悠々人生・邯鄲の夢エッセイ



地獄のぞき




 鋸山ロープウェーと日本寺( 写 真 )は、こちらから。


 最近の外国人観光客は、2回目、3回目の来日という人が多い。だから東京に来ると、浅草寺、お台場、東京スカイツリーなどの定番の観光地は飽きてしまって、横浜、日光、鎌倉などへと足を伸ばすそうだ。しかしそれもマンネリ化して、飛騨高山、合掌造集落、千葉の鋸山と日本寺に行って感激しているという話を聞いた。高山と合掌造は知っているが、鋸山とは何だろうと思ったのがきっかけである。

 調べてみると、東京から木更津経由で延々とJRの電車に乗って3時間弱で浜金谷というところに行き、そこから鋸山ロープウェイに乗ればよいということである。バスを利用したり特急を使うと2時間半くらいにはなるらしい。それなら許容範囲だと思って、行ってみることにした。


鋸山ロープウェイ


 浜金谷駅に着いた。ロープウェイ山麓駅まで10分弱ほど歩く。行ってみると、小さな駅だ。スイス製のゴンドラで、40人乗りというが、とてもそんなに乗れるとは思えない代物である。ともかく山頂駅に着き、そこからは展望台まで階段を少し登る。

展望台からの眺め


展望台からの眺め


展望台からの眺め


 さて、展望台に到着した。目の前は浜金谷港、対岸の久里浜港まで東京湾フェリーが出ている。天気が良ければ富士山も見えるというが、残念ながらこの日は視界には入らなかった。東京湾を行き交う大型船舶がよく見える。左右は、青々とした緑だ。とっても気持ちがよい。その脇に看板があったが、それをじっくり見ないままに方向の矢印だけを見て歩き始めた。

地獄のぞき


 まずは、「地獄のぞき」を目指す。崖の上にせり出しているところがあり、それをそのように言うらしい。そこまでたどり着くには、結構な岩場を歩いて20分もかかった。まず、その対岸にある休憩所に行くと、「地獄覗き」は指呼の間だ。もちろんその間は断崖絶壁である。よくこんな所に突き出た岩があると思うくらいである。では次に、ぐるりと回ってその「地獄のぞき」そのものに向かう。かなり足場が悪いが、すぐ近くまで来て岩の上に立った。我ながら物好きだと思う。

途中の階段


折れ曲がってまた真っ直ぐ伸びている杉の木


 次は「百尺観音」(20分)にするか、磨崖仏(40分)にするか迷った末、まずは遠い方からと思って磨崖仏方面に向かった。 いやそれが遠いこと、遠いこと。斜面を上がったり下がったり、また下がったりと、だんだんロープウェイ山頂駅から離れるのが気になる。まだかまだかと思っているうちに、やっと着いた。途中、折れ曲がってまた真っ直ぐ伸びている杉の木を見つけた、その生命力に感心して、大したものだと思う。

薬師瑠璃光佛


薬師瑠璃光佛


 通称磨崖仏、御本尊の薬師瑠璃光佛は、岩に彫られた仏様である。長い間、荒れるにまかせていたが、同寺のHPによると「江戸末期になって、自然の風触による著しい崩壊があり、頭部の半分が崩れ落ち、膝の部分も埋没した状態になってしまいました。昭和に入り彫刻家八柳恭次氏の指導のもとに昭和44年、4ヶ年の歳月を費やし大仏の復元が完成いたしました。」ということだそうだ。


紫陽花


 さて、それから「百尺観音」に行くということになるのだが、またあの登り階段の山道を戻ってさらに20分というのはさすがにこたえるので、この日はもう帰ることにした。それでも別の道を通って登り、20分くらいで山頂駅にやっとたどり着いた。これはもう登山である。途中の紫陽花は美しかったが、ともあれ生半可な気持ちで来る所ではない。





(令和元年6月30日著)
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