アルゼンチンは、日本から見てちょうど地球の反対側に位置する南米の国である。最近では経済が混乱して国債のデフォルトを引き起こしたが、元大統領夫人のエヴァ・ペロン(エビータ)、サッカーのマラドーナ、タンゴ発祥の地として知られている程度で、誠に影の薄い国としか言いようがない。

 しかしそれでも、20世紀初頭には、世界で最も富裕な国として知られていた。日本も、日露戦争の時に、アルゼンチンがイタリアの造船所に発注していた二隻の戦艦(日進と春日)を譲ってもらったという恩義がある。このアルゼンチンの繁栄は、冷凍肉運搬船の開発により、欧州とりわけイギリスに牛肉や小麦など食料を輸出して、外貨をかせいでいたからである。今でもその名残りとして、人口より牛の頭数が多い。

 しかしその後、世界各国の工業化の波に乗り遅れ、今日では先進国から発展途上国へと凋落した初めての国との不名誉な称号をもらっている。私が訪問したときも、あちこちでそうした時流に乗り遅れた痕跡らしきものを感じた。これからの日本も、このような道をたどることのないようにと、ただ祈るばかりである。







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