き抜きが行われた。それに実務家教員と称し、私の知人の弁護士でも失礼ながら「あんな人が学生に教えられるのだろうか」と思ってしまうような人が某有名私大法科大学院の教授になったりして、小首をかしげたこともあった。しかしまあ総じて、先生方の活性化策にはなったと思いたい。同様の仕組みが、公認会計士や弁理士などの「(さむらい)」世界に広がれば、それぞれのギルド的社会も、少しは開放的になるかもしれない。

(注4) 京都大学の最終応募者数は、1,974人となった(10倍)。

5.二つの解決策

 かくして法科大学院構想は、その他もろもろ挙げればきりがないほどの様々なエピソードが積み重なって、今年4月の開校を目指して実現に近づいているが、各関係者とも、もう少し学生のためを思って、現在の制度設計を抜本的に改めるべきではないだろうか。法科大学院の質の向上はもちろんのこととして、さしずめ、

第一に  司法試験合格者を3,000人といわず、5,000人程度に大幅増加させること
第二に  弁護士には司法研修を受ける義務を免除すること

 この二つが鍵となる。早急にこれらの策を講じないと、数多くの前途有為な人材が、卒業後に途方にくれることとなる。


(平成16年1月12日著、同年5月26日追記)


6−(1) 法科大学院の大風呂敷

 その後、こうした事情は、法科大学院の学生たちにも、徐々に知られるようになり、平成16年5月24日の日本経済新聞朝刊には、「法科大学院の大風呂敷」との見出しで、次のような記事が掲載された。

 『平均合格率を推計すると、2006年終了をめざす二年コースには、今年は2,350人が入った。落第者や現行試験の合格者も出るため、実際は2,000人が受験するとしよう。大学院関係者の読みでは、合格者枠は1,300人。その場合は合格率は65%に達する。

 しかし、その後の見通しは厳しい。落ちて再挑戦する人も出るためだ。「17%にまで下落するかも」と、辰巳法律研究所(後藤守男所長)は予測する。一度落ちても三回まで受験できるため、年間受験者が17,000人程度に達する場合も考えられる。2011年以降も合格者数が3,000人なら、合格率は一割台後半に落ちる計算だ。そもそも七〜八割合格という話は、法科大学院が全国で20〜30校しかできないことを前提とした数字(大宮法科大学院大学 宮沢節生副学長)。各大学が一斉に設置に動いたため、開校数が当初予定の2〜3倍にふくらみ、誤算が生じた。合格率が低いと評判が落ちるから、学力の低い学生をとることを見送り、大幅な定員割れに陥っている大学院もある。

 関西のある法科大学院が開いたシンポ。司法試験改革にかかわった人たちがパネリストなどとして参加した。その場で学生たちから合格率への不満が噴き出した。「詐欺だと言わんばかりだった」。政府関係者は振り返る。・・・

 大学には水面下で3,000人程度への増員を求める動きがある。しかし、弁護士界には反対論がくすぶり、今後も曲折が予想される。喜んでいるのは「大学院入試対策で売り上げが大幅増」という試験予備校だけかもしれない。
 本来、一定の能力をみるはずの司法試験。しかし、改革後も定員制を維持し、中途半端な競争が残った(山口二郎北大教授)のが現状なのだ(編集委員 三宅伸吾)。』


6−(2) 早稲田大学法科大学院

 [1] 「2004年度入学者選抜試験・最終合格者の概要等」と題して、2月23日付けで早稲田大学のホームページに概要、次のようなデータが掲載された。

○志願者数 4,557名
○第一次選考(書類審査)合格者数 788名
○第二次選考(面接試験)受験者数 764名
○最終合格者数 312名
 【合格者の概要】
   ◆性別 男性:183名  女性:129名
   ◆平均年齢 27.0歳 (21歳 〜 58歳 )
   ◆適性試験 平均点 84.3点 (最高点100点、最低点58点)                      ※大学入試センターを採用
   ◆属性 学部学生 116名   (37.2%)
       社 会 人 111名 (35.6%)
       大学院生他 85名   (27.2%)
   ◆出身大学
     早稲田大学  135名、
     東京大学    59名、
     慶應義塾大学  25名、
     京都大学    14名、
     一橋大学    14名、
     国際基督教大学  9名、
     神戸大学     4名、
     中央大学     4名
     3名: 大阪大学、九州大学、東京都立大学、東北大学、
        名古屋大学
     2名: 青山学院大学、上智大学、電気通信大学、
        同志社大学、横浜国立大学、立命館大学
     1名: お茶の水女子大学、学習院大学、神奈川大学、
        金沢大学、関西学院大学、京都工芸繊維大学、
        創価大学、千葉大学、津田塾大学、日本医科大学、
        広島大学、北海道大学、明治大学、名城大学、
        琉球大学、流通経済大学、立教大学
     その他 4名

   ◆職業・経歴等 医師、公認会計士、弁理士、薬剤師、国際連合、
      外国弁護士、民間企業、官公庁、自治体、法律事務所、
      マスコミ、主婦、主夫等 その他多数

  
※ 法学既修者認定試験    受験者     77名
               内 法学既修者認定 27名


[2] これを見て、「よく志願者を 4,557名も集めたなぁとか、出身大学は本当にばらばらだけれど、やはり常連校ばかりだとか、 職業も従来の感覚だとこれらはまったく法律家とは関係ないなぁそれにしても『主夫』というのは面白いなぁ」というのが、週刊誌的な見方である。そういう意味では、司法を目指す者の多様化を図るという今回の司法改革の趣旨は見事に生かされて、誠に結構なことばかりである。

 しかし、私が注目したのは、一番最後の行である。「なになに、合格者数 312名のうち、法学既修者認定試験の受験者はたった77名で、しかも実際に認定されたのは、わずかに27名だって・・・? 一割にも満たないではないか」。 これでは、最初の新司法試験が行われる年には、卒業生はたかだか27名しかいないので、それだけしか受験できないことを意味する。

 (2006年の早稲田大学の発表では2004年の認定試験に合格したのは20名である。その後、そのうち1名は旧司法試験に合格したので、結果的には、新司法試験の受験者数は19名となり、最終的に12名が合格したとのこと。この発表文は、「法学既修者に認定される者は、短期間の専門職法学教育で優れた法曹となる資質と確かな法学的知識を持っていることが必要である」、「これまで旧司法試験において毎年3桁の合格者を出し、昨年228人と旧司法試験合格者が最多だった早稲田大学において、新司法試験を受けたのが19人だけであること、新司法試験合格者が12名であったことは、社会一般からの注目を集めるところであろうかと思いますが、本研究科が目標とする21世紀社会をリードする質の高い法律家の養成、また、そのための本研究科の制度設計の観点から見れば、驚くべきことではない」としているが、これは新司法試験の合格者が相当数存在し、かつその合格率が8割程度であってはじめて通じる理想論である。現実の合格率が2006年で48%、2007年で約30%台がせいぜいだろうと想定されていることからすれば、いささか余裕があり過ぎるのではないだろうか。)

 たとえば慶応大学法科大学院など他の大多数の法科大学院は、そもそも入学時に既修者と未修者とを分けて入学させたので、こういう問題は起きない。入学時から既に既修者は決まっているからである。それに私にいわせれば、これらの大多数の未修者は、それなりに一生懸命勉強をすると思うが、やはり手馴れた既修者には、かなうまい。残酷なようだが、理科系の勉強ばかりをしてきた人が、山ほどあるあのような法律の論理を、そう簡単に頭に叩き込むことができるはずもないと思うが、いかがであろうか。もちろん、3年も準備期間はあるし、中にはそうでない方もたくさんおられよう。だが大数を観察すると、私のように考えることも一理あると思われる。そういう意味では、ひょっとすると新司法試験が始まったとたん、未修者を抱えた法科大学院は、大量に不合格者を出す恐れが相当あるに違いない。しかも、私が先に述べたように、確かに第一年目の新司法試験の合格率はよくて4割程度であるから、まあ上位校出身の受験生にとってはそれなりに何とかなって、楽勝かもしれない。しかし、第二年目以降の新司法試験では、前年の不合格者が累積していくので、それだけ合格率は大きく下がっていくことは、間違いない。とりわけ最初の未修者が受験する3年後には、合格率はせいぜい3割台の維持がやっとと推定される。

 早稲田大学法科大学院が発足して入学したその年の卒業生の大半は、そういう合格率の低い時期にわざわざ受験せざるを得ないことになってしまうのである。合格率の高い前年に受けられる卒業生は、たかだか27名しかいない。「大丈夫か、現実に出来上がった法科大学院制度と比べて、当初の理想をあまりにも追い求めすぎているのではないか」というのが、私の率直な感想である。もちろん、こうした予想を覆して、早稲田大学法科大学院第二回卒業生の諸君が善戦されることを望んでいる。その3年後を注目したい。

7−(1) 素案の検討と反発

 さて、平成16年も残り少なくなった頃、新司法試験と在来型司法試験との合格者枠が法務省において検討されていたが、ついにその素案が報道されるに至った。それによると、新司法試験の合格率はたかだか3割程度ということが判明し、法科大学院生の中には「詐欺だ」という者もいるほど、大騒ぎとなった。案の定というところである。これについて、次のような有志の声明が出された。

新旧司法試験合格者数に関する声明

  東日本法科大学院研究科長等懇談会有志(2004年11月20日)

 最近の新聞報道によると、10月7日の司法試験委員会において、新旧司法試験合格者数に関する法務省素案が示された。同素案は、2006年度の新旧司法試験の合格者数を各800名、計1600名にとどめ、2007年度については新1600名、旧400名とする。( 略 )

 法科大学院を中心とした法曹養成システムに切り替えるという制度改革の理念を十分に反映しておらず、法科大学院制度の健全な発展を損なう危険性の高いものであり、到底賛同できない。( 略 )

 前記素案をもとにシミュレーションすると、2006年度における新司法試験の合格率は約34%、2007年度以降は約20%になるという。しかし、これでは、上記の厳しい学修に才能ある人材を引き付けるには余りにもリスクが大きく、新たな法曹養成制度の中核と位置付けられた法科大学院制度を崩壊させかねない。( 略 )

7−(2) 合格者数の落着

 法科大学院生が、国会の議員会館まで押しかけて、抗議運動を展開したということも報道されたが、その結果、法務省側も再考したようで、結局下記のとおり、初年度の新司法試験に割り当てる人数は、900ないし1100人ということになった。ちなみに、最初の卒業生が出る平成18年は、同16年に入学した2年コースの学生約2300人のうち、2000人程度が受験するものと思われる。初年度の合格率は、5割前後ということになる。


(参 考) 併行実施期間中の新旧司法試験合格者数について

       司法試験委員会(平成17年2月28日)


[4] 平成18年と同19年における合格者数

 (1) 新司法試験

 新司法試験については,前述のとおり不確定要素によるところが大きいことから,その合格者の予定数は相当程度幅のある数字にならざるを得ないが,法科大学院への誘導効果や法科大学院制度を社会的に定着させることの重要性を特に勘案して,平成18年の合格者の概数は,900人ないし1,100人程度を一応の目安とするのが適当と考える。また,同19年については,同18年の試験結果等とも関連して更に不確定要素が増えるが,受験者数の激増が予想されることに配意して,同18年の合格者についての上記概数の2倍程度の人数を一応の目安とするのが適当と考える。

 (2) 旧司法試験

 旧司法試験の合格者の概数については,法曹養成検討会における意見の整理を尊重して,平成18年は500人ないし600人程度を,同19年は300人程度をそれぞれ一応の目安とするのが適当と考える。さらに,旧司法試験が新制度導入に伴う移行措置として実施されることを考慮すれば,同20年以降の合格者数は,同19年の合格者数から更に減少させたとしても,受験者に不当な不利益を与えるものではない。

[5] 法科大学院に期待するもの

 法科大学院は,その第一期校が平成16年4月に創設されたばかりであり,新しい法曹養成制度の理念を実現するため,現在,各校において様々な努力と工夫が積み重ねられているものと承知している。当委員会としては,法科大学院が,21世紀の我が国社会において期待される役割を十全に果たすことのできる優れた資質と能力を備えた法曹を育成する責務を担うものであると理解しており,そのためには,改革審意見が指摘しているとおり,法科大学院において,厳格な成績評価と修了認定が実施されることが不可欠の前提であり,質の高いプロセスとしての法曹教育が適切に実施される必要がある。

 当委員会としては,各法科大学院が,改革審意見に示された理念に従って,質の高い法曹を養成されることを強く期待するとともに,司法試験の実施においても,プロセスによる法曹養成制度の健全な発展の一翼を担っていく考えである。



8.司法修習給費制の廃止

 わが国では、司法試験に合格した後、司法修習を終了しなければならないものとされ、その間、国から給与を支給する給費制が採用されてきた。ところが、平成16年12月10日に交付された裁判所法の一部改正により、こうした給費制を廃止して修習資金の貸与制を導入することとなった。新しい貸与制は、司法修習生の申請により、無利息で資金を貸与するもので、家族や住居などの必要に応じて、数段階の貸与月額が設定され、修習終了後数年間の据置期間を置いて、その後10年間の年賦による均等返還が予定されている。

 ちなみに、その施行時期については、当初案では、法科大学院を修了して新司法試験に合格した者から(施行は平成18年11月より)ということになっていたが、衆議院での修正によって、施行期日は平成22年11月1日からとされた。

 ところで、この貸与費用、高々おそらく500万円くらいと思われるが、私の知り合いの弁護士事務所では、「こんなもの、入所の時点でこちらから払ってあげますよ。良い弁護士を確保するなら、安いものだ。」と言っていた。太っ腹で、なかなかよろしい。もちろん、こういうケースは都内でもごく一握りの羽振りの良い著名弁護士事務所の話であって、大多数の弁護士事務所では、イソ弁をしようとしても、そんな夢のようなことはないと思われるので、念のため。ちなみに、その太っ腹の事務所では、出身大学と若さを基準に選ぶらしい。

(平成17年5月18日記)


 これは、平成17年5月30日の産経新聞の記事の見出しである。今年の春の入学の状況は、全体の74校(総定員5,825名)のうちその6割に当たる45校で定員割れとなった。平均競争率も、昨年の13.0倍から、7.2倍へと低下した。適性試験は二年連続して前年を2〜3割下回り、こちらも厳しい状況が続いている。
 この記事によれば、7割が法曹になれると聞いて仕事を辞めて進学したのに・・・」とか、「貯金をはたいて授業料を捻出しているのに、三年で合格しなかったら底をつく・・・」などという嘆き節が聞かれているらしい。
 それも当然であろう。何しろ、上記1.で述べたような歴史的失敗作なのだから。いずれにせよ今後の展開を見通すと、法曹関係者は、文部科学省が法科大学院の定員管理を厳格に行わなかったのが悪いと言い、法科大学院や文部科学省側は新司法試験の合格者数を増やさない法務省側が悪いと主張して、相互に責任のなすりつけをするのではなかろうか。しかし、そんなことをやり始めても、何の解決にもならない。大事なことは、7割も法曹になれると信じて仕事を辞め、貯金を取り崩して勉学に励んでいる若者を、いかにして救って差し上げるかである。ただちに、司法修習など廃止して、司法試験合格者を数千人レベルへと引き上げるべきであろう。

(注) 法科大学院適性試験の出願者数
        大学入試センター        日弁連法務研究財団
 平成18年 18,450人(△ 7%)  12,433人(+16%)
 平成17年 19,859人(△17%)  10,725人(△23%)
 平成16年 24,036人(△23%)  13,993人(△30%)
 平成15年 31,301人        20,043人 

(平成17年6月31日記)


10.新司法試験の結果
祝田橋庁舎での発表風景

 10−(1)第1回新司法試験の全容

 法科大学院の第一回の卒業生は、平成18年3月に終了した既修者コース(2年間)の2200人程度である。このうちの2125人が、5月19日(金)、20日(土)、22日(月)、23日(火)の四日間に実施された第一回新司法試験を受験した。受験者に聞くと、問題の頁数が多くて閉口したとのことであったが、それを除けば従来の司法試験とあまり変わるところがなかったとのこと。もっとも、特に憲法や民法などは、問題が創作的というか独創的で、確かにこれまでの試験のパターンを覚えるだけでは対応できないだろうと語っていた。

 その試験の結果は、9月21日(木)に発表された。受験者2087人のうちから1009人の合格者で、合格率は48%となる。途中で法務省は、900人〜1100人の範囲内で合格者数を決めるといっていたので、1000人というのは大方の予想どおりの数である。合格者数の多い順に見ていくと、中央大学が131人で、予想以上に健闘した。もっとも、受験者数が多いので、合格率は55%と、ほぼ真ん中に近い。次は東京大学で、120人、合格率71%。まあこのくらいかというところである。第三位は慶応大学で、104人、63%で、ここまでが合格者が100人を超えている。

 第四位は京都大学で、87人、67%。東京大学をやや下回る合格率というのも、何だか奥ゆかしい。驚いたのが第五位の一橋大学で、44人、83%と、合格率の高さが光る。学生と先生が相当、頑張ったものとみえる。第六位は明治大学で43人、45%である。ここも、明治期の法律学校の意地で健闘するのかと思われたが、合格率は平均以下という残念な結果となった。ただ、学生の三分の一は東大卒業生だという。言葉は悪いが、外人部隊が頑張ったのかもしれない。そのうち、ここの先生をしている友達に会ったら、聞いてみたいと思っている。

 これからは、関西系大学が並ぶ。第七位は神戸大学、40人、65%と、よくやった部類に入る。ただし、私立大学は元気がない。同志社大学、35人、40%。関西学院大学、28人、44%。立命館大学、27人、26%である。

 これ以降、各地の国立大学を拾っていくと、北海道大学、26人、70%。東北大学、20人、48%。名古屋大学、17人、61%。大阪大学、10人、48%、九州大学、7人、54%である。良い成績を上げた北海道大学を除いて、かろうじて平均の合格率であるところで面目を保っているといえようか。

 面白いのが早稲田大学で、19人の受験者、12人の合格者で、合格率は63%であるが、この合格率は、驚いたことに、慶応大学と同率なのである。未修と既修の区別なしに入学させたツケでこのような少人数の受験者となったのであるが、それにしても、合格率まで一致するとは思わなかった。これも、伝統の早慶戦というわけだろうか。

 その他、目立つところを見ると、日本大学が54人も受験させて、わずか7人、合格率13%にとどまっている。入学金100万円、授業料年200万円もとり、かつ成績上位の40名は授業料を無料にしていたはずであったが、これなら授業料免除の甲斐がなかったではないか。その反対に、皆びっくりしたのは、山梨学院大学である。ここは駅伝で有名な大学という印象しかなかったが、今回は6人、55%という平均以上の成績を上げた。地方のしかも実績のなかった私立というハンディを跳ね返しての成績であるから、特筆に価する。確かこの大学の法科大学院の入学試験の期日は、一番最後ではなかったかと記憶している。そうであるならば、残り物にも福ありというところか。いや、これも失礼な言い方だったかもしれないが、正直な感想である。

 あとは、これは何だというところばかりである。大量受験をさせて散々の成績が、駿河台大学、2人、10%。関東学院大学、1人、7%。駒沢大学、1人、6%など。そればかりか、ひとりも受かっていないところは、京都産業大学、神戸学院大学、東海大学、姫路独協大学である。こういうところは、学生に夢を見させるのもいいが、やや罪作りなのではあるまいか。いずれにせよ、合格率が2割程度に落ちる来年の第2回新司法試験が、これらの大学の存在をかけた戦いとなるだろう。

10−(2)これからの弁護士の道

 遅ればせながら、今年、第1回新司法試験に合格した皆さんには、心からお祝いを申し上げたい。皆さんは、旧司法試験合格組と常に比較される立場になると思うが、大学院卒の法務博士として、大きく胸を張り、強い自信を持って、仕事に邁進していってほしいものである。

 皆さんの将来に関することを申し上げたい。いささか驚いたことではあるが、東京の著名な大手法律事務所では、この合格発表前に既に、採用者の内定を終えている。それも、ほとんどが東大をはじめとする出身大学をまず見るらしい。それから面接を何段階か繰り返して内定するという長いプロセスを8月中には完了しているのである。その一方、司法研修所の採用関係書類はというと、この合格発表からわずか一週間内に出せというもので、それも、健康診断や写真や非登録証明書などを入手しなければならないから、相当バタバタすると思われる。その忙しい中に時間をみつけて東京の大手法律事務所を訪問したら、もう採用枠が一杯だったというわけなのである。このように見ていくと、地方在住の合格者は、なかなか大変だろうと思う。合格したと喜びにひたっていて出遅れると、ひどい目に遭うのである。

 しかし、皆さん新司法試験の第一期生が司法修習を終えるのは平成19年11月であるが、間の悪いことに、旧司法試験の第60期修習生約1500人が司法修習を終えるのは、そのわずか2ヵ月前の9月である。その時点では既に各法律事務所はこれら第60期修習生で一杯になっているから、皆さんの就職活動は、大変厳しいものになると予想される。これも、合格率の高かった反動かもしれないのは、皮肉というべきか。

 ところで今回の新司法試験から4年後に、合格者数が年間3000人を超える時代になるとされているが、そのような弁護士の大量供給時代に突入すると、弁護士の勤務形態が大いに変わってくると思われる。ひとつは、アメリカのローファームのように、弁護士数百人を擁する東京の大手法律事務所で、最先端の企業法務を行うものである。これがひとつの弁護士像とすると、その対極にあるのが地方の個人事務所で離婚、金銭貸借、刑事事件弁護などの細かい事件をコツコツと手がけるというものである。

 ところで、現在の司法関係の需要は年間6000億円といわれており、これを弁護士数2万人で単純に割ると一人当たりの売上げが年間3000万円となる。しかし、現実には、報酬の多い事件は一部の大手法律事務所に集中しているので、大都市の個人事務所ですら、年間2000万円を売り上げるのは大変と聞く。したがって、個人事務所の開設を選択するのは、収入は二の次で、使命感をもって細かい事件をたくさん担当することができる人に限られるということになろう。これからの弁護士界は、これら二つのスタイルに二極分化するのではないかと思われる。

 日本には、アメリカのような三倍賠償制度がないので、いったんそうした個人事務所開設の道を選ぶと、前途はなかなか多難であろう。ただし、一国一城の主であるから気楽といえばそのとおりであるし、加えて一件一件は細かいものの、人さまの大事な人生をお手伝いしているという使命感が心地よいという人なら、うってつけである。要は、気の持ちようではあるが、歳をとってくると、花より団子、つまり青臭い使命感より、多額の報酬にも目移りしがちなので、すべての人にお勧めすべき道ではない。

 以上の二つの道の選択に迷うのであれば、どこかの大企業の企業内弁護士として活躍するという第三の道がある。ただし、知的所有権や会社法、金融商品取引法、それにできれば税法に詳しくなくてはいけない。そのような人材は、さほど多くはないのというのも確かである。つまり、弁護士界も従来は護送船団であったが、これからの過当競争時代を迎えて、生きるための特技があれば、大いに助かるのである。新司法試験に合格したと喜ぶのはいいが、これからの道を自分で切り開く必要があるということを忘れてはならない。



第1回新司法試験の最終結果


第一回新司法試験合格者


 最終合格者数:1009人

【試 験 日】 平成18年5月19・20・22・23日実施、9月21日発表
【出願者数】 2137人(うち、法科大学院修了者:2125人)
【受験者数】 2091人(うち、全科目受験者2087人、途中欠席者4人)
【短答合格】 1684人(論文試験の受験者)
【合 格 率】 48.25%

【総合得点】
 最高点:1453.37点、最低点:593.62点、平均点:951.46点
【短答式試験得点】
 最高点:311点、最低点:93点、平均点:232.9点
【論文式試験得点】
 最高点:672.78点、最低点:183.18点、平均点:404.06点

【合格者内訳】
  最高年齢:58歳、最低年齢:23歳、平均年齢:28.87歳
  男性:781人(77.40%)、女性228人(22.60%)
  受験回数1回目:748人、2回目:247人、3回目:14人

                                                (単位: 人数)

出願者数 全科目受験者数 短答合格者数 最終合格者数 合格率(順位)
2125 2087 1684 1009 48%  
中央大学 240 239 212 131 55%(15)
東京大学 173 170 143 120 71%( 4)
慶應義塾大学 166 164 138 104 63%( 9)
京都大学 130 129 112 87 67%( 7)
一橋大学 53 53 51 44 83%( 2)
明治大学 97 95 86 43 45%(28)
神戸大学 62 62 58 40 65%( 8)
同志社大学 89 88 61 35 40%(34)
関西学院大学 65 64 48 28 44%(31)
10 立命館大学 104 102 69 27 26%(44)
11 北海道大学 38 37 35 26 70%( 5)
12 法政大学 66 61 46 23 38%(36)
13 東北大学 43 42 33 20 48%(26)
14 大阪市立大学 27 26 24 18 69%( 6)
15 関西大学 51 50 42 18 36%(37)
16 首都大学東京 39 39 34 17 44%(32)
16 上智大学 51 51 39 17 33%(39)
16 名古屋大学 28 28 24 17 61%(11)
19 千葉大学 27 26 23 15 58%(13)
19 学習院大学 49 49 31 15 31%(42)
21 愛知大学 19 18 17 13 72%( 3)
22 早稲田大学 19 19 17 12 63%(10)
23 成蹊大学 25 25 22 11 44%(30)
24 大阪大学 21 21 17 10 48%(26)
25 専修大学 52 51 37 18%(49)
26 創価大学 14 14 13 57%(14)
26 明治学院大学 18 18 14 44%(29)
28 日本大学 58 54 30 13%(51)
28 立教大学 19 18 13 39%(35)
28 九州大学 13 13 10 54%(17)
31 山梨学院大学 11 11 55%(16)
32 青山学院大学 14 14 10 36%(38)
32 横浜国立大学 10 10 50%(18)
32 新潟大学 10 10 50%(18)
32 南山大学 10 10 50%(18)
32 甲南大学 18 18 15 28%(43)
37 大東文化大学 20 19 21%(48)
37 東洋大学 24 24 17 17%(50)
37 神奈川大学 15 13 11 31%(41)
37 岡山大学 12 12 33%(39)
41 白鴎大学 50%(18)
41 近畿大学 50%(18)
41 広島大学 12 12 11 25%(45)
41 福岡大学 60%(12)
45 駿河台大学 22 21 10 10%(52)
45 名城大学 40%(33)
45 西南学院大学 50%(18)
48 國學院大学 50%(18)
48 駒澤大学 18 18 10 6%(54)
48 関東学院大学 17 15 11 7%(53)
48 金沢大学 50%(18)
48 島根大学 100%(1)
48 久留米大学 25%(45)
48 熊本大学 25%(45)
55 東海大学 0%(55)
55 京都産業大学 0%(55)
55 神戸学院大学 0%(55)
55 姫路獨協大学 0%(55)
北海学園大学 -- -- -- --% (--)
東北学院大学 -- -- -- --% (--)
大宮法科大学院大学 -- -- -- --% (--)
桐蔭横浜大学 -- -- -- --% (--)
静岡大学 -- -- -- --% (--)
信州大学 -- -- -- --% (--)
筑波大学 -- -- -- --% (--)
獨協大学 -- -- -- --% (--)
中京大学 -- -- -- --% (--)
愛知学院大学 -- -- -- --% (--)
龍谷大学 -- -- -- --% (--)
大阪学院大学 -- -- -- --% (--)
広島修道大学 -- -- -- --% (--)
四国ロースクール -- -- -- --% (--)
鹿児島大学 -- -- -- --% (--)
琉球大学 -- -- -- --% (--)

(出典)法務省の発表による。

(平成18年9月21日記)


11.
合格率低下と就職難

 第2回に当たる2007年(平成19年)の新司法試験は、5月に実施されることとなっているが、5,401人が出願した(2月4日法務省発表)。合格者の目安は1,800人〜2,200人とされるので、単純計算をすれば33%〜40%である。事前のシミュレーションでは20%程度ではないかといわれていたことに比べれば、まあまあの水準であるが、やはり第1回の合格率48%には至らない。出願者のうち大学院修了者は1076人、つまりこの大半は昨年の第1回試験で涙を飲んだ人である。そして修了見込み者は4,325人であり、既修者コースだけでなく未修者コースの人も参戦する最初の年となる。

 ところで平成19年は、法科大学院の第一回の卒業生で司法修習を終えた約1,000人の者が11月に社会に出る年であるが、実はその直前の9月にも旧司法試験に受かった1,500人が司法修習を終える年でもある。つまり、合計で2,500人もの司法修習修了者が出るのであるが、2月現在でそのうち500人の就職先が決まっていないという。日弁連は全会員に採用拡大を呼びかける要請文を送ったとのことである。
(平成19年2月8日記)

 法科大学院制度が始まって2回目の卒業者を出した平成19年春に、文部科学省は4月1日現在の法科大学院入学試験状況を発表した。それによると、全74校(募集人員5、815人)に対する志願者総数は、前年比4866人増の4万5207人、志願倍率は同0.9ポイント増の7.8倍であった。全体の志願倍率の内訳は、国立7.1倍、公立14.5倍、私立7.8倍であり、入学者5、713人のうち、社会人は約3割に相当する1、834人であった。

 ところが全体のこのような志願者増の一方で、法科大学院の選別が進み、定員割れの大学院が5割弱の36校も生じ、その総欠員数は102人となった。この定員割れの法科大学院は前年より3校増えて、国立8校、私立28校である。もっとも、これらのうち25校は、定員割れの学生数が1桁にとどまったとされる。いずれにせよ、学生側としては、合格率の高い法科大学院を選ぼうとし、また法科大学院の側としては、入学者の適性の選考を厳しくした結果であろうと考えられる。
(平成19年5月23日記)

 平成19(2007)年6月22日、司法試験委員会は、法科大学院の修了者を対象とした2008年以降の新旧司法試験合格者数の目安に関する見通しを発表した。ちなみに、2001年にまとめた司法制度改革審議会の意見書では、2010年の合格者数については3000人の達成を目指すとなっていた。

2008年 (新)2100〜2500人  (旧)200人
2009年 (新)2500〜2900人  (旧)100人
2010年 (新)2900〜3000人  (旧)100人未満

(平成19年6月22日記)


12. 司法試験問題漏洩疑惑


 2007年6月23日、司法試験及び法科大学院関係者の間に、衝撃的なニュースが伝わった。それは、新司法試験考査委員の植村栄治・慶應義塾教授(行政法)が、新司法試験の実施前に、同大学院の受験者を対象として勉強会を開催し、実際の試験問題と類似した内容の講義をしていたというものである。

 これについて、まず慶應義塾大学は、8月3日、「新司法試験考査委員を解任された慶應義塾大学大学院法務研究科教員に対する対応について」と題する次の声明を発表した。

 「 新司法試験考査委員を解任された慶應義塾大学大学院法務研究科・植村栄治教授に係る案件について、大学院法務研究科委員会から、本日、懲戒処分(解職)とすることが適当との上申書の提出を受けました。他方、植村教授からはすでに、深く反省しその責任をとるとして引責辞職の申し出がありました。
 慶應義塾としては、種々の点を勘案し、2007年8月3日付での本人の退職願を受理することといたしました。
 また、植村教授の新司法試験考査委員としての不適切な行為により、本日の法務省司法試験委員会による発表に至ったことについては、慶應義塾としてそれを厳粛に受けとめ、新司法試験への国民の皆様の信頼を損ねかねない事態を生じさせたことを、あらためて深くお詫び申し上げます。」

 次いで8月3日には、法務省大臣官房人事課が「平成19年新司法試験に対する措置について」という記者発表を行い、「植村栄治元考査委員(公法系・行政法)の不適正な行為が判明し、平成19年6月29日、植村元考査委員を解任したところですが、実施された平成19年新司法試験の取扱いをどのようにするかについての問題が残っていたところです。この問題については公法系の考査委員を中心に、検討をすすめてまいりましたが、昨日、司法試験委員会が行われ、平成19年新司法試験について、特段の措置をとらない旨全員一致で決定がなされました。決定に至る経過や内容については、以下のとおりです。なお、植村元考査委員の件以外についても、考査委員からの報告や文部科学省からの情報提供を受けるなどして、必要な事実確認を行いましたが、問題となるものは認められませんでした。」とした。そして、その根拠として、たとえば以下のように述べている。

「ア この問(編注、植村元考査委員が提供した情報に係る問)について、慶應義塾大学大学院法務研究科修了の受験者の正答率とその他の受験者の正答率を比較したところ、前者が後者を若干上回っているが、このような問題のない問でも、同じ位、あるいは、それ以上に正答率の差が認められる問が、他にも相当数あり、中には、その倍以上の差がついていた問もあったこと
 イ この問について、法科大学院ごとの正答率を見ても、慶応義塾大学大学院よりも、正答率の高い法科大学院が相当数あり、慶應義塾大学大学院のこの問についての正答率が不自然に高いとは見えないことなどからしても、植村元考査委員の情報提供が有利な結果をもたらしたとはいえないと判断された。」

 引き続き、9月1日、法科大学院協会は、「会員校に対する処分について」として、次のような発表を行った。

「 慶應義塾大学法科大学院の専任教員(後に退職)であり、平成19年度新司法試験考査委員でもあった植村栄冶氏が学生に対して考査委員としての公正さを欠く指導をしたと指摘された問題について、本協会理事会に設置した調査委員会(委員長・後藤昭常務理事)の調査に基づき、本日、理事会において審議しました。その結果、同氏には、次のような行為があったという結論に達しました。第1に、本年2月から3月の間、「勉強会」を主催して慶應義塾大学法科大学院の学生及び修了生に対して答案指導をした。第2に、同校出身の新司法試験受験者に対し、本年4月11日、6件の新判例について「判旨ポイント」をまとめた文書を電子メールで配信した。第3に、本年5月6日、新司法試験の行政法に関する論文試験答案を復元したものを同氏に送れば採点して返却することを予告する電子メールを同校出身の新司法試験受験者に配信した。植村氏によるこれらの行為は、新司法試験の公平性を疑わせるとともに、法科大学院全体の信用を損なうという重大な結果をもたらしました。法曹養成課程の中核を担うべきものと位置づけられ、その課程を修了した者だけが新司法試験を受験する資格を認められている法科大学院の役割に照らして、このような事態の発生を防げなかったことについて、同校には責任があるといわざるを得ません。
 以上の理由に拠り、本協会理事会は、本協会規約9条に基づいて、次の処分を決定しました。
2007年9月1日から1年間、慶應義塾の本協会会員としての資格を停止する。」

 本件については、既に8月初旬には、全国の弁護士及び大学教員らが、植村元考査委員を国家公務員法上の守秘義務違反の疑いで東京地方検察庁に告発状を提出した。また、それにとどまらず9月中旬の新司法試験の合格発表を控え、法科大学院関係者等からの批判は、試験の公平性に傷をつけられたにもかかわらず、それをおざなりな調査で済ませたと、法務省・司法試験委員会に向けられている。

 9月8日には、これら一連の慶應義塾大学法科大学院にかかわる事態をうけて、慶應義塾として以下のような再発防止策等を公表した。

(1)「教育指導上の不適正行為の防止のために法務研究科教員が遵守すべきガイドライン」を策定し、これを厳格に遵守すること
(2)「ガイドライン」の遵守を通じて不適正行為が再び起こることのない学内体制を早急に確立すること。それまでの間、法務研究科専任教員は新司法試験考査委員への就任を自粛するものとすること
(3)不適正行為が再び起こることのない学内体制の確立、「ガイドライン」の遵守に関する監督と指導、研究科委員会への意見の具申等の権限を持つ新たな委員会を設置すること
(4)第1項の「ガイドライン」遵守状況及び前項に基づく学内体制が正しく機能しているか否かを定期的に調査確認できるようにするため、外部委員をもって構成する委員会を設置し、この委員会が調査を行い、その結果を報告するものとすること

 ちなみに、(1)のガイドラインの内容は、ウェブからは明らかではないが、新聞報道によれば、今後同大学院では補習や答案練習など新司法試験の受験指導を一切行わないことを決め、併せて今後は「研究」を主体に行うこととしたとも伝えられている。しかし、そもそも実務を学ぶのが法科大学院の使命であったはずなのであるから、その使命からしても、また学生との関係からしても、今さら「研究」などと先祖がえりをするようなことが許されるのだろうか。私には、いささか逆方向の極端へと走ったという気がしてならないが、皆さんはいかがであろうか。本音と建前との乖離がまた広がったものと思われる。

 思うに、これというのも、「法科大学院卒業生の8割は合格する」という当初の命題が早々に崩れてしまった中で、何とかして卒業生の合格率を上げたいという法科大学院側の「あせり」があるからであろう。制度の仕組みそのものに最初から内在する矛盾が現れたものといえる。合格率が8割というのと、今年以降予想される2〜3割というのとでは、全くもって、大きな違いである。学生が「だまし」だといきり立つのも、無理はない。したがってこのままでは、当事者の意図すると否とにかかわらず、法科大学院は、ますます受験教育に傾かざるを得ないようになっていくのではないだろうか。合格者の数を3000人といわずに更にもっと増やしてアメリカ並みにするなり、あるいは現在74校にもなってしまった玉石混交の法科大学院の選別を図るなりして、抜本的な対応をすべき日が間近に迫ってきているように思われる。

(平成19年9月8日記)


13.第2回新司法試験の結果

 平成19年9月13日、第2回の新司法試験の結果が発表された。合格者の数は、1851人と、昨年の1009人と比べて大きく伸びた。その昨年は、2年コースの既修者のみの出願であったが、今年から3年コースの未修者が初めて出願できこととなり、その結果、出願者数は5401人と、昨年の2137人と比べて倍増以上となった。ところがそのうち、実際に受験した者の数は4607人(前年は、2091人)で、2割も減ってしまった。これは、5年間で3回しか受験できないという新司法試験の受験回数制限のため、特に未修者の人たちがまだ準備不足ということで、出願はしたものの、受験を見送ったからであると思われる。

 その結果、受験者数に対する合格率は、40%と、昨年の48%に比べてさほど低くなったとは見えなくなり、それ自体は悪いことではないが、出願者数に対する合格者の割合を見ると、実は合格率は34.3%である。出願にも至らなかった者の数を考えると、やはり合格したのは法科大学院の定員の3割程度ではないかと推定される。では、来年の合格率は、どうなるであろうか。

 @ 今年の出願者数から昨年の不合格者(既修)1000人を差し引くと、約4401人。これに筑波大学など2〜3の新たな法科大学院の卒業生を加えると、およそ4600人が通常年ベースで生まれる受験者数(既修+未修)となる。
 A 今年の第2回の新司法試験の不合格者は、2756人である。
 B 今年の第2回の新司法試験の受験を見送った者は、794人であるが、来年も同程度の受験見送りの者がでるものと推定する。。
 C 他方、2008年の合格者数は、2100〜2500人が予定されている。

 よって、C/(@+A)= 29%〜34% が合格率ということになる。これを出願者数で見れば、26%〜31%である。

 ところで、今回の第2回の新司法試験の結果を既修者、未修者という観点から見ていくと、既修者の合格率は46%、未修者のそれは33%と、明らかな差があった。未修者の中には法学部卒でも勉強期間をとるためにこちらを選んだという人も多いので、実際にはこの数字以上に差があったものと見られる。未修者の合格者が一番多いのは、早稲田大学で、115人の合格者数中、104人である。まあこちらは、新司法試験の理念通りに最初からそのような人材を入学させたわけであるから、その意味では予想通りといえようが、その代わりに旧司法試験時代にはしばしば合格者数第一位であった名門が、今回はトップの東京大の合格者178人に対して115人、第五位と、後塵を拝してしまっている。

 引き続き、個別の法科大学院を見ていくと、合格者ベースの上位10校は、次のとおりで、やはり東京の有名校ばかりである。第一位は東京大で、合格率は59%となっている。ちなみに、考査委員による問題の漏洩疑惑のあった慶應は、昨年の第三位から第二位へと順位を上げたが、合格率は、64%と、京都大や一橋大並みで、確かに司法試験委員会のいうように、他校とそれほど有意な差があるわけではない。

 これは幸運といったら失礼になるかもしれないが、昨年にはひとりも合格者を出さなかったところを含めて、今年はすべての法科大学院が、少なくともひとりは合格者を出しているのである。目のつくところをアトランダムに拾うと、たとえば、姫路獨協大学(昨年は8人受けて合格ゼロ、今年は19人受けて合格1人、合格率:5%)久留米大学(昨年は4人受けて合格1人、今年は29人受けてやはり合格1人、合格率:3%)、東北学院大学(昨年は卒業者ゼロ、今年は32人受けて合格3人、合格率:9%)という具合である。こういうところは、どうなってしまうのか、他人事ながら心配になるが、ここは在学生に、より一層の奮起をしていただかなくてはいけないだろう。

 しかし、今回、合格ラインに届かなかった諸君には、また厳しい1年(ひょっとしてさらに1〜2年)が待ち受けていることになる。やはり、合格者数をもっと抜本的に増やしていくのが王道だと思うのだが・・・。

順位 法科大学院名 受験者数(昨年) 合格者数(昨年) 合格率(昨年)
1( 2) 東京大学 304(170) 178(120) 59%(71%)
2( 3) 慶應義塾大学 271(164) 173(104) 64%(63%)
3( 1) 中央大学 292(239) 153(131) 52%(55%)
4( 4) 京都大学 211(129) 135( 87) 64%(67%)
5(22) 早稲田大学 223( 19) 115( 12) 52%(63%)
6( 6) 明治大学 200( 95)  80( 43) 40%(45%)
7(10) 立命館大学 169(103)  62( 27) 37%(26%)
8( 5) 一橋大学  96( 53)  61( 44) 64%(83%)
9( 8) 同志社大学 161( 88)  57( 35) 35%(40%)
10(11) 北海道大学  98( 38)  48( 26) 49%(70%)



第2回新司法試験の最終結果


 最終合格者数:1851人

【発 表 日】 平成19年9月13日発表
【出願者数】 5401人 (前年は、2137人、未修者が初めて出願)
【受験者数】 4607人 (前年は、2091人)
【短答合格】 3479人 (前年は、1684人)
【合 格 率】 40.17%(前年は、48.25%)

【総合得点】
 最高点:1398.83点、最低点:586.32点、平均点:941.69点
  (前年はそれぞれ、1453.37点、593.62点、951.46点)
【合格者内訳】
 最高年齢:56歳、最低年齢:24歳、平均年齢:29.20歳
  (前年はそれぞれ、58歳、23歳、28.87歳)
 男性:1334人(72.07%)、女性517人(27.93%)
  (前年はそれぞれ、781人(77.40%)、228人(22.60%))
 受験回数1回目:748人、2回目:247人、3回目:14人
  (前年はそれぞれ、1250人、525人、76人)

                                     (単位: 人数)

受験者数(昨年) 最終合格者数(昨年) 合格率(昨年)
4607(2125) 1851(1009) 40%(48%)
中央大学 292(240) 153(131) 52%(55%)
東京大学 304(173) 178(120) 59%(71%)
慶應義塾大学 271(166) 173(104) 64%(63%)
京都大学 211(130) 135( 87) 64%(67%)
一橋大学 96( 53) 61( 44) 64%(83%)
明治大学 200( 97) 80( 43) 40%(45%)
神戸大学 91( 62) 46( 40) 46%(65%)
同志社大学 161( 89) 57( 35) 35%(40%)
関西学院大学 130( 65) 39( 28) 30%(44%)
10 立命館大学 169(104) 62( 27) 37%(26%)
11 北海道大学 98( 38) 48( 26) 49%(70%)
12 法政大学 128( 66) 24( 23) 19%(38%)
13 東北大学 96( 43) 47( 20) 49%(48%)
14 大阪市立大学 72( 27) 31( 18) 43%(69%)
15 関西大学 130( 51) 32( 18) 25%(36%)
16 首都大学東京 69( 39) 28( 17) 41%(44%)
16 上智大学 94( 51) 40( 17) 43%(33%)
16 名古屋大学 65( 28) 41( 17) 63%(61%)
19 千葉大学 62( 27) 40( 15) 65%(58%)
19 学習院大学 67( 49) 19( 15) 28%(31%)
21 愛知大学 27( 19) 7( 13) 26%(72%)
22 早稲田大学 223( 19) 115( 12) 52%(63%)
23 成蹊大学 42( 25) 16( 11) 38%(44%)
24 大阪大学 73( 21) 32( 10) 44%(48%)
25 専修大学 76( 52) 19(  9) 25%(18%)
26 創価大学 39( 14) 20(  8) 51%(57%)
26 明治学院大学 54( 18) 11(  8) 20%(44%)
28 日本大学 111( 58) 14(  7) 13%(13%)
28 立教大学 59( 19) 17(  7) 29%(39%)
28 九州大学 74( 13) 29(  7) 39%(54%)
31 山梨学院大学 31( 11) 10(  6) 32%(55%)
32 青山学院大学 40( 14) 7(  5) 18%(36%)
32 横浜国立大学 38( 10) 13(  5) 34%(50%)
32 新潟大学 36( 10) 8(  5) 22%(50%)
32 南山大学 26( 10) 10(  5) 39%(50%)
32 甲南大学 44( 18) 11(  5) 25%(28%)
37 大東文化大学 36( 20) 4(  4) 11%(21%)
37 東洋大学 44( 24) 12(  4) 27%(17%)
37 神奈川大学 25( 15) 8(  4) 32%(31%)
37 岡山大学 23( 12) 10(  4) 43%(33%)
41 白鴎大学 19(  7) 4(  3) 21%(50%)
41 近畿大学 17(  6) 2(  3) 12%(50%)
41 広島大学 32( 12) 11(  3) 34%(25%)
41 福岡大学 14(  5) 6(  3) 43%(60%)
45 駿河台大学 46( 22) 9(  2) 20%(10%)
45 名城大学 20(  5) 6(  2) 30%(40%)
45 西南学院大学 28(  4) 7(  2) 25%(50%)
48 國學院大学 28(  2) 6(  1) 21%(50%)
48 駒澤大学 37( 18) 8(  1) 22%( 6%)
48 関東学院大学 23( 17) 9(  1) 39%( 7%)
48 金沢大学 24(  2) 8(  1) 33%(50%)
48 島根大学 18(  1) 3(  1) 17%(100 %)
48 久留米大学 29(  4) 1(  1) 3%(25%)
48 熊本大学 20(  4) 2(  1) 10%(25%)
55 東海大学 16(  3) 2(  0) 13%( 0%)
55 京都産業大学 36(  2) 7(  0) 19%( 0%)
55 神戸学院大学 11(  3) 4(  0) 36%( 0%)
55 姫路獨協大学 19(  8) 1(  0) 5%( 0%)
56 東北学院大学 32(  0) 3(  --) 9%(  --%)
57 大宮法科大学院大学 43(  0) 6(  --) 14%(  --%)
58 桐蔭横浜大学 35(  0) 9(  --) 26%(  --%)
59 獨協大学 30(  0) 6(  --) 20%(  --%)
60 中京大学 18(  0) 4(  --) 22%(  --%)
61 大阪学院大学 14(  0) 2(  --) 14%(  --%)
62 広島修道大学 21(  0) 6(  --) 29%(  --%)
63 鹿児島大学 25(  0) 2(  --) 8%(  --%)
64 琉球大学 16(  0) 7(  --) 44%(  --%)
65 香川大学 9(  0) 3(  --) 33%(  --%)
北海学園大学 --(  0) --(  --) --%(  --%)
静岡大学 --(  0) --(  --) --%(  --%)
信州大学 --(  0) --(  --) --%(  --%)
筑波大学 --(  0) --(  --) --%(  --%)
愛知学院大学 --(  0) --(  --) --%(  --%)
龍谷大学 --(  0) --(  --) --%(  --%)
四国ロースクール --(  0) --(  --) --%(  --%)
 

(出典)法務省の発表による。(平成19年9月13日記)


14. 学生と弁護士の二極分化


 秋も深まりつつあり、東京都心でも、木の葉が舞う季節となった。私は、今年から二つの法科大学院で教える立場となり、準備万端を整えて授業に臨んでいる。この二つの法科大学院、ひとつは国立、もうひとつは私立で、いずれもトップクラスではあるのだが、これまで授業をした限りでは、妙な共通点があるのである。それは何かといえば、学生に文章を書かせると、論証の進め方及びその論拠について、簡潔にして必要十分、それこそ文句のつけようのないものを書いてくる人が2〜3割いると思えば、その反対に、いったい何だこれはという妙な文章を書いてくる人たちも3割くらいはいるという現実である。要は、学生が全く二極分化していると考えられる節がある。

 前者のトップグループの学生たちは、もうこれは放っておいても自分でどんどん吸収していって、新司法試験だろうが何だろうが、必ず一発で合格するという実力を備えた連中である。問題は後者のグループに属する学生たちで、聞くと、「3年です」と答え、ひょっとして社会人だったのかと尋ねると、たとえば「ええ、システム・エンジニアでした。」とか、「いいえ、工学部でした。」などと答える。そして、そういう人たちこそ、教室の最前列に陣取り、実に熱心に教授の話を聞いてくれる、ありがたい学生たちである。ところが、文章を書かせると、本筋を必ずと言ってよいほど外しに外して、枝葉末節の方に入り込んで、訳のわからない状態に陥るという特徴がある。しかも、こういう人に限って、適性試験の成績が優秀なのだから、この試験がふるい分けの役に立っていないという例証のようなものである。大方の法科大学院が既修者と未修者とを区別して採っているので、もちろんこの現象は未修者に多いが、既修者の中にもいたので、驚いてしまった。

 そういうようにこのタイプの学生の成績は、本当に何とかならないのかと言いたくなるほどの惨状を呈しているわけであるが、しかし、受講態度はとても立派なだけに、哀れをもよおすのである。私は何とかしてあげたいと思うのであるが、どうもこういうトップ校、特に国立は、大学側のプライドが邪魔をするのか、それとも教える側にノウハウがないのか、あるいはそもそも親切心に欠けているのか、実務の場と研究の場の使い分けをしているのか、どうもよくわからないが、結果的に置いていかれているのではないかと思うところがある。

 そこで、蟷螂の斧かもしれないが、私は授業の中でなるべく具体的な課題を出し、それを文章に書かせて批評するという形式をとっている。時には添削し、ときにはモデルとなるものを示し、何が足りないか、何が余計か、論証の進め方はこれでよいかなどという点を学生にわからせようと努めている。しかし、それでも、一流グループが書いた文章は添削の必要がないくらいである反面、出来ないグループが書いた文章は、すべて真赤になるまで根本的にひっくり返してやらないと、物の役に立たないほどなので、これまた悩みの種なのである。

 こういう話を、とある法科大学院の院長先生に打ち明けたら、「実は自分のところも全く同じで、もうそういうグループの学生には、『あなたにはこの道は向かないから、卒業後は別の進路を探すように』と言い渡している」という。なるほど、私みたいに救ってやろうと変にじたばたするより、それが本当の親切というものかもしれない。それにしても、法科大学院制度というものは、罪つくりな制度である。

 その院長先生いわく、「法科大学院制度や新司法試験というものは、それまでの司法試験が受験技術のテクニックに偏りすぎていたという反省の下に作られたと思うのですが、このままでは新司法試験に受からない人たちがどんどんと積み上がり、また昔のような、受験技術を競う予備校がはやるかもしれないと危惧しています。」とのこと。確かに、特に未修者が5年以内に3回しか受験できないという制限を気にして準備が出来ていないと受験を控えるようになり、そういう隠れ浪人が増えていくと、また以前のような司法試験予備校が求められるのは時間の問題かもしれない。

 元はといえば、7〜8割は新司法試験に受かるといい、その反面で合格者数を3000人に限るという司法改革時の表明が問題なのである。それを前提にすると、3000人÷0.7=4300人程度を法科大学院の定員としなければならないというのは明らかなのに、それを制限せずに野放しというのでは、最初から計画は破たんすることが想定されていたというほかない。もう乱立してしまった法科大学院の定員を今さら削減できないというのであれば、これを解決するためにはその合格者数3000人というものを大幅に増やすしかないと思われる。

 ところが最近、特に地方の弁護士会が、これ以上、合格者を増やすのは反対だという意見表明をするところも出てきた。事実、今年の合格者1851人について、来年2008年の弁護士会の受け入れ数のアンケートをとったところ、最低約200人は必ずあぶれるという結果が出ていると聞く。そもそも今年2007年には、9月に1600人、12月に1000人が司法修習を終了している。これらの人たちの就職大キャンペーンを展開して、それでも一時は100人近くが危なかったが、ようやくどこかに押し込まれたようだ。そういう調子であったので、見方によれは、それらがいわば需要を先取りしたわけである。そういうことから、今年以降、ただでさえだぶつき気味の新卒弁護士の需給は、ますます供給過剰に陥っていくに違いない。

 そこで、当面の問題として次にどうなるかという点であるが、新卒弁護士の中でも二極分化が起こるであろう。一方では、東京の四大弁護士事務所で企業法務やM&Aなどを手掛けて羽振りがよいが、その代り、明け方まで死に物狂いで働く弁護士であり、他方では、地方でのんびりと一般の法律相談を受けて細々と暮らす弁護士である。初任給の年間の報酬は、1200万円程度から300万円程度までの開きがあるだろう。要するにこの世界でも、最近の一般の社会と同様、リッチ・アンド・プアーに分かれていくものと考えられる。数が増えるということは、つまり、そういうことなのである。

(平成19年11月17日記)


15. 法科大学院の質

 法科大学院第一期生で、昨年5月に行われた第一回新司法試験に合格し、司法修習をこの一年間こなしてきた修習生の考試、つまり最終試験結果が発表された。これは、民事裁判、刑事裁判、検察、民事弁護、刑事弁護に五科目にわたる試験であり、一科目でも合格水準に達していなければ不合格となる。それによると、第一回新司法試験合格者で今回の考試(いわゆる二回試験)を受験した者は986人で合格者が927人、不合格者は59人、不合格率は6%となった。これに、9月の旧司法試験の考試に不合格だった69人も受験し、うち17人が再び不合格だった。これらを合わせると、受験者数が1055人、うち不合格者数は76人(7.2%)である。

 直近の不合格者比率はせいぜい5%、それより以前の不合格者比率ははるかに低いから、法科大学院第一期生の不合格者の数がこれほど多いとは、関係者にとっては意外なことであった。というのは、そもそも法科大学院の設置理念が受験に偏った知識詰め込み教育を改め、法律実務を教えるといったものであったからである。しかし、私も今年から、世間で超一流とみなされている国立の法科大学院での教育に携わっているところであるが、正直いって、学生の文章を書く能力に大きなばらつきがあることに驚いた。できる学生は、もうそのまま実務で使える文章を書いてくる一方、会社の企画書程度のものしか書けなかったり、あるいはジュリストでよく見かけるような、実務には何の役にも立ちそうにない学者の文章のようなものをまるで紡ぐがごとくに延々と書いてきたりする。

 もうお分かりであろうが、最初のグループはそのほとんどが2年の既修者コースの人で、後二者は3年の未修者コースの人が多い。この後二者の方には元社会人の方が多くて、以前の職業を聞くと、エンジニア、新聞記者、会社員、公務員、医者などという方である。入学当初ならともかく、こういう方が3年生にもなって、未だ会社の企画書程度も文章しか書けないというその実態を知ったときには、申し訳ないが、唖然としてしまった。それで、文章とはこう書くものだなどと解説をすると、学生たちはそんな授業は他になかったなどと口々に言う。

 これは、こうした学生が出来ないというより、そもそも法科大学院のカリキュラムと、それを教える教授の側に大きな問題があるのではないだろうか。私が思うにその主な原因は、実務系大学院なのに、実務を全く知らない典型的な、いわゆる「学者」ばかりが教えているからではないかと思う。もちろん、そういう授業もあってよいが、そんな教授ばかりでは、訴状や答弁書など、書けるようになるわけがない。アカデミックなものと実務的なものとのベスト・ミックスが行われていないのは明らかであり、その被害者は、看板につられて入った学生たちである。

 思い出してみると、法科大学院が発足した当初は、在来の法学部の教授たちは、「給料は同じなのに、仕事は倍になった」と嘆いていた。そこで、実務の先生たちを連れてきたが、こうした先生たちは逆に、実務はわかるが教え方と理論はわからないというハンディがある。うまくいかないものだなぁと仲間内で評していたものだが、それに加えて前述の慶應義塾大学の植村事件で、ますます妙なこととなった。

 つまり、「受験指導につながるから、学生に文章を書かせてそれを評するようなことは、まかりならぬ」という風潮である。そんなはずはないと思うし、事実、下記の文部科学省の委員会では、「一定の事案をもとに法的に意味のある事実関係を分析し、その法的分析・検討を行い、一定の法律文書を作成する能力を育成する教育は法科大学院本来の教育であり、法曹として実務に必要な文章能力の育成は当然に求められるものである」と言ってくれている。ところが、法科大学院内では、これにかこつけて、そういう前向きな指導をすることについて、これ幸いと足を引っ張る向きも、なきにしもあらずと聞く。

 そんなことをしていると、ますます何の役にも立たない法科大学院卒業生ばかりが生み出され、その結果、司法試験に合格しても、最後の関門である考試を通らないような司法試験修習生がもっと出そうである。それでは路頭に迷う学生や修習生がかわいそうだし、ひいては司法研修制度という国家的リソースの無駄遣いである。これは、新司法修習生の質の問題というより、たとえ一流といわれている法科大学院であっても、その法科大学院自体の質の問題である。いたずらに従来の大学経営の学者的センスにとらわれすぎて、こうした法科大学院は運営すべきでないと思うが、どうであろうか。そういえば、一部の私立大学では、優秀な先生の引き抜きを精力的に行っているようだ。あと数年後には、その結果が如実に現れるであろう。


(2007年12月19日記)


16. 司法試験合格者数の見直し

 平成20年1月25日の新聞夕刊に、法科大学院関係者にとって、衝撃的な見出しが載った。司法試験「3千人合格」見直しの意向、法相「多すぎる」(読売新聞)というものである。

 かねてより鳩山法務大臣は、法曹の数が多ければ質の低下を招くという趣旨の発言を行っていた。加えて、実際に新司法試験の合格者数が2000人に近づいてくると、特に地方の弁護士会からは就職難や競争の激化を招くという理由で反対の意向を示すところも出てきている。このようなことから、今回、鳩山法務大臣が法務省内で検討する組織を3月頃には作りたいとの意向を示したものである。

 いずれにせよ、これによって、平成13年(2001年)の司法制度改革審議会意見書が「平成22年頃には新司法試験の合格者の年間3000人を達成する」としていた目標は、見直しの方向となった。

 法科大学院制度が始まって以来、さまざまな出来事が起こってきたが、もし実行されれば、これは最大の難物〜というか、大きな逆噴射〜である。これまで、7〜8割は合格するといわれていた学生の期待がまず裏切られ、それから今回のこの見直しによって、頼みの綱であった合格者3000人という次の期待が持てなくなったというわけである。そうなると、法科大学院の現学生やこれから入学しようとしている学生たちに対して何と説明するのか、法務省と日弁連の立場が非常に微妙となった。


(2008年1月25日記)



17. 日弁連の逆噴射

 2008年7月18日、日本弁護士連合会は、理事会において、「法曹人口問題に関する緊急提言」と題した提言書を採択した。その概要を同連合会のホームページから引用すると、次のとおりである。

1.当連合会は、「市民のための司法」を実現すると言う司法改革の基本理念に基づき、過疎偏在の解消など市民のアクセス改善に取り組み、着実な前進を果たしてきました。また、来年から始まる本格的被疑者国選、裁判員裁判等への態勢の整備にも全力で取り組んできており、今後とも、これら司法改革の諸課題を力強く前進させていく決意です。

 司法改革の重要な柱の一つである人的基盤整備の課題につきましても、新しい法曹養成制度の中核である法科大学院教育に対し、いろんな支援を行ってきましたし、今後も、より一層のサポートをしていく決意です。

2.今回の提言は、司法改革を推進する立場を堅持しつつ、多くの新規法曹を受け入れている立場から、人口急増のスピードが法科大学院、司法試験、司法修習、オンザジョブトレーニングに至る一連の養成過程において、法曹の質を維持するうえにおいて様々なひずみをもたらしている事実を直視し、増員のペースをスピードダウンして、ひずみ解消の方策を見いだしていこうとするものです。

3.司法制度改革審議会が提起した司法改革を実現するためには、司法予算を大幅に増やし、裁判官・検察官の増員や民事法律扶助を飛躍的に拡充するなどの措置が必要不可欠であり、官庁や企業の採用枠の拡大など新規法曹が広く社会に受け入れられる措置も不可欠です。法曹人口の増加をはかるうえでは、そうした司法制度改革の統一的な実現が必要であり、これらの課題につき、政府・関係諸団体に一層の努力を要請するものです。

4.当連合会としても、高い倫理を持ち、多様な市民のニーズに応えられる能力を持った多くの弁護士が社会のすみずみに進出していくよう、今後も努力していきたいと考えています。 

 そのためにも、一連の法曹養成過程全体の成熟に向けて、関係機関との協議をすすめ、努力を尽くす所存です。

 なお、将来的な法曹人口や養成過程の在り方などを検討するため、新しい組織を会内に設けました。そこでの検討を続けて、更なる提言をしていきたいと考えています。


 これに対して、司法制度改革の一環として、司法試験合格者数を2010年に3000人に増やすという計画を推進してきた政府側は、「今更、何を言っているのか」と批判的である。もちろん、鳩山法務大臣もこの計画目標の達成を明言している。いずれにせよ、かねてから懸念されてきたとおり、司法試験合格者数の減少に向けての調整の動きが顕在化してきたことに注目したい。そもそも、法科大学院卒業者の8割程度は合格させるというような甘い表現で法科大学院構想を出発させながら、その肝心の法科大学院の総定員を管理しているわけでもないし、そのうえ更にここに至って新司法試験合格者の数を絞ろうというのは、どう見ても、法科大学院の学生に対する背信行為である。司法制度改革の当事者であった日弁連とも思えないような、態度の急変といえる。

 ただでさえ、今年の新司法試験の合格率が3割台に落ちるのは確実という状況である。ここでさらに日弁連の言うように合格者の数を絞るということとなれば、合格率が更に下がって、2割台になってしまわないとも限らない。それがここ何年か続くということになれば、法科大学院の学生たちは、ひどく裏切られたという気持ちを抱くに違いない。こういうことは、とりわけ政府としては、絶対にしてはいけないという典型例だと思うが、どうであろうか。私も、自ら教えている何人かの学生の顔を思い浮かべて、合格しそうもない学生の数が増えるのは、誠に忍びない気持ちである。

 ところで、7月22日の日経新聞朝刊に載った「法科大学院1期生で修習不合格、基礎知識・理解力に不安(最高裁、答案調査)」と題する記事は、法科大学院修了生の質の問題を提起している。これは、昨年(2007)年11月に実施した「考試」の結果を調べたもので、一部に旧司法試験からの再受験者を含めて1055人が受験し、76人(7.2%)が不合格になった理由が分析されている。具体的には、

 @ 強盗未遂事件の被告の弁護案件なのに、被告のアリバイ主張を無視したうえ、被告のアリバイは信用できないと述べた。
 A 飼い猫を有償で預かる契約では、猫を死なせても返還義務を果たさなかったことにはならない。
 B 兄弟間で債務保証の有無を争うケースで、兄が弟に対して保証するケースは、あまりない。

などとした、非常識な答があり、いずれも「一部のミスというのではなく、答案全体として実務法曹として認められる最低限の能力を取得していない」(最高裁)とされたようである。この司法修習生の質の点に限っては、日弁連の主張は正しいようである。法科大学院側としては、修了を認定する際に、こういう非常識な者を厳しくはじくことが必要である。法科大学院の関係者は、この結果を自戒をもって、受け止めるべきであろう。

(参 考)法曹人口と司法試験合格者

 2008年6月現在の法曹人口は、  29,000人
 2007年の司法試験合格者実績は、  2,099人
 2010年の司法試験合格者の見込みは、3,000人
 2018年の法曹人口の見込みは、  50,000人

(2008年7月22日記)


18.第3回新司法試験の結果




 平成20年9月11日、第3回の新司法試験の結果が発表された。私が教えた皆さんも、今回受験したので、その結果が気になっていた。発表の場所は、私のオフィスからほど近いところにある。ただ、発表の当日は受験者ご本人たちがそれを見たいだろうから、行くのは遠慮することとして、その翌日お昼に立ち寄ってみた。

 それは、法務省ビルの隣にある元祝田橋庁舎があったところである。前回と同じところだ。しかし、もはや庁舎は取り壊されていて、その空き地に塀だけが残っている。その塀には、ついこの前まで、「裁判員 参上!」という看板が掲げられていて、当時の法務大臣からまるで暴走族の用語だと批判を受けた曰く付きのところだ。そんなところに、ポツンと、法務省掲示板があって、その中に細かい字で合格者の名前と受験番号が書いてある紙が貼られているだけである。何とまあ、そっけないことか。新司法試験を受験した皆さんはそれぞれ、何しろベンツを一台買えるぐらいの授業料やら生活費を費やしたわけだから、せめてそれに報いてあげる意味でも、もう少しマシなところで発表してあげればよいのにと思ったくらいである。

 その掲示板を見ようとしたが、何しろ字が細かいし、他にそれを見ようとしている人も数人いる。そこで、その場はあきらめて、だれか合格者名簿をネットに載せないかと思いつつそのまま帰った。家でグーグル検索をすると、案の定、合格者名簿が載っているではないか。それをゆっくりと見ようとしていたところに、合格した教え子のおひとりから、お礼のメールが入った。その人は、私の授業では最初の回の課題をやっていただいた方で、その人の文章を見ただけで、「ああ、この人は、もう完成している」と思ったことを覚えている。法律の分野で生きるにはまず法的発想力が大事で、加えてそれを論証して他人を説得する文章力がないと、実務もできないし、もちろんその前に試験にも受からない。その点、この方は、その両方を備えていることが見てとれたので、あとは実例をたくさんこなして、経験を積んでいけば、どんどん伸びるタイプだと思ったことを覚えている。現に、こうして最短で合格されたので、私も、心からおめでとうと申し上げた次第である。

 そのほか、私が検索した限りでは、今回受験した7名の方のうち、5名が合格していた。同姓同名ということも、なきにしもあらずだが、このまま正しければ、教え子の合格率は既修と未修を合わせて71%だから、全体の合格率が33%の中でまずまずというところである。ただし、名前のなかったAくんとBさん、残念だろうなぁ、落ち込まなければよいのにと、心配になる。特にこのうちのおひとりは、学友と夜間に勉強会を開くなど、学習意欲があって、とても積極的だった。ところが、期末試験では、文章としては法律の論文調になっていて大変に結構だったのだが、残念なことに、答える方向を最初から間違えていたのである。ご本人も、試験の点数が低くて疑問に思われたらしくて、採点結果の説明を求めて来られた。そこで、その点をコメントするついでに、最初の論理構成をもっと慎重にしてはどうかとアドバイスした記憶がある。やはり、そういう弱点が出てしまったのかと思う。反対に、うれしい誤算だったのはCくんである。この方は、いかにもエンジニア出身の文章を書くので、失礼ながら少し危ないかもしれないと思っていたが、・・・受験地が東京ではないので、同姓同名ではないかといささか気にはなるが、それはともかく・・・ちゃんと同じ名前が載っていたので、とてもうれしかった。人間、やってみるものである。

 さて、それでは、第3回となる今年の全体の結果を見てみよう。合格者の数は、2065人と、昨年の1851人と大差なく、事前に予定されていた2100〜2500人というレベルには届かなかった。受験者数は6241人で、前年の4607人から更に1634人も増え、その結果、合格率は33%と、前年の40.2%を大きく下回った。これは、今回の受験者が卒業した法科大学院の数が74校と、前年の65校から大幅に増えたこと、そして前年までに合格できなかった受験者が引き続き受験したことによるものである。昨年、私は今年の合格率は26%〜31%ではないかと見込んだが、それよりは合格率が良かった。これは、必ずしも喜ばしいことではない。というのは、昨年と同様に5年間で3回しか受験できないという新司法試験の受験回数制限のため、特に未修者の人たちが受験を見送ったからではないかと思われる。現に、出願者と受験者の差が1601人にもなっているのには、びっくりした。

 これを大学別に見ると、トップの5校の合格者と合格率は、次のようになっている。上位三校の合格率がほぼ同じであるのは、面白い。早稲田の合格率が低いが、これは例のとおり、入試制度の関係で既修者の数が非常に少ないからである。それにしても、京都大学の合格率の低さは、いささか意外である。


 東京大学  合格者200人 合格率55%
 中央大学  合格者196人 合格率56%
 慶應大学  合格者165人 合格率57%
 早稲田大学 合格者130人 合格率38%
 京都大学  合格者100人 合格率41%
____________________________________________
  平 均          合格率33%

 それでは、既修者と未修者別にこれらの大学の合格率を比較すると、次のようになる。東京大学、慶應大学及び早稲田大学の三校の既修者と未修者の健闘が光る。なかでも東京大学と慶應大学の未修者の合格率がそれぞれ39%、37%というのは、特筆すべきものと思う。( )内は、合格率。

 東京大学  既修者155人(62%)、未修者 45人(39%)
 中央大学  既修者179人(65%)、未修者 17人(22%)
 慶應大学  既修者135人(64%)、未修者 30人(37%)
 早稲田大学 既修者 20人(77%)、未修者110人(34%)
 京都大学  既修者 84人(48%)、未修者 16人(22%)
__________________________________________________________________
  平 均  既修者 合格率 44%、  未修者 合格率 22%


 法科大学院別の結果は、以下の表を見ていただきたいが、これを眺めると、合格率が10%を切るような法科大学院は10校もあり、うち3校は合計で59人もの卒業生を受験させながら合格者がゼロとなったことがわかる。こういう法科大学院は、いったい何なんだろうと思う。こうした法科大学院での3年間は、高い学費を払わせながら、その学生に単に一時の夢を見させるだけではなかったかという気がしてしまう。罪作りなものである。かくなるうえは、法科大学院の再編は、もう避けられないと思うが、いかがであろうか。
 



第3回新司法試験の最終結果


 最終合格者数:2065人(前年は、1851人)

【発 表 日】 平成20年9月11日発表
【出願者数】 7842人 (前年は、5401人)
【受験者数】 6241人 (前年は、4607人)
【短答合格】 4654人 (前年は、3479人)
【合 格 率】 33.08%(前年は、40.17%)

【総合得点】
 最高点:1407.84点、最低点:564.40点、平均点:930.64点
  (前年はそれぞれ、1398.83点、586.32点、941.69点)
【合格者内訳】
 最高年齢:59歳、最低年齢:24歳、平均年齢:28.98歳
 (前年はそれぞれ、56歳、24歳、29.20歳)
 男性:1501人(72.69%)、女性564人(27.31%)
 (前年はそれぞれ、1334人(72.07%)、女性517人(27.93%)
 受験回数1回目:1312人、2回目:633人、3回目:120人
 (前年はそれぞれ、748人、247人、14人)

【既修未修】
  既修者法学部   1182人
  既修者非法学部   149人
  未修者法学部    436人
  未修者非法学部   298人


                                                           (単位: 人数)

受験者数(昨年) 最終合格者数(昨年) 合格率(昨年)
7842(4607) 2065(1851) 33%(40%)
東京大学 366(304) 200(178) 55%(59%)
中央大学 352(292) 196(153) 56%(52%)
慶應義塾大学 292(271) 165(173) 57%(64%)
早稲田大学 345(223) 130(115) 38%(52%)
京都大学 241(211) 100(135) 41%(64%)
明治大学 264(200) 84( 80) 32%(40%)
一橋大学 127( 96) 78( 61) 61%(64%)
神戸大学 128( 91) 70( 46) 55%(46%)
東北大学 127( 96) 59( 47) 46%(49%)
立命館大学 205(169) 59( 62) 29%(37%)
同志社大学 210(161) 59( 57) 28%(35%)
12 関西学院大学 168(130) 51( 39) 30%(30%)
13 上智大学 120( 94) 50( 40) 42%(43%)
14 大阪大学 127( 73) 49( 32) 39%(44%)
15 首都大学東京 79( 69) 39( 28) 49%(41%)
16 九州大学 105( 74) 38( 29) 36%(39%)
17 関西大学 187(130) 38( 32) 20%(25%)
18 千葉大学 69( 62) 34( 40) 49%(65%)
19 大阪市立大学 82( 72) 33( 31) 40%(43%)
19 北海道大学 108( 98) 33( 48) 30%(49%)
21 名古屋大学 98( 65) 33( 41) 33%(63%)
21 法政大学 135(128) 32( 24) 24%(19%)
23 日本大学 148(111) 26( 14) 18%(13%)
24 横浜国立大学 65( 38) 24( 13) 37%(34%)
25 立教大学 92( 59) 21( 17) 23%(29%)
26 学習院大学 87( 67) 20( 19) 23%(28%)
26 専修大学 88( 76) 20( 19) 23%(25%)
28 広島大学 52( 32) 19( 11) 37%(25%)
29 成蹊大学 45( 42) 17( 16) 38%(38%)
30 愛知大学 35( 27) 16(  7) 46%(26%)
30 明治学院大学 74( 54) 16( 11) 22%(20%)
30 大宮法科大学院大学 81( 43) 16(  8) 20%(14%)
33 南山大学 49( 26) 15( 10) 31%(39%)
33 青山学院大学 61( 40) 15(  7) 25%(18%)
35 創価大学 60( 39) 13( 20) 22%(51%)
36 甲南大学 71( 44) 12( 11) 17%(25%)
37 駒澤大学 47( 37) 11(  8) 23%(22%)
37 岡山大学 35( 23) 11( 10) 31%(43%)
37 駿河台大学 84( 46) 11(  9) 13%(20%)
40 福岡大学 33( 14) 10(  6) 30%(43%)
41 新潟大学 50( 36) 9(  8) 18%(22%)
42 桐蔭横浜大学 63( 35) 8(  9) 13%(26%)
42 獨協大学 40( 30) 8(  6) 20%(20%)
42 中京大学 36( 18) 8(  4) 22%(22%)
45 熊本大学 33( 20) 7(  2) 21%(10%)
45 山梨学院大学 40( 31) 7( 10) 18%(32%)
45 広島修道大学 35( 21) 7(  6) 20%(29%)
45 東北学院大学 37( 32) 7(  3) 19%( 9%)
49 大東文化大学 37( 36) 6(  4) 16%(11%)
49 神戸学院大学 18( 11) 6(  4) 33%(36%)
51 名城大学 31( 20) 5(  6) 16%(30%)
51 筑波大学 26(  0) 5(  0) 19%( --%)
51 久留米大学 42( 29) 5(  1) 12%( 3%)
51 神奈川大学 41( 25) 5(  8) 12%(32%)
55 関東学院大学 42( 23) 4(  9) 10%(39%)
55 島根大学 26( 18) 4(  3) 15%(17%)
55 金沢大学 47( 24) 4(  8) 9%(33%)
55 東洋大学 55( 44) 4( 12) 7%(27%)
55 東海大学 34( 16) 4(  2) 12%(13%)
55 國學院大学 40( 28) 4(  6) 10%(21%)
55 近畿大学 25( 17) 4(  2) 16%(12%)
55 京都産業大学 45( 36) 4(  7) 9%(19%)
63 琉球大学 24( 16) 3(  7) 13%(44%)
63 香川大学 21(  9) 3(  3) 14%(33%)
65 西南学院大学 46( 28) 2(  7) 4%(25%)
65 白鴎大学 21( 19) 2(  4) 10%(21%)
65 北海学園大学 13(  0) 2(  0) 15%( --%)
65 静岡大学 17(  0) 2(  0) 18%( --%)
65 龍谷大学 24(  0) 2(  0) 8%( --%)
70 鹿児島大学 23( 25) 1(  2) 4%( 8%)
70 大阪学院大学> 28( 14) 1(  2) 4%(14%)
72 姫路獨協大学 24( 19) 0(  1) 0%( 5%)
72 信州大学 19(  0) 0(  0) 0%( --%)
72 愛知学院大学 16(  0) 0(  0) 0%( --%)

(法務省の発表による。) (平成20年9月18日記)


19.早稲田大学法科大学院が既修者枠を設定

 早稲田大学法科大学院は、2008年12月17日にそのホームページにおいて、「2011年度入学者選抜試験の変更点等について」を掲載し、従来のような既修者と未修者とを分けないで入試を行う方式から、これらを区別する入試制度を採用することとし、それまでの方針を大きく転換した。

 同法科大学院では、従来は、入学後に既修者と未修者とを振り分ける試験を行っていた。これは、おそらく多種多様な人材を法曹界に送り込もうとする法科大学院の当初の理念に忠実であらんとする現れであると考える。それはそれで誠に結構なことなのではあるが、私にいわせれば、理想を追いかけるあまりに、その結果としての現実は、惨憺たるものではなかったかと思うのである。

 どういうことかというと、2005年の入試の最終合格者数333名のうち、法学既修者認定試験を受けた受験者数は66名で、その中で法学既修者認定に合格した学生は、わずかに16名であり、同様に2006年の入試の最終合格者数372名のうち、法学既修者認定試験を受けた受験者数は67名で、その中で法学既修者認定に合格した学生は、これまたわずかに23名にすぎなかった。そして、これらの学生が受験したと思われる新司法試験における早稲田大学法科大学院の既修者の実績は、2007年には受験者22名のうち16名が合格、2008年には受験者26名のうち20名が合格している。

 それはよろしいのであるが、他方、これらの既修者を含めた新司法試験の早稲田大学法科大学院の合格者は、2007年には受験者223名のうち115名、2008年には受験者345名のうち130名となっている。ちなみに、法科大学院別にみた2008年の新司法試験の合格者は、東京大学法科大学院は200名、中央大学法科大学院は合格者196名、慶應義塾大学法科大学院は165名、早稲田大学法科大学院は130名、京都大学法科大学院は100名である。

 こうして各大学法科大学院の合格者を比べる中で、早稲田大学法科大学院のこの130名という合格者数を多いと見るか少ないと見るかであるが、ここで想起すべきは、旧司法試験の時代の早稲田大学が非常に健闘していたという事実である。有力な大学がひしめく中で、たとえば2005年の旧司法試験の早稲田大学からの合格者は、228名と最多であった。ちなみにその年は、東京大学は226名、慶應義塾大学128名、京都大学120名、中央大学118名である。そういう早稲田の栄光の時代を記憶にとどめている者からすれば、法科大学院時代に入ってからのこの新司法試験の結果は何たることかと、早稲田ファンとしては、満足のいかないところである。

 ちなみに、こうした他の有力大学では、いずれも入試制度で既修者枠と未修者枠とを分けていて、既修者枠の方が多い。既修者の合格率は44.3%、未修者の合格率は22.5%(いずれも2008年)であるから、当然のことながら既修者が多ければ多いほど合格者は多くなる。それだけでなく、法学部を卒業した者の身になって考えてみると、早稲田大学法科大学院に入学するということは、法学既修者として認定される者が非常に少ないということからすると、3年間も勉強しなければならないことを意味するのとほぼ同義である。そうであるとすれば、法律知識のある優秀な者ほど早く合格したいだろうから、早稲田は選ばずに他の法科大学院の既修者枠で入学して2年間の勉強で済ませようということになる。その方が、時間も学費も節約できるからである。

 そういうことで、早稲田大学法科大学院を選ぶのは、主として他の分野で社会的に活躍していたり別の勉強をしてきた者も多いのではないかと推察する。それはそれでひとつの理想なのではあるが、問題は、その反面として、優秀な法学既修者をみすみす取り逃がしている点である。ここはやはり、他のライバル大学と同様に、入試の段階から既修者枠と未修者枠とを分けるべきである。まさにこの方向を選択して全体の半数を既修者としようとする今回の早稲田大学法科大学院当局の決断は、歴史に残る大英断ではないかと考える次第である。



【早稲田大学の発表】

 2011年度入学者選抜試験(2010年実施)における変更点の概要を、次の通りお知らせいたします。(略)
 
1.法学既修者の募集に定員枠を設けます。3年標準課程への入学を希望するもの、法学既修者として入学を希望するもの(2年修了)、おおよそ半数ずつ定員枠を設けて、それぞれ別々に募集を行う予定です。また、出願に際しては 、両者の併願を受け付けることを検討しております。  
   
2.法学既修者として入学を希望する場合は、出願時に日弁連法務研究財団が当該年に実施する「法学既修者試験 (法科大学院既修者試験)」注)の成績の提出が必須となります。「法学既修者試験 (法科大学院既修者試験)」は「第3部」までの6科目受験(憲法・民法・刑法・民事訴訟法・刑事訴訟法・商法)を必須とし、出願時には同試験成績データ提供への許諾をお願いする予定です。書類審査、 「法学既修者試験(法科大学院既修者試験)」の成績、および本研究科が独自に実施する民法・刑法・憲法3科目の論述試験の成績をもとに、法学既修者としての合否を判定する予定です。  

3.3年標準課程への入学に際して、総入学定員の3割を目標に「社会人」および「法学部以外の学部出身者」を優先的に選抜する募集枠を設ける予定です。3年標準課程への入学に際しては、従来の選抜方法(第一次選考:書類審査、第二次選考:面接試験)を踏襲する予定です。


(2008年12月17日早稲田大学法科大学院HP掲載)

(平成20年4月16日記)


20.法科大学院の定員削減

 平成21年4月17日の朝日新聞朝刊は、法科大学院の定員削減が検討されていることを報じている。文部科学省は、現在74校ある法科大学院合計で約5800人に及んでいる総定員数を絞り、全体の質を高めたい考えだとしている。その方向で大学院側を指導した結果、具体的には、国立では東京大学法科大学院が定員300人を240人に、京都大学法科大学院が200人を160人に削減し、他の国立でも1〜3割の定員削減を検討しているという。私立でも、たとえば早稲田大学法科大学院は300人の定員削減を検討しているが、他の大学院では意識に濃淡があるようで、中央大学法科大学院は300人の定員を削減することは特段考えていないとのことである。その理由として、同大学院は「成果を上げているところも含めて一律削減は納得できない。各校の実態を見るべきだ」としている。確かに、国公立や私立を問わず、ほとんど合格者を出していないにもかかわらず、定員だけは多いという法科大学院も数多くある。

 いよいよ、そのような時代に立ち至ったかという思いである。そもそも、2065人(2008年)という合格者実績に比して、約5800人にも及ぶ総定員数という現状は、いかにも多すぎる。この点は、私は制度発足の当初から指摘していたところである。加えて、3回まで新司法試験を受験できるという制度であることもあって、前年と前々年に不合格となった者も受験した結果、合格率は、2006年48%(合格者1009人)、2007年40%(合格者1851人)、2008年33%(合格者2065人)と漸減せざるを得なくなってきている。2002年当初の計画では、合格者数を2010年までに3000人にすることになっていたが、日弁連の動向などの最近の情勢では、これが困難となりつつある。2009年には、その数が2500人を下回るとなると、合格率はおそらく30%を割るのではないかと懸念している。

 そもそもこの30%という合格率も、修了者の8割は合格させるという当初の触れ込みとは大きく異なっている。これを信じてそれまでのキャリアを放り投げ、多額の学費を払って法科大学院に入学した社会人も多くいたと思う。法科大学院が発足した2004年から3年間勉強し、2007年、2008年と2回受験して不合格となった人は、今年2009年が最終的に与えられた受験の機会である(もう少し正確にいえば、5年間で3回の受験であるから、2011年までに3回の受験ができるが、ここではそれを捨象して話を進める)。仮にそれでも合格できなければ、本当に裏切られたと感ずるものと思われる。

 今回の定員の削減は、こういう残念な結果となった方の数をそれだけ減らすことにつながるという意味では、大いに評価できると思う。しかし、本当に効果のある対策は合格者数を3000人といわず、抜本的に増やすことであると今でも私は考えているが、それが日弁連の反対で叶わない夢に終わるのであれば、こうした形で法科大学院の定員削減を進めて、せめて定員の5〜6割は合格できるように制度設計を進めるべきではないかと思われる。たとえば、今回、平均で2割の定員削減で定員を4600人とすることができるが、それでは足りないので当初の計画通り4000人とする。他方で合格者を計画通りに3000人とする。そうすると、前年と前々年の不合格者がどれだけとなるかということにもよるのであるが、長期的には5〜6割の合格率となりそうである。

 それとともに、合格者の質、ひいては法科大学院の学生の質の問題がある。この点は、私も法科大学院で教えていて、日々感ずるところである。私は、2〜3年生を相手にしているのであるが、試験や課題を書かせたりすると、およそ半分強程度は、まあまあの文章を書いてきてくれる。ところが残りの人たちは、とても法律的文章とはいえない代物しか書けないのである。まず、法的知識がない。まあ、これは仕方がないとして、論理の進め方や発想法が法律的ではないのが一番困るところである。検討すべき課題を適示し、条文、判例、学説に即して消去法などを駆使して論説を進めていって、最後に結論を得るという、簡単なことができない。これは困ったことで、そもそも頭の構造がまだまだ法律家に向いていないというか、そもそも法律家になろうという準備ができていないのではないかとすら思う。

 そういう人に限って、「今まで何をしていたの」と聞くと、たとえば「まだ自分には何が適しているかわからなくて、とりあえず、法科大学院に入ってみたのです」とか、「銀行に勤めていたのですが、どうも仕事が合わなくて、いったんそれを辞めて、友人のIT会社を手伝っていました。実はそこも自分の居場所ではないなぁと思っていたところに、法科大学院制度が発足すると聞いて、入ってみたのです」などという。

 この前者の人は、社会に出る心の準備ができていない段階でいわばモラトリアム的に法科大学院を選んだにすぎない。その方が本人だけでなく親も体裁が良いからである。後者の人はいったん社会に出たのに、どこへ行っても自分に合わないと感じてしまうのである。実は、青い鳥は身近にいるというのに、それに気が付かない。こういう人は、たとえ法科大学院に入っても同じことで、ここにおいてもやはり居場所がないのではなかろうか。だから、いずれのタイプでも、どうしても法律家になろうという意欲に欠けてしまうので、おのずと勉強にも身が入らず、試験や課題にも中途半端な姿が出てしまうのではなかろうか。何か、最近の世相を反映しているようである。

 そこで、教師としての私の役割は何かと、いつも自問自答しているのであるが、まずは、本来できる人、やる気のある人には、論理構成がもっと緻密にできるように良き例を示してあげて、うまくできた人には誉めてあげて自信を持ってもらうことである。そしてモラトリアム型や青い鳥探し型の人たちには、法律って、こんなに面白いのだという、その論理の美しさや魅力を伝えてあげるようにしたい。試験の役には立たないかもしれないが、まずは法律でも何でも良いから、自分が全身全霊をあげて熱中できるものを見つける手助けができればと思っている。


(平成20年4月17日記)

 2009年3月24日、法科大学院協会理事長が「入学定員削減問題に関する所感」と題する声明を公表した。その原文は次のとおりであるが、法科大学院側の苦衷と焦燥感がにじみ出ている。

「法科大学院制度発足から満5年になろうとしていますが、近時、法科大学院制度に対して様々な逆風が吹いています。

 法科大学院協会としては、法曹養成問題に関する弁護士会の見解や一部政治家の意見に対して、これまで声明やシンポジウムの形で反論すべき点は反論するとともに、全国の会員校に対しても、それぞれの法科大学院が改善すべき点を改善してほしい旨を発信し続けて参りました。本年1月8日に全会員校に対して教育の質の改善に関するアンケート調査を実施し、その結果を2月2日にフィードバックし、引き続いて3月5日にフォローアップ調査をお願いしたのもその一環です。

 入学定員削減問題についていえば、現在、法科大学院の設置認可者としての文部科学省の強力な指導により、国立大学法科大学院を中心にほぼ2割の定員削減が推し進められています。その背景には、@「平成22年ころには司法試験の合格者数を年間3,000人程度とすることを目指す」との閣議決定(2002年3月)に対して日弁連等の反対が強いこと、A2008年の新司法試験の結果は、合格率33%(受験者数6,261名、合格者数2,065名)であったこと、B2008年度の法科大学院の入学定員は、総計5,795名であること、等の事情があります。

 これに対して、法科大学院協会は、法科大学院間の協力の促進とその教育水準の向上をはかる見地(規約3条)から、「初めに一定数の削減ありき」ではなく、各法科大学院が自主的に教育の質を向上することこそが重要で、その一環として定員削減問題を検討すべきである、という考えです。ここで教育の質とは、各法科大学院が、入学した学生に対して、その相当部分が法科大学院の教育課程を経ることによって司法試験に合格しうるか、または法務博士の資格において社会の各般で活躍しうる程度の学力をつけさせているか、遡っていえば、入口の段階でそのような見極めのついた学生を厳選して入学させているか、という問題です。

 いうまでもなく、入学定員削減は、各法科大学院の財政や教員数に直結する、「痛み」を伴う問題です。しかし、そのような目先の問題に拘泥して、法科大学院制度の原点(法科大学院教育連携法2条1号)――適確な入学者選抜に基づいて、少人数による密度の濃い授業、厳格な成績評価・修了認定によって将来の法曹を養成すること――を忘れることがあるとすれば、法科大学院に託された社会の負託を裏切ることになります。また、学生が司法試験に合格しまたは社会で応分に活躍するというアウトプットを十分に出せないままに、ただ教員数が確保されていることだけを理由にそれに見合う学生数を入学させようという法科大学院がもしあるとすれば、それは、学生に対する背信であり、上述した教育の質の点に照らし、法科大学院の原点を忘れたものというほかありません。もとより、各法科大学院における教育の質の向上に向けた努力の意味は、その置かれた状況によって異なり、ある法科大学院にとっては、より一層の質の向上という課題として現れ、ある法科大学院にとっては、教育体制等の根本的な見直しの必要として現れるかもしれません。いずれにせよ、教育の質の向上は、現在、すべての法科大学院の喫緊の課題であることは疑いがありません。

 法科大学院協会会員各校におかれては、引続き、法科大学院制度の原点に立ち返って、教育の質の改善に真摯に取組み、定員削減問題についても痛みを共有しつつ、平成22年度入試、遅くても平成23年度入試に向けて早急に検討のうえ、結論を出してほしいと願う次第であります。」

(平成21年3月24日)





 2009年6月1日、法科大学院協会が「法科大学院における教育の質の改善について」という資料を公表した。これは本年1月8日に全国の法科大学院に対して行ったアンケート調査の結果を集計したものであるが、その中で、Q5が世間の注目を集めた。それは、「貴校では、質の高い入学者および教員を確保できるかどうかの見地から、法科大学院設置時に決められた入学定員について見直しをされる予定がありますか」という問いである。これに対して、4段階で答えを求めたところ、次のような結果であったという。

 1.すでに変更した・・・・・・・ 7校( 9.5%)
 2.予定がある・・・・・・・・・28校(37.8%)
 3.予定がない・・・・・・・・・ 4校( 5.4%)
 4.未確定だが検討している・・・34校(45.9%)

 これを削減率別に法科大学院名を掲げると、このようになる。概して国立大学系は、20%の削減を目指している。有力私大系では、慶応大学と早稲田大学が削減する方向であるが、中央大学が削減しないとしているのが注目したいところである。

@ 20%超を削減・・・ 新潟、神戸学院、鹿児島、東北学院、広島修道、金沢、静岡、京都産業、大宮法科、西南学院、明治学院、久留米、学習院、神奈川、創価
A 20%を削減 ・・・ 北海道、筑波、千葉、東京、横浜国立、京都、大阪、島根、香川、九州、熊本、琉球、大阪市立、駿河台、独協、国学院、大東文化、東海、東洋、南山
B 20%未満削減・・・ 広島、白鴎、青山学院、甲南、一橋、神戸、明治、桐蔭横浜、名古屋、山梨学院、愛知学院、大阪学院
C 未定大幅削減 ・・・ 龍谷
D 削減を検討中 ・・・ 東北、信州、岡山、首都大学東京、慶応、駒澤、上智、法政、早稲田、中京、愛知、名城、同志社、立命館、関西、近畿、関西学院
E 削減予定なし ・・・ 北海学園、専修、中央、立教、
F 09年度削減 ・・・ 関東学院、姫路独協、福岡
G 公表に不同意 ・・・ 成蹊、日本(この二つは推定)

 各校別の現行定員とその見直しの方向は、別紙のとおりであるが、これらから推計されるところによれば、現行定員5,765人が、2010年度には少なくとも700人減り、2011年度になると場合によっては1000人分減るということである。

(平成21年6月3日)


21.第4回 新司法試験

 第4回目となる今年の新司法試験は、5月13日から次の4日間の日程で行われた。それぞれ、1日の正味の試験時間が、5時間半、7時間、6時間、4時間という長いものだったから、これは肉体的にも精神的にもかなり過酷な試験である。受験者の皆さんは、極度の緊張の中で全力を尽くさなければならず、相当にお疲れになったことと推察する。

5月13日(水)短答式
5月14日(木)論文式(選択、公法系)
5月16日(土)論文式(民事系)
5月17日(日)論文式(刑事系)

 法務省から4月23日に発表された資料からうかがえる受験者像は、次のようなところである。もちろん、この9,564人という受験予定者がすべて受験するわけではない。現に昨年は、7,710人の受験予定者に対して実際に受験したのが6,261人で受験率が81.2%(前年87.3%)であった。まあこれは、法科大学院の卒業から5年以内に3回受験しても不合格のときは受験資格を喪失する(正確にいうと、また別の法科大学院に入学して卒業すれば5年以内という受験資格が再びできるが、そういうことをする人は、ほとんどいないと思われる)ので、卒業したばかりでまだ合格の自信がない人は、受験を先延ばしにするのである。そういうことで、また今回も同じことが起きるという前提でこの約81%という率を使わせてもらって乗ずると、今年の実際の受験者は、約7,700人ということになる。

 さて、気になるのは合格率であるが、それには法務省が合格者数をどう決めるのかということにかかっている。これまで3回の試験を振り返ってみると、2006年合格率48%(合格者数1,009人)、2007年合格率40%(合格者数1,851人)、2008年合格率33%(合格者数2,065人)と、合格率が毎年漸減している。2006年は法科大学院制度が発足して最初の年であることから、2年コースの受験者しかいなかったため、48%という最高の合格率となった。しかし、これとて、司法制度改革の一環として法科大学院制度を設けることとなった当初の宣伝の約7〜8割の合格率という触れ込みと比べると、とても届かない数字である。しかし、その後の年はというと、合格率は目を覆いたくなるほどに低下の一途をたどっている。この原因は、文部科学省も、無論のこと法務省も、誰も管理ができないままに法科大学院の総定員を増えるに任せてきたからである。ようやく最近、文部科学省が指導を始めた結果、国立大学を中心に定員を約2割ほど削減する方向に動き始めている。しかし、たとえそれが実現しても、その数が減った卒業生が出るのはどんなに早くても3年後ということになるので、今の水膨れ状態は、そう簡単には解決できないだろう。とすると、今年の合格者数は、最近のトレンドを伸ばして推定するほかない。

 振り返ってみると、法科大学院制度が作られたとき、司法試験合格者数を2010年に3,000人に増やすという計画であった。そうすると今年は、2008年と2010年の真ん中をとり、合格者数は2,500〜2,600人というのが常識的に考えられる線である。ところが、これまで司法制度改革を支えてきた日弁連が、最近その態度を豹変したため、合格者数3,000人という目標そのものが揺らぎつつある。しかし、現在でさえ、超低空飛行を続ける合格率にあえいでいるというのに、それでは法科大学院の学生の信頼を大きく損ねることになってしまうと、私が懸念するところである。しかしながら現在のままの政治情勢では、もしかすると2,300人程度にするのがせいぜいのところであるのかもしれない。そうであるすれば、さきほどの受験者数と割り算をして合格率を出すと、29.9%となる。しかし、これだと、合格率が30%を割り込むことになるので、あまりにも外聞が悪く、法務省自身も避けたいと思うに違いない。とすれば、30%以上を死守して昨年とほぼ同じ水準となるようにするため、法務省に頑張っていただいて、できれば今年の合格者数を少なくとも2,400人にはしてもらいたいものである。ただし、以上の数字には何の根拠もなく、私の単なる希望的観測にすぎない。

 さて、今年の受験予定者の中の受験回数をみて、いささか気が重くなるのは、私だけではあるまい。法科大学院の教師なら、誰でもそう思うはずである。というのは、受験回数1回目が5,349人であり、これは昨年4,890人から459人も増えている。この間、法科大学院がたくさん増えたわけでもないので、そのほとんどが昨年の受験を手控えた人ではないだろうか。同様に2回目は3,116人と昨年より783人増え、3回目は1,099人と昨年より612人増えている。それぞれ昨年の試験、昨年と一昨年の試験に不合格だった人たちだ。特に最後の3回目の人は、今年合格しなかったら、もうタイム・アップとなってしまう。まさに崖っぷちに追い込まれているわけである。もうこうなったら、それこそ全力を尽くして頑張るしかあるまい。

 実はなぜそんなことを言うのかといえば、つい先日、私が教えている法科大学院で、今年の新司法試験を受験した卒業生たちの激励会を開いたからである。出席した卒業生の皆さんは、いずれもこの4日間の激闘を体験して相当に疲れ、それがようやく回復した頃の開催だった。私のクラスにいた元学生さんたちと話をして、ほっとした気持ちや発表まで心配な気持ちがよくわかった。しかし、「やるべきことをやって全力を尽くしたわけだから、ここに至ってくよくよしても仕方がないので、文字通り天命を待つという気持ちでいたらいいよ。どうしても心配ならとりあえず気分転換に小旅行でもしてきたらどうですか」とお勧めしておいた。

 私とて、私が教えた学生さんが皆、合格してほしいと心から願っているが、合格率からすると、決してそのようにはならないところが、やるせなく、そして悲しいところである。しかし、考えようによっては、それだからこそ、資格に値打ちがあるということなのかもしれない。


 受験予定者数等  9,564人(昨年7,710人)

 (1)性別構成 男性 6,688人(昨年5,374人)
        女性 2,876人(昨年2,336人)

 (2) 受験回数
  1回目 5,349人(昨年4,890人)
  2回目 3,116人(昨年2,333人)
  3回目 1,099人(昨年  487人)

 (3) 既修・未修別
  既修者・法学部卒   3,262人(昨年3,012人)
  既修者・非法学部卒   492人(昨年  412人)
  未修者・法学部卒   3,620人(昨年2,539人)
  未修者・非法学部卒  2,190人(昨年1,747人)



(平成21年5月24日記)



   第4回新司法試験の発表



 平成21年9月10日に、祝田橋の旧家裁庁舎跡で発表された第4回新司法試験の結果については、関係者はいずれも皆、首を傾げたのではないかと思う。というのは、最終合格者数が2043人と、前年の2065人と比べても、数が減少していたからである。これでは、2010年に3000人程度という目標を達成することは、まずもって非常に困難となった。

 その背景としては、法科大学院が乱立し、中にはほとんど合格者がないというところもあったり、あるいは新司法試験の合格者の中には司法修習を終えることができないなどの、質の低下が顕著になってきたことであろう。それにまた、弁護士の需要が当初想定されていたほど伸びていないことが、背景にあるものと思われる。かつて、司法修習を終えた新米弁護士は、どこかの法律事務所に居候を決め込み、しかる後に独立を目指すといういわゆる「イソ弁」が普通であった。ところが司法制度改革で弁護士の数が激増した結果、単に法律事務所の軒先を借りるだけの「ノキ弁」、さらにはどこの事務所にも属することができないので仕方なく自宅を使うという「タク弁」まで登場している由である。

 そのような厳しい情勢の下で、私が教えた法科大学院生の皆さんが気になるところである。一部からは喜びの声を寄せていただいているが、何しろ合格率が前年の33%から、3割の線を切って、27.64%となってしまったから、まあ本当に厳しいの一言に尽きる。これでは、私に縁のある学生さんたちのすべてから喜びの声を聞くことは、とても無理というものである。

 気になるのは、既修者と未修者との合格率の違いである。今年、前者は38.7%であるのに対して、後者は18.9%と、半分となった。未修者の4〜5人にひとりしか合格しないというのでは、リスクが大きすぎて、法科大学院に入学しようという他分野の人たちがいないのではないかと心配になる。このままでは、新司法試験は、いつか来た道をまた戻っていくようなことになりかねないのではなかろうか。



(2009年9月10日記)

   第4回新司法試験の最終結果


 最終合格者数:2043人(前年は、2065人)

【発 表 日】 平成21年9月10日発表
【出願者数】 9734人 (前年は、7842人)
【受験者数】 7392人 (前年は、6241人)
【短答合格】 5055人 (前年は、4654人)
【合 格 率】 27.64%(前年は、33.08%)

【総合得点】
  最高点:1197.94点、最低点:376.83点、平均点:767.04点
  (前年はそれぞれ、1407.84点、564.40点、930.64点)
【合格者内訳】
  最高年齢:55歳、最低年齢:24歳、平均年齢:28.98歳
  (前年はそれぞれ、59歳、24歳、29.20歳)
  男性:1503人(73.57%)、女性540人(26.43%)
  (前年はそれぞれ、1501人(72.69%)、女性564人(27.31%)
  受験回数1回目:1275人、2回目:597人、3回目:171人
  (前年はそれぞれ、1312人、633人、120人)

【既修未修】
  既修者法学部   1126人
  既修者非法学部   140人
  未修者法学部    491人
  未修者非法学部   286人

                                                                               (単位: 人数)

受験者数(昨年) 最終合格者数(昨年) 合格率(昨年)
7392(7842) 2043(2065) 27.64%
(33%)
東京大学 389(366) 216(200) 56%(55%)
中央大学 373(352) 162(196) 43%(56%)
慶應義塾大学 317(292) 147(165) 46%(57%)
京都大学 288(241) 145(100) 50%(41%)
早稲田大学 380(345) 124(130) 33%(38%)
明治大学 310(264) 96( 84) 31%(32%)
一橋大学 132(127) 83( 78) 63%(61%)
神戸大学 149(128) 73( 70) 49%(55%)
北海道大学 156(108) 63( 33) 40%(30%)
10 立命館大学 243(205) 60( 59) 25%(29%)
11 大阪大学 155(127) 52( 49) 34%(39%)
12 九州大学 174(105) 46( 38) 26%(36%)
13 同志社大学 235(210) 45( 59) 19%(28%)
14 上智大学 144(120) 40( 50) 28%(42%)
14 名古屋大学 120( 98) 40( 33) 33%(33%)
16 関西学院大学 191(168) 37( 51) 19%(30%)
17 関西大学 207(187) 35( 38) 17%(20%)
18 首都大学東京 87( 79) 34( 39) 39%(49%)
19 東北大学 154(127) 30( 59) 19%(46%)
20 法政大学 138(135) 25( 32) 18%(24%)
20 立教大学 112( 92) 25( 21) 22%(23%)
22 大阪市立大学 96( 82) 24( 33) 25%(40%)
22 千葉大学 64( 69) 24( 34) 38%(49%)
24 学習院大学 86( 87) 21( 20) 24%(23%)
24 広島大学 84( 52) 21( 19) 25%(37%)
26 愛知大学 41( 35) 20( 16) 49%(46%)
26 日本大学 153(148) 20( 26) 13%(18%)
26 横浜国立大学 79( 65) 20( 24) 25%(37%)
29 南山大学 59( 49) 18( 15) 31%(31%)
30 甲南大学 93( 71) 17( 12) 18%(17%)
30 専修大学 83( 88) 17( 20) 20%(23%)
32 成蹊大学 68( 45) 14( 17) 21%(38%)
32 新潟大学 81( 50) 14(  9) 17%(18%)
34 岡山大学 52( 35) 13( 11) 25%(31%)
35 大宮法科大学院大学 81( 81) 12( 16) 15%(20%)
35 創価大学 76( 60) 12( 13) 16%(22%)
35 山梨学院大学 46( 40) 12(  7) 26%(18%)
38 金沢大学 49( 47) 11(  4) 22%( 9%)
39 西南学院大学 67( 46) 10(  2) 15%( 4%)
40 近畿大学 50( 25) 9(  4) 18%(16%)
40 明治学院大学 77( 74) 9( 16) 12%(22%)
42 青山学院大学 89( 61) 8( 15) 9%(25%)
42 桐蔭横浜大学 62( 63) 8(  8) 13%(13%)
44 関東学院大学 56( 42) 7(  4) 13%(10%)
44 福岡大学 38( 33) 7( 10) 18%(30%)
44 北海学園大学 24( 13) 7(  2) 29%(15%)
44 名城大学 37( 31) 7(  5) 19%(16%)
48 國學院大学 55( 40) 6(  4) 11%(10%)
48 中京大学 38( 36) 6(  8) 16%(22%)
48 広島修道大学 47( 35) 6(  7) 13%(20%)
51 熊本大学 32( 33) 5(  7) 16%(10%)
51 久留米大学 50( 42) 5(  5) 10%(12%)
51 駒澤大学 48( 47) 5( 11) 10%(23%)
51 東洋大学 70( 55) 5(  4) 7%( 7%)
51 獨協大学 66( 40) 5(  8) 8%(20%)
51 龍谷大学 48( 24) 5(  2) 10%( 8%)
57 愛知学院大学 26( 16) 4(  0) 15%( 0%)
57 神奈川大学 60( 41) 4(  5) 7%(12%)
57 静岡大学 36( 17) 4(  2) 11%(18%)
57 信州大学 26( 19) 4(  0) 15%( 0%)
57 駿河台大学 80( 84) 4( 11) 5%(13%)
57 東北学院大学 33( 37) 4(  7) 12%(19%)
57 白鴎大学 24( 21) 4(  2) 17%(10%)
57 琉球大学 40( 24) 4(  3) 10%(13%)
65 香川大学 42( 21) 3(  3) 7%(14%)
65 神戸学院大学 28( 18) 3(  6) 11%(33%)
65 大東文化大学 43( 37) 3(  6) 7%(16%)
65 筑波大学 34( 26) 3(  5) 9%(19%)
65 東海大学 50( 34) 3(  4) 9%(12%)
70 大阪学院大学> 36( 28) 2(  1) 6%( 4%)
70 鹿児島大学 35( 23) 2(  1) 6%( 4%)
70 姫路獨協大学 26( 24) 2(  0) 8%( 0%)
73 島根大学 23( 26) 1(  4) 4%(15%)
73 京都産業大学 51( 45) 1(  4) 2%( 9%)

(法務省の発表による。)(平成21年9月10日記)


22.日弁連会長に反対派が当選


 平成22年3月、日弁連の会長選挙が行われたが、異例の逆転劇を演じて宇都宮健児弁護士が選任され、4月1日から会長に就任した。会長選挙は、最多得票だけではなく全国52の弁護士会の3分の1以上の支持を得る必要がある。宇都宮弁護士は最初の得票数では2位となったが、再投票では票数で逆転しただけでなく、42もの弁護士会から支持を得るに至った。従来の会長選挙は東京か大阪の会長経験者がなるのが普通であったから、そのような背景のない弁護士が選出されるというのは、まさに異例の出来事である。

 その背景には、とりわけ地方の弁護士会による、最近の弁護士数の激増に対する不満があるといわれている。宇都宮新会長の公約は、司法試験合格者数の大幅減で、従来の方針であった3000人(2010年頃)を1500人にするというものであり、これがなだれ現象のように支持を集めたといわれる。

 現に宇都宮新会長へのインタビューを目にすると、「弁護士急増に伴う新人の就職難は目に余る。従来は法律事務所に入って給料をもらいながら訓練を積んで独立する『イソ弁』が一般的だったが、今では席を置かせてもらえるものの無給の『ノキ弁』、弁護士登録と同時に独立する『ソク弁』がいるし、弁護士会費が払えない新人もいる」ということである。ちなみに、自宅で開業するのが『タク弁』で、その亜流として携帯電話だけで起業する『ケータイ弁』というのもいるらしい。そればかりか、奇をてらっているのか大真面目なのかはよくわからないが、渋谷にリーガル・バー六法という本物のバーを立ち上げた弁護士もいる。

 そうかと思うと、ベテランの域に達した弁護士の中にも、まるで投網で掬うように金儲けに走る輩が出てきた。2006年1月の最高裁判決で貸金・クレジット業界への過払い金請求が認められると、テレビや電車の宙吊り広告で大量に受任し、事務員をたくさん雇ってマニュアルに従って定型化した請求を行って金稼ぎにいそしむ事務所が出て来たのである。貸金業協会でこれまでの推定返済額は約4兆円というが、この手の事件を手がける大手事務所の年間収入は100億円ということである。この種の債務整理が、また新たな問題を引き起こしている。弁護士全体の倫理観が問われる問題でもある。その反面、司法修習を終えたばかりの若手弁護士が路頭に迷いかねない事態となっている。百花繚乱ならよいが、百鬼夜行というのであれば、本当に困りものである。

(平成22年5月23日記)



23. 第5回新司法試験の発表

法務省赤レンガ庁舎での合格発表


 平成22年9月9日午後4時に、法務省庁舎内で発表された第5回新司法試験の結果は、関係者の「悪い予感」が当たったといえる。というのは、最終合格者数が2074人と、前年の2043人と比べて大差なく、かつて喧伝されていた2010年に3000人程度という目標のたった3分の2だったからある。

 その背景としては、法科大学院が乱立して質の低下が顕著になってきたことに加え、法曹人口の拡大で特に地方の弁護士会を中心として過当競争を懸念する声に押されて日弁連の会長が拡大抑制派の宇都宮健児氏になったことも、何らかの影響を及ぼしたのではないかと思わないでもない。

 この夏のNHKのテレビ番組で、日比谷公園で寂しくおにぎりを食べる30歳の弁護士が登場し、「このようにせっかく弁護士になっても、とても食べていくどころではない」などという調子でナレーションが流されていた。その番組に出演した宇都宮会長は、「イソ弁」、「ノキ弁」、「タク弁」どころか、携帯電話一本のみが頼りの「ケータイ弁」も出てきているし、さらには事務所に属して先輩の仕事も見習うことも出来ずに即時開業せざるを得ない「ソク弁」まで登場していると語っていた。

 そのような厳しい情勢の下ではあるが、法科大学院卒の学生さんとしては、まずは目の前の試験という関門を突破することが第一の課題である。そういう意味で、私が教えた皆さんの首尾が気になるところであるが、幸いにして今年は、かなりの数の学生さんたちから合格を知らせる喜びのメールをいただいた。あの人なら、間違いなく合格するだろうという学生さんはすべて受かっていたのは、我ながら人を見る目があると自信になった。それに、こういっては何だが、あんな答案で大丈夫かなと思っていた人たちの中でも、ひとりだけだが受かっていた。一年遅れではあるが、あれから相当頑張ったのだろうと思う。よくやったと誉めて差し上げたい。この人からの合格メールが一番うれしかった。何しろ合格率が25.4%となってしまってからの合格だから、価値がある。

 それにしても、いただいたメールの内容には、ご本人の合格時の気分の高揚があるとはいえ、有り難いやら何やらで、こちらが気恥かしくなるようなものがある。たとえば、「先生には『法的文章とは何か』という基礎のところから丁寧に教えていただきました。試験本番でも教えていただいた点に留意しながら答案を作成したところ、結果を出すことができました。今の私の書く法的文章の核は、先生の授業において身についたものです。本当にありがとうございます。」などといわれると、穴があったら入りたくなる。

 それでまあ、このメールに対しては、私も比較的、押さえ気味ながら、こういう返事を書いたというわけである。

「 本当におめでとうございます。長い間、よく頑張って最高の成果を上げられましたね。心からお祝いを申し上げます。私の授業が、少しでもお役に立ったということでしたら、誠にうれしく思います。あなたの年のクラスで同学年の方としては、ほかにAさん、Bさん、Cさんとおられたのですが、あなたからのこのメールは、最初にいただいた朗報です。よかったですね。

 実は、昨日の午後4時頃に、法務省の前を通り過ぎたのですが、大勢の人だかりがしていました。インターネットでも掲示されるとはいえ、こうやって合格者名簿を現に見て、実際に自分の名前を確かめるというのは、やはり喜びも倍加することでしょう。しかしその反面、帰る途中の人の多くは、携帯を手にして『ああ、オレ。落ちちゃったよ』と言っているのを耳にして、資格試験の残酷さのようなものを垣間見た気がします。まあ、これが人生というものです。

 これからのあなたの前途には、洋々たるものがあると思います。しかしそのためには、一夜あけてさっそく今日から、所属する弁護士事務所を確定しなければなりませんので、そちらの方も、怠りなく、やっていかれては、いかがでしょうか。また、大学院の祝賀会などで、お会いしたいものですね。それでは、これからのご活躍を心からお祈りして、私からのお祝いの言とさせていただきます。」

 そうかと思うと、2年前に卒業して、今年が2回目の挑戦だった人もいる。私が大学院で教鞭をとる日の通学経路で、ときどき一緒になっていた人である。ともかく真面目で、何に対してもひたむきに取り組むというお人柄である。こういう人が弁護士になったら、依頼者からも信頼されるだろうなぁと思っていた。それ以来、かねてから、ときどきメールのやりとりをしていて、私はいつも「彼、どうしているかなぁ」と気に掛けていたのであるが、今年の合格発表の日から数日遅れで、次のようなメールが届いた。

「 突然のご連絡で失礼いたします。法科大学院においてご指導いただきました○○です。在学中は、懇切丁寧なご指導を賜り、また、学業を離れた相談にも応じて下さり、本当にありがとうございました。実は、昨年に続き本年5月に司法試験を受験したのですが、力不足ゆえ不合格となりました。先生に親身にご指導していただいたにもかかわらず、よいご報告をできず本当に申し訳ありません。

 幸いなことに来年度に改めて受験できることとなりましたので、本年度の結果を反省し、なぜ失敗したのかをよく考えて、これを踏まえた受験準備を行いたいと考えております。今後ともご指導ご鞭撻下さいますよう宜しくお願い申し上げます。」


 私も、思わず胸が詰まって、こんなメールを送った。

「 それは誠に残念なことでした。発表の当日、たまたま法務省前を通りかかり、発表を待っているたくさんの学生さんたちの列を見て、そういえば、あなたもこの中におられるかもしれない、うまくいけばよいがと念じていました。まあ、合格率が25%ということも、かなり影響したのではないかと思います。これに負けず、是非とも来年また頑張って受験されて、実力のほどを示していただきたいと考えております。

 長丁場ですが、健康に留意されて、これからのご健闘とご発展を切にお祈りいたします。」

 そうすると、すぐにこのような返信のメールをいただいた。

「大変お忙しいなか、ご返信をいただき恐縮いたしております。先生のご期待にお応えできるよう、また、教えていただいたことを無駄にすることのないよう一日、一日の学習に真剣に取り組んでいこうと思います。  今後ともご指導下さいますよう宜しくお願い申し上げます。」

 このように、たいへん真面目な方なのだ。こういう方に来年こそ、是非とも合格してもらいたものである。


(備 考) 合格者名簿は、また今年も地方誌の西日本新聞に掲載されていた。


(2010年9月13日記)


   第5回新司法試験の最終結果


 最終合格者数:2074人(前年は、2043人)

【発 表 日】 平成22年9月9日発表
【出願者数】11127人 (前年は、9734人)
【受験者数】 8163人 (前年は、7392人)
【短答合格】 5773人 (前年は、5055人)
【合 格 率】 25.40%(前年は、27.64%)

【総合得点】
  最高点:1191.92点、最低点:432.29点、平均点:744.00点
  (前年はそれぞれ、1197.94点、376.83点、767.04点)
【合格者内訳】
  最高年齢:66歳、最低年齢:24歳、平均年齢:29.07歳
  (前年はそれぞれ、55歳、24歳、28.98歳)
  男性:1482人(71.46%)、女性592人(28.54%)
  (前年はそれぞれ、1503人(73.57%)、女性540人(26.43%)
  受験回数1回目:1183人、2回目:619人、3回目:272人
  (前年はそれぞれ、1275人、597人、171人)

【既修未修】
  既修者法学部   1095人 (前年は、1126人)
  既修者非法学部   147人 (前年は、 140人)
  未修者法学部    584人 (前年は、 491人)
  未修者非法学部   248人
 (前年は、 286人)

                                                                               (単位: 人数)

受験者数(昨年) 最終合格者数(昨年) 合格率(昨年)
8163(7842) 2074(2043) 25.40%
(27.64%)
東京大学 411(389) 201(216) 49%(56%)
中央大学 439(373) 189(162) 43%(43%)
慶應義塾大学 355(317) 179(147) 50%(46%)
京都大学 277(288) 135(145) 49%(50%)
早稲田大学 397(380) 130(124) 33%(33%)
明治大学 335(310) 85( 96) 25%(31%)
大阪大学 180(155) 70( 52) 39%(34%)
一橋大学 138(132) 69( 83) 50%(63%)
北海道大学 144(156) 62( 63) 43%(40%)
10 東北大学 159(154) 58( 30) 36%(19%)
11 同志社大学 262(235) 55( 45) 21%(19%)
12 名古屋大学 139(120) 49( 40) 35%(33%)
12 神戸大学 144(149) 49( 73) 34%(49%)
14 立命館大学 249(243) 47( 60) 19%(25%)
15 九州大学 175(174) 46( 46) 26%(26%)
16 関西学院大学 182(191) 37( 37) 20%(19%)
17 上智大学 168(144) 33( 40) 20%(28%)
18 関西大学 220(207) 32( 35) 15%(17%)
19 大阪市立大学 119( 96) 31( 24) 26%(25%)
20 千葉大学 69( 64) 30( 24) 43%(38%)
20 首都大学東京 101( 87) 30( 34) 30%(39%)
22 法政大学 165(138) 24( 25) 15%(18%)
22 立教大学 116(112) 24( 25) 21%(22%)
24 日本大学 163(153) 21( 20) 13%(13%)
25 学習院大学 94( 86) 19( 21) 20%(24%)
25 専修大学 97( 83) 19( 17) 20%(20%)
27 創価大学 92( 76) 18( 12) 20%(16%)
28 金沢大学 54( 49) 17( 11) 31%(22%)
28 横浜国立大学 89( 79) 17( 20) 19%(25%)
30 広島大学 77( 84) 16( 21) 21%(25%)
31 愛知大学 44( 41) 14( 20) 32%(49%)
31 山梨学院大学 51( 46) 14( 12) 27%(26%)
33 大宮法科大学院大学 118( 81) 12( 12) 10%(15%)
34 筑波大学 43( 34) 11(  3) 25%( 9%)
34 成蹊大学 93( 68) 11( 14) 12%(21%)
34 甲南大学 110( 93) 11( 17) 10%(18%)
37 香川大学 52( 42) 10(  3) 19%( 7%)
37 南山大学 73( 59) 10( 18) 14%(31%)
37 名城大学 50( 37) 10(  7) 20%(19%)
40 駒澤大学 68( 48) 9(  5) 13%(10%)
40 新潟大学 82( 81) 9( 14) 11%(17%)
40 明治学院大学 87( 77) 9(  9) 10%(12%)
43 福岡大学 36( 38) 8(  7) 22%(18%)
43 岡山大学 53( 52) 8( 13) 15%(25%)
43 神奈川大学 53( 60) 8(  4) 15%( 7%)
43 近畿大学 57( 50) 8(  9) 14%(18%)
43 龍谷大学 70( 48) 8(  5) 11%(10%)
43 西南学院大学 72( 67) 8( 10) 11%(15%)
49 熊本大学 34( 32) 7(  5) 20%(16%)
49 広島修道大学 60( 47) 7(  6) 12%(13%)
49 東洋大学 77( 70) 7(  5) 9%( 7%)
49 駿河台大学 92( 80) 7(  4) 8%( 5%)
53 中京大学 42( 38) 6(  6) 14%(16%)
53 久留米大学 51( 50) 6(  5) 12%(10%)
53 静岡大学 37( 36) 6(  4) 16%(11%)
53 桐蔭横浜大学 83( 62) 6(  8) 7%(13%)
57 琉球大学 38( 40) 5(  4) 13%(10%)
57 信州大学 41( 26) 5(  4) 12%(15%)
57 國學院大学 68( 55) 5(  6) 7%(11%)
60 神戸学院大学 39( 28) 4(  3) 10%(11%)
60 京都産業大学 74( 51) 4(  1) 5%( 2%)
62 北海学園大学 31( 24) 3(  7) 10%(29%)
62 島根大学 29( 23) 3(  1) 10%( 4%)
62 愛知学院大学 34( 26) 3(  4) 9%(15%)
62 関東学院大学 55( 56) 3(  7) 5%(13%)
62 大阪学院大学> 55( 36) 3(  2) 5%( 6%)
62 青山学院大学 83( 89) 3(  8) 4%( 9%)
62 獨協大学 81( 66) 3(  5) 4%( 8%)
69 白鴎大学 35( 24) 2(  4) 6%(17%)
69 東北学院大学 39( 33) 2(  4) 5%(12%)
69 東海大学 55( 50) 2(  3) 4%( 9%)
69 大東文化大学 47( 43) 2(  3) 4%( 7%)
73 鹿児島大学 31( 35) 0(  2) 0%( 6%)
73 姫路獨協大学 30( 26) 0(  2) 0%( 8%)

(法務省の発表による。)(平成22年9月13日記)




24.法曹養成制度検討会議


 法科大学院について、しばらく大きな動きがなかったことから、私もこれをフォローすることは控えていた。ところが、2013(平成25)年4月9日、政府の「法曹養成制度検討会議」(座長:佐々木 毅 学習院大学教授・元東京大学総長)が、中間的とりまとめを公表した。これは、法曹有資格者の活動領域の在り方から始まって、今後の法曹人口の在り方、法曹養成制度の在り方に及ぶもので、法科大学院を巡る様々な問題点を指摘している興味深い報告書である。これに即して、私なりに考えるところを披露すると、次のとおりである。

 第1に、司法制度改革当時の見込みと異なり、「法曹有資格者の活動領域は広がりつつあるものの、その広がりは未だ限定的といわざるをえない」。考えてみればそれは当然のことで、この20年以上にわたって経済は低迷が続いてきたし、それ以前に日本は、アメリカのような訴訟社会ではないから、そもそも法律の専門家に対する社会のニーズはそれほど高くはない。その一方で司法試験合格者の数を毎年1200人程度から2000人を上回るほどに急増させたものだから、需給バランスが大きく崩れてしまった。法曹人口の数は法科大学院制度が開始された2004年と比べて5割も増加した。その結果、昨年12月に司法修習を終えた人のうち就職先となる法律事務所が見つからずに弁護士登録を見送った人は26%にものぼった。ちなみに2007年はこれは7%にすぎなかったので、就職難がそれだけ進んだということである。これに伴い、弁護士間の収入格差が開き、下位に属する階層が増えた。

 第2に、今後の法曹人口の在り方につき、「現在の法曹養成制度を取り巻く状況に鑑みれば、現時点において、司法試験の年間合格者数を3、000人程度とすることを目指すべきとの数値目標を掲げることは、現実性を欠く。現状においては、司法試験の年間合格者数の数値目標は設けないものとすることが相当である」とする。現実に、ここ数年の合格者数は2000人〜2100人程度(合格率25%)にとどまっていることから、当分はこの程度の数字で推移するものと思われる。

 第3に、法曹養成制度の在り方についてであるが、まあこれは「そもそも法科大学院制度なるものは止めてしまえ、現実にその導入前と同様の受験を可能とする司法予備試験の出願が2013年に1万1255人に達し、しかもその合格者の司法試験合格率が68%と、法科大学院修了生の25%を大きく上回ることからも、法科大学院は不要であることが明らかだ」などとする主張に反論するためか、「法科大学院を中核とする『プロセス』としての法曹養成の考え方を放棄し、法科大学院修了を司法試験の受験資格とする制度を撤廃すれば、法科大学院教育の成果が活かされず、法曹志願者全体の質の低下を招くおそれがある」としている。しかし、法科大学院に行くとなると、私立の未修者の授業料だけで400万円近く、これに生活費を加えると1000万円ほどの費用がかかる。優秀な受験者にとっては、果たして合格率が単年25%程度の『プロセス』にそれだけ支払う価値があるものかどうか疑問であろう。

 ここはやはり、法科大学院修了者の合格率を当初想定の7〜8割とし、それに見合うように法科大学院の定員を大幅にカットすべきであろう。半減させてもよいくらいである。ところが現実には、制度発足当初の法科大学院の数は74校、定員は5825人にのぼり、もうそれだけで単年合格者数の3倍である。もっとも、その後、定員をカットして2013年度は4261人となり、また姫路独協大や明治学院大など6校が既に学生募集を停止し、東北学院大も2014年度から募集をせず、また桐蔭横浜大と大宮法科大学院は2016年度から統合の予定であるが、それでも定員はまだまだ大幅に過剰である。とりわけ問題なのは、法科大学院間の合格率の格差が激しく、2012年では一橋大57.0%、京都大54.3%、慶応義塾大53.6%、東京大52.2%のようなトップクラス校とは対照的に、合格率が10%未満の法科大学院が20校もあるという見るも無残な状況である。こういう法科大学院は、学生や社会に対して責任を感じてしかるべきだと思う。

 この点、今回の報告書は、「現在の教育力に比して定員が過大な法科大学院が相当数あり、また、全体としても定員が過大になっていることから、入学定員については、現在の入学定員と実入学者数との差を縮小していくようにするなどの削減方策を検討・実施し、法科大学院として行う教育上適正な規模となるようにすべきである。その上で、その後は、法曹有資格者の活動領域の拡大状況、法曹に対する需要、司法試験合格者数の推移等を見つつ、定員の見直しを行うべきである。司法試験受験資格を原則として法科大学院修了者に限定している以上、法科大学院が法曹養成の中核としての使命を果たし、それにふさわしい教育の質を確保する観点から、課題を抱える法科大学院の自主的な組織見直しを促進するためにも、公的支援の見直しの方策を更に強化すべきである。その際、財政的支援の見直しのみならず、人的支援の見直しについても実施すべきである」とする。全く、その通りである。

 以上が今回の法曹養成制度検討会議報告書について、私の思うところである。しかし、問題はこれだけではない。私は、都内の国立と私立の法科大学院で数年間教えていたことがある。そのときの経験によれば、法科大学院の理念に基づくカリキュラムと教師陣の構成が、そもそも学生のニーズに合っていないのではないかと思うのである。つまり、学生は、要するに司法試験に合格したいし、合格したらすぐに「実務の専門家」として働きたい。しかし、法科大学院の理念は、私なりに解釈すれば「かつてのような司法試験受験塾ではなく、もっと高度な学問の香り豊かなことと様々な専門分野を教えるもの」というものである。その結果、法科大学院の先生方の構成は、大半が法学部の先生方で、これを中心に裁判官や検察官や弁護士などの実務家を若干入れるということになっている。ところが、誤解を恐れずに敢えて一般論を言えば、法学部の先生方は学問の香り高いことを教えるのは得意であるが、判決文や起訴状の起案や具体的事例に即して各種の証拠を積み上げていくという訓練などはほとんど経験がないであろう。その反面、実務家は学問の香り高いことは苦手ときている。

 このような教師陣の構成は、そもそも法科大学院の理念とは相容れるものではないのである。だから、法科大学院は既修者の2年コースであれば、1年目は学問的なことを教えてよいが、2年目はすべて実務家が教員となって、判決文や起訴状の起案をどんどんさせていって、またそういう問題を司法試験として出せばよいのである。ところがどの法科大学院でも、法学部の先生方を中心に教師陣を組み、学問的なことばかりを教えようとするから、最終学年になっても法律的な文章も書けないという目を覆いたくなるような学生さんを輩出してしまうのである。私は、そういう学生さんを見ていて悲しくなり、自分でも工夫してなるべく実務的な文章を書かせるようにしてきたつもりである。それはそれなりに学生さんからは評価されたが、本来であれば、どの教師もそのようにしなければ、実務家の養成など、出来るものではない。それに加えて、もうひとつ大きな問題がある。このようにすると、今度は「法科大学院は、受験塾ではない」などという不思議な反論に遭いそうなのである。もうこのあたりは、法科大学院信者のドグマとしか言いようがない。しかも、こんな受験教育はしないなどということが法科大学院評価の重要な基準となっているから、ますます始末が悪いのである。私は、法科大学院の教師陣を法学部の先生主体ではなく実務家主体とし、かつての司法修習所の1年目でやっていた座学と同じことをすればよいと思うのであるが、そうすると、教育者を任ずる皆さんからの強い異論が予想されるところである。まあこの考え方の差異は、法科大学院を単なる法曹養成機関としてとらえるか、それとも法曹教育機関としてとらえるかから生まれるものであり、その決着を付けずに今日に至ったからこそ、各所で大きな歪みや問題が生じているものと思う。こうしたことを考えれば、もはや前者としての性格をより強く打ち出すべきであると思うが、いかがであろうか。


(平成25年5月23日記)




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