場 所  三越・日本橋
平成13年 3月





 私がはじめて、リヤドロの人形に見入ったのは、マドリード市内にあった三越でのことである。たまたま、スペインを長旅の途中で、もう疲れたという感じになり、繁華街で見つけた三越に飛び込んだのである。そして、ショー・ケースの中にあった、「花飾り」という題名のついた陶器人形に見とれてしまった。それは、つばの広い帽子を被って、花束を持った女の子である。その顔もファニー・フェイスでかわいいだけでなく、花束も実に繊細で美しい。加えて、花束の下の手の形も、日本舞踊かタイ・ダンスを思わせるような微妙な向きをしている。「よしっ、これは買いだ」と思って、5万円ほど払って手に入れた。何しろ、20年ほど前の5万円だから、レートや物価水準を考えると、現在では少なくともその二倍の価値はあったと思う。まったく、旅先でお金が乏しいにもかかわらず、なぜそんな気になったのかはわからない。もうこの旅もこの都市でおしまいだという気楽な気分であったことも確かである。おかげでそれから帰国までの二日間というもの、節約に努める羽目と相成った。

 まあ、それはともかく、その人形は箱に包んでもらってあったが、何せ大きな包みなので、トランクには入らないし、もちろん手荷物の中に入るわけがない。帰国の当日は、仕方がないので、そのままそれを持って飛行場に行った。しかし、こんな壊れ物をトランクに押し込めるわけにもいかない。えい、ままよと思って、空港の待合室でその箱の包装を解いて人形を取り出し、それをそのまま手荷物のバックの中に押し込んでしまった。そして搭乗したのである。成田に着き、家に帰ってドキドキしながら手荷物を開けると、何ともなかったので、ほっとした。それ以来、この花飾りの人形は、我が家のマスコットとなっている。

 さて、今年の3月、日本橋の三越で、そのリヤドロ展が開催された。家内ともども、喜んで見に行ったのである。期待にたがわず、繊細で可憐なリヤドロ人形が、会場いっぱいに広がっていた。

(2001.7.10)
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出品作品 インデックス
花飾り  エンジェル ペガサス 花の売り子 三時のお茶
時の旅人 きつね狩り 南太平洋 飲み屋 お嬢さん




       花 飾 り


花飾り
さて、私の家のお嬢さんは、この右の女の子である。もう、20歳というわけである。どうですか。私たちは、もう20年も見ていて、なお見飽きない。いつ見ても、心休まる人形である。その左で手押し車を花をいっぱいにしているの男の子も、なかなかかわいい。この二つは、どうやら兄弟らしい。

       
エンジェル


エンジェル
 これは、思わず息をのむほどの愛らしいエンジェルである。特別にガラス・ケースに入っていて、箱入り息子のようである。お値段は、言わぬが花というところか。

       
ペガサス


ペガサス
 これは、天使を乗せたペガサスである。荷台の花も、大きいし、見栄えがする。天使も本当にかわいい。だいたい、ペガサスの顔の肢体も非常に品がいいところが良いのである。

       
花の売り子



 花の売り子である。これはしかし、リヤドロにしては、売り子さんの顔が月並みなのがやや残念である。しかし、このいろいろな花の種類と多さとその繊細さはどうだろう。これが、芸術というものであろう。

       
三時のお茶



 庭の隅の東屋でお三時のお茶を楽しむ三人の淑女である。小さい顔にもかかわらず、実に表情豊かで、話し声が聞こえてきそうである。そのバックの木々の緑もよく映えている(ただしこれは、何百万円の値がついていた)。

       時の旅人



 時の旅人という題名が付いていた。ただまあ、普通ならもう少し、おどろおどろしい老人が出てきそうなところであるが、まあ、この優しそうな顔はどうしたことか。これがリヤドロ流であろう。

       きつね狩り


 ハンチィングの乗馬姿である。いや、躍動的で、今にも馬や犬が走り出しそうである。陶器製でこれほどの躍動感を見せるとは、すばらしい芸術だと思う。日本の陶磁器の産地も、皿や湯飲みにこだわりすぎではないだろうか。


       南太平洋

 民族編とかいうコーナーがあって、各国の衣装を来たリヤドロ風人形があって、ややミスマッチである。たとえば、日本女性らしき人形もあったが、オペラの蝶々夫人のようなダラリとした変な着物を来ていたし、他の国についても同様であった。その中で、南太平洋の国のようなこのカヌーは、まあまあ、ましな方であった。やはり、あまりなじみのない風景を想像で作り出すのは、ちと危険なのである。

       飲み屋


 最後近くになって、これでもリヤドロかという人形があった。飲み屋の風景で、リヤドロにしてはとてもリヤルな人形なのである。酒の上でのヨタ話しが聞こえてくるようである。


       お嬢さん


 いよいよ最後に、リヤドロらしい人形をもってきたい。この幸せそうで平和な風景と、細かい花々。それにメルヘンチックな独特の色使いが、リヤドロの世界である。






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