夏も終わり、初秋ともいえる今日この頃である。つい先日、息子とゴルフに行った。前回は中学生の頃に初めて連れて行ったのであるが、それから十数年後、やっと学業が終わったので、「よし、行こう」とばかりに、勇んで出かけたというわけである。もう、私が会員となっているゴルフ場は処分しかけているので、どこかいいところはないかと、ネットで調べてみた。そうしたところ、ゴルフ・ダイジェスト社が開いているウェブ・サイトがあった。あれこれ見たら、プレーヤーの感想という欄があり、その中から「佐原カントリー・クラブ」というものがよさそうに思えたので、申し込んだ。 息子はもちろん初心者であるし、私もここ10年くらいは、ほとんどやっていないので、これまた初心者同様である。そこで、練習をしようと、文京区の自宅から地下鉄を乗り継いで、船堀のゴルフ練習場に行った。なぜここを選んだのかというと、以前、鑑賞魚の展示会がこの駅前で開かれて、その際に駅近くにこの練習場があることを覚えていたからである。200ヤードくらいの打ちっ放しであるから、ボールの曲がる方向も確認できる。息子には、あらかじめ、別添のような事項を伝えておいた。ゴルフも、まず頭からというわけである。 最初に、私がお手本をというわけで、ショート・アイアンを打つ。左手首が痛くなるが、まあまあ、まっすぐに飛んだ。そして息子の番である。あれ、結構、飛ぶではないか。次にドライバーである。私のは、飛ぶことは飛ぶのだが、左に巻き込むように飛んでいく。それも、ひどい時は、スクリューが巻くように飛ぶではないか。本当であるから、悲しい。私はテニスも、巻き込むようなクセ球で、とりわけ女性プレーヤーから、斜めスピンだから打ちにくいといわれている。それにしても、あれ、このゴルフ・ボールの飛び方はどこかで……と思ったら、私が初心者の時の弾道そのものだった。どうやら、完全に先祖帰りをしてしまっているらしい。「これはいけない。息子に教えるどころではない。これでも、かつてはハーフ38を出したこともあるのになぁ……」などということも、頭に浮かぶのであるが、やはり、10年のブランクは、とてつもなく大きいらしい。だいたい、打ったあとに左手が痛くなるのは困る。もっとも、毎週一回はテニスをやっているので、少なくとも右手は大丈夫である。ゴルフは左手でやるものなのに、そういえば、左手なんてこの10年間、全く使っていなかった。 息子はというと、もちろん打ち損じが結構あるが、ウッドの数発にひとつは、まっすぐの方向に直線的弾道で飛んでいくではないか。あらら、こちらが教えてほしいくらいである。その後、この練習場には何回か行って練習したが、息子は弾道が安定しつつあり、私は相変わらず、左に巻き込んでボールを飛ばしている。これはフックどころか、コルク・スクリューのごとくである。打席ではもう飛ばしたくて飛ばしたくて、左手を使う代わりにテニスで鍛えた右手で打っているのが悪いのかと思うが、そう簡単には直らない。もはや、ぶっつけ本番で行くしかないようだ。 ということで当日、インターネットの駅前探検倶楽部で調べた経路で、佐原まで出かけたのである。帰りのことを考えると、千葉方面には電車で行くのがよいが、しかし今度は朝が大変である。空港のおかげで成田まではよいのだが、それ以降、成田線に30分弱乗らなければならないし、佐原から更にタクシーで20分という遠隔地にある。タクシーの運転手さんに、水郷はこの辺りかと聞くと、ここが水郷の中心地で、伊能忠敬記念館もあるという。水田に囲まれたのんびりとしたところで、JRのSUICAも通じなかった。これは、とんでもなく遠くに来てしまったと思ったが、そういう田園風景中にポツンと、そのゴルフ場が建っていた。 バブル期の産物らしき贅沢なゴルフ場である。特に二階のスカイ・レストランは、眼下に池と両脇のコースを見下ろすもので、席に着いて景色を見渡せば、とっても気持ちが良い。天下を取った気分にもなれそうだ。しばらく眺めていたら、すぐに時間になって、電動カートに乗って出発した。フロントには、あらかじめ、ひとりが初心者だからツーサムにしてほしいと入っていたので、二人だけである。あいにくの雨の中、インの最初のコースの横に着くと、写真のように三段重ねの妙な石造りの像があった。最上段のものをしばらく眺めていると、なんだか吉田茂と似ている。中段の像は、まるで恵比須さま。下段はというと、あたかも仏像の下に踏まれている邪鬼のごとくである。それぞれ、味があるというのを通り越して、とてもリアルである。これを作った人の気持ちが込められているようだ。いずれにせよ、これらの石像はゴルフ場の主のようなので、敬意を表し、その前で記念写真をパチリと撮った。息子は、はじけるような笑いを見せ、良い記念の写真ができた。それにしても、留学以来、アメリカ人のように首が太く肩幅は広くなって実にいい体格になったし、その割には中身は生粋の日本人そのものの人柄を保っている。親がいうのも何だが、120点をあげたいところである。教養はもう十分であるから、これから社会に出て、良い経験を積み重ねていってほしいと願っている。それにしても、こうやって親子二人で楽しくゴルフができることを、感謝しなければいけない。 大事なこと、それは教養と品格 そんな気分でスタートを切ったのであるが、最初のホールは、息子はバンカーに捕まったりして散々であったが、私はまあまあというところ。次のホールは逆に私がチーピン・フックでひどい目に遭い、息子は、ドライバーがちゃんと飛んだ。そういう調子で、気がついてみると、息子とたいした差もなくいくつかのホールを進んでいった。そうこうしているうちに、グリーンが池の中に浮かぶショート・ホールに来た。正確にいうと、右手の親指のようになっていて、爪の部分がグリーン、そして指の根元が小山につながっている。要するに、手前、左、そして奥が池に囲まれているのである。距離138ヤードとあるので、7番アイアンを持って打った。どうやら、指の根元あたりに行ったようだが、短かったかもしれない。続けて息子が打つと、指の爪先に向けて一直線に飛んでいった。ただ、水しぶきは上がらなかったし、ポチャーンとも何とも音がしなかったので、「あの勢いでいけば池の奥に行ったのかもしれない……」などと思いつつ、カートに乗って近づいてみると、何と、二つのボールとも、グリーン右手にワンオンしていた。しかも、一直線に並んでいる。息子のボールは、いったん左に出て、それからスライス気味に戻ってきたようだ。これぞ親子と、二人とも、うれしかったのなんの……、思わず笑みがこぼれた。カップはグリーン左手にあり、約15ヤードの距離。息子が先に打つが、上りなので、3ヤードほど残した。それを見て私が強めにカツンと打つと、距離はぴったりで、1ヤードを残した。息子のパット2打目は無常にも左へ切れてボギー。私は強めに打って、幸いパーとなった。これが唯一のこの日のパーで、親父としての面目である。 雨にもマケズ、息子にもマケラレズ さて、次のパー4は、二人ともグリーンの右左をわたり歩き、私は最後の100ヤード上りを9番アイアンでやっとオンした。そこで、カートに乗って息子の様子を見ると、残り50ヤードとなっていて、ピッチングか8番アイアンを持っていった。どちらを選ぶのかなと見ていると、教えたとおりのフォームで8番を使ってパチンと打った。つまり、グリップを前方に出してのピッチエンドランである。私は、打った瞬間、デジカメのビデオを撮った。ボールの行方を見ていて、二人とも思わず、「おぉーっ」、「ああーっ、入りそうだ」と声を出した。本当に、あと30センチというところまでボールが近づいたのである。ゴルフは、こういうショットがあるから、やめられない。 快心の一打、ここにあり しばらく行って、長そうなパー4に来た。すると、何と、目の前に160ヤードほどの谷が広がっている。雨はいったん小降りとなっていたが、またひとしきり降り始めた。その中で、前の組が中間点の黄色い旗を越えたので、私がドライバーを振った。すると、遠くでカーンと音がしたので、どうやら谷を越えて、カート道に当ったらしい。うまくいった。次に息子の番で、これはまたきれいなスウィングで、グリーンのやや右に飛んでいった。二人とも、これには、うれしかった。よかったねといいながら、雨の中をカートを走らせた。行ってみると、私のボールはグリーンの真ん中、200ヤード地点に、息子のは右側にあって、これは220ヤードは飛んでいた。快心の当たりである。ところが。そこから先を見ると、砲台グリーンで、しかも前面に大きなバンカーが口を開けていた。よくないことに、雨脚が強まった。私のセカンドは体が逃げてしまって、チョロをして失敗。息子は真正面を狙って、ボールはまっすぐ飛んでいったが、何しろ雨が強くてよくみえない。音と手ごたえでは、グリーンに乗ったような雰囲気である。これは、パーを拾えるかと、本人はいい気持ちで近づいてみると、グリーンにはなく、何と手前のバンカーの、しかも上り坂に捕まっていた。これは、プロでもむずかしそうだ。案の定、脱出に3打かかり、捕らぬ狸の皮算用となってしまった。これもまた、ゴルフである。 油断大敵、慢心するな インの最後のホールには驚いた。池越えで右から左へと打つのであるが、ふと見ると、別のティーイング・グラウンドで同じ池に向かって左から右へと打っている。どうやら、インとアウトで同じ池を使って最終ホールとしているらしい。「こんなホールは、よくあるの?」と聞かれたが、「いいや、初めて見た」と答えた。息子が打ち、何とか池を越えたようである。私の番が来て打つと、ひどいフックをしたおかげで、距離は出なかったものの、何とか越えた。ところがそれからグリーンまでは、右に広がる池が気になって、左手のラフをわたり歩き、いやはや、ひどいスコアとなった。気がつくと、息子もまたグリーン直前のバンカーに捕まって、これまた苦労をしていた。ああ、ひどかったとグリーンを後にしようとしたところ、また例の石像が二つも、こちらを見下ろしていた。ひとつは、アルカイック・スマイルを見せていて、しかも雨にぬれていたせいか、とてもリアルな表情をしていた。まるで、「雨の中をご苦労さんだねぇ」と言われているような気がしたほどである。これが、天気の良い日でスコアもよいときは、「おお、よかったね。また来てね」ということになるのだろうか。像はこれを見る人の気分次第というところである。 人生は考え方ひとつで天にも地にも ずぶ濡れでクラブハウスに戻り、着替えをした。そして、くだんのスカイ・レストランに入っていき、正面に陣取った。ただし、強くなった雨がガラス窓をたたき、外がよく見えなかったのは、残念だった。机のメニューを見たところ、値段がない代わりに、+400円という表示があるのとないのとがあり、全く意味不明である。ウェイトレスさんに聞くと、これは基本料金に含まれているのとないのとの区別に加えて、含まれていないときの追加費用であるらしい。全く、芸の細かいことである。私は銚子のさしみ定食、息子はカツカレーを注文した。やはり、お互いに、歳相応ということか。割合、美味しかった。 さて、40分しかない短い休憩が終わり、幸いに雨がやや小降りとなっている中を、アウトに出て行った。電動カート中のコース・レイアウトを見て、これは左ドックレッグだ、今度は右だなどといいながら、ままならないゴルフを続けていった。そうして、168ヤードと表示のあるショート・ホールに出た。これがまた、この日で最も難易度の高いホールではなかったろうか。グリーンまで、ずーっと池で、しかもバンカーで守られている。まず私が4番アイアンで打ったが、越えきらずにボールはあえなく水に飛び込んだ。続いた息子のボールも、もう少しのところで、これまた水の餌食となってしまった。前進4打というので行ってみたが、黄色い印がないなぁと思ってふとグリーンを見ると、そのすぐ横にあった。つまりこれは、早くプレーせよということかと、二人で笑いあった。 アウトは、インと比べてそれほど難しくない気がして、最後のホールの直前でスコアを計算してみると、何と、息子に2打も負けている。あちらは、正統派のテニス選手とはいえ、これでは親父の面目丸つぶれだと思って、最後のホールに全力を傾けることとした。ところが、9番ホールを見てびっくりした。先ほどの池を交差して挟むホールではないか。しかも、今度は池の左から右へと狙う構造で、左へ行くほど岸が離れていくことから、私の左へ行く持ち球では不利となる。案の定、岸辺近くで力なく失速した。これでは、岸に乗っているかどうかである。その反対に、息子のフェード球には、この構造には適している。カキーンといい音を立てて、対岸を目指して一直線に飛んでいった。回りで見ていた人たちも、思わず、「おぉーっ」と声を上げる。ところが、残念なことに、左を狙いすぎて、あと1メートルのところで、大きな水しぶきとともに消えた。最後だから、これが岸に残っていれば、とても気分がよかったはずである。好事魔多し。 クラブハウスに戻り、雨で冷たくなった体を、二人とも露天風呂で温めて、帰途に着いたのである。親子ともども、とても印象に残る初秋の一日であった。それにしても、スコアというものは正直で、実はあと一歩に迫られしまった。この調子では、次回には逆転されそうだ。何とかしなくては。 出藍の誉れというよりむしろ、栴檀は双葉より芳しか? (参 考)ゴルフのレッスン 1.自由に力強く打てばいいのだが、ある程度の枠の下で打たないと、方向が定まらない。その枠とは、立ち方(スタンス)、握り方(グリップ)そして振り方(スウィング)である。 2.立ち方(スタンス) @ 後ろから打つ方向を向いて、地上に目印を探し、それとボールを一直線(飛ボール線)上に置く。 A 飛ボール線に水平に、つま先が合うように立つ。つま先は、右足が縦に近く、左足がやや左を向くようにする。 B 両肩の線が、飛ボール線に水平になるようにする。(目標を見てまたセットアップすると、右肩が出ていることが多いので、打つ直前に必ず右肩が出ていないことを確認する。) 3.握り方(グリップ) @ 一度、両手を左右から合わせるようにしてから、左手をやや内側にかぶせ、右手をそのままで、添えるとよい。左手は、指の付け根が二つほど、見えるようにするのが普通。 A 打つ前に、左手でクラブをボールのところに持って行き、それに右手を添える形でグリップを作る。打つ前には、少し左右に振ってみる。 4.振り方(スウィング) @ ボールと、自分の首を結ぶ線を半径とした円(スウィング・プレーン)があるような気持ちで、その円に沿って、クラブの本体や先端が移動するようなイメージを持つとよい。 A スウィングは、止まっているときから振りかぶってトップに持って行き、振り下ろすまでは、左手主体でいく。右手の肘は、常に地面を向いている。そして、ボールを打ち抜く瞬間の直前から、右手に力を入れてたたく。そして、両手をそろえてなるべく高いところでバランスを崩さずにフィニッシュをとる。 B スウィングのときの両足は、体が左右にぶれないように踏ん張る。特になるべく右足を踏ん張る方が、体が捻転して力をボールに伝えやすい。 C 以上を称して、Straightly take back, Throw to the sky! といわれた。 (平成18年9月21日著) (お願い 著作権法の観点から無断での転載や引用はご遠慮ください。) |
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