悠々人生のエッセイ





一眼レフのお勉強シリーズ 一眼レフの実践編シリーズ
(1)ホワイト・バランス (1)不忍池の蓮を撮影
(2)アート・フィルター (2)奈良の夜景を撮影
(3)露出補正とピント (3)水族館の魚を撮影
(4)連写機能とピント
(5)被写界深度とF値
(6)交換レンズの知識 (6)谷根千の花を撮影
(7)デジタル一眼レフ講座 番外編 〜 デジタルカメラ雑誌







ホワイト・バランスの調整をしていない状態


 7月2日になり、そういえば明日3日には、いよいよオリンパスの一眼レフE−P1の発売日だと思い出した。夕方、家に帰ると、家内からヨドバシ・カメラから留守電があったといって、それを聞かせてくれた。要するに、入荷したので明日以降いつでも取りに来てくれて結構とのこと。予定通りだと喜んで、さっそく3日のお昼に有楽町に行った。注文の品は売場の方で用意しているというので、行ってみたところ、ざっと見ると予約の箱が30個以上も並んでいる。私と同じように予約注文をした人が、こんなにいるのかと思いつつ、私の分をもらってきた。

 私には、一眼レフどころかそもそもカメラの知識がほとんどない。そこで、この日のためというと大袈裟だが、予約してからというもの、ネットやNHKのデジカメ講座を見て、少しずつ勉強していた。ようやく現物が手に入ったので、これを使って実際に撮ることができる。カメラにリチウム電池とSDカードをセットし、セットアップで年月日と時間を設定して、ズームレンズを取り付けた。各部を点検したところ、まず問題なさそうだ。そこでまず、自宅マンション一階ロビーの胡蝶蘭を撮ってみた・・・。あれれ、色がおかしい・・・。これがホワイト・バランスの問題か・・・。

ホワイト・バランス
 被写体は光源によって色が変わる。白い紙に、たとえば太陽光が当たっている場合と白熱灯の光が当たっている場合とでは、白さが異なるので、それぞれ調整をすることになる。

 ということで、WBのボタンを押して、ムカデのような形をした絵の「昼光色蛍光灯1(4500K)」と「昼光色蛍光灯2(6500K)」で撮ってみた。このうち、前者の方は、画面が白っぽくなりすぎてしまったので、後者の写真の方が実物の色に近かった。なかなか美しい胡蝶蘭ではないか。最初の写真とは全く違う。同じカメラで撮ったとは思えないほどだ。

 よしよしと・・・これでひとつ覚えた。しかし、まだまだ先は長い。今月末には、奈良に旅行をする予定なので、それまでには使い方をひととおり覚えなければ・・・。

ホワイト・バランスの調整を昼光色蛍光灯2(6500K)にしたもの


(平成21年7月5日著)





 このオリンパスE−P1の売りのひとつは、アートフィルターである。何かというと、「イマジネーションを広げる多彩な表現モード」と称して、6種類つまり、ポップアート、ファンタジックフォーカス、デイドリーム、ライトトーン、ラフモノクローム、トイフォトというソフトによるフィルターが用意されている。ポップアートは、カラフルで軽やかな元気な色の効果、ファンタジックフォーカスは、ソフトフォーカス特有の幻想的な効果、デイドリームは青くやわらかな光に満ちた流行の効果、ライトトーンは晴部を明るくしながら白とびを抑えた効果、ラフモノクロームは幻想的な粗粒子写真を再現する効果、トイフォトはトイカメラのような周辺減光の効果というものである。ははぁ、さようかという感じで、使ってみようという気になった。

 我が家から15分ほど歩くと不忍池があり、7月初めの今はちょうど蓮のシーズンである。蓮の花を見るには、明け方5時頃には来ていないと、あの「ポーン」という音とともに開くシーンが見られない。それは重々わかっているのだけれども、せっかくの日曜日には、長く朝寝を楽しみたい。そういうわけで、どうしても朝9時半を過ぎて、見に行くことになるが、もうその頃には、ポツン・ポツンとしか蓮の花が見られない・・・ああ、しまった・・・ということを、ここ数年繰り返している。また今年もそのパターンだったので、不忍池の一面を埋め尽くす濃い緑色の蓮の葉、また葉、またまた葉・・・のどこを見ても、ピンクの蓮の花がない。ない、ない、ないと思ってそれでもしつこく探すと、ああ、あの蓮の葉の下にひとつだけ咲いていた・・・という調子である。

 そこでまず、遠方の弁天堂を入れて、蓮の葉の大群を撮ろうとしたところで、アートフィルターのことを思い出し、ポップアート、ファンタジックフォーカス、デイドリームを試してみる。結論からいえば、ポップアートは、色が強調されるので、まあこれは成功、あとの二つは、撮れた写真を見ていると、気持ち悪くなる感じすらしてしまうので、早々に削除してしまった。次の写真は、ポップアートで撮ったものと、普通のオートで撮ったものである。これは、いささかあざとい気もするが、前者のポップアートが優っているといえそうである。

アートフィルターのポップアート
アートフィルターなしの普通のオート


 よしよし、これは使えると思って、わずかに咲いている蓮の花を探して、それをアートフィルターで撮り、普通のオートの写真と比べてみた。しかし、花の場合は、アートフィルターだと色具合があまりにも人工的になってしまい、まるで造花のような雰囲気となる。これはこれで、よろしいのではという気もするが、被写体によっては、微妙な自然の色の陰影が出る普通のオートの方が良いという場合がある。たとえば、次の二つの蓮の花は、アートフィルターなりの味わいがあるが、いずれも、それぞれその次に掲げた自然色の写真の方が優っていると思う。まあ、現代的なポップアートと、日本古来の侘び寂びのどちらをとるかという類の、その人の芸術に対する好みの問題かもしれない。
 
アートフィルターのポップアート



アートフィルターのポップアート
アートフィルターなしの普通のオート


(平成21年7月6日著)





露出補正なし
露出補正+0.3


 不忍池から上野動物園に入り、動物を被写体にして一眼レフE−P1の練習をしようとした。動物は動くので、そのたびにあわてて勉強内容を思い出してダイヤルをひねくっていると、もう動物はいなくなっているという有り様で、なかなかうまくいかない。でも、頭で考える前に指が自然に動いてダイヤルを回しているというのが理想なので、その意味からすると、動物園などは恰好の練習台となる。もちろん、動物を被写体にしても、誰からも文句をいわれないで済むし・・・。

 最初は、キリンのところに行ったが、目の前のオリには柵があってカメラには邪魔だし、だいたい、肝心のキリンが奥の方にいて、なかなかこっちを向いてくれない。ダメだと諦め、カバのプールに行った。ところがこれも、カバが親子でプールにどっぷり浸かっていて、たまに息をするくらいで、そもそも姿がよく見えない。小さな子がお父さんに向かって「ねぇ、カバはどこにいるの?」と聞いているくらいで、これも駄目だった。その次に、サイのところに行ったら、塩梅のよいことに、サイが突っ立っていて、少しも動かない。これはよしと思って、さっそく写真を撮る。ええと・・・プログラム・モードにしてと・・・両脇を締めて、パチリと撮った。おお、成功、成功・・・動かないのだから、当たり前だ。でも、顔が少し黒く映った感じがしたので、ここで露出補正をしようと試みた。明るくするなら、プラス方向へ補正だ。+0.3でどうだろうか。

露出補正
 デジタルカメラに内蔵されている露出計は反射光式露出計であるが、これは18%グレーを測光の基準にしている。だから、白い被写体や逆光の時は写真がグレーに写るようになるので、その場合は露出補正ダイヤルをプラス方向に動かして露出を明るい方向にシフトさせる。逆に被写体が黒っぽい場合は露出補正ダイヤルをマイナス方向に動かして暗くする必要がある。大切な写真は、露出を前後2段階くらいずつ動かして、何枚か撮っておく方がよい。

 それくらいの露出補正をして撮ってみたところ、液晶モニタ上ではまあまあ映っていたが、パソコン上でなければ、詳しくはわからない。それを家に帰ってパソコンで見たところ、確かに顔は明るく映っていたが、胴体の表面が妙に白っぽくなってしまっていて、サイの皮膚の皺が消えてしまい、逆にリアル感がなくなった。これは、露出補正をしない方がよかったようだ。

 ちなみに、露出補正のもうひとつのやり方としては、スポット測光にして、そのスポット部分を調整したい部分に当てて、それで測光して撮るというものがある。実は、これとオートフォーカスとの差がよくわからない。オートフォーカスをシングルターゲットにしてシャッターを半押しし(フォーカスロック)、それでピントを合わせて撮ると、一緒に測光もそのように調整されていると思うが、たぶんその考えでよいはずである。

 インドライオンのところに来た。ガラス越しにライオンが見られるようになっていて、目の前にメスのライオンが坐っている。これは良い構図の写真が撮れると思って、さっそく一眼レフを構えたのだが、暗い室内をガラス越しに撮るということで、どう調整したらよいのか、皆目、検討がつかない。プラス方向へちょっと露出補正をし、そしてピントを合わせようとしたのだが、なんと、緑の四角いAFターゲットの枠があちこち振れて、カメラもどうやってよいのかわからずに、フラ付いているようだ。仕方がないので、それをシングルターゲットAFモードにして撮ったのが、この写真である。ガラス越しにしては、まあまあ、成功したといえる。ところがすぐその後に、オスのライオンが現れて、メスと並んで坐った。これもまた、なかなか良い構図なので、すぐさま撮ったのだが、全体的に白っぽく映ってしまい、失敗作である。あわてていたのでピントが合わなかったのか、それとも露出補正をやり過ぎたのかもしれない。


ガラス越しに撮ったメスのライオン



(平成21年7月7日著)




連写したスマトラトラ
連写したスマトラトラ


 しばらく、ライオンを眺められる位置を占拠していたので、ほかのカメラマンにその場所を譲った。そして次に、スマトラトラのところへ向かうことにした。失敗を引きずるのは嫌なので、ここで再びガラス越しに室内の動物を撮ることができる。ところが、先ほどのライオンは岩の上に坐ってじっとしていてくれたのに、このトラは、右へ左へとせわしなく動き回るではないか。被写体としては、こちらの方がはるかに難しい。そこで、コンティニュアスAFと連写機能を使うことにした。CAFのボタンと連射ボタンを押し、被写体にカメラを向けてシャッターを半押しすると、ピピピッという音がして、ピントが合った。そこで、シャッターを全押しし続ける。カメラはカチャカチャと音を立て続ける。今から思うと、暗い室内だったので、ISO感度をもっと上げればよかった。800でも、構わなかっただろう。それに気付かずに200のままとしていたので、動きの速い目の前の画像は、やはりボケてしまった。それでも、何とかそれなりに収まったものが撮れたのが、上の写真である。なお、コンティニュアスAFのときは、いわゆる横方向への流し撮りをする場合は、手ぶれ防止機能を横方向のみ、オフにする必要がある(IS.2)。

 その次に、ホーホーッと、やたら元気な声を出している方向に行くと、そこはシロテテナガザルのオリだった。なんとまあ、クジャクのオスと同居している。喧嘩しないのだろうか。しばらく、クジャクが羽を広げてくれるのを待っていたが、どうやらそんな素振りもない。そこで、猿の方を被写体にすることとしたが、このテナガザルもあっちへ行ったりこっちへ行ったりで、落ち着かない動物である。それでも、しばし枝にやすんでいるところを連写することができた。今度は、光も自然光であり、うまく撮れたと思う。それが終わった後、西ローランドゴリラのところへ行ったが、ざっと見渡しても姿が見えないと思ったら、3匹とも、洞穴の中にいて、ぐったりとした様子で転がっていた。気温も高いし、やっていられないという気分だったのだろう。

連写したシロテテナガザル

 バードハウスのインコのところに行った。鳥というのは、いつも動いている。しかも、暗い室内である。ISO感度を上げるのを忘れて、そのまま撮ってしまったので、いくら連写機能を使っても、あまり良い写真は撮れなかった。たとえば、三羽いたりすると、そのうち少なくとも一羽は、どこそこ動いてしまっていて、じっとしていてくれないのである。まあそれでも、一枚だけ、ほどほどの写真を上げておこう。

連写したバードハウスのインコ

size="+2" face="MS 明朝"> 最後に、パンダのいなくなった上野動物園の隠れたヒーロー、ハシビロコウ(shoebill Storks)のところに立ち寄った。この鳥は、アフリカの湿地帯で、パピルスやアシの生えたところに生息している。小魚、両生類、爬虫類を餌としているようだ。その採り方はちょっとユニークで、湿地のところに、ともかくじっと佇んでいるのである。30分くらいは、へっちゃらだそうだ。そして、安心して近づいてくる小魚などをその大きな嘴で、さっと掬い採る。顔もなかなかユニークで、その表情が面白くて色々な方向からバチバチ撮っていたところ、急に大きな羽を広げて飛んでいってしまった。じっと立っているのに慣れているさすがのハシビロコウくんも、シャッターの音がうるさかったのかもしれない。申し訳ないことをした。

ハシビロコウ
ハシビロコウ


(平成21年7月8日著)





近くの朝顔。被写界深度が浅く、ほどよくボケている。よく撮れた。素直にうれしい。

 冒頭の朝顔は、さほど意識せずに撮ったものだが、背景がほどよくボケている。次に、これを上から撮った写真が、次のものだが、残念ながら、周囲がボケておらず、朝顔がこの写真の主役であることがわからない。はて、意識してボケさせる写真をとるには、どうしたらよいのだろうというのが、この被写界深度の話である。

近くの朝顔。周囲が全然ボケなかった。さて、どうしようか・・・?


絞り値(F値)

 レンズの焦点距離をレンズの絞りの穴の直径で割った値が、絞り値(F値)である。絞り値の数字が右へ一段大きくなると、取り込む光の量は半分になり、逆に左へ一段大きくなると、取り込む光の量は2倍になる。

被写界深度
 被写界深度とは、写真のピントが合っているように見える領域の広さのことをいう。これが深いと、全体を把握しやすい写真となるが、その反面、マクロ撮影のように特定の被写体に焦点を合わせたいとようなときには、散漫な写真となる。たとえば、コンパクトデジカメのように撮像素子が小さいサイズのカメラは、使うレンズの焦点距離が短くなることから、被写界深度が深くなり、ボケにくいカメラになってしまう。

・・・などと初めて聞いて、すぐに理解できる人はいないと思うが、実は私もそのひとりである。一眼レフの最大の魅力は、周囲がボケるように写るマクロ撮影ができることと思っていたから、はて、どうしたものかと思っていた。そもそも、今回、E−P1とともに、パンケーキ・レンズと望遠レンズを買ったのだけれども、やはりフォーサーズのマクロレンズも買わなければならないか、どうしようかと迷っていた。仕方がないので、ネット上で調べると、要するにこのようなことを言っているのではないかとわかったので、それを表にしてみた・・・でも、やはり、結構ややこしい。


被写界深度、絞り、F値、焦点距離の関係


(平成21年7月9日著)




オリンパス・ペンE−P1の二つの純正交換レンズ。右が広角単焦点レンズ、左が3倍の標準ズームレンズ


 私は一眼レフについて何にも知識がなくて、いきなり買ってしまったわけだが、それでも一眼レフには交換レンズが付き物で、しかもそのお値段は相当高いものだということぐらいは知っていた。オリンパスのサイトによると、交換レンズには、3種類あるという。

 @ 広角レンズ・・・広く写すことができ風景を壮大に見せたり、狭いところも広く表現できます。
 A 望遠レンズ・・・遠くのものを近くに引き寄せ、迫力のある表現ができます。
 B マクロレンズ・・被写体に近寄って写すことができ、小さなものなどを大きく表現できます。


 それじゃ、標準レンズとは、いったい何なんだと聞きたくなるが、答えが書いていないので、ウィキペディアに助けを求めると、こういうことらしい。「写真で、原板(フィルムやガラス乾板など)の実画面サイズの対角線長に近い焦点距離のレンズのこと。対角線長の焦点距離のレンズは、パースペクティブが自然で、ポートレートを撮影する際のモデルとの距離も適度と、多くの用途で使いやすい。標準レンズより短焦点のレンズを広角レンズ、長焦点のレンズを望遠レンズと呼んでいる。その中でも、特に広角なものを超広角レンズ、特に望遠なものを超望遠レンズと呼ぶ。さらに中望遠レンズや準望遠レンズ、準広角レンズなどという分類もある。それらの基準は曖昧で、メーカーや資料、時期によって微妙に異なる。少なくとも、標準ズーム付きの一眼レフカメラやデジタルカメラが当たり前となったことで、中望遠、準望遠、準広角などの単焦点レンズは存在意義が薄らいだといえよう」なるほど、そういえば、私が今持っているコンパクト・デジカメも、確か8倍ズームだったことを思い出した。これはこれで、ものすごく高性能のレンズだったのだ。

 オリンパス・ペンE−P1には、今のところ純正レンズとしては、パンケーキ型の広角単焦点レンズと、標準3倍という標準ズームレンズの二つしかないようだ。ネットの噂話では、「オリンパスでは来春を目途に超広角ズームレンズと高倍率ズームを投入するなど、対応レンズを徐々に増やしていく計画」だという。それにしても、超広角ズームや高倍率ズーム・レンズもいいけれど、純正のマクロ・レンズが早く発売されないかなぁ・・・。

 それはその時になっての話であるが、ともあれ私は、その二つのレンズ付きのセットを買ってしまった。型式名は、広角単焦点レンズの方が、34mm相当の画角に対応する「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8」で、小売価格は49,875円。標準ズームレンズの方が、35mm換算で28-84mm相当の画角に対応する「M.ZUIKO DIGITAL ED14-42mm F3.5-5.6」で、価格は、M.ZUIKO DIGITAL ED14-42mm F3.5-5.6が36,750円である。あれあれ、薄いパンケーキ型レンズの方が高いとは、いささか納得のいかないところである。

 実際にこれらのレンズをカメラに付けてみると、使い勝手が大きく違う。パンケーキ型レンズの場合は、厚みがわずか22ミリと、非常に薄い。だから、これを付けて写真を撮っていると、このカメラはファインダーというものがなくて液晶画面を見て被写体を眺めるため、まるで普通のコンパクトデジカメと変わらない感覚である。重さは、カメラ本体が335g、パンケーキ型レンズが71gだから、合わせて406gにすぎない。ちょっと重い昔のコンパクトデジカメとほとんど同じといってもよい。ただ、パンケーキ型レンズは単焦点レンズなので、撮っていてもズームができないから、素人には少しも面白くない。しかし、プロの眼ではまた違っていて、発表時の資料では、「薄さ22mmの超薄型パンケーキレンズ。レンズ全面にマルチコートを採用し、ヌケのよい描写性能を確保している。また、円形絞り機構を採用することで、自然なボケ味を演出する。さらに、ZUIKO DIGITAL 25mm F2.8と比較し、約2倍となる高速なオートフォーカス駆動を実現した」とのこと。悲しいことに、何のことか、さっぱりわからない。

 他方、標準ズームレンズの方は、わずか3倍程度だが、それでもズームが自在にできるので、現在のコンパクトデジカメと同じような感じで撮ることができる。だから、私はもっぱらこちらのレンズで撮っている。パンレットの解説によれば、このレンズは、いわゆる沈胴型といって、三重に畳み込まれていて、そのぶんコンパクトになっているし、重さも150gと軽量であるから、持ち運びしやすいのが良い点である。こちらも、プロの評価は「携帯性を高めるため、沈胴式の鏡枠機構を採用し、厚み43.5mmというコンパクトサイズを実現。ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6と比較し、体積比65%、質量比80%となっている。また、ズーミングによる全長変動が少ない負先行タイプの3群ズーム構成を採用したほか、EDレンズとHRレンズを貼り合わせることで、色収差発生を抑制する」とのこと。これも何を言っているのか、さっぱりわからないが、まあ、何はともあれ、性能を保ちつつ、その小型化に努めてくれたようだ。私としては、もう少しこれを使い込んでから、使い勝手をコメントすることにしよう。

 ところで、ネットサーフィンをしていると、ズームレンズの使い方を教えてくれるサイトがあった。それによれば、「皆さんはズームレンズの使い方を知ってますか?。昔のプロは性能が悪いという理由であまりズームを使いませんでしたが、今じゃ仕事にも便利に活用しています。でもそれはレンズ交換の手間を省く目的で使っている場合が多いですね。写真がうまい人は『1.ズームで希望の焦点距離に合わせて』『2.撮影する場所を移動して』『3.カメラを覗いて』シャッターを押す。おやじはこれがズーム本来の使い方じゃないかと思っています。一方、初心者や写真を良く知らない人は『1. ファインダーを覗いて』『2.自分は動かず』『3.ズームで大きさを変え』シャッターを押す。でもこれじゃいい写真撮れるわけないですよね?。ところが50mmを使ったことがなく、最初からズームで写真を始めるとこの使い方が身に付いて上達しなくなるようです。多分、どの焦点距離にすればどんな写り方になるか想像できないからでしょうね。」いやはや、これは全く私のことを言い当てている。まさに慧眼としか言いようがない。そういえば、私はテニスをするときでも、自分自身の体はあまり動かさずに、ラケットを持った手をちょいちょいっと動かし何とかごまかしてボールを打つ癖があり、コーチからは、「悪い癖ですが、もう今さら変えられませんね」と、さじを投げられてしまっている。まさか、それと同じようなことがカメラでも起こっているとは、気がつかなかった。そういうことで、標準ズームレンズばかりに頼るのではなく、パンケーキ型の広角単焦点レンズをもっと使い、しっかりマスターしなければ・・・。



【E−P1の売れ行き】

 ところで、このオリンパス・ペンE−P1は、7月3日の発売以来、果たして売れているのだろうか。その点、ネット情報によると、「出足が好調だ。発売1週目となる2009年6月29日〜7月5日の『BCNランキング』では、レンズキットなどを合算したデジタル一眼のシリーズ別販売台数で19.3%のシェアを獲得し、売れ筋ランキング2位のスタートを切った」という。ははあ、この未曽有の世界的不況の折りにもかかわらず、私と同じような新し物好きのおっちょこちょいが、世の中にこんなにいたとは思わなかった。



【交換レンズZUIKO DIGITAL】

 オリンパスのサイト中に、FourThirds規格の交換レンズ、ZUIKO DIGITALを詳しく説明しているものがあったので、ここで引用させていただく。E−P1の純正レンズがなかなか出ないなら、これを買うことにしよう。

 「ズイコーデジタル」は、デジタル専用設計により、撮像素子に対して光がほぼ真っすぐ入るように設計されており、画像周辺部や広角レンズ使用時でも、画質や光量の低下を最小限におさえ、撮像素子の性能を最大限に発揮させる高い描写性能が特長のフォーサーズシステム規格に準拠したシステムです。

@ ワイドズーム
 ワイド側12mm(35mm判換算:24mm)未満の広角域をカバーするズームレンズ。広角レンズの特長である遠近感の誇張や深い被写界深度などが、あなたの想像を超えた空間美を造り出します。

A 標準ズーム
 12mm-18mm(35mm判換算:24-36mm)準広角域から望遠域までをカバーするズームレンズ。ポートレートから風景まで自然とこなせる高い画角域が、あなたの機動力をしっかりと支えます。

B 望遠ズーム
 テレ側100mm(35mm判換算:200mm)以上の望遠域をカバーするズームレンズ。圧縮効果などが引き出す表現力とコンパクト性が、望遠の世界を拡げます。

C 単焦点
 単焦点ならではの個性や性能を託されたレンズ。被写体を斬新に切りとる望遠域、空間意識を超えさせる魚眼、視覚の原点ともいえる標準レンズ。単焦点レンズはすべてに奥が深い。

D マクロ
 気軽に近接撮影ができるレンズ。日常の視覚を超えた近接撮影の世界は、ファインダーを覗いた瞬間から多くの人を惹きつける不思議な魅力に満ちています。


 そうか、そうか・・・。いやはや、物入りなことになりそうだ。

(平成21年7月12日著)




 【カメラの三脚を購入】 

 7月下旬に、奈良と飛鳥へ旅行に行くことなった。飛鳥では、サイクリングで回るのが景色を最も楽しめる方法と聞いて、レンタサイクルを申し込んだ。そのとき、貸してもらう自転車の中に電動のものがあるといわれたので、周りが少し冷ややかな目で眺めるのも何のその、さっそくそれを確保したのである。

 ところで、その日の夜は、奈良の猿沢の池の近くに泊まることになっているが、東大寺や春日大社の門などが、午後10時までライトアップされているという。それでは、夜のお寺を撮って来なければせっかく一眼レフを持って行った意味はないと思い、三脚を購入することにした。

 例の通り、有楽町へ行ってたくさんの三脚を見て比較したのだけれども、まったく、なんでこんなに安いのかというのが正直なところである。たとえば、私が買ったベルボンCX444という三脚は、ケースも付いて価格がたったの3750円という安さである。ひと桁間違っているのではないかとか、よほどの粗悪品か、それとも部品が足りないのではないかと疑念が生じたくらいである。

 しかし、持ち上げたり、つくづく眺めたりしてみたが、別に不具合はなさそうで、カメラ台ストッパーは付いているし、段数は4段、高さは145cmだが、エレベーターを上げれば私の背の高さでもカメラの液晶画面を見るのにかがみ込む必要はない。各脚に3つずつ付いている脚ロックレバーはちゃんとしている。重さはわずか1.3kg、畳んだときの長さは48cmで、何とか携帯できる。とりあえず、これで夜景を撮ってみよう。しかし、こんなに安いのでは、気楽に忘れて来そうで、それが怖い。メーカーも、こんな価格ではやってられないということかもしれない。

 これでまた、カメラの付属品が増えてしまった。この調子で、私のカメラ狂いはどこまで行くのだろう・・・。次はマクロレンズを買うことに決めているが、まあ、こうなれば、行くところまで行ってみるか・・・。これが趣味というヤツである。



(平成21年7月18日著)




 【PL(円偏光)フィルターを購入】 JAN番号4957638202015

 9月となり、天候も良くなって撮影日和が続きそうだ。カメラと三脚を担いで外出が多くなることだろう。そこで、特殊撮影用フィルターとして、MARUMIのC−PL(円偏光フィルター)(露出倍数2.0〜4.0)の40.5m/mを買った。水面の反射を抑えたり、空の青さを引き立たせたりするフィルターである。私は池の中の鯉を撮るときなどに使いたいと思っている。しかし、レンズの直径が特殊なことから、大手のケンコーなどは作っていなくて、わずかにこのマルミ光機株式会社が製造していた。なるほど、マイナーなカメラを買うと、こんな苦労をするのかとわかったところである。しかしそれでも、注文してからわずか3日間で入手できることとなった。説明書によると、次のようなことだった。

1.PL(偏光)フィルターの説明
 @ 一般には偏光フィルターと呼ばれる。ショーウィンドゥ、ガラス器、水面の撮影には最適です。
 A 光の方向を限定し、不要な反射を取り除き、質感や色彩を鮮明に写します。

2.C−PL(円偏光)フィルター
 @ このC−PL(サーキュラーPL)フィルターは、光学系に偏光性ハーフミラーを内蔵したカメラに適しております。
 A 従来のPL(偏光)フィルターと同じように、ファインダーを覗きフィルター枠を回転させ、反射光の除去されたポイントや青や緑のコントラストの効果が確認されたポイントで回転を止めて撮影します。反射除去30〜40度の位置が効果的で、青空の深いコントラストを表現したい場合は順光の方が効果的です。
 B カメラによりファインダーに青、もしくは淡茶の着色現象が出る場合がありますが、これはファインダー像だけの現象で、撮影されるフィルムにはなんら影響はありません。



(平成21年9月9日著)





 一眼レフを買って、とりあえず説明書を読んだ。それから、カメラ雑誌などで知識を仕入れるように努めてはいる。これらと並行して、実際に花や夜景や水族館の魚などを撮りに行き、自分なりに慣れるようにしている。しかし、ゴルフと同じように、自己流でやっているより、最初からカメラ教室にでも行って、ちゃんとした人から教えてもらおうと思った。よくしたもので、メーカーのオリンパスでも、デジタル・カレッジと称してその種の講座を設けている。

 そこで夏休みで暇な時期を探したところ、ちょうど手ごろな講座があった。それも、午前中に基礎編を2時間、午後に応用編を2時間半と、けっこう大変なスケジュールである。しかし、その頃は特に忙しくはないし、何といっても1日で済みそうなので、忙しい身の私としては大助かりである。ということで、その日は仕事は休むこととして、朝から西新宿のモノリス・ビルというところに出かけたのである。その前に、この講座の宣伝文句と、内容を掲げておこう。



 デジタル一眼レフに興味がある方、又はデジタル一眼レフカメラをお持ちの方で、使い方を詳しく知りたい、機能を使いこなしたい方向けの講座。(いずれも、講義/実践)

【基礎編】

1.「カメラの各部名称と役割・基本操作」
  ・ストラップのつけ方
  ・ファインダー視度調整
  ・スーパーコンパネの使い方
  ・1枚/選択/全消去 など
2.「知っておくと便利な機能」
  ・AFロック
  ・連写
  ・ライブビュー など
3.「失敗を少なくするための機能」
  ・露出補正
  ・ホワイトバランス
  ・ISO感度
  ・設定リセット など

【応用編】

1.「撮影機能のおさらい」
  ・露出補正
  ・ホワイトバランス
  ・ISO感度
  ・スーパーコンパネの使い方 など
2.「カメラの基礎知識」
 ・焦点距離
 ・露出
 ・各モード(P/A/S/Mモード)
 ・ヒストグラム
 ・RAW など
3.「知っておくと便利な機能」
 ・Fnボタン機能切替
 ・ダイヤル機能切替
 ・連写ボタン機能切替 など
4.「被写体にあわせて選ぶZUIKO DIGITALレンズ」
 ・ZUIKO DIGITALレンズの特長
 ・被写体別おすすめレンズ
 ・レンズ交換しながらの簡単な撮影 など


(平成21年8月 6日著)




【基礎編】
ボケを試してみた写真。望遠側で、背景をできるだけ離すようにして、接写したもの。


 オリンパス・デジタル・カレッジ講座を受けることとなっていたその当日の朝、西新宿のオリンパスのセミナー室に行った。暑い日で、建物に入ったとたん、汗が噴き出してきた。この日の受講者の定員は30人、午前は基礎編でこれはデジカメ一眼レフを初めて持つ人が対象、午後は応用編でデジカメ一眼レフのことを少しは知っている人を対象とする。私は全くの初心者だが、別の日にそれぞれを受けるというのも面倒なので、1日で両方を受講した。午後になってみると、午前中に見た顔が何人かいたので、私と同じようなことを考えた人がそれだけいたようだ。

 さて、建物に着いて指定されたセミナー室に行き、30人の受講者の皆さんを見まわすと、職業も性別も年代も、まちまちな人々が来ていた。意外なことに、女性の比率がけっこう高くて、4割近くはあったろうか。女性の場合は、若い人・・・といっても30歳代後半・・・から、どう見ても70歳を超えているとおぼしき人まで、どの年代も満遍なくいるという感じである。それに対して男性の場合は、これはもう定年で退職したという顔をした、いかにも暇そうなお爺さんばかりで、それ以外の若い人はわずかに2〜3人である。私はというと、まだ退職者ではないが、アラカンだから自主的にお爺さん組にカウントした。

 午前中の基礎編は、インストラクターがテレビの天気予報のような若いお姉さんで、ハキハキしていて、聴いていて小気味がよかった。これは、彼女の天職だなぁと思ったほどである。内容は、要するに一眼レフに添付されている取扱い説明書そのものを聴いているのだけれど、説明書の原文には総じて各種ボタンの機能が書かれている程度であるので、それがなぜそうなっているのか、その意味は何か、どういう場面で使うのかなどということまでは、書かれてはいない。この講義では、その意味を一々確認しながら聴けたので、非常に役立った。

 最初は、初心者相手らしく、ストラップの取り付け方である。「そんなこと説明書に書いてある。馬鹿馬鹿しい」とは思ったが、あの通りにやっていない人が30人中数人いたから、私以上に説明書を読まない人がいるのかと驚く。「あの通り」というのは、通し終わった紐をブラブラさせないように、既に通し終わった紐と重なるように三重にするという工夫だが、こうしておくと外れにくいので、「プロ結び」と言っているらしい。なるほどと、納得した。

ストラップの取り付け方


 次は、カメラの構え方である。要するに、ブレないような構え方なのだが、一眼レフだから左手でレンズを支え、右手でボタン操作をしてシャッターを押すというわけである。その際、「両脇は開けないで、できるだけ締めてください。前後に脚を開いた方が安定がよいです。壁に寄り掛かったり、机があれば肘をついたりすると、より安定しまぁす」などと言っていた。しからば、ファインダーがなくて液晶画面のライブビューしかない私のカメラではどうするのかというと、ストラップを首にかけ、両手を伸ばしてカメラを固定すればよいらしい。なるほど、これも納得がいった。

 今のところ、私のカメラE−P1の純正レンズはたった二つで、たまたまそれらにはないのだが、たいていの一眼レフのワイド系レンズには、レンズフード、いわゆる「花形」というものがある。確かに、花のような形である。私は、もともとなぜあんな切りかけがある形なのかと疑問に思っていたが、あの位置が少しでもずれたりすると、写真の隅に影が出来てそれが写り込んでしまうからだという。なるほど、だから写真の四隅の角に対応するように、ああいう切りかけがあるのかと納得がいった。

 それから、これも私のカメラには付いていないが、内蔵ストロボを使う場合には、得てしてストロボ光がレンズの上部に邪魔をされて、写真の下部中央付近に、黒い影ができるという。たとえば、結婚式の集合写真でこれが出たりすると、ちょうどそこは花嫁のウェディング・ドレスが広がるところなので、せっかくの写真が台無しになるというのである。ちなみにこれを、フードの「ケラレ」という。ははぁ・・・、これもわかりやすい説明だ。

 レンズのズーム操作について・・・そもそも一眼レフは、すばやく、しかも微妙な調整ができるようにと、手動でズームを行う・・・とある。たとえば、24mm-70mmのレンズでその数字が大きい方が望遠で、大きく狭くアップで写る。そして、この数字が小さい方が広角で、小さく広くワイドに写る。広角だと画像がゆがむが、望遠だとゆがまないことから、商品を撮るのに適しているという。ちなみに、私のレンズは14-42mmというから、広角側は14mm、望遠側は42mmである。二つのペットボトルを並べて移すと、最も広角側ではペットボトルはたわんで写ったが、最も望遠側では、平行に写ったので、納得した。

 「シーン」ダイヤルで、「ポートレート」を選ぶと、人物を写すときに背景をぼかしやすいらしい。また、「マクロ」というものもあるが、やはりマクロレンズを付けていないと、ちゃんとした性能が発揮できないそうだ。一般に「シーン」のボタンを使って撮影するときは、撮影はすべてカメラ任せとなり、設定の変更はできないとのこと。

「コンパネ」つまりSuper Control Panel


 説明書では、液晶上で表示される「スーパーコンパネ」、略して「コンパネ」とあったが、何のことかと思っていたら、Super Control Panel らしい。わかってみれば、ああ、実に下らない。このコンパネには、一見してすべてのデータが示される。でも、右下の数字が何を意味するのかわからなかったが、残りの撮影可能枚数らしい。ああ、これもわかってしまえば、何だそんなことかという感じである。それから、これらの色々な表示項目について、一々OKボタンを押して変更していくのかと思ったら、そんな面倒なことをする必要は必ずしもない。たとえばこのうち、AFターゲット選択の項目を黒から黄色に反転させていると、それがシングルターゲットの点を表している場合、その点を十字ダイヤルで動かせるではないか。あんな狭い空間で、小さな点が十字ダイヤルでちょこちょこ動く様は、なかなか面白い。

 しかし、もっと有用なことを教えてもらった。これまで、いったん「シーン」ボタンで「風景」を選んで写した後、それを「ポートレート」に変えたいと思ったら、また「シーン」ボタンまで戻ってそれを動かしていたが、そんなことは必要なかった。単にライブコントロールという画面(液晶の右と下に選択肢が出てくる画面)を出して、そのうちのメニューとして、「シーンモード」があるのでそこから選べばよい。これなら、補助ダイヤルを回すだけで選択できる。アートフィルターについても同様にできることがわかった。

 ピントのずれやブレがあるかを確認するのは、これまではパソコンに移し替えて一々見ていたが、このカメラでは、一枚を再生している状態で、コントロールダイヤルを回せば、最大14倍に拡大でき、十字ボタンを使えば場所を移動できることもわかった。

 再生画面は、1枚から始まって、コントロールダイヤルを回していくと、4枚、9枚、16枚、25枚、49枚、100枚の画面となって、もちろんそれにつれて各写真のサム・ネイルは小さくなっていき、最後にカレンダーが出てきて、その日付の写真・・・つまり、その日付に撮られた写真が表示されることがわかった。なるほど、よく考えられていて、かなりインテリジェントなソフトウェアである。デジタル一眼レフの値段が高い理由の一端を垣間見た気がする。

 一眼レフの裏側の鍵のマークは何かと思っていたら、これは撮った写真のうち特定の写真を消去させないためのマークだという。つまり、再生画面で写真を出させ、そのときにこのボタンを押すと、その写真には鍵マークがついて、全コマ消去を試みても、消すことはできないという。これを解除するには、同じ手順を繰り返すと、鍵マークは消えるので、そうなればその写真を消すことができる。ただし、カードの初期化をすると、たとえ鍵マークでプロテクトされていても、消されてしまうので注意とのこと。まあ、それは当たり前だ。

 「オート」で撮ろうとすると、緑色のピント枠が画面の適当なところで勝手に合わせてしまうので、どうも居心地がわるい。そこで私は「P」モード、つまりプログラム・モードで、しかもピントは1点のターゲットに合わせる方式で撮ることが多い。そしてシャッターを半押ししてピントを合わせてから、撮ることが多いが、それでよかったらしい。

 ちなみに、「Ps」と出てくるのは何かと聞いたところ、プログラム・シフトといって、適正露出を保持したまま絞りやシャッター速度を変えられる機能だという。かつて、いったん「P」モードを選んでピントを合わせると、どの要素も一切変更できなかったので、それが不満の種となったことから、Psは、適正露出を維持しながら、F値とシャッター速度をマニュアルで変更できるようにしたものだとのこと。

 「AF」つまりオート・フォーカスモードには、S−AF(シングル)、C−AF(コンティニュアス)、MF(マニュアル)、S−AF+MF(シングル・フォーカスでピント合わせをした後、半押ししたままの状態で細かいところを合わせるために、マニュアル・フォーカス的にリングを回して微調整をする)があり、動くものの連写はC−AFだが、普通はS−AFあるいはS−AF+MFだという。

 ところで、普段の単写のときはもちろん連写のときにも、手ぶれ防止機能を使ってよいのだが、その際にはIS−1、IS−2、IS−3の三つがある。このうち、IS−1は縦にも横にも手ぶれ防止が働く。これに対してIS−2は縦にだけ働くので、横方向の流し撮りに使い、IS−3は横にだけ働くので、縦方向の流し撮りに使うという。ああ、なるほどと納得していたら、インストラクターのおお姉さんは、何とカメラを縦に構えて横方向の流し撮りをしていた。それで、これはどちらなのかと思ったが、答えは、IS−3だという。なるほど、その通りである。面白い。

 ホワイト・バランスも使いようということも学んだ。白熱灯や蛍光灯の下では、ホワイト・バランスを調整しないと、妙に赤やオレンジがかったり、あるいは青っぽい写真が取れてしまう。ところが、写真のテーマによっては、その方が雰囲気のある写真が撮れるというので、これを逆手にとってしまうのも一興という。たとえば、夕焼けをもっと赤くするには日陰マークがよいし、瑞々しい青色を出したかったら電球マークがよいという。

 露出補正は、「+に補正すると明るくなり、−に補正すると暗くなる」という単純な公式に加えて、「白いものをより白く撮るには+に補正し、黒いものをより黒く撮るには−に補正する」と覚えていたが、さらに、こういう考えもあった。露出補正をすると、色の濃さが変わる。「花や女性は、+に補正すると生き生きした感じや健康的な美白感が得られ、城や寺など歴史あるものは、−に補正すると黒くなって歴史を感じさせ、空の青も一層深みが出る」というのもあるそうだ。そのほか、「逆光で人物を撮るときは+に補正すると、顔が明るくなる」とのことだが、そうすると背景が白っぽくなるではないかと思ったのだが、この点は、午後の応用講座で階調補正というのを習ったことから、一挙に解決した。

ISO感度が100の場合と1600の場合との比較。動くものでも1600の方が止まって写る。


 それから、ISO感度についても、私はかなり誤解をしていた。たとえば早く動くものを撮る場合には、シャッター速度をさほど気にしなくとも、単にISO感度を上げるだけで、とりあえず写るようになる。インストラクターの彼女が動かしている手をISO100で撮ると、まったくぼやけてしまうが、ISO1600で撮ったら、これはもうはっきり写っていた。こんなに、違うんだ・・・。これなら、動いているものをはっきり撮りたかったら、何はともあれISO感度を上げるに限ると思いそうだが、あまり上げすぎると、今度はノイズが多いザラザラした画像になるので、程度の問題だという。また別の話となるが、私は夜にはISO感度を上げるべきと覚えていたが、これも対象次第だという。

 たとえば花火を撮る場合、「ISO感度は100でよい。その代わり、シャッターは4〜8秒、モードM、F8〜11、三脚を使う」とのこと。私も早く、こうデータをスラスラいえるように早くなりたいものだ。もっとも、当面は「シーン」「花火」ボタンのお世話になろう。これで撮ってから、その写真のデータを見て、ひとつひとつ覚えていくしかあるまい。

 さて、再びISO感度一般のことに戻るが、@フラッシュ撮影が禁止されているとき、A誕生日や結婚式のようにキャンドルライトの雰囲気を出すとき、B薄暗い室内で、赤ちゃんや子供など人物の肌の雰囲気を出すときは、フラッシュを使わずにISO感度をアップすべきとのこと。また、フラッシュ撮影のときにISO感度を上げると、フラッシュの到達距離が伸びて背景がしっかりと写るようになるという。なお、実際にどのISO感度にするか迷うときは、「シーン」の「ぶれ軽減」ボタンを選ぶと、その場の明るさに応じてぶれにくい数値にしてくれるという。ははぁ、いささか裏技的だなぁ。

 インストラクターのお姉さんは、「SDカードは、使う前に初期化をするとよいです。しばらく使って、何回もパソコンに転送したようなときには、トラッシュが残りますので、初期化をお勧めします」という。すると、隣のもう70歳を過ぎたようなお爺さんが、「トラトシュ?」と首をひねる。インストラクターのお姉さんも、「tra・・・ああっ忘れました。すみません」とやっている。ひと昔前の激烈な受験時代を乗り切ってきた私としては、すぐに「trash、つまりクズのこと。アメリカ南部でトレーラー・ハウスに住んでいるような白人は、可哀そうにWhite Trashと呼ばれている」と頭に浮かぶのだが、そんな今や何の役にも立たない雑学をこんな場違いなところで披露しても仕方がないので、黙っているにしかずというわけだ。

 最後に、質疑応答の機会があった。たとえば、私のこのカメラで出来るだけぼかした写真を撮るにはどうしたらよいのかと聞いた。すると、「まず望遠レンズを最も望遠側にします・・・これは、私の場合は42mm(35mm換算で84mm)・・・そして目標にできるだけ近づき、背景を逆にできるだけ遠くする。そうするとボケまぁす」と言って撮ってくれたのが、冒頭の写真で、なるほど・・・確かにボケた。しかし、この方法は、あまり汎用性がない。やはり、標準のマクロ・レンズが出るまで待たなければ・・・と思っていたところ、インストラクターのお姉さんが面白いことを言った。「被写体とカメラの間に、虫眼鏡を入れて撮るという方法もありますよ。意外なほど、良く撮れます。」・・・ははっ、それは愉快だ。機会があったら、試してみよう。

 ということで、午前の部は、若干、時間オーバーして無事に終了した。勉強になったと思う。パソコンでもゴルフでも、この種の一見近寄り難いような趣味的なものは、手近に良く知っている人がいて、何かわからないことがあれば、気軽にいつでも聞けるという状況であれば、それは幸運というもの。初心者講座などをわざわざ受講しに来ることもない。しかし、そうでもない限り、こうして聴きに来る方が一番の近道ではないかと思っている。

(平成21年8月9日著)




【応用編】

 オリンパス・デジタル・カレッジ講座の午後の応用編の講義に臨んだ。インストラクターは、中年のおじさんで、午前中に後ろに控えていてわからない人への説明に回っていた方である。フィルム・カメラの時代からカメラを扱っていたようで、何でもよくご存じのようである。受講者は、気のせいか、午前の部に比べて女性の数が増えたような気もするし、午前の部の人たちよりも、手を上げて質問する人も増えた。実際に自分で撮ってみて、いろいろとわからないことがあるのだろう。

 最初は、カメラの焦点距離の話から入った。

@ ワイドに撮る=「広く」「小さく」=レンズのmmの数値が小さい=「広角」
A アップで撮る=「狭く」「大きく」=レンズのmmの数値が大きい=「望遠」

「超広角」=21mm以下、「広角」=24〜35mm、「標準」=50mm、「中望遠」=85〜100mm、「望遠」=135〜300mm、「超望遠」=400mm以上 (いずれも、35mmフィルム換算)

 オリンパスのマイクロフォーサーズ・レンズの場合、2倍にすると35mmフィルム換算になるそうで、この換算方法によると現在出ているパンレーキ・レンズは、17mm、F2.8なので34mmの「広角」となる。もうひとつのレンズである14〜42mm、F3.5〜5.6の方は、28〜84mmの「標準」であるが、少し広角寄りということになる。

 いまのところこれ以外には純正レンズはないが、フォーサーズ・アダプターを付ければ広く売られているフォーサーズ・レンズが使えるそうで、雑誌によると次の三つがあれば、14mmから300mmまでをカバーできるそうなので、物覚えのためにここに書いておきたい。

@ 望遠ズーム :ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0-5.6、店頭価格31,000円
A 広角ズーム :LUMIX G VARIO 7-14mm F4.0 ASPH、店頭価格99,000円
B マクロレンズ:ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2.0、店頭価格68,000円

 これらのレンズで撮った写真を見ていると、望遠レンズは、単に遠いところのものを撮るだけかと思っていたら、たとえば木の幹にとまっているセミを写し出していて、しかもその背景が見事に美しくボケている。そのボケ方も、ぼやけた緑色の中に白い丸い玉がいくつも浮かんでいる幻想的な風景だ。これは良いなぁ・・・たぶん、木漏れ日を利用しているのだろうが、こういう写真を撮ってみたいものだ。まあ、このレベルに至るまでには、相当の数の失敗や試し撮りが必要なのだろう。それに、そういう風景のところに行かなければならない。

 他方、広角レンズは、森の中で見上げて木の葉を撮っているのだろうが、画面いっぱいに葉の大群が迫ってくるように写っている。これはまた別の意味で迫力がある。114度という広大な画角のなせる技という説明で、何のことやらわからないが、要するに画角というか、間口が広いからそれだけたくさんの画像が写るということなのだろう。ただ、他のレンズと比べてお値段が高い。こんな特殊なレンズは売れないからなのかとも思ったが、そうでもないようだ。レンズ数を比較すると、こちらの広角は12群16枚、望遠は9群12枚ということだから、それだけ手のかかるものらしい。

 その点、マクロレンズは、10群11枚であるから、広角と望遠の中間の値段となっているのは、理解できる。ところで先述のマクロレンズは、最大撮影倍率0.52倍ということで・・・それが何を意味するか、まだよくわからないが・・・、ゆりの花の花弁など、これで撮った写真を見ていると、こんな微小の世界を鮮やかに捕らえている。こういう場合に、ピント合わせはS−AF+MF(シングル・フォーカスでピント合わせをした後、半押ししたままの状態で細かいところを合わせるために、マニュアル・フォーカス的にリングを回して微調整をする)を使うのかと納得した。

 レンズの話で思わず手間取ってしまったが、焦点距離の話に戻ると、まず画角についてである。ひまわり畑を同じ位置から写す場合、まず28mm相当では青い空の下に広がる山々と黄色いひまわり畑が写っている。これを50mm相当にすると山が少しと一面のひまわり畑となり、100mm相当では山が消えひまわり畑だけとなってひとつひとつのひまわりが識別可能となり、200mm相当ではひまわりがますます大きくなって、300mm相当ではひとつのひまわりが画面いっぱいに広がるという具合である。さきほどの望遠ズーム・レンズだと、80-300mm相当がカバーできるから、これ一本でこういう写真が撮れるのか・・・。頭で考えると当たり前であるが、こうして実際の写真を目にして比較すると、それだけ理解が深まるというものだ。

 引き続き焦点距離の話であるが、今度は被写界深度と遠近感である。さきほどの画角の場合は、自分のいるカメラの位置を動かさなかったが、今度は自分つまりカメラの位置を動かして被写体にしだいに近づいて行き、これを常に同じ大きさになるように写していくと、当然のことだが、それだけ背景の写り具合が異なる。まず28mm相当では青い空の下に広がる山々をバックに黄色いひまわりが画面の真ん中に写っている。これを50mm相当にすると、山の境界が少し移動したくらいで、さほどの変化はないが、100mm相当では背景の山の位置が大きく変わり、200mm相当では山が消え去ってひまわりだけとなり、300mm相当でも同様にひまわりだけが写っているという具合である。

 焦点距離による被写体の写り方

       望遠(焦点距離長い) 広角(焦点距離短い)
被写体の大きさ   大きい      小さい
写る範囲(画角)   狭 い      広 い
前後のボケ     大きい      浅 い
(被写界深度)    (浅い)      (深い)
遠 近 感     圧 縮      強 調

 焦点距離について、これまで学んだことのポイントをまとめると、
@ 焦点距離は、○○mmで、35mm換算で見る。マイクロフォーサーズの場合は2倍にして換算する。
A 50mmが標準で、それより小さいと広角、大きいと望遠。
B 広角の効果は、遠近感を強調でき、手前から奥までピントが合いやすい。
C 望遠の効果は、遠近感を圧縮して、背景をぼかしやすい。

 次は、露出の話で、絞りとシャッター速度の関係と、P、A、S、Mの各撮影モードの使い分けの説明である。まず、写真を撮るには光をどう取り入れるかが問題で、そのためには、第一に、光を取り込む窓の大きさを変える・・・つまり「絞り」を変えて一度に取り込む光量を変えること、第二に、光を取り込む時間を変える・・・つまり、「シャッター速度」を変えることである。模式図を見ていると、たとえば、F2.0であれば絞りは全開となり、F22であれば絞りはごく小さな丸い点でしか開かない。今のカメラはフルオートとになっているので、カメラがこの二つに合うようにシャッター速度を適当に計算してくれて、適度な明るさの写真が誰にでも撮れるとのことだ。

 たとえば「P」つまりプログラム・モードにすると、絞りとシャッター速度をカメラが自動的に決定するので、そのままシャッターを押すだけで、失敗のない写真を撮ることができる。P(プログラム)、A(絞り優先)、S(シャッター速度優先)、M(マニュアル)の各撮影モードでは、このようになっている。

      絞 り  シャッター速度
Pモード  カメラ    カメラ
Aモード  撮影者    カメラ
Sモード  カメラ    撮影者
Mモード  撮影者    撮影者

 水道の蛇口とバケツの模式図があって、太い水道管(F値が小さい)と細い水道管(F値が大きい)から水がそそがれている。太いと、バケツをいっぱいにする時間が短い、つまりシャッター速度が速くてよく、逆に細いと、それだけ時間が長くなるのでシャッター速度を遅くしなければならない。ちなみに、ISO感度が大きいと、そのバケツ自体の容量が小さいというわけだ。ふむふむ、これはわかりやすいたとえである。

 そこで、この関係を整理すれば、絞り(F値)を変えると、ピントが合う奥行きが変わる・・・つまり背景のボケ方が変わる。F2.0で絞りを全開して画面いっぱいに花を撮ると、もちろん背景はボケる。この場合のシャッター速度は速くてよい。ところが、F22と大きく絞り、同じように花を撮ると、花だけでなく背景もくっきりと写る。ちなみに、この場合のシャッター速度は遅くせざるを得ないので、ぶれやすい。

 これらを頭に置いた上で各モードを見ていくと、「A」モードは絞り優先オートとなり、撮影者がF値を決めれば、シャッター速度はカメラが決定してくれる。この場合、F値を小さくして絞りを大きく開放するとボケるので、ボケの量を自分でコントロールしたいときに使える。

 このように学ぶと、ああそんなものかと理屈はわかるが、実際にやってみると、なかなか理屈通りにはならない。たとえば、私のカメラE―P1の標準レンズで試してみたが、F値が5.6と出た。これを小さくすればよいのだなと思ってボタンを回しても、どうやってもF値は4.0以下にはなってくれない。レンズの性能の限界か何かで、これ以上は下げさせてもらえないようだ。

 そんなものかなと思っていたら、次にその説明があった。「どこまでF値を小さくできるかは、レンズの性能や焦点距離で変わってきます」という。焦点距離をレンズの有効口径で割った値を「口径比」といい、人間の目と同じ明るさは1:1といわれる。そこで、たとえばあるレンズの口径比が1:2だったとすると、これをF2と表す。それが1:3.5であったら、F3.5というわけだ。何だか、F値とまぎらわしいが、そういう決まり事のようである。私の標準レンズは、ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6だから、ああなるほど、この場合のFの値はそのレンズを使ったときの明るさを意味するのかと、初めて知った。先に述べた残り二つのFの値はというと・・・広角ズームがF4.0はともかく、マクロレンズがF2.0と相当に明るい。そうか、マクロレンズがあのような細かい世界を写し出せるのは、そういうことなのか。ではここで、絞りの効果の定式を並べておこう。

         F値が小さい  F値が大きい
         (絞りを開放)  (絞りを絞る)
一度に入る光の量  多 い     少ない
シャッター速度   速 い     遅 い
         (ブレにくい)   (ブレやすい)
被写界深度     浅 い     深 い
(前後のボケ)   (大きい)    (小さい)     
 
 それではここで、ボケについてのポイントをまとめると、
@ ボケをコントロールしたいときには、「A」モードにする。
A ボケを大きくしたいときには、F値を小さくする。
B ボケを小さくしてなるべく奥までピントを合わせたいときは、F値を大きくする。
C どこまでF値を小さくできるかは、そのレンズの性能次第である。

 次に、ボケを意識して作り出すときの対策をまとめると、
@ 焦点距離を長くするため、望遠側で撮る。
A なるべくF値を小さくして絞りを開放する。
B 接写をするか、あるいはカメラと被写体の距離を近くし、かつ被写体と背景を遠くすると、ボケが強くなる。

 それはそうだろうなぁ、われわれの眼でも、何かに近づいてそれを注視すると、その周囲ものはボケて見えるはずだし、目の前にクローズアップで現れたものを見ていると、その背景なども意識して見ない限り、その背景はボケるのは当たり前である。

 ということで、ボケの話はおしまいにして、次は「S」モードつまりシャッター速度優先オートの話に移る。高速シャッターにする(ついでにISO感度も上げておく)と、たとえば滝のひとつひとつの飛沫を撮ることができる。スローシャッターだと、動いているものだけが動いてまるで布か帯のように写るという。本当に、4000秒分の1のシャッター速度でISO感度1600で滝を撮ると、水の細かいつぶつぶまで見えて、すごい迫力の写真となる。6分の1秒でISO感度100だと、滝といっても水が布のように流れているがごとくに写る。迫力はないが、その代わり流麗さがある。ということはつまり、「S」モードは動いているものの動感を撮るときに使う。撮影者がシャッター速度を決めると、カメラが絞りを決めてくれる。

 ここで私がかねて思っていた疑問が氷解した。それは、私のカメラE―P1で「S」モードにすると、シャッター速度の欄に必ず250、F値は6.1という数値が出てきて、それが点滅する。それでいいから捕ろうと思ってシャッターを押すと、硬くて動かない。えい、ままよと思ってそのまま強引に撮ると、暗い写真となったりして失敗するのは、一体全体なぜかというものだった。この講座のインストラクターの話を聞いて、やっとわかった。250秒分の1のシャッター速度で切れるからその数字が出てくるのではなく、それは一種のダミーの数値にすぎない。点滅するのは、数値がその場面に合っていないからである。これをちゃんと撮るには、カメラが決めるF値と、撮影者が自由に決めるシャッター速度が合うように手でダイヤルを回していって、たとえば180くらいにすると、緑の点滅が消える。そのところがデータの合致したところだから、そこでシャッターを切ればよいとのこと。要するに、シャッター速度優先とはいっても、カメラが自動的に設定できる幅というものがあるので、その範囲内でしかシャッター速度を設定できないというわけである。納得した。

 さて、インストラクターが面白いことを言っていたので、記録しておきたい。たとえば街の風景を切り取って写真にするような場合に、ピントを画面の真ん中の無人の自転車の籠に合わせておいて、シャッター速度を遅くして撮ると、道行く人物がブレて写り、かえって街の雰囲気が出る面白い写真になることがあるという。ちなみに、人間の目は、ピントのあっているところや動いているものに行きがちだというのである。

 ヒストグラムの話となった。たとえば、写す前にその画像のヒストグラムを見て、山があまりにも左に寄っているような場合には、全体に暗すぎるというわけだから、露出をプラスにすると、その山が左に寄って、ちょうどよくなるという具合に使うと良いらしい。ところで、その山が右に寄りすぎていると、露出がオーバー気味なので、露出をマイナスにするとよい。

 ちなみに、真っ黒に描写されるのは黒つぶれといい、逆に真っ白に描かれるのは白とびという。どちらかというと、黒つぶれの方が始末が良い。というのは、白とびの場合は、後からパソコンで暗くしようとしても、黒くできないからである。その点、黒つぶれは、ある程度、パソコン上で明るくすることができる。ただし、極端にすると、ノイズが目立つようになるという問題が発生する。

 そこで、興味深い話を聞いた。階調の調整のことである。たとえば、室内にいる人物の顔が暗く写り、その背景にある室外の景色が明るいような場合、その写真を全般的に白くすると、人物の顔は明るくなるものの、背景の景色もまた黒くつぶれてしまうという問題がある。現在の私の使っているソフトは、まさにその通りである。これを防ぐため、カメラの「階調」あるいはOlympus Master2というE−P1に付属していたソフトウェアで「階調」を編集すると良いらしい。写真の階調を表示させると、普通は「S」の字を右上から左下の斜めの方向に伸ばしたようなグラフで表される。そのグラフについて、右上から左下に向けて下がっていく線の右半分を下方向に下げ、左半分を逆に上方向に持ち上げて、つまりは逆S字型にする。そうすれば、写真中の黒い部分は明るくなり、もともと明るい部分が白くなるのを防いで見やすくなるという。実際に試してみたら、画像がいささか荒くなったものの、その通りになった。

 画像モードの中に「RAW」というものがあり、これを使うと、画質の劣化が避けられる上に、現像のときに、こんな項目を設定できるという。つまり、露出補正、ホワイト・バランス、サイズ変更、仕上がり、コントラスト、シャープネス、彩度、フィルター効果、調色、階調、ノイズフィルタ、カラー設定である。ただし、絞り、シャッター速度、ISO感度の基本項目だけは、RAW現像でも設定できないというのである。なるほど、うまくなっているものだ。

 以上のようなことで、応用編の講座の受講は終わった。この講座もまた、非常にためになり、有用な一日を過ごすことができた。ところで、記憶に残っている少しこまごまとしたことがあるので、しばらくすると忘れそうだから、それらを記録に残しておきたい。

@ リセット・・・PモードやMモードなどで設定した内容は、電源を切ってもそのまま残るので、失敗しないためには、リセットすることを習慣付けると良い。

A 熱くなる・・・夜景を撮ったりすると、カメラが少ない光を集めようと頑張るので、熱くなるのは、これは仕方がない。その場合は、ある程度、休ませる必要があるし、一定温度を超えると、自動的に切れる。

B E−P1を上から見たときに正面左手にあるボールに串刺しのマーク・・・焦点 距離の起点となる基盤の位置を指すマークである。


(平成21年8月10日著)






不忍池の弁天堂と蓮


 さて、日曜日になった。この日は都議会選挙の投票日だったことから、朝方に家内とともに、まずは投票に行った。帰ってくると、もう午前10時を回ってしまっている。カメラの練習のためにどこか特別のところへ行きたいと思ったが、きょうは午後一番でテニスに行く予定があるので、それまでわずか2時間しかない。遠出することはできないので、結局、先週と同じく近くの上野公園に行き、不忍池の蓮と朝顔を撮ることにした。そういうわけで被写体は先週とまったく同じで変わり映えしないが、今週は二つのレンズと色々なデジタル・フィルターを試してみよう。それに、マクロ・レンズを買うまでのつなぎとして、クローズアップレンズ(ケンコー MC)も買ったので、それも使ってみたいと思たのである。

 家からのんびり歩いて不忍池に着いた。蓮は南の池にあるが、先週に引き続いて、葉はいっぱいあるのだけれども、蓮の花はほとんど咲いていない。その中でも、わずかにぽつりぽつりと咲いているピンク色の蓮の花を見つけて、先週と同様にポップアートフィルターをかけて撮ってみた。下の写真の左手のものが普通の標準レンズの望遠を使ったもので、ポップアートフィルターで撮ったものが右手のものである。やはり自然の色は左手のものがよく出ている。私などは、こちらが好みだが、ポップアートフィルターも、それなりの魅力が出る。これは、被写体とそれを見る人の好みだろう。たとえば冒頭の弁天堂と蓮の花は、ポップアートフィルターをかけて撮ったものだが、色鮮やかとなり、あたかも出来たばかりの弁天堂を見るかのようである。

不忍池の蓮を標準レンズの望遠(左)とポップアートフィルター(右)で撮ったもの


 ところで、そうやって一眼レフで色々と試していると、私と同じように一眼レフを携えている同年輩の男の人から、突然、声をかけられた。「いやぁ、咲いていませんねぇ。たまに咲いていても、あんなに遠くじゃ、うまく撮れませんなぁ。」そこで私も、「そうなんですよ。この辺りは、まったく駄目です。でも、弁天堂の辺りに行くと、近くで蓮の花を撮れるスポットがありますよ」と教えて差し上げた。その人は、お礼を言って去って行った。するとまた、しばらくして別の一眼レフのカメラマンから声がかかった。「蓮は、ほとんど花が咲いていませんねぇ。芝の方ではたくさん咲いていたからこちらへ回ってきたんですがね」という。私は、「ああ、そうですか。この時期はいつもこうなんですよ。朝が早いと、もっと見られるのですかねぇ」と応じた。

 そこで気付いたのであるが、これまで私はよく、コンパクト・デジカメを構えて写真を撮っていた。しかし、同じようにカメラで写真を撮っていた人から、こんな風に声をかけられたことは、一度もなかった。過去10年間を思い出しても、まったく記憶にない。それがどうだろう、今日は。たった10分もしないうちに、カメラマン仲間(?)からこんなに声がかかるなんて・・・。いやはや、びっくりしてしまった。また新たな友人が出来そうである。もっとも、同年輩のおじさん仲間ばかりではあるが・・・

 撮りながら進んで行って、不忍池の最南端に着いた。前回も書いたが、ここからは、池の一面に広がる蓮の葉また葉さらにまた葉・・・を一望できる。対岸の真ん中に弁天堂が霞むかのごとく見える。初めてこの雄大な眺めを目にした人は、誰しも感動すること請合いである。そうだ、これこそ広角単焦点レンズの出番だと思って、望遠レンズをそれに入れ替えた。ほこりが入らないように、下向きにして替えるとよいらしい。そこで、カメラのシーンのボタンを回したところ、パノラマというのがある。これはひょっとして、こういう場面にはちょうど良いのではないかと思い、それを使うことにした。すると、画面の両端の縦に細長い枠が出てきた。これを重ねて写真を数枚撮ればよいはずだ・・・。

上野公園不忍池の蓮のパノラマ写真。


 そのようにしてバチバチ撮った数枚の写真をパソコン中のソフトで合成するのである。ところが以前に経験したことなのだけれど、パノラマ写真を作るときには、個々の写真で露出がどんどん変わっていくと、合成がうまくいかなくて大変に困る。しかし、このカメラE−P1では、最初の写真で用いた露出がそのまま固定されるという。なかなか、心憎い配慮がされているではないか・・・。というわけで、家に帰ってソフトで合成した写真が上のパノラマ写真である。そうか、広角レンズは、このように使うのかと納得した。もっとも、この三枚の画像を集めた合成写真をよく見ると、継ぎ目のところはまあまあの出来なのであるが、左と真ん中の写真はうまくつながっているものの、右側の写真がちょっと右側に跳ね上がっている感じがする。そこで、説明書の写真をよく見ると、三枚を合成するなら、真ん中の写真を水平に保つとともに、右側に置く写真を少し右に傾け、左側にする写真を反対に左に傾けるべきらしい。これでひとつ、学んだ気がした。徐々にうまくなっていこう。

 さて、ここまでは先週のおさらいのようなものであるが、今度は先週使わなかった広角単焦点レンズで、近接撮影ができないかと考えた。できたら、背景を可能な限りぼかしたい。クローズアップレンズを広角単焦点レンズに取り付けてから、何かよい被写体はないかと探すと、池の近くに先週と同じく朝顔が咲いていた。そこでカメラのボタンをマクロ撮影にして、まず普通通りに撮り、次にポップアートフィルターをかけて撮り、最後にトイフォトといって被写体の周囲を黒くぼかすフィルターで撮ってみたのが、次の3枚の写真である。これを見ると、まず、クローズアップレンズを使ったのに、背景が思いのほかボケていない。やはり、絞り優先モードでF値をなるべく小さくして撮るべきだったか・・・、問題は、標準ズームレンズが沈胴型だから付けられない点だ・・・。それは今後の問題として、トイフォトというフィルターも、色合いが悪い上に、大した効果が見られないので、あまり役に立たないことがわかった。

  

@は、広角単焦点レンズクローズアップレンズを取付けて撮ったもの

広角単焦点レンズにクローズアップレンズを取り付けて撮ったもの。虫が写っている。

  

Aは、@に更にポップアートフィルターをかけて撮ったもの

広角単焦点レンズにクローズアップレンズを取り付け、さらにポップアートフィルターをかけて撮ったもの。

  

Bは、@に更にトイフォトフィルターをかけて撮ったもの

広角単焦点レンズにクローズアップレンズを取り付け、さらにトイフォトフィルターをかけて撮ったもの。


 ところで、ファンタジックフォーカスというものを試してみたが、全般に白くボケて写るので、なんだか気持が悪い。ひょっとすると、女性のポートレートを撮る場合にはよろしいのかもしれないが、蓮の花には、向いていないようである。

不忍池の蓮を普通に(左)、ファンタジックフォーカス・フィルター(右)で撮ったもの


最後に、池の端で、悠然と甲羅干しをする亀さんを見つけて、それを普通の撮り方とともに、ポップアートフィルターをかけて撮ったものが、次の写真である。特にポップアートフィルターの方を見ると、被写体は相当高齢の亀らしく、甲羅に苔が生えていることがよくわかる。どう見てもまったく目立たないような地味な被写体が、このフィルターのおかげで驚くほど派手な存在になってしまった・・・。これは、ポップアートフィルターが成功した例かもしれない。こういう思わぬ使い方があったのかと改めて認識した。

甲羅干しをする亀(ポップアートフィルターあり)
甲羅干しをする亀(ポップアートフィルターなし)

(平成21年7月14日著)





春日神社の一ノ鳥居の夜景


7月下旬、奈良に行き、猿沢池のほとりにある飛鳥荘という宿に泊まった。フロントでチェック・インの最中に、奈良公園内にある主な観光スポットで、ちょうどライトアップを催していると聞いた。それが午後10時までというわけで、宴会料理もそこそこに、買ったばかりの三脚を担いで、夜の公園へとひとりで飛び出した。午後8時のことである。まず、猿沢池から坂を上がって右手に折れ、春日大社の一ノ鳥居に向かった。あったあった。暗い夜道の向こうに、朱色にぽつんと、光に浮かぶ鳥居が見えた。その交差点にたどりついて、まず三脚の脚を伸ばした。3重に折り畳まれていて、ひとつひとつロックを外さなければならない。それを手早くやり終え、すっくと三脚を立てる。このあたりまでは、我ながらきょう初めて三脚を開く人物とは思えないのではないかと、ほくそ笑む。

 三脚を設定する練習などは全然していないが、やってみるとまあ何とかなるもので、ともあれ三脚の首にカメラを据え付けた。あちこちに付いているネジを適当に選んで回すと、うまく固定されたようだ。そこで「シーン」ボタンで「夜景」を選びシャッターを押そうとしたが、「いやまてよ、このままだとブレる」と思い直し、2秒のタイマーをセットして、シャッターを切る。うまくいくかどうかと、ちょっとワクワクする瞬間である。液晶画面の右手に、タイマーらしき赤いアイコンが出てきた。それが消えたら自動的にシャッターが切れて、一瞬のあいだ液晶が真っ黒になった。1、2、3・・・と心の中で数えるうち、いつの間にか画面が復活して、朱色の鳥居が現れた。ふむふむ、なるほど、確かに写っている。パソコン上で確認しないと何ともいえないが、少なくとも液晶画面上では、成功したようだ。子供のように、素直にうれしい。最初に撮った夜景の写真としては、上出来である。

 「さてと、次のライトアップは何かな・・・」と思って地図を見たところ、浮見堂だという。その名のとおり、池の中に浮かんでいるようだ。一ノ鳥居を向かって右に行き、こっちの方向で良いのかと思うほど真っ暗い中を進んで、ようやく池にたどり着いた。いにしえの奈良の都の昔なら、それこそ物盗りが出そうな物騒な雰囲気である。思わず周囲を見回すと、たった2組ほどだが、カップルがいたので、やや安心した。しかし、私みたいに写真を撮っているような人は、ほかには全く見当たらなかった。我ながらよほどの物好きだなぁと自嘲しつつ、その池の周りを時計回りに歩き、撮影のスポットを探した。ところが、どうも適当なところがないのである。池に写っている浮見堂の胴体の写真は撮れるのだが、さすがにその屋根までは光が当たっていない。それを無理して撮ると、上下が一直線になっているような、まるでランタンのような写真になってしまいそうである。「まあ、仕方がない、それでも撮ろうか」と思って、とある地点に三脚をセットし、「シーン」の「夜景」で撮った。そうしたところ、案の定、やはりランタン風になってしまった。あとから、お手本のライトアップのパンフレットをよくよく見たところ、この浮見堂の写真だけ、空が薄明るいではないか。「なんだ、やはりプロでも屋根は撮れなかったのか」と納得した次第である。しかしそれにしても、このパンフレットの写真は、いささか過大広告なのではないだろうか。

浮見堂


 引き続き、まっ暗な奈良公園の中を歩いていささか飽きが来たころに、仏教美術資料研究センターにたどり着いた。いやはや、ともかくこの夜は、ことのほか蒸し暑くてかなわなかった。たぶん気温は30度、湿度も相当なものだったのだろう。そんな中を三脚を担いで暗闇の中を歩き回るという物好きは、私以外には見当たらなかった。歩いていると汗がどんどん出るので、このままでは水分不足で熱中症になると思ったとたん、ちょうどその辺りに自動販売機があった。うまく出来ているなぁと思いつつ、ポカリスウェットを買い求め、それを一気に飲みほした。ううっと言いたくなるほどに冷たい。干天の慈雨というわけだ。古都に来ていると、表現まで古代風になる。ともあれ、それでやっと、人心地がついたのである。

仏教美術資料研究センター


 目当ての仏教美術資料研究センターの建物前に着いたものの、門が閉まっているので、全景がうまく撮れないではないか。どうしたものかと迷ったが、こうなったらその門の隙間にカメラを突っ込んで撮るしかないと思い、試してみたところ、それが正解だった。ところが無理をしているので、三脚が横へ少し傾いてしまい、このままだとちょっと傾いた写真しか撮れない。しかもだ、なにせ俄かカメラマンなうえに真っ暗な中で、どのネジをどう触ったら調整できるのかがわからない。困ったものだと思った。とりあえず、三脚のひとつに紙を敷くという応急措置を施したところ、傾きが治った。まるで中華料理店で傾いたテーブルを直すのと似ていると、思わず笑いがこみあげてきた。他人がこれを見たら、変なおじさんが笑っていると思われたことだろう。それはともかく、同じように「シーン」の「夜景」、2秒タイマーで撮った。すると、当たっているライトの色の具合がよろしくて、なかなか良い写真が撮れた。これは、成功といってよいだろう。苦労した甲斐があったというものである。

東大寺の南大門


 気を良くして、次のターゲットへ向かう。東大寺である。前方の暗闇の中に朱色の南大門がぼんやりと浮かぶ。近づくと視野一杯に広がり、雄大で美しい。夜だから、他の邪魔物が目に入らなくなるうえに、ライトアップで大きく見えるのではないだろうか。しばらく見とれていたが、はたと我に返って三脚をセットした。まず全景を撮ったあと、左右の運慶と快慶の金剛力士像を撮る。ちなみに翌日のお昼に同じようにこれらの像を撮ったのだが、一面に金網があってよく見えなかった。その点、このように夜にラットアップの下で撮ると、そういう余分な障害物がないのでうまく撮れる。この写真のように、睨みつける鋭い眼、いかつい顔、盛り上がる筋肉の塊、不自然なほど捻じった手や腕などがはっきりとわかる。

 この日は、まず「シーン」の「夜景」で金剛力士像を撮ったのだが、色がオレンジ色っぽくなって、実物を見た感じと少し違う。もちろんこれはこれで、それなりに夜景という感じがしてよいのだけれども、目に見えたように撮るにはどうするかと考えたところ、これはホワイト・バランスの問題だろうと思いついた。そこで、これを調整して撮ってみた。すると、まるで白黒写真のような雰囲気のある写真となった。うむ、これはいいと、我ながら満足した。


運慶と快慶の金剛力士像(WB調整前)


運慶と快慶の金剛力士像(WB調整後)


 東大寺を後にして、奈良国立博物館の前に行き、その写真を撮った。ところがここは、建物そのものにあまり陰影がないし、近くにアクセントとなる木々のようなものもないので、のっぺりとした写真しか撮れない。これではまるで、厚化粧の女性のようだ。何とかならないかとホワイト・バランスをいろいろ変えて撮ってみたが、どれもいまひとつで、あまり面白みのない写真となったのは残念である。これは、カメラの性能のせいではなく、モデルの誤選択といったところか。

奈良国立博物館


 続いて、興福寺まで戻ってきて、五重塔を撮ろうとしたが、光の具合、塔を見る向き、頂にある相輪が写らないなどという問題が次々に出てきた。構図を変えつつ南海も試し撮りを繰り返した結果、右手前の木々の緑も入っている五重の塔の写真がやっと1枚撮れた。できれば頂点の相輪も入れたかったが、これだけ近づくと無理な相談である。まあ、こんなところではなかろうか。ところが、同じ旅行に行った仲間から、4年前に買ったというコンパクト・デジカメを使って撮ったその同じ五重塔の写真を見せてもらって、びっくりした。なかなか良く撮れているではないか。どうやって撮ったのかと聞くと、手ぶれを起こさないように、数秒間しっかりとカメラを構えたという。こんな今やほとんど無価値に近いカメラのくせに、それでいて私が10数万円もはたいて買ったばかりの一眼レフの写真とそう違わない写真が撮れるなんて、もう馬鹿馬鹿しくてやっていられないという気がしたほどである。でも、この人は数秒間、カメラを抱えてじっとしているという体力と精神力・・・敢えて「腕前」とはいわない・・・の持ち主だったからであり、まあ、私の場合はそれをお金で買ったということだと思えば、びっくりしたり、がっかりしたりすることもなかろうと思い直した。

興福寺五重塔


 それはともかく、その夜の最後を飾ることとなった写真の被写体は、猿沢池のほとりの柳の木である。一本は緑色、もう一つはやや黄色がかった緑と、なかなか美しい夜景である。それをしっかりと撮ったつもりだが、そのとき、はたと思いついた。この「シーン」の「夜景」というのは、いったいどういうデータなのだろう? それを液晶画面上で表示させた。すると、F値3.6、露出時間0.77秒であり、ここまでは私の予想通りの範囲内だったが、次の数字には驚いた。ISO感度が200なのである。事前のお勉強の成果では、こういうときには、ISO感度を3200ぐらいにはしなければいけないと思っていたので、これには困惑してしまった。理屈よりまず実践とは、良く言ったものだ・・・。今度、カメラのセミナーに行くので、聞いてこよう・・・。それはそうとして、理屈通りのことを試そうと、ISO感度を3200、露出時間を長くするつもりで250から20000にしたが、あっという間に写真が撮れて、しかも真っ黒である。あれれ、どうしたのかと思ったが、間違えて1/20000にしてしまったと気づいて、設定をし直した。すると、「2”」というのがあったので、どうやらこれが正解の2秒らしい。それで撮ったところ、ちゃんと柳の木の写真が撮れた。まるで笑い話である。しかし、後でパソコンで見たところ、露出時間が長すぎたようで、光があふれてしまい、うまく写っていなかった。やっぱり、頭でっかちの新米カメラマンより、カメラのプログラムの方が頭が良かったようだ。

猿沢池のほとりの柳の木(夜)

 ところで、翌朝のこと、猿沢池の、その同じ柳の木のところに行ってみた。そこでまた驚いたことがある。それは、昨晩見た美しい柳の木はどこへやら、目の前にあったのは、何の変哲もない、本当に目立たない柳の木だったからである。ははぁ、これが編み笠の女、夜の蝶現象というものかと、深く納得した。カメラの世界には、なかなか奥深いものがある。

猿沢池のほとりの柳の木(朝)

(平成21年7月27日著)




絞り値:F5.6、露出時間:1/80秒、ISO 感度:800、露出補正:+0.3、焦点距離:37mm

絞り値:F4.1、露出時間:1/80秒、ISO 感度:800、露出補正:+0.3、焦点距離:21mm

 真夏の暑い日が続くが、土曜日に家にいても仕方がない。一眼レフの練習のためにどこかへ出かけようと思った。この暑い中で涼しく過ごせるところといえば、水族館しかない。それも家からほとんど外へ出ないで地下を通って行けるところといえば、池袋のサンシャイン国際水族館である。昼食後、蝉がジージーと鳴き、それに混じって選挙カーが大声を張り上げて通り過ぎる中、地下鉄に潜って池袋に向かった。

 車中で一眼レフを使った魚の撮り方について、頭の中でその方針を考えた。何しろ魚だからパパッと早く動くので、ISO感度を上げることは必須だろう。どれくらいが適当かといえば、よくわからないが、最低800、それでダメなら1600でどうか(この点、後から雑誌の記事を見たところ、専門家は1600から3200で美しく撮っていた)。動きの速いものを撮るので、シャッター速度優先の「S」を選ぶべきだが、どれくらいがよいのかなぁ・・・まあ、これはやってみて、画面がちょうど見られる程度になるように試行錯誤を繰り返すとしよう。それから、オートとアートフィルターも試そう。加えて、連写モードにしてみるか、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるという精神である。

 夏休みの最中だから、水族館は小さな子供連れの親子でいっぱいである。あまり人がたくさん集まっているところで撮ったりすると迷惑となる。そこで、比較的空いている水槽のところへ行くと、それは川魚を集めている水槽だった。ああ、いたいた、アロワナではないか・・・普通はシルバー色をよく見かけるが、これはオレンジ色をしている。アジア・アロワナという種らしい。昔、私が東南アジアに駐在していたときに、私の友達が河で釣りをしていて、たまたまこれを釣り上げたという話を聞いたことがあるから、どこそこ親近感がある。しかし今や、ワシントン条約で輸出入が規制されている貴重な魚だ。アジアだけでなく、シルバー・アロワナはアマゾン河など南米にも分布している。この魚、そのストーンとした直線的な姿態からして、かなり鈍重な魚ではないかと思われている。いや実はそうではなくて、たとえば河中から木の枝にいる昆虫を見つけたりすると、機敏に空中高く飛び上がって、これを食べてしまうのである。以前そういう場面をテレビで見て、びっくりしたことがある。人は・・・いや魚は、案外見かけによらないものである。これはいわゆる古代魚の一種らしいが、何億年も生き残ってきたからには、それなりの特技があったのだろう。

 さて、このアロワナを撮るにはと・・・、ゆっくりなようで、結構早く動くなぁ・・・とりあえずISO感度を640にして、シャッター速度を1/200秒で試してみるか。パチリと撮ったが、あ、ダメだ。暗すぎる。そこで、シャッター速度を1/15秒に変えて再び試すと、何かボケてしまったなぁ。どちらも、こんな色ではないので、それも不満だ・・・。ISO感度を800にしてシャッター速度をを1/25秒としたら、少なくとも色については、まあ、こんなものかという写真が撮れた。しかし、家に帰ってパソコンで確認すると、今度はピントがボケていた。いや、やっぱりシャッター速度が遅すぎたのだろう。雑誌によると、1/80秒でも「遅めのシャッター速度」と書いてあった。かくして水族館での最初の写真としては、失敗に終わった。正解はおそらく、シャッター速度が1/150、ISO感度が3200くらいだろう。


アジア・アロワナを3種類のシャッター速度で撮る。


 そして、次の水槽は、アオリイカである。まあこれは、水槽内は明るいし、被写体も大人しく同じところにいて、ヒレを震わせているだけだから、簡単しごくである。気にするとすれば、構図だけで、それを決めてからパチリと撮って、はいおしまいである。なかなか、かわいい目をしているではないか。データは、絞り値:F6.3、シャッター速度:1/125秒、ISO感度:800、露出補正:+0.3というもの。

アオリイカ、絞り値:F6.3、シャッター速度:1/125秒、ISO感度:800、露出補正:+0.3

 次は、氷の妖精、クリオネである。見ての通り氷の海を優雅に泳いでいるか弱き存在のようだが、実は獲物のミジンウキマイマイに出会うと、その頭がパカッと開いて6本の足に分かれ、それで襲うそうな・・・。実は獰猛な捕食者というわけだ。これまた、見かけによらないという典型の生物である。水槽の中は真っ暗で、クリオネにはかすかに赤い光が当てられているのみだ。これは困るなぁ、いったいどうやって撮るのだろう。ISO感度を上げればいいのはよいとして、この暗さでは、シャッター速度を早くすると写らないし、遅くするとクリオネの動きが早いのでボケる。だいたい、ピントもなかなか合わせられない。露出補正で対応すべきなのかなぁ・・・よくわからない。えいやっとやってみたら、それらしきものがボケて写っていた。データは、絞り値:F5.6、シャッター速度:1/10秒、ISO感度:1600、露出補正:+0.3というもの。これはダメだと思ってISO感度を倍に引き上げてやってみたところ、少しは外見がくっきりとしてきたが、今度は黒いところのノイズがすごい。データは、絞り値:F5.5、シャッター速度:1/50秒、露出補正:+0.3、ISO感度:3200である。いったい、どうやって撮るのだろうか?

氷の妖精、クリオネ。絞り値:F5.5、シャッター速度:1/50秒、露出補正:+0.3、ISO感度:3200


 さらに進むと、ミズクラゲが乱舞(?)している水槽に出た。ミズクラゲに光が当たっているので、これは楽勝だ。ISO感度を1600に上げて、プログラムモードで撮る。まあ、それなりに写っている。何か、クラゲの魔力がその当たりに漂っているようなあやしい雰囲気の写真である。データは、絞り値:F3.5、シャッター速度:1/13秒、ISO感度:1600、露出補正:+0.3である。

ミズクラゲ、絞り値:F3.5、シャッター速度:1/13秒、ISO感度:1600、露出補正:+0.3

 それが終わると、毒カエルのコーナーを経て、熱帯の海に出る。実は、私は以前からここが大好きで、何時間いても暇がつぶせるくらいだ。写真だけでなく、そのビデオを撮ったりしていて、今でもそれをときどき見てリラックスしている。そうそう、ここがあったと気がついて、写真を撮ろうと覗き込んだ。三つの水槽があって、沖縄の海、カリブ海、グレートバリアルーフである。やはり何といっても、最後のグレートバリアルーフがすばらしい。見たことがないような色と形の珊瑚、熱帯魚も、黄、ピンク、青、紫と色とりどりである。たまに地味な魚がいると思ったら、箱フグだったりして、それらがあちこち様々な方向に乱舞している。いや、これはすごい。何時間いても、見飽きない。これは年代を問わないようで、2歳くらいの男の子がお母さんとやって来て、「ウアーーァ! アレー・アレー!」と大声で叫び、指をさす。よほど感動したようだ。良い風景だ。私も、小さかったら、あんなことをやっていたに違いない。

熱帯の海グレートバリアルーフ、絞り値:F4.5、シャッター速度:1/100秒、ISO感度:1600、露出補正:+0.3

 では、これを撮ろうとしたのだが、これがまた、難しそうだ。それでも熱帯の海だから、水槽自体は比較的明るいので全体を撮るのは楽である。ISO感度を上げて魚の速さについていくだけでよい。絞り値:F4.5、シャッター速度:1/100秒、ISO感度:1600、露出補正:+0.3で撮ったものが、この写真である。実はこれは連写で撮った何枚かの一枚である。というのは、これだけの数の魚がいると、それぞれがあちこち勝手な方向を向くものだから、場合によっては全部が縦方向を向いてしまって、写真にならなくなる。やはり熱帯魚は、そのカラフルな色と様々な形を見せてくれないと、話にならない。そのためには、横向きでなければならない。そこで、何枚か撮らないと、絵にはならないというわけだ。そんな風に、もうひとつ撮ってみると、このような写真となった。ISOを1600から800に落としてみたが、あまり違いはなかった。データは、絞り値:F3.5、シャッター速度:1/60秒、ISO感度:800、露出補正:+0.3である。

熱帯の海グレートバリアルーフ、絞り値F3.5、シャッター速度:1/60秒、ISO感度:800、露出補正:+0.3

ピントが外れた失敗写真


 さて次に、ひとつひとつの魚を撮ろうとしたのだけれども、「あっ! 狙った魚が来た!」と思ってシャッターを半押ししてピントを合わせていると、もう魚は通り過ぎてしまって、後ろ姿しか撮れない。あわててピントが外れたりすると、上の写真のような失敗になる。それを何とかしようと魚の動きに合わせて・・・つまり動きを先回りして予測し・・・シャッターを切った。その写真が次のものだが、これでもまだ、シャッターを切るのが遅れたが、そんなに悪くはない。調子に乗って、もうひとつ。この魚も、早く泳ぎ回っていたから撮るのはなかなか難しかった。いずれもデータは、絞り値:F3.5、シャッター速度:1/60秒、ISO感度:800、露出補正:+0.3である。

熱帯の海グレートバリアルーフ、絞り値:F3.5、シャッター速度:1/60秒、ISO感度:800、露出補正:+0.3

熱帯の海グレートバリアルーフ、絞り値:F3.5、シャッター速度:1/60秒、ISO感度:800、露出補正:+0.3

 それから、魚の動きにカメラを合わせるのが次第に慣れてきて、それまでは魚の後ろ姿を撮るばかりだったのに、はじめて先回りをして撮ることができたものが、次の写真である。データは、絞り値:F4.7、シャッター速度:1/80秒、ISO感度:800、露出補正:+0.3である。

熱帯の海グレートバリアルーフ、絞り値:F4.7、シャッター速度:1/80秒、ISO感度:800、露出補正:+0.3

熱帯の海グレートバリアルーフ、絞り値:F4.7、シャッター速度:1/80秒、ISO感度:800、露出補正:+0.3

熱帯の海グレートバリアルーフ、絞り値:F4.7、シャッター速度:1/80秒、ISO感度:800、露出補正:+0.3


 最後に、カリブ海の水槽の方を向いて撮ってみたが、グレートバリアルーフで撮り慣れていたので、魚の動きが単純なこちらの方は、撮るのがはるかに楽だった。いずれもデータは、絞り値:F3.7、シャッター速度:1/80秒、ISO感度:800、露出補正:+0.3である。

熱帯の海カリブ海、絞り値:F3.7、シャッター速度:1/80秒、ISO感度:800、露出補正:+0.3

熱帯の海カリブ海、絞り値:F3.7、シャッター速度:1/80秒、ISO感度:800、露出補正:+0.3

(参 考) 熱帯の海グレートバリアリーフで、アートフィルターのポップアートを試してみたが、ただでさえ目立つ極彩色の世界なので、それをさらに恐ろしく派手な色彩にしてしまっただけとなり、全くダメだった。

(平成21年8月23日著)





 実家には、父と母の趣味でいろいろな花が植えられているので、それを練習台として、ボケの中に浮かび上がる花を撮ろうと試みた。まず、これまでの勉強の成果をおさらいすると、@望遠側で撮る、AF値をなるべく小さくして被写界深度をできるだけ浅くする、B背景をボカしたいのなら、その背景をできるだけ遠くにする、という三点だった。

 これらを頭に置きつつ、まず、玄関のほおずきを撮った。その赤くて、みずみずしい感じが何ともいえない。上記の三点のうち、Bの背景を遠くに置ける環境下ではなかったが、それでも、上と下二つのほおずきの間にある背景中の紫色の別の花がうまくボケて、まあ、うまくいったと思う。


 次に、玄関脇に置いてあったハイビスカスの鉢植えに狙いをつけた。まず、黄色のハイビスカスだが、背景が家の塀側となってしまっていて、花とうまく組みあがる構図ができない。仕方がないのでそのまま撮ったが、案の定、平凡な駄作となった。正面から撮ったせいかもしれない。そこで、赤のハイビスカスについては、やや横から撮ることにした。ピントを花の中心の凹んだところに合わせて撮ったが、何かおかしい。目がそちらには行かないようだ。そこで、花から突き出ている雄しべの先端に合わせる。これも構図に玄関が入ってしまったが、花自体としては、まあまあ満足のいく写真となった。


 この間読んだ写真誌によると、ボケは背景をボケさせるものと、その逆に被写体の前にあるものをボケさせる「前ボケ」というものがあるらしい。これを適切に使うと、写真に奥行きと深みが出るらしい。なるほど・・・、それをぜひ試してみようと思って被写体を探したのだが、あまり手ごろなものがない。ふと、庭の池の向こうを見たところ、狸の置物が目に入った。父が買ってきたものである。目がぱっちりとして愛嬌がある。これにしようと思ったのだが、何しろ池の対岸だし、そのあたりには松の木が植わっているので、構図がとりにくい。前に置いてボケさせるものといえば、こちら岸にある紫の花しかない。それで仕方なく撮ったのだが、前ボケとはとてもいえない変な代物が写っている。これは、失敗作となった。




 家の門の前にある公園に、母がいつも世話をしている朝顔と向日葵がある。これはいいと、門から出てそれを撮ろうとしたのだけれども、例のとおり、構図がなかなかうまくいかない。やっぱりこれら二つの組み合わせというものは、とても変な出来映えである。文章でいえば、何の脈絡もないというわけだ。別々に撮る方がよいと思って、まず朝顔に挑戦した。まあまあというところ。それではと、仕切りなおして向日葵を撮ったのだが、そもそも花が下を向いていてなかなか正面からうまく撮れないし、やっと撮れる角度を見つけても、空を這う数本の電線やら光ケーブルが邪魔をする・・・四苦八苦したが、うまくいかなかった。これも、ソフトで修正していけば消せるが、面倒になって途中でやめた。


 その公園の端っこに、母が手入れをしている色とりどりのお花畑があり、それをアートフィルターで撮ると、いやまあ、華やか極まりない写真になった。これは、大成功だ。その横に、名前は知らないが、キク科の花があったので、それを撮る。しかし、向日葵と同じくどうやっても空中の電線が入り、うまくいかなかった。

 最後に、最近はやりのエンジェルス・トランペットを撮ってみた。これは本来、下を向いている花なのでどこから撮ってよいのか困ってしまうのだが、まあこんなところか・・・。


 こうして身近な花などを撮ったつもりだが、適度にボケた写真を撮るというのは、なかなかむずかしい。つまり、これは良い被写体だと思っても、構図が作れないのでは何にもならない。逆に、うまく構図ができるのに、その位置にあるのは、枯れかかった花だったりすると、まるで役に立たない。まずは適切な被写体と具合の良い構図探しが必要なことを実感した。それはともかく、私の実家でも、最近は熱帯の植物が幅をきかせているのには、驚いた。ハイビスカスくらいは私でも知っているが、その他、紫やらピンクやら・・・いったい全体、これはどうしたことかという気がする。昔からある日本の花は、朝顔だけではないか・・・。もっとも、確かこれも奈良時代に遣唐使が持ち帰ったものだけれど・・・。


(平成21年8月28日著)






 ズンタッ・ズンタッ・タダッ・タダッと大きなサンバのリズムが通りいっぱいに響きわたる。また今年も、浅草サンバカーニバルの季節である。ダンサーのような動きの速い被写体を写すのには、これほど良い練習の機会はない。そこで真夏の暑い中、自宅から車で15分ほどの距離にある浅草寺の裏手に行き、そこから歩いて見に行った。

 午後1時30分のパレード開始までまだ30分もあるというのに、サンバのチームが通る大通りの両脇には、見物人でいっぱいである。こんな中で場所を確保して撮影をするというのも、なかなか大変である。夏の日差しが暑いので建物の陰に入ったのはよいのだが、その脇には小さな道があるのでそこを通して直射日光が道にさしかかる。被写体がこの日光が直に当たるところにいるときには露出補正はもちろん必要ないが、そうでないところにいるときには+1.7くらいの露出補正をしなければならないという難しい条件である。いろいろとやってみたが、この直射日光が当たるところとそうでないところを一緒に撮ることはできないとわかった。そこで、できれば直射日光に当たっているときに撮ることにした。しかし、問題は時間の経過とともに、直射日光の当たる場所が少しずつ動くことである。

 まあ、文句をつければキリがないので、そのあたりで諦めてカメラの設定に移る。比較のために、とりあえず「シーン」の中の「スポーツ」というお仕着せモードで撮ってみる。それが冒頭の写真で、データは、絞り値:F7.1、シャッター速度:1/800秒、ISO感度:200、露出補正:+0.3となっていた。シャッター速度は1/800秒と、とてつもなく早い気がするが、その反面、ISO感度は200と、常識的である。ダンサーの男性は、とても速く動いていたが、カメラのこの設定で、顔もしっかりと写っている。

 それでは、いよいよ私の勝手で組み立ててみよう。シャッター速度をいくらにすべきか、よくわからないので、Pつまりプログラム・モードにした。その上で、連写モードにして、コンティニュアス・オートフォーカスとした。被写体の動きが早いからISO感度を800とするか1600とするかを迷った末、真ん中をとって1250とした・・・あまり論理的ではない・・・つい、いつもの癖が出てしまった。いささか高すぎるかもしれないが、動きを止めて撮るには、これくらいないとダメだろう。この組み合わせでしばらく撮っていると、カメラがかなり熱くなってきてしまった。ただでさえ暑い日なので、大丈夫か思った(自宅に帰ってパソコンで見たところ、幸いにして特段の問題はなかった)。これで準備は整った。あとは、ダンサーたちがちょうど良い位置に来てくれるかどうかである。実はそれが問題で、だいたい、ダンサーが私の目前のちょうど良い位置で、こちらを向いて、にこやかに踊ってくれないと、写真にはならない。



 いくつか日本人のグループが通り過ぎた後、本場のブラジル人ダンサーのグループがやって来た。あるべきところにお肉のついた立派な体つきといい、リズム感のあるバイタリティーあふれる踊りといい、にこやかで華麗な笑みといい、観客を魅了してやまない。そこをすかさず、連写でパチリパチリと撮ってみた。データは、絞り値:F7.1、シャッター速度:1/1250秒、ISO感度:1250、露出補正:+0.0。これを見ると、まるで飛行機でも撮ることができそうな、ものすごく早いシャッター速度である。



 おおっ、全員でキンコンキンコンと小さなタンバリンを鳴らして、いかにも楽しくやっているグループがやってきた。しかも、私の目の前で、リーダーの合図で固まってしゃがんでくれた。これは、逃してはいけないと、さっそく写真を撮る。楽しそうな良い写真が撮れた。これも、データは、絞り値:F11、シャッター速度:1/1250秒、ISO感度:1250、露出補正:+0.0というもの。



 次に来たグループの中に、ペアが優雅に踊っている。女性ダンサーの長いスカートが、広がって回る・・・回る。これも楽しそうに写っていた。データは、絞り値:F11、シャッター速度:1/500秒、ISO感度:1250、露出補正:+1.0。



 それからしばらく経って、またブラジル人ダンサーの一群がやって来た。その中のひとりのダンサーがポーズを決め、その横で男の人がわれわれ観客にポスターを示している。それはこの浅草サンバカーニバルのポスターで、ああ、そのモデルを務めたのが、まさにこのブラジル人ダンサーだったんだ・・・。ただ、残念なことに、その位置が、私から見て直射日光が当たらないところだったので、その分の露出補正をする暇がなかったから暗くなってしまった。ダンサーの右手だけが、直射日光に当たっているから明るい。データは、絞り値:F11、シャッター速度:1/1000秒、ISO感度:1250、露出補正:+0.0。



 ビール屋さんの車がやってきて、その中に黒人女性が迫力あふれる踊りを披露していた。立つ位置はどんどん変わるし、踊りも激しいしで、はたして撮れるかと思ったものだが、「こちらを向いてくれ」と願いつつ、連写で撮ってみると、その中の一枚に、まあまあ成功したものがあった。下手な鉄砲で数を打つようなものである。データは、絞り値:F11、シャッター速度:1/2500秒、ISO感度:1250、露出補正:+0.0というもの。

 以上のような顛末だっだが、私がやったのは、結局のところISO感度を1250に設定したということだけで、あとはカメラが勝手に設定してくれていた。これでは、いつまで経っても、自分の頭で考えて設定するようなことは、できないかもしれない。プロではないのだから、まあ、それでもいいか・・・。


(平成21年8月29日著)





コスモス


 本日は、先月末の衆議院選挙で政権交代を実現した民主党の鳩山由紀夫代表が、首相に選出されるという記念すべき日である。私ものんびりと眠っておられず、早朝まだ外が暗い内に目が覚めてしまった。そこで眠気覚ましを兼ねて、近所の谷中・根津・千駄木、つまり谷根千の下町を、根津神社を中心にさっと一周してきた。早朝でも、秋らしい天高く青い空で、実に良い日であった。散歩の途中、その気になって花を探すと、あるはあるは、ここは下町なので、家の前や路地のあちこちに、季節の花が置かれている。それも、さりげなく置かれているので、たいしたことのない花だと思って通り過ぎようとするが、それでもちょっと気になるところがあって振り返ると、それが意外と良い花だったりする。これぞ、下町の隠し味といったところである。

コスモスの蜜を吸う蝶


 しかも、思いがけないことに、こんな街中でも、花を目掛けて蝶々が飛んで来ている。かねてから、花と蝶の二つを組み合わせて撮りたかったのだけれど、そもそもこんな組み合わせは、野原や公園でないとまず撮れないのではないかと思っていたから、これは、嬉しい誤算であった。最初、家の前の小さな公園に咲いているコスモスを撮っていたところ、いきなり蝶が現れて、そしてすぐに飛んでいってどこかへと消えた。しかし、蝶は、大きく旋回したようで、しばらくして再びコスモスに向かってきた。よほど、このコスモスが気に入ったように見える。私がカメラを構えているその前で、しっかりと蜜を吸い始めた。いったんそうなると、蝶は夢中で吸っているので、私のカメラのシャッター音がしようがしまいが、もうお構いなしとなる。しかし、残念なことに風が吹いてきて、蝶とともに花がゆらゆら揺れるので、ピントの合った写真はそう撮れるものではない。それでも何とか一枚だけは、満足のいく写真が撮れた。

すっきりとしている朝顔


 コスモスが終わって、次は朝顔である。朝顔というだけあって、午後になると萎びてしまうが、朝だけはしゃんとしている。水滴がかかった朝顔もあったが、これもまた、新鮮な感じがして、なかなかいいものである。

ウナズキヒメフヨウ(頷き姫芙蓉)


 根津神社の脇の家に、珍しい花があった。ウナズキヒメフヨウ(頷き姫芙蓉)といって、英名は「Sleeping Hibiscus」、熱帯アメリカ原産のアオイ科の植物である。つぼみの時は上を向いているが、だんだん下を向いていって、花が下向きに咲くので、このように名付けられたとのこと。その近くの家に、ノウゼンカズラ(凌霄花)の花が咲いていた。ラッパ状の花といい、その派手な橙色の色彩といい、よく目立つ。中国原産の落葉ツル植物だそうだ。

ノウゼンカズラ(凌霄花)


 それから、東大の地震研をぐるりと回って本郷通りから言問通りに出て、坂を下って行く途中のお茶の先生の家の前に、木槿(ムクゲ)の花がたくさん咲いていた。中国原産で平安時代に渡来したと聞く。なんでも、韓国ではこれが国の繁栄を意味する花として国花になっているそうだ。ハイビスカスと同じ属だというが、そういえば似ている!

木槿(ムクゲ)

ムラサキシキブ


 その近くの家の前に、ムラサキシキブが咲いていた。庭木として植えられるのは、コムラサキということだが、この写真はそちらの方である。おいしそうな実であるが、もちろん食べられない。さらに進むと、あった、あった。百日紅(サルスベリ)である。中国南部原産の木で、日本には江戸時代に渡来したという。幹がつるつるしていて猿ですら滑り落ちてしまうというのがネーミングの由来である。この古木が高尾山にあったが、確かに、そんな感じだった。

百日紅(サルスベリ)


 そこから、家に帰ろうと思ったら、目の前を蝶(むしろ蛾かもしれない)が横切った。そして、近くの花にとまって、その蜜を吸い始めた。これはまたとないチャンスである。そっと近づき、それを入れて写真を撮った。





 下町谷根千の花々(写 真)は、こちらから。


(平成21年9月16日著)

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悠々人生のエッセイ

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