This is my essay.








 私の住んでいるマンションの住人が、ケーブル・テレビ経由でインターネットをやりたいというご希望を出された。そこで、当地のケーブル・テレビ会社に聞いてみたところ、個々にやるには、マンションの壁にケーブルを這わせなければならないし、全体でやるには現在のケーブルでは線が細すぎるから、結局のところ全面的に取り替えなければならないとのことだった。しかし考えてみると、2009年頃までには地上波テレビ放送がアナログから全面的にデジタルに移行する予定となっているから、その時までにはケーブル・テレビ会社だけでなく当マンションでも、現在のケーブル設備を更新しなければならない。したがって、いまこの時点で設備を更新すると、二重投資になりかねない。

 というわけで、まず、全体でインターネットができるように設備を改めるのは時期尚早だからやめよう、次に、個々にケーブルを引いてインターネットをやるのも壁が傷むのでやめよう、ということにした。それではどうするかというと、個々の家庭の電話線をそのまま利用して、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line 非対称デジタル加入者回線)をやってはどうかとお勧めすることにした。

 そのためには、そもそも当地域でADSLができないと、目も当てられないということになり、私が試しに申し込んでみることにした。サービスを提供している会社は、NTTと、それに対抗しているベンチャーの草分けである東京めたりっく通信などという会社があるらしい。私としてもベンチャーを応援したいが、ただ最近の東洋経済によると、この会社は経営難とのことである。何でも、2万回線の契約しか獲得していないのに、50万回線の設備投資をしたらしい。というわけで、とりあえず、NTTに申し込んでみることにした。5月16日のことである。

 Internet Explorer のアドレス欄に、「NTT東日本」と直接打ち込むと、http://www.ntt-east.co.jp/にすぐ繋がった。そこで、フレッツADSLなるサービスの申込みを受け付けていたから、それを申し込んだのである。まず、私のマンションの電話番号がこのサービスを受け付けてくれる地域かどうかの確認があり、それから、暗号技術でガードされた申込書に必要事項を打ち込み、それで申込みは完了した。簡単なものである。ただし、申込みが殺到していて、実際の工事は、先になるという。おもしろかったのは、ADSLの機器をレンタルにするか、それとも買い取るかという項目で、もちろんこの世界では常識のレンタルとした。それから、自分の家での工事を自分でするか、それとも工事人に来てもらうかという選択肢があって、前者だと3000円くらい、後者を選ぶと1万数千円だという。何でも経験なので、自分でやることにした。さあ、いつになるか楽しみである。

 その申込み欄の横には、フレッツISDNの申込みキーもあった。「下手にこんなものを作ってしまったから、その設備投資が回収できるまでは、NTTはADSLをやりたくないし、また認めたくもないのだ。だから、お隣の韓国のADSL普及数は数百万人なのに、日本はまだ数万人単位しか行っていない」と言われていることを思い出した。それにしても、ISDNとADSLを並べて申込みを受け付けるなんて、NTTも大人になったものだと思った次第である。

 その翌日、私のマンションのインターネットをやりたい人に対して、「ADSLが申し込めたので、おやりになるなら、このアドレスに連絡しなさい」とお伝えしようかと思い、再び、NTT東日本のホームページを開いた。そして、パソコンの画面を見て、いやはや何というか、呆然としたのである。何と、ADSLの申込み部分がすべて画面から消えてなくなっていたからである。ホーム・ページ内で検索をかけても、一切、ADSLの申込み画面が出てこない。昨日は出来たのに、今日はもう、何の断りもなしになくなっている。私はもう、本当に心からあきれてしまった。せっかく大人になったと褒めてあげようとしたのに、これでは小ずるい中学生の如しである。これが、いわゆる独占の弊害というものか。




(平成13年 5月18日著)
(お願い 著作権法の観点から無断での転載や引用はご遠慮ください。)




ライン




悠々人生のエッセイ

(c) Yama san 2001, All rights reserved