悠々人生・邯鄲の夢エッセイ








 確かまだ7年しか経っていないと思うのだけど、サンヨー製のドラム式洗濯乾燥機が壊れてしまった。型式は、「AQUA のAWD-AQ4000」である。写真は、次の通りである。そもそもサンヨーという会社はもうなくなってしまって、今は吸収合併先のパナソニックが修理交換の問合せ先となっている。2年前に、その乾燥フィルターが壊れたので、パナソニックのサイトから、このドラム式洗濯乾燥機の交換部品を取り寄せたことがある。これからもわかるように、ちゃんと製品と修理の引き継ぎがされているのは、結構なことだと思っていた。

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 ところで、今回壊れたというのはどういう状況かというと、冒頭の写真にあるように、回転ドラムの真ん中にあるプラスチック製の丸い部品が、あたかも「もう疲れた」とばかりにポロリと落ちてきたのである。よく見ると、プラスチックが破断している。ここはまさにドラム式の中核部分なので、そんなところが落ちてくるとはどういうことだと言いたいところだが、会社が潰れてしまっていては、致し方ない。このままだと、乾燥時など高速回転をするときに危ないと思い、買い替えることにした。加えて、前回購入できた乾燥フィルターも、もはやパナソニックのサイトにも売っていないので、がっかりしたという事情もある。だから、もう買換えの潮時なのだろうと自ら納得することにした。

 こういう時、私は勤め先に近い家電量販店に行くことにしている。昔々、上京して勤め始め、しばらくして結婚したときには、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンなどの家電製品一式を買うために秋葉原の家電量販店に行ったものだ。ところが、秋葉原はいつのまにかパソコンとゲームとオタクのメッカとなり、家電を探すどころではなくなった。その代わりに、ビックカメラやヨドバシカメラなどの全国チェーン店で家電を買うようになった。それが今やアマゾンなどの通販が急速に台頭してきたことから、ネットでかなりの用を足せることになった。「かなり」というのは、照明器具やせいぜいテレビなどは通販でよいのだけれど、洗濯乾燥機の場合は、果たしてあの狭いスペースに入るだろうかとか、洗濯物の仕上がりとか、その他家電リサイクルの手続などがあるため、店員さんのいる対面販売の方がいいと思って、店舗に行ったというわけである。

 すると、洗濯機のコーナーは、かつてとは様変わりしていた。昔は、洗濯乾燥機といえば東芝、松下、サンヨー、日立などのメーカーが乱立気味だったが、私の買いたい価格帯のものは、今やパナソニック(松下)か日立かという二択しかない。まあいいかと思って一つ一つ見ていく。予算は、20万円である。実は、壊れた洗濯乾燥機で一番気に入っていたのは、乾燥した後の衣類の肌触りの良さである。これで乾燥しないで部屋干したりすると、肌着もタオルもゴワゴワとなる。特に今は冬なので乾燥しやすく、肌着がまるで板のようになる。だから乾燥機能の良いものを選びたい。ただし壊れた洗濯乾燥機で妙だったのは、普通の「乾燥」モードにすると、仕上がった直後に焦げ臭いにおいがしたことだ。温度が高過ぎて繊維が焦げているのは明らかである。だから、「低温乾燥」というモードで使っていた。これだと、ちょうどいい。ただし終わるのに5時間近くもかかるのが難点である。もっとも、動く音がとても静かなものだから、夜の寝ている間に動かしていた。

 次に気に入っていたのは「洗剤ゼロ」 モードである。驚くことに、洗剤がなくても汚れがとれるし、洗剤がある場合とほとんど遜色がない。オゾンを発生させて汚れを取っているらしいが、洗剤を使わないから環境に良いかと思って、洗濯物があまり汚れていないときに、ときおり使っていた。今から思うと、オゾンが人体に悪影響を与える可能性もあったのだろうが、扉を開ける時には、その度にオゾンが排出されていたので、さほど神経質になることもないと思っていた。

 そういうわけで、売り場の洗濯乾燥機を見て回ったのだが、いずれも帯に短し襷に長しで、希望通りのものがない。まず、サイズは、どれも我が家の置き場所に入りそうだし、我が家の水栓の位置もこれでよい。しかし残念ながら、オゾンを使って洗剤ゼロという商品はもうなくなっていた。乾燥機能は、色々とお題目は並んでいるものの、使ってみないことには分からない。どれにするか大いに迷うが、意外なことに、ドアを左右どちらの開きにするかということと、納期の短さで、一つの機種に絞られてしまった。日立の「BD-NX120BL」である。つまり、この他にこれが良いなと思ったら、希望する左開きのものがない。直ぐに欲しいと思っても、人気機種だから納期は1か月後だとか、そういう調子である。その欲しかった機種は、いわば前々年のモデルで、それなら20万円で予算にちょうど合うのだけれど、持って来てもらうのに1か月もかかるというのでは、今回のような急場の役に立たない。そこでやむを得ずに納期が3日後という4か月前に発売されたばかりの最新モデルにした。何と、お値段は28万円強で、かなりの予算オーバーだが、仕方がない。ただし、家電リサイクル料金のサービスや5年保証と、3万円のポイント付きだから、実質24万円くらいである、ネットでみると、25万円から26万円だから、まあそんなところだ。


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 さて、約束の日曜日に持って来てくれた。その前に壊れた洗濯乾燥機を持ち出さないといけない。洗面台の向かいの狭い洗濯機用スペースに収まっていて重たそうなのだけど、係の人は何の苦もなくグッと持ち上げて、運び出して行った。新しい洗濯乾燥機は、前のものより縦に短く横に3センチほど長い。この長さが邪魔して入らないのではないかと心配したが、浴室に通じるドアを開け、そこに器用に身体を入れて持ち込み、防水パンの上にすっぽりと乗せてくれた。ホースを水栓に繋ぎ、試運転をしてみると、ちゃんと動いた。その時、「水栓から少し水が漏れています。この部分の中部が錆びついているので、水道屋さんを呼んで早めに取り換えた方がよろしいです。」との御宣託があった。

 お礼を言って帰ってもらった後、家内に聞くと、「この部分はTOTOの製品で、以前来てもらってパッキンを取り換えたことがある。」というので、またお願いすることにした。その作業が終わって、家内が言うには、意外なことが分かったという。TOTOの修理担当者は、「この水栓そのものは、書いてあるようにTOTO製ですが、この錆びた部分だけは、TOTO製ではない。」と言ったという。次の写真の「L」字様の金属部分である。「ええっ。これ全体がTOTO製ではないのですか?」と聞くと、「工務店かマンションの販売会社かはわかりませんが、少しでも安い材料を使って安く上げようとしたのでしょう。よくあることですよ。」という。そんなことは、初めて知った。ちなみに、このマンションの水回りを担当した会社の仕業だろうが、ケチくさいことをしたものだ。案の定、この会社はもう潰れているそうだ。いずれにせよ、TOTO製の部品に替えてもらうことにした。次の写真の上がサードパーティ製で、下がTOTO製の部品である。素人には、その差がさっぱりわからない。


サードパーティ


TOTO製


 洗濯乾燥機の買い替えから始まって、意外な手抜きの事実まで判明したものである。ともあれ、新しい洗濯乾燥機の使い勝手はどうかというと、まあ順調に動いてくれている。洗濯の時間は以前の機種とほぼ同じで約30分だが、乾燥に要する時間は以前の5時間近くから大きく改善して2時間からせいぜい3時間となり、乾燥終了後の乾き具合と肌触りは共に満足するレベルである。ただし、乾燥機能を使うたびに、エア・フィルターの掃除が必要であるし、その構造は以前のものと比べて、はるかに複雑なものとなっている。

 昔々、私が小学生の頃の洗濯機は、一つの槽しかなくて、それで洗ったら上下2つのローラーの間を通して水を切ったものだ。それからしばらくして出た二槽式洗濯機は、一方の槽でぐるぐると水で洗い、他方の槽で洗濯物を脱水したものだ。ちなみに私の母は、まだそのタイプを使っている。それが今の最新の機種は、同じ洗濯槽で洗い、脱水し、乾燥までしてくれる。その乾燥も、機械が複雑になった反面、確実に性能は上がっている。一般に機械器具というものは、文明そのものと全く同じで、時間が経つにつれて、ますます複雑でややこしくなるもののようだ。進歩して止まないというのは、良いことではあるけれども、どこかで飽和点に達してご破算となるのではないかという気もしないではない。その結果、まるきり新しいものにとって代わられるか、あるいはまたゼロから始めるかのどちらかだろう。





(平成30年2月14日著)
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