悠々人生のエッセイ








 我々にとっての孫娘ちゃんは、息子夫婦のところに生まれた初の子供である。特に何事もなくて無事にすくすくと順調に育ち、2ヵ月となった。どの赤ちゃんもそうだが、とりわけ生まれたばかりの数ヵ月は、赤ちゃんは夜と昼の区別もなく2〜3時間おきに泣くしミルクをねだるしで、両親やその周りで赤ちゃんに接する人たちの負担は極めて重い。孫娘ちゃんもその例外でないが、聞けば聞くほどご本当に苦労様と言わざるを得ない状態から、ようやく脱しつつある。たとえば、夕方にお風呂に入れば、夜は6時間ほど続けて寝てくれることも多くなったという。それに、泣き方も一様ではなく、ミルクが欲しいとき、甘えたいとき、おしめが濡れたときなどの泣き方も、それぞれ違っているように聞こえるなど、赤ちゃんも親もだんだんペースをつかんできたようだ。

 先日、ゴールデン・ウィークの連休前に、皆で孫娘ちゃんのお宮参りに行った。ぽかぽかと暖かい日曜日の朝、明治神宮本殿前に集合して、神楽殿の中に入った。そこで、お母さんのご実家に用意していただいたお宮参りの衣装を家内が付けたが、肩に回す紐と衣装の関係はこれで良いかどうか、どうも自信がない。でも、記念写真を撮るときに写真屋さんに聞けばよいと気楽に考えることにする。しばらく待たされた後、いよいよ我々の番となり、20〜30人の人たちとともに、160畳の広さがあるという内部の「願主席」という畳敷きの大きな部屋に入った。その前から3列目くらいに座り、そこで儀式の開始を待つ。

 やがて、ドーン・ドーンと厳かな大太鼓が打たれ、神主さんによるお清めのお祓いが行われるので、参加者が一斉に頭を垂れた。合図で顔を上げ、神主さんによって朗々と奏上される祝詞を粛々と聞く。まあ、ここまではどこの神社でも行っていることであるが、さすが明治神宮だなと思ったのは、この後、二人の巫女が手に花を持ち、神楽「倭舞(やまとまい)」を舞ったことである。なかなか華やかなもので、一緒に行った初孫ちゃんも、目を丸くして見ていたほどである。明治神宮のHPによると、「この舞は、神楽殿で祈願をされる方のために作られた明治神宮独自の舞です。人生のそれぞれの節目にはご祈願祭を受けて心清々しく、幸せと安らぎに満ちた日々をすごしましょう」とあり、なるほどその言葉通りに清々しい気分になった。

 それから、皆で地階の写真室に行き、そこで記念写真を撮った。写真師さんは二人で、面白かったのは、「何枚も撮りますから、大人の方は、何があっても前を見ていてください」という指示である。つまりこれを解釈すれば、赤ちゃんや一緒に来た初孫ちゃんはどこを向いているのかわからないので、大人にはともかく前を向き続けてもらって写真をたくさん撮り、その中から子供たちがたまたま前を向いている瞬間のものを選びたいということだろう。最近はデジタル時代だから少し気の利いた写真屋さんなら、アドビのフォトショップでも使ってパソコン上でたちまち修正してしまいそうだが、どうやらこちらはまだ、アナログの時代にとどまっているようだ。ともあれ写真は、3週間後に送られてくるようだから、楽しみである。

 さて、主役の孫娘ちゃんだが、最近も息子のところに遊びに行き会ってきたが、いやもう丸々と太って実に健康に育っている。顔もぽっちゃりとしてふくよかで本当に可愛い。誰に似ているかというと、どちらかというとお母さん似だと思うが、赤ちゃんの顔はどんどん変化していくものだから、まだ決めつけるには早い。肝心の健康状態だけれど、もともと体重が3000キログラムを超えて生まれたこともあるが、その後も母乳をどんどん飲んで大きくなり、定期の健康診断でも全く問題なしだという。結構なことだ・・・太股もむっちりとしていて、おむつ替えのとき家内がそこを両手でさすってやると、気持ちよさそうにしている。我々が行ってのぞき込むと、目を開けて両手を突き出し、両足をばたばたさせるが、特に声を出すようなことはしない。ところが、我々が帰ったら大きな声で泣くそうだから、かなりの内弁慶のようである。

 一緒に行った4歳の初孫ちゃんが、赤ちゃんを抱きたいという。そこで私がオリンパスのE−P3を取り出し、家内が手を貸して赤ちゃんを支え、3人で写真に納まった。この3人の目線が一致するのを待っていて撮るというのはほとんど不可能なので、明治神宮の写真屋さんのことを思い出し、何枚かを連写したところ、なるほど、そのうち1枚だけが使えるものだった。初孫ちゃんはおそるおそる両手で赤ちゃんを抱いてやや無理な笑顔を作り、赤ちゃんはキョトンとした顔をし、その後ろで家内はあらあら大変とばかりに苦笑いのような笑みを浮かべている記念すべき写真である。この子たちの将来が、明るいものでありますようにと、心から祈っている。



(平成25年 5月 8日著)
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