悠々人生エッセイ



米国立アレルギー感染症研究所 ニュースリリース2月25日に掲載された新型コロナウイルス




        目   次
別冊    新型コロナウイルス記事
   2月から3月にかけての政府や知事の対応
   改正インフルエンザ対策特別措置法の成立
   新型コロナウイルス緊急事態宣言の前夜
   諸外国の強権的措置
   微温的な日本の緊急事態宣言の理由
   緊急事態宣言の発出と緊急事態措置
   アジア諸国と欧米諸国の違い
   外出自粛要請下での同級生の生活
   各国首脳のリーダーシップに感動
10    それに対して、我が宰相は
別冊    我はマスク難民なり
11    緊急事態宣言の対象を全国に拡大
12    ステイ・ホーム週間の過ごし方
13    新型コロナウイルスの伝播経路
14    決死の覚悟で病院へ
15    緊急事態宣言の延長直前の状況
16    緊急事態宣言を5月末まで延長
17    出口戦略をめぐる鞘当てと各国の状況
別冊    日本のPCR検査がなぜ進まないのか
18    日本の出口戦略と緊急事態宣言の解除
19    世界の感染者数と死亡者数の考察
20    閑 話 休 題
21    専門家による緊急事態対応の総括
22    新型コロナウイルス診療の手引き
23    東京アラート初の発令
24    愛知県知事が東京と大阪が医療崩壊と酷評
25    特別定額給付金
26    パルスオキシメーター
27    新型コロナ川柳
28    東京アラート解除・ステップ3へ緩和
29    新型コロナウイルスによる後遺症など
30    接触確認アプリ(COCOA)
31    上野動物園が再開された
32    専門家会議が突然廃止される
33    各国の超過死亡数の比較


1.2月から3月にかけての政府や知事の対応

 新型コロナウイルスの国内感染者数は、2020年2月15日から29日までは、1日当たり15人から25人の間で推移していた。3月に入って、7日頃から連日50人を越えるようになり、とうとう3月27日からは123人と、100人の大台を越した。4月になっててもその勢いは衰えず、4月3日には353人と、感染者が急増するようになった。

 この間の政府の対応を見ていると、危機管理の司令塔がいない感じがしてならない。東日本大震災のときは、枝野幸男官房長官(当時)が自ら、連日寝ないで記者会見をやり、普段は政府に批判的なネットの皆さんから、「枝野、寝ろ」という好意的なコールが起ったことは記憶に新しい。今回は加藤勝信厚生労働相がその任に付いているのかと思ったが、紙の棒読みにとどまり自ら積極的に国民と対話しようという雰囲気が感じられない。ただ、顔色が良くないので体調が悪かったのかもしれないが、それならそれで危機管理能力と発信力のある大臣に任せるべきだ。

 そういう意味では、小池百合子東京都知事は、ニュースキャスター出身であるだけあって、都民との対話ができているので、大したものだと思う。例えば、政府の専門家会議から聞いた大臣などが「換気ができていない密閉された空間には行かないように、そこで大勢の人と近付いて話したりしないこと」などとモタモタした説明をしているときに、「密閉、密接、密着の三密は避けるように」と、わかりやすいキャッチフレーズで話していたので、私は、これは都民と会話ができる人だと感じた。このような緊急事態になると、政治家としての説明能力が露わになる。

 国民がマスクが足りないと毎日イライラしていた。実は私も、2月の初めからマスクを求めて近くのドラッグストアやスーパーを何軒も何度も回ったが、それでも全く手に入らない。そういう時、2月中旬の頃だったか菅義偉官房長官が、「現在のマスク供給数は月間1億枚だが早急に6億枚まで引き上げるので、3月中には国民に行き渡る」と説明していた。私はこれで先に光明が見えたと思った。ところが、3月末になっても何も変わらず、市中では1枚も手に入らない。やはり官房長官のあの発言は、嘘でたらめの類いだったのかとガッカリした。その後、官房長官が表に出てくることはなくなった。新聞記事によると、「官房長官を傷つけてはいけないと、周りが押さえている」とのこと。国難ともいえる緊急事態なのに、そんなことをやっている場合かと言いたくなる。

 マスクといえば、4月に入って直ぐのこと、安倍晋三総理が国会で突然、「全世帯に布マスクを2枚ずつ再来週頃に郵便で配布する」と表明した。これも、新聞記事によれば、総理官邸の誰かが「国民がマスクがない、マスクがないと、ご不満のようなので、マスクを全世帯に配布すれば、そういう不満はパーっとなくなりますよ」と進言したという。本当だとしたら、あまりに短絡的な発想だ。この布マスクは30回ほど洗えるそうだが、専門家によると目が細かい不織布ではなくて、目の粗い布なのでウイルス防御という面では全く役に立たないそうだ。ただ、感染者がウイルスを撒き散らすのはある程度防げるそうなのだが、そのためにわざわざ5,300万世帯に単価200円のものを各2枚ずつ、送料込みの合計で466億円もかけて配布するのかという気がする。それだけのお金があるなら、台湾がやっているように、不織布のマスクを配給制にして国民が確実に入手できるようにすべきだったと思う。ただこれも、マイナンバーカードの普及率がまだ15%にも満たないから、無理かもしれない。

 その後、新型インフルエンザ対策特別措置法の改正で新型コロナウイルスが法律の対象になると、同法の担当大臣が西村康稔経済財政再生相となった。ところが、全体をまだ掌握できていないのか、それとも経済担当が急に公衆衛生も担当することになって勝手が違うのか、こちらも情報発信が紙の棒読みに終わっていて、国民からすると「自分の言葉で語っていない」ので、誠に物足りない。素人の大臣ではなく、たとえば公衆衛生の専門家で、それなりの地位にある責任者が、毎日、患者数、その属性、マスクや消毒剤の流通、トイレットペーパーの生産と流通、諸外国の様子、ちょっとした公衆衛生の知識などを懇切丁寧に説明するだけで、かなり違うと思う。

 その点、台湾では、陳其邁行政院副院長(副首相)の下、中央感染症指揮センターの陳時中衛生福利部長(保健相)及びデジタル政策担当の唐鳳行政院政務委員(無任所大臣)が主導して、マスクの配給制などの誠に時宜に適した政策を展開し、また国民との対話を進めている。私はたまたま、2月8日から4日間、観光で台湾旅行に行ったが、その当時の台湾の感染者数が確か日本と同じくらいでまだほとんどいなかったのに、もうその時点で、ホテルに着けば体温をチェックされるし、レストランでは入口で消毒液を吹き付けられるしで、最大限の厳戒体制だった。蔡英文総統がかつてのSARS騒ぎのときの衛生担当部長だったという巡り合わせもあるのだろうが、ともかくやれることは何でもやるという姿勢で、信頼が持てた。その成果として、2月から4月にかけて世界各国の感染者数が飛躍的に伸びる中、台湾の感染者数は339人、うち死者5人と、非常に低く押さえ込まれている(4月4日現在。同時期の日本は感染者数3,139人、うち死者77人。アメリカはそれぞれ213,600人、4,793人と、まるで比較にならない。)。

 私が台湾旅行に行く直前の2月3日には、豪華客船ダイヤモンド・プリンセス号事件が専ら世間の耳目を集めていた。香港の感染者が一時乗船していたために、船内で新型コロナウイルスの感染が広がった事件である。公海上にあったが、急遽、横浜港に寄港して、その検疫をするということで、検疫官が乗り込んでいった。ところが、日本国内では、私も含めてどこか他人事のような感じだった。そういう中、私は台湾旅行から2月12日に日本に帰ってくると、台湾の厳戒体制と比べて日本では、テレビで手洗いが呼びかけられるくらいで、緊張感など全くなく、こんなことで良いものかと思ったものである。

 厚生労働省の方も、恐らくダイヤモンド・プリンセス号に人的資源と時間を取られて、とりわけPCR検査の能力を増やすとか、マスクや消毒薬や人工呼吸器を増産させるとか、感染症対応の病床を用意するとか等の日本全体の防御ということに目を配る余裕がなかったのではないかと考える。そのダイヤモンド・プリンセス号事件も、事件処理に当たった関係者はご苦労されたとは思うが、外から見ていると単なる検疫作業の延長という感覚でやっていて、肝心の船内の感染防止、乗客乗員の保護という観点が欠けていたのではないか、船をウイルス培養器にせずもっと早く乗客だけでも外に出せなかったのか、現場責任者は何をしていたのかなどと、徹底的に検証されるべきだと思う。この関係で検疫官などに10数人もの感染者を出したという点は、この検疫は失敗に終わったと言われても仕方がない。

 発生直後にこの船に乗り込んだ神戸大学の岩田健太郎教授が「ウイルスがいるかもしれない『レッドゾーン』と、安全な『グリーンゾーン』がグチャグチャに入り乱れていて、どこが危険なのかがわからない。なのに、船内で作業する医師や厚生労働省の職員らスタッフはマスクもしていなかったり、手袋だけ嵌めていたりでチグハグだ。心底怖かった」と表現した。これは、この結果を見れば真実を語っていたと思う。船内に、やや過剰といわれてもよいから、先々を見越して適切な手を打つという危機管理のセンスがある公衆衛生の指導者がいなかったのかと残念に思う。その点、自衛隊が確か2,000人ほど出動したと聞いている。それでいて、防疫という面では素人の自衛隊員からは1人の患者も出さなかったことは、誠に立派なことだと思う。素人だからこそ、「正しく恐れて、正しい防疫の手順を踏んだ」ものと思われる。

 その一方、2月の半ばを過ぎると、国内の感染がどんどん進んで、北海道では鈴木直道知事が札幌雪祭りを契機に全国で一番多い感染者を出したことから、警鐘を鳴らしていた。注目すべきは、地方では、和歌山の仁坂吉伸知事もそうなのだけど、最高責任者の知事自らが発表するという流れができて、危機管理がしっかり機能しているという印象を道民や県民に与えている。これこそ、地方分権を踏まえた危機管理のあり得べき姿だ。2月15日の記者会見で仁坂知事は、「メディアにお願いですが、新型コロナウイルスに感染した医師が誰でどこに住んでいるんだとか、そういうことは差別やいじめに繋がるので、社会正義に反していることはやめていただきたい」などと、誠に正論を語っていて、胸がすく思いがした。

 2月28日になって北海道の鈴木知事が、「政治決断」として緊急事態宣言を出し、小中学校の休校を打ち出した。おそらく、これに刺激されたのだろうが、翌29日になると安倍首相が全国一斉休校を打ち出した。全く唐突で、それまで寝ていたものが急に起き出して、暴れ始めたようなものだ。おそらく、このままではいけないと突然、首相指導型を見せようとしたのだろうが、これこそ、過剰反応というものだ。これによって迷惑を被る共稼ぎ世帯も多かっただろう。政府部内で慎重に検討すれば、たとえば感染率や患者数が一定以上の都道府県に限るという手もあったはずだ。

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2.改正インフルエンザ対策特別措置法の成立

 一般に、緊急事態の内容は、その国民への危害の現実化とその恐れの程度に応じて決まることになっている。その最たるものは、武力攻撃事態における国民保護法制である(平成16年6月に成立し、同年9月から施行)。他国による日本への武力攻撃が起こると、国民の財産はもとより、国民の生命そのものが直接危険にさらされる。だから、それ相応の強い措置が法律で設けられている。避難計画と指示、買占め等防止で、これとともに別法で道路、空港、港湾を自衛隊が優先使用することになっている。その性格上、災害対策基本法が参考にされた。新型インフルエンザ対策特別措置法(平成24年法律第31号)は、これらの法律を参考としつつ、SARSの経験と急速に蔓延する伝染病の性質を踏まえて立案されたものである。

 今回の新型コロナウイルス対策には、一から法律を作っている時間的余裕がないため、既存の新型インフルエンザ対策特別措置法(平成24年法律第31号)の定義に新型コロナウイルス感染症を追加することにより、同法の枠組みをそのまま使ったものである。国会での審議は、わずか3日間で成立した。この法律に基づき、新型インフルエンザ等緊急事態宣言(2年未満の期間限定)を行うと、次の措置が可能となる。

(1)外出自粛要請、学校、興行場、催物等の制限等の要請・指示

 都道府県知事は、住民に対し外出の自粛を要請できる(第45条第1項)。多数の者が利用する施設(学校、社会福祉施設、建築物の床面積の合計が千平方メートルを超える劇場、映画館や体育館など)の使用制限・停止又は催物の開催の制限・停止を要請することができる(第45条第2項)。正当な理由がないのに要請に応じないときは、特に必要があると認めるときに限り、要請に係る措置を講ずべきことを指示できる。ただし、いずれも罰則はない。

(2)住民に対する予防接種の実施(第46条)

(3)医療提供体制の確保(第47条―第49条)

 臨時の医療施設を開設するため、土地や建物を強制使用することができる(第49条)

(4)緊急物資の運送の要請・指示(第54条)

(5)政令で定める特定物資の売渡しの要請・収用(第55条)

 都道府県知事等は、新型インフルエンザ等の対応に必要な物資の売り渡しを業者に要請することができ、不当に応じない場合は収用することも可能(第55条)。また、不当に売り渡しに応じなかった業者に対して、罰則がある(第76条)

(6)埋葬・火葬の特例(第56条)

(7)金銭債務の支払猶予等等(第58条)

(8)生活関連物資等の価格の安定(第59条)

 買い占め売り惜しみ防止法・国民生活安定緊急措置法等の的確な運用

(9)政府関係金融機関等による融資(第60条)

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3.新型コロナウイルス緊急事態宣言の前夜

 新型コロナウイルスの全国的な感染爆発(アウト・ブレイク)が起こり、医療機関が患者を受け入れる能力を超える事態(オーバー・シュート)となると、改正インフルエンザ対策特別措置法の緊急事態宣言が出されるかどうかの問題となる。4月3日現在、政府はまだその事態には至っていないと判断しているようだ。確かに、首都圏や関西圏では、感染者数が急拡大する予兆が見られるものの、未だ全国レベルに至っているとは言えない。

 新型コロナウイルスは、人と人との距離が近いときに伝染るということで、他の人から2メートルは距離を置くべしと言われる。これを「ソーシャル・ディスタンシング」と言うらしい。なるほど、言い得て妙だ。それから、中国政府が武漢でやったように、外出禁止令で街を一斉にシャット・ダウンすることを、「ロック・ダウン」と言うそうだ。専門家の試算によると、これを行って外出する人数を8割減らせば、感染者数を激減させられるそうだ。

 日本では、法律に基づく緊急事態宣言を行っても、先ほど述べたように罰則なしの要請・指示なので、外出する人数は、おそらく首都圏で6割減、関西圏で4割減程度だろう。そうすると、イタリアのように、アウト・ブレイクと医療機関のオーバー・シュートが起こるのは、もはや避けられない予感がする。ヨーロッパで最も早くアウト・ブレイクが起こったイタリアの4月4日現在の感染者数は、11万5242人、うち死者は1万3912人となっている。ちなみに日本は感染者数3139人、うち死者77人だ(ただし、ダイヤモンド・プリンセス号の712人の感染者は除外している)。


例年は花見客で盛り上がる上野公園も閉鎖


 毎年3月末から4月にかけては、私の大好きな桜の季節である。ところが、今年は桜の写真を撮りに行こうにも、東京都知事より3月28日からの週末の外出自粛が求められているので、どこにも行けない。新宿御苑、六義園などの桜が美しい公園も全て閉園している。例年は花見客で盛り上がる上野公園も閉鎖だ。私は、やむを得ない理由で自宅から上野に歩いて行ったとき、公園内の桜通りにはブロックが置かれ、人っ子一人いなかった。道の遥か先を見たら、二人の人影があったが、よく見ると警備員だった。

 本日は4月4日だが、直ぐにでも緊急事態宣言が出されていてもおかしくない状況になってきた。別荘を持っている友達は、自分の車で既に長野県に避難している。私は、かねてから公共交通機関派だったから、こういうときには車がないので不便だ。いや、たとえ車があったとしても、もし自分が感染者だったとしたらウイルスを地方に拡散するようなものだから、東京から出るべきではないだろう。仕方がないので、朝夕の散歩以外は何処にも行かずに家に籠っているつもりだ。事態がどんどん悪くなっていって、もうどうにもならなくなったら、家内とともに如何にして生き残るかを模索することになるかもしれない。父母の世代とは違って、私たちの世代には戦争というものがなくて良かったと思っていたが、代わりにこの未曾有の災難が降り掛かってきてしまった。

(1から3までは、4月4日記)

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4.諸外国の強権的措置

 4月7日、政府の緊急事態宣言が出された。一般の人々に対しては、外出の自粛をはじめ、学校や興行の自粛等が求められる。ところがこれは、あくまでも要請であり、従わなくとも罰則はない。この点、次のように欧米やアジア諸国で行われている「ロックダウン」つまり都市全体を封鎖し、罰則をもって人の移動を禁止する「外出制限令」に比べて、大甘で実効性が期待できないという論評がある。

(1)ニューヨークでは、3月30日から市長令で、公共の場で人との距離を保つことを徹底していない場合、最大500ドルの罰金。

(2)イタリアでは、3月12日から政令で、行き先と理由を記した証明書を携帯していない人には最大3,000ユーロ(約35万円)の罰金。施行後1週間でおよそ11万人以上が警告を受けた。

(3)フランスでは、3月17日からの外出禁止令で、テレワークできない仕事や必要不可欠な買い物など特定の目的(証明書の携帯が必要)以外の外出に135ユーロ(約16,000円)の罰金、これを15日以内に繰り返すと罰金200ユーロ、30日以内にさらに違反を重ねると禁錮6ヶ月以下が科される。発令から2週間の検挙数は359.000件に上ったという。

(4)イギリスでは、外出できるのは必需品の買い物、1日1回の運動、やむを得ない医療と通勤だけとし、3月25日に成立した法律により、公共の場で3人以上で集まった場合、最低30ポンド(約4,000円)の罰金。

(5)震源地である中国の武漢では、1月23日から都市封鎖が行われた。都市内や市境をまたぐ交通機関や高速道路を封鎖して出入りができないようにし、市民らに武漢を離れてはならないと通告した。居住区ごとに、厳格な監視が行われた。テレビ映像によると、家族内で麻雀の卓を囲んでいるときに公安(警察)が踏み込んで、卓を壊すようなことをしていた。人と人との間の密接な接触を防ぐためというが、家族内のことまで公権力が介入するのは明らかにやり過ぎだ。なお、この封鎖は、感染していない人に限って、4月6日に2ヶ月半ぶりに解除された。

(6)シンガポールでは、当初は、対外的には厳格な国境管理を行うものの、国内では厳しい移動や外出の制限措置を取らず、アプリで感染者の行動を追跡し、人と人との距離を空けさせる「社会的距離」を導入するなどして、それなりの成果を上げていた。ところが、追跡ができない事例が大幅に増えてきたことから、ついに4月7日から全面的な外出禁止令に踏み切った。違反者には、罰金10,000シンガポールドル(約25,000円)若しくは6ヶ月以内の禁錮刑又はその両方が科される。

(7)マレーシアでは、3月18日から、外出禁止令が出された。日用品の買物と通院のため車1台につき1人だけ外出が許されるが、それ以外は禁止される。違反者には、罰金100リンギット(約25,000円)若しくは6ヶ月以内の禁錮刑又はその両方が科される。当初は、違反者に口頭注意するのなど柔軟な対応を取っていたが、不要不急の外出など違反者が続出したことから、軍隊も動員して警察とともに検問やパトロールなどに当たるようになった。3月27日には、首都クアラルンプールの高級住宅街であるモントキアラ地区でジョギング中に警察官に呼び止められ、自宅に戻るよう促されたにもかかわらず無視して反抗的な態度を取った11人が逮捕された。その内訳は、日本人4、韓国人3、インド人2、英国人1、マレーシア人1とのこと。こんなことで逮捕される日本人がいるとは誠に情けないが、うち1人は日本の最大手電機メーカーの駐在員だという。これは特定の地区だけの数字だが、3月29日には全土で828人が逮捕されたとのこと(時事通信)。

(8)フィリピンでは、3月17日から、ルソン島全域で生活必需品を購入するための外出を除いて、市民が移動することを大幅に制限さている。ドゥルテ大統領は、4月4日、「市民が自宅待機などの措置を破った場合、警官らが射殺も辞さない事態が有り得る」と国民に警告した。麻薬取締りのときと同じく、めちゃくちゃだ。

(9)インドでは、3月22日から、全土に日中の(首都ニューデリでは全日の)外出禁止令が出された。ビデオ映像によると、違反者には、警察官が罰として、その場で腕立て伏せをさせたり、鞭で打ったり、頭にコロナの被り物を被せたりと、まるで前近代的な刑罰を科していて、心底驚いた。


 こうして見ると、どの国も、強権的な措置を講じている。それも、かなりのものだ。アメリカやヨーロッパの国々では、戦争や災害のようないわば緊急時への対応して行われていると考えられる。ところがアジア諸国では、元々強権的な体質の政府が多いことから、それなりの措置をとっている。それにしても、フィリピンやインドはやり過ぎだ。でも、お国柄が現われているから面白い。

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5.微温的な日本の緊急事態宣言の理由

 それに比べて、日本の今度の改正インフルエンザ対策特別措置法に基づく緊急事態宣言は、一般向けには外出の自粛、学校や興行場などの管理者には要請や指示ができるものとしているが、あくまでも要請ベースにとどまり、罰則をもって強制するものではない。感染防止のための集会禁止規定もない。ただ、一定の要件を満たせば、土地所有者の同意を得ないで土地等を使用できるとしているくらいだ。もちろん、これには補償がある。その他、罰則はといえば、特定物資の隠匿や損壊への懲役又は罰金と、立入検査の拒否や妨害への罰金しかない。

 それはなぜかというと、現行憲法の基本的人権の尊重の観点からは、それが限界だからだ。罰則をもって外出禁止を命令することは憲法22条の居住移転の自由に、同じく集会禁止命令は憲法21条の表現の自由に反する。先に述べたように土地所有者の同意を得ないで土地等を使用できるとする規定があるが、これも憲法29条上、問題なしとはしないところだが、財産権であるからこの程度は公共の福祉の観点からは許されると解されている。これが本法の限界である。たとえ武力攻撃事態であっても、考え方は同じである。

 どうしてこういう構造なのかといえば、突き詰めていうと、日本国憲法に緊急事態条項がないからだ。かつての大日本帝国憲法では、戒厳大権など4つの緊急事態条項があった。しかしこれによって基本的人権が大きく制約されたのは歴史的事実である。その反省から、日本国憲法では緊急事態条項が設けられなかったとされる。だから我々は、その制約の下で最大限、何ができるかを考えなければならない。 憲法に緊急事態条項がない中で、憲法の根本である基本的人権を一時停止するようにするには、憲法13条の「公共の福祉」を理由にするしかないが、そんなことは果たして可能だろうか。

 現在の日本の緊急事態宣言の要件は、次の通りである。

「新型インフルエンザ等(国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあるものとして、重篤である症例の発生頻度が相当程度高いものに限る。)が国内で発生しその全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし又はそのおそれがあるものとして、感染経路が特定できず、あるいは感染が拡大している事態が発生したと認めるとき」である。

 4月8日、世界の新型コロナウイルスの感染者は、1,317,130人、うち死亡は74,340人(死亡率は0.56%)である。これに対して日本の感染者は、4,472人、死亡は98人(死亡率は0.02%)となっている。死亡率が小さいが、これは感染者数が次のグラフ(出典:NHK)のように最近になって急増したことによるもので、あと2週間もすれば、残念ながらかなり増加するものと思われる。とはいえ、この今の状況で「重篤である症例の発生頻度が相当程度高い」といえるか、法律の規定の「当てはめ」としては、いささか疑問が残るところである。


NHK日本国内の感染者数


 そういう状況では、罰則のない自粛要請が、ちょうど良い収まりではないかと思うのである。基本的人権を尊重するという意味でも、その方が望ましい。ところが、中国に次いで先進国中で最初に新型コロナウイルスの急速な蔓延で医療崩壊に陥ったイタリアでは、4月8日現在の感染者は、132,542人、死者は16,525人(死亡率は12.5%)である。医療現場は、患者が殺到して満足な治療もできず、遂にはトリアージの考えまで適用して、人工心肺機器を若い人に先に使うほどの混乱ぶりだった。

 では、現にこういう事態になったら、いや現にならなくともそういう事態になることが十分に想定される事態になったらどうか。それくらいに切迫した状況になってはじめて、外出禁止令を出して罰則をもって強制するべきではないかという議論をする土俵に上ることが出来るというものだ。その場合、国民の外出を一律に禁止することが、現下の疫病の急激な拡大とそれによる多くの国民の命を守る上で必要不可欠であることを立証した上で、現在の緊急事態宣言の要件に何を加えるかであるが、ひとつは死亡率の高さが有力な要件になると考えられる。憲法13条に規定する通り、人間の命は何よりにも増して尊重すべきであるから、憲法の基本原理である基本的人権も、緊急事態宣言が出ている僅かな期間と都道府県の区域に限って、一時制約を受けてもやむを得ないし、それこそが公共の福祉に適うものと説明するのが一案である。

 ただ、私は、繰り返しになるが今のような程度の事態では、基本的人権を一時棚上げしてまで、外出禁止を罰則をもって担保するようなことをすべきでないと思う。相手が業者ならば、現行法のように命令をして罰則を科すことはできるが、一般国民を相手に外出禁止令違反を罪に問うなら、他の法律の先例からすると、禁固刑どころかせいぜい罰金10万円以下というのが相場だろう。そんな中途半端な罰金なら、守らない人が次々に出てくるし、それくらいであれば罰則など、ない方がよい。ただでさえ疫病騒ぎで人々が精神的に負担の多い日々を送っているのだから、そこに警官による外出の取締りがあっては、ますます世の中が暗いムードになりかねない。代わりに、特に興行や大型商業施設など企業に対する都道府県知事による中止の指示に反したような場合、その企業名は公表することにして、自ずと社会的制裁が下るようにしておけば良いのではないかと考える。

(4と5は、4月8日記)

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6.緊急事態宣言の発出と緊急事態措置

 4月7日、政府は、改正インフルエンザ対策特別措置法に基づき、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、大阪府、兵庫県、福岡県の7都府県を対象として、新型コロナウイルス感染対策のための緊急事態宣言を発出した(基本的対処方針)。

緊急事態宣言の発出

(1)これを見て、まず不思議に思ったのは、「対象区域になぜ愛知県が入っていないのだろうか」ということだ。4月10日現在になるが、新型コロナウイルス患者数は、次のようになっている。

 東京都  1,519人
 大阪府    616人
 神奈川県   381人
 千葉県    354人
 埼玉県    285人
 兵庫県    287人
 福岡県    250人


 これに対して、愛知県は301人と、4番目の千葉県と5番目の埼玉県の中間の患者数なのに、なぜ指定されなかったのか、どうにも理解しかねる。政府の基本的対処方針等諮問委員会は、「当該都府県内の(1)累計の感染者数、(2)感染者が2倍になるまでの「倍加時間」、(3)1日あたりの感染者数に占める経路を追えない感染者数の割合」の3つを基準にしているというが(2020年4月10日付け日経新聞4面)、その具体的数字は明らかでない。

 朝日新聞によると、「各自治体にとって病床の確保が喫緊の課題となっている。軽症者も含めて感染者を全員入院させる現在の仕組みでは、破綻(はたん)は避けられない状況だ。・・・政府の専門家会議は1日、東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫の各都府県について『医療提供体制が切迫している』と指摘。『今日明日にでも抜本的な対策を』と求めた。」としている。ここでは、ちゃんと愛知県を取り上げている。これに対して名指しされたほとんどの都府県はその方向で検討を進めているようだ。ところが、愛知県の大村秀章知事だけは「2日に臨時の会見を開き、『医療提供体制は十分確保している。迷惑千万だ』と専門家会議の指摘に反発した。感染状況も『どっと拡大しているわけではない』として、軽症でも感染者を入院させるという方針を変える必要はないとの考え」だそうだ(4月3日付け朝刊)。こういう、いわば「可愛くない」態度も、指定されなかった背景にあるのだろう。


都道府県別の感染者数



(2)次に、この政府の緊急事態宣言を受けて、対象とされた都府県が緊急事態措置を行うのであるが、4月8日から10日かけて国と東京都が調整中という話が伝わってくるだけで、その措置がなかなか発出されないのである。私は、「どうしたのか、事は人間の生死にかかわるのに」と思っていたら、その様子がわかってきた。

 要は、国がまずは外出の自粛程度の「穏便な」措置を目指していたのに、東京都はそれだけでなく施設の使用制限という「強力な」措置を求めていて、その調整が長引いていたからである。他の府県は、東京都ほど感染が拡がっていないことから、内心は「穏便な措置でよいではないか、それ以上に休業などを求めると補償の問題が出てきて財政が持たない」と思いながら、その国対東京都のバトルの様子見をしていたからである。現に千葉県知事などは「我々は東京都ほど財政に余裕があるわけではない」と言い、神奈川県知事は「まずは自粛で、その効果を見てからでよいではないか」と言って、東京都を牽制していた。

(3)以上の国(西村康稔経済財政再生大臣)と東京都(小池百合子知事)の調整は、私の見るところ、東京都側の圧勝に終わった。まるで政治家としての役者が違って、国が東京都に押し切られたのである。パンデミックを目前に控えた東京都と、さほどではない他の府県や経済の先行きを気にする国との真剣さの違いが出たのだと思う。

 経済に対する打撃を懸念する国側は、東京都に対して、「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」に書かれた通り、「まん延の防止に関する措置として、まずは法第45条第1項に基づく外出の自粛等について協力の要請を行うものとする。その上で、都道府県による法第24条第9項に基づく施設の使用制限の要請を行い、特定都道府県による法第45条第2項から第4項までに基づく施設の使用制限の要請、指示等を行うにあたっては、特定都道府県は、国に協議の上、必要に応じ専門家の意見も聞きつつ、外出の自粛等の協力の要請の 効果を見極めた上で行うものとする。」(10P)と求めたはずだ。

 ところが東京都は、「とりあえず」外出自粛要請をして様子を見るということでは目前に迫っているパンデミックによる医療崩壊を避けられないと考えたのであろう。外出自粛の要請と施設使用制限の要請を「同時に」行い、かつ施設使用制限に応じた中小事業者に50万円(2事業所以上は100万円)の「感染拡大防止協力金」を支給することまで表明した。それに伴う予算措置は、1,000億円だという。他の府県は、とてもそのような余裕はないので、国に頼ることになるだろう。国は、地団駄を踏むことになる。

 国と東京都との溝が埋まらなかった部分は、もちろんこれだけではない。特別措置法第45条第1項に基づく東京都知事による緊急事態措置のほかに、東京都知事が特別措置法第24条第9項に基づく都道府県知事による協力の要請を幅広く発出するという主張をしたらしい。これは、本来は緊急事態宣言や措置等が出される前のいわば「つなぎ」として想定されていた条文だが、東京都は国との見解の相違を埋めるために持ち出したようだ。具体的には、居酒屋や理髪店や小規模ホームセンターも全面的な休業要請の対象に加えたいという都の考えに対して、これらは社会生活を維持する上で必要だからやり過ぎだと、国が消極的だったそうだ。

 調整の結果、居酒屋や理髪店や小規模ホームセンターについては休止要請まではせず、適切な感染防止策を講じた上での営業を認める。ただし、居酒屋は午後8時まで、酒類の提供は午後7時までとなった。しかしながら、東京都の発表を見てみると、結果的にこれは特別措置法に基づかない協力要請とされたようだ。この辺りの経緯と法的な理由は、明らかになっていない。話が誠に輻輳しているので、それを整理して並べると、次のようになる。

 @ 特別措置法に基づく政府の緊急事態宣言(法第32条第1項)から始まり、

 A 特別措置法に基づく都道府県知事による緊急事態措置(法第2条第3号・45条)(違反者には特に罰則はないが、守らない者に対して都道府県知事は指示ができるし、その公表規定もある。)

 【B 特別措置法に基づく都道府県知事による協力の要請(法第24条第9項)・・・東京都の発表には法的根拠がはっきりとは書かれていないので、よくわからない。おそらくこれらは、結果的に次のCとなったのではないかと思われるが、真偽不明。いずれにせよ要請ベースであることには変わりがない。】

 C 特別措置法に基づかない都道府県知事による緊急事態宣言や自粛要請(行政指導)

 ちなみに、国との交渉を終えた小池百合子東京都知事は、その直後の記者会見で、次のようなやり取りがあったそうだ(日経新聞4月11日付け)

記者の問い「休業要請や協力金は都の財政基盤があるからこそできるとの意見もある。緊急事態宣言の対象の府県には、都のモデルを追随してほしいと考えているか。」

小池都知事「それぞれの地域の特性があり、だからこそ都道府県知事に権限を与えたと思う。ただ権限は代表取締役社長(知事)にあると思っていたら、天の声(= 国)が色々と聞こえまして、中間管理職になったような感じだ。やはりそれぞれで事情が違うので、まずは東京都としてなすべきことを知事としてやっていく。」

 これは、地方分権で都道府県知事に感染症対策のほとんどすべての権限を与えておきながら、この改正新型インフルエンザ対策特別措置法に限っては、基本的対処方針という中に書き込んだ「調整権限」で国が都道府県をコントロールしようとしている仕組みそのものに無理があると考えられる。二つの方向がある。そのひとつは、地域の事情を知り住民により近いところにいる都道府県知事に全て任せて国はバックアップに徹するか、あるいは地方分権前のかつての機関委任事務を復活させて国が統一的な感染症対策を作ってその手足として都道府県を使い、万が一にも国の指示に反する知事が出てきたら最終的には罷免するくらいの仕組みを作るかだ。そうでなければ、施策の統一的な実施はできるものではない。しかしながら、これだけ地方分権を進めた以上、もはや前者の道しかないように思える。

(4)東京都における緊急事態措置等(令和2年4月10日)

 都内全域を対象として、令和2年5月6日(水曜日)まで、新型コロナウイルス感染症のまん延防止に向け、以下の要請を実施

 (1) 都民向け:徹底した外出自粛の要請(令和2年4月7日から5月6日まで)
・新型インフルエンザ等対策特別措置法第45条第1項に基づき、医療機関への通院、食料の買い出し、 職場への出勤など、生活の維持に必要な場合を除き、原則として外出しないこと等を要請

 (2) 事業者向け:施設の使用停止及び催物の開催の停止要請(令和2年4月11日から5月6日まで)
・特措法第24条第9項に基づき、施設管理者もしくはイベント主催者に対し、施設の使用停止もしくは 催物の開催の停止を要請。これに当てはまらない施設についても、特措法によらない施設の使用停止の協力を依頼 ・屋内外を問わず、複数の者が参加し、密集状態等が発生する恐れのあるイベント、パーティ等の開催についても、自粛を要請


東京都の措置(1)

東京都の措置(2)


 この表の「2.対象施設一覧」のうち、「基本的に休止を要請する施設(特措法施行令第11条に該当するもの)」とは上記(3)Aに、「特措法によらない協力依頼を行う施設」とは上記(3)Cに、「施設の種別によっては休業を要請する施設」も上記(3)BCに該当するものと思われるが、定かではない。

(5)緊急経済対策

 緊急事態宣言と軌を一にして、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策〜国民の命と生活を守り抜き、経済再生へ〜」が閣議決定され(4月7日付け)、その内容が明らかとなった。事業規模は約108兆円で、過去最大の経済対策となる。事業継続に困っている中小・小規模事業者に最大200万円、個人事業主に最大100万円を支援する。また生活に困っている世帯に30万円を現金で支給する。新型コロナへの治療効果が期待されている抗インフルエンザ薬「アビガン」の増産も支援する。20年度中に現在の最大3倍にあたる200万人分の備蓄を確保するなどである。


緊急経済対策


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7.アジア諸国と欧米諸国の違い

 本日(4月11日)現在、東アジア諸国と欧米諸国について、新型コロナウイルス感染者数と死者数を比較してみると、次のようになっている。

欧米諸国    (感染者数)    (死者数)    (死亡率)

 アメリカ 425,889人 14,665人   3.4%
 イタリア 143,626人 18,281人  12.7%
 スペイン 152,446人 15,238人  10.0%
 フランス  85,351人 12,192人  14.3%
 イギリス  65,081人  7,978人  12.2%
 ドイツ  113,525人  2,373人   2.0%

東アジア諸国 (感染者数)    (死者数)    (死亡率)

 中 国   82,008人  3,336人   4.1%
 韓 国   10,450人    208人   0.5%
 日 本    6,188人    120人   1.9%
 台 湾      363人      5人   1.4%

 この表をみると、欧米諸国のうち、イタリア、スペイン、フランス、イギリスの死亡率がいずれも10%を超えていることが目を引く。これは、流行の始まりが早かったことから死者数がそもそも多く、かつ蔓延が急速であったために医療崩壊が起こってそれに拍車を掛けたからだと思われる。ただし、ドイツだけは別格で、死亡率が低い(注)。

(注)ドイツの死亡率がなぜ低いかということだが、日経新聞とNHKによれば、次のように分析されている。

  (1) 元々、新聞や出版社といった業界を含めてほぼテレワークであり、しかもワークライフバランスの気風があることから、外出の制限にあまり抵抗感がない。
  (2) 特に北ドイツでは、高齢者は子供と同居しないというライフスタイルを貫いている。また、家が広いから、自宅隔離も容易である。(以上、日経新聞グローバルニュース2020年4月13日付け)
  (3) 現地ドイツ在住の上原医師によると「感染が広がる前に医療の設備が整っていたのが大きい。患者が増えても落ち着いて対応できた。」また、ドイツでは人口10万人当たりの集中治療のベッド数が、日本やイタリアなどと比べて多く、現在もおよそ1万床が空いている。(NHKニュース4月13日付け)



 しかし、それにしても日本、韓国、台湾の死亡率2%以下という数字と比べて、欧米諸国(ドイツを除く)とはあまりにも差が大きい。同じウイルスから生じている感染症とはとても思えないほどである。死亡率の高い高齢者の比率は、欧米諸国より東アジア諸国の方が高いはずなのに、これは一体なぜなのだろうか。その解明が進まないまま、上記4の通りの諸外国の強権的措置に比べて、5の通り日本では微温的な緊急事態宣言に基づき、この未曾有の事態に対応しようとしている。イタリア、スペイン、フランスはもとより、ニューヨークでも医療崩壊が起こって死者の数が2万人を超え、誠に悲惨な状況である。果たして日本はそのような道をたどるのか、それとも中国や韓国のように押さえ込みに成功するのだろうか。つまりは、強権的と微温的と、どちらの方が功を奏するのか、その答えは、早ければ2週間後、遅くとも1ヶ月後にわかる。

(6と7は、4月12日記)

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8.外出自粛要請下での同級生の生活

 閑話休題。新型コロナウイルスについて、東京都では3月28日に知事による週末の外出自粛要請が、4月7日には改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく政府の緊急事態宣言が、そして4月11日からはいよいよ同法に基づく東京都知事による緊急事態措置等が出された。その中で、「医療機関への通院、食料の買い出し、 職場への出勤など、生活の維持に必要な場合を除き、原則として外出しないこと等」が要請された。

 さてそれで、この外出自粛下での生活をどうしているか、大学の同級生のメーリングリストでのやり取りがある。皆さん、ほぼ現役生活を終えて引退しているとはいえ、それぞれの職業経験を踏まえて、なかなかの知的生活を送っているので感心するとともに、立派な同級生たちだと誇りに思えてきた。


《Aさん》

 新型コロナウィルスの影響でいつもの同級生の懇親会場のクラブが、5月の連休明けまで休業することになったとの連絡が来ました。開業以来初めての長期休業だそうです。

 スポーツクラブの休業に加えてゴルフ場まで行動制限が厳しくなり、月1回の東京本社での検診、薬の受け取りもバス、電車での感染予防のため、当面近くのクリニックで行うように会社から指導がありました。大切な時間が無駄に過ぎて行くのは本当に残念です。

 皆さんはどんな過ごし方をしているのか、良いアイデアがあれば是非教えていただきたいと思います。

 私からは月並みながら最近読んだものからお奨めを2点。

 @ 藤原辰史「パンデミックを生きる指針」−歴史研究のアプローチ

 ・岩波新書HP「B面の岩波新書」に掲載されたもので、8Pの小論文ですが、著者の許諾を得て、自由に印刷・複製できます。著者は京大人文研の准教授。

 A 楡 周平「サリエルの命題」講談社 単行本

 ・新型ウィルスの感染を梃に、長寿化の問題を扱ったフィクションですが、現在指摘されている問題も取り上げられています。ただ、この小説では特効薬がある、感染地域が離島・過疎地域にとどまるなどとしていますが、今回のウィルスは、特効薬もワクチンも無く、都市部で拡がるなど、作者の想像を超えたもので、より深刻です。



《私(悠々人生)》

 私の法律事務所も閉鎖した上に所内でも所外でも対面は禁止というので、全く仕事になりません。海外旅行も、今年中に南欧、北欧、エジプトのナイル川クルーズを計画していたのですが、全てキャンセルしました。中でも今年初めにナイル川クルーズに行った日本人が感染して帰国して周りにうつしたと聞いて、かなり危なかったと感じました。

 このウイルスは、大多数の人が免疫を獲得するまで、何波にもわたって襲ってくるでしょうから、来年の東京オリンピックもどうなるかわかりませんね。それまで、特効薬とワクチンが出来ていて、かつ私も皆さんも罹らないでいることを願います。

 そういうことで、現在は安全が保証された「宇宙船」のような自宅にいて、時々「船外活動」と称して散歩や必需品の買い物に出掛けています。近くの根津神社は散歩コースですが、今年は「ツツジ祭り」が中止となりました。ところが、季節は巡って咲く時期となり、綺麗なツツジが派手に虚しく咲いています。

 雑誌にインタビューされたりしたので、それ以来、改正新型インフルエンザ対策特別措置法や政府と東京都の攻防をウォッチしていますが、なかなか興味深いです。とりあえず、次のようにとりまとめています。ただ、2本目は、まだ作成途上です。

新型コロナウイルス記事

新型コロナウイルス緊急事態宣言

 日本の感染者はまだ6千人台で死亡率は幸い2%弱ですが、イタリア、スペインは10数万人と12%ほどで、強権的な押さえ込みをしてもこれほど上がってしまいました。アメリカは全体では50万人を超えて死亡率は今のところ3%強ですが、既に医療崩壊が起こっているニューヨークなどは早晩ヨーロッパの道を歩むのは確実だろうと思います。

 それに対して日本は、微温的な緊急事態宣言を出したばかりですが、欧米諸国と同じになるのか、それともこの微温的な措置で押さえ込みに成功するのかですね。現に国と東京都は方法論を巡って大議論を行った。どちらが正しかったか、その答えは、早ければ2週間以内に分かるでしょう。もし成功すればさすが日本ということになるし、失敗すれば、こんな微温的なことで良いのか、他の国並みに強権的に対処すべきだとして、個人の権利を制限する方向が強まるでしょう。大袈裟に言うと、戦後日本が構築してきたものが問われている。


《Bさん》

 コロナウィルスの猛威は収まるどころか、このまま自粛が数か月続くと、心身ともにめげそうですね。

 蟄居閉門の沙汰があったと考え、自宅に抱え込んだ膨大な数のDVDと本棚にあふれかえって前をふさいで積み上がり。下段に何があるのかわからなくなっている蔵書の整理にかかっております。もうお読みになったかもしれませんが、まだの方には藤沢周平の長編「蝉しぐれ」か短編の「帰郷」(文春文庫・又蔵の火に収録)をお勧めします。時代小説もよいものですよ。

 携わっているボランティア、習い事のうち、博物館ボランティア2件と藍染は現在ストップ、電話相談(自殺防止です)のみ稼働中で、人生で最もヒマな時期となっております。読書は、今年初めからインド、中央アジア、西アジア、エジプトにわたる4千年の歴史をかじりまくっております。このエリアについての翻訳書はまことに少なく、私が法学部を選ばなかったら進んでいたはずのオリエント歴史学は楽しんで読めるものがほとんどありません。情けないことです。

 ボランティアの一つ、みんぱく(国立民族学博物館)では、設立者の梅棹忠夫生誕100年展などを計画していましたが、先送りとなりました。この機会に梅棹忠夫の著書を数点読みましたが、教科書で覚えのある「モゴール族探検記」、「知的生産の方法」などを読むと、改めてわれらの京都大・今西組の知的貪欲さとエネルギーに圧倒されました。入学早々に今西錦司氏(当時・岐阜大学長でした)の講演を聞いたこと、仕事でみんぱく館長時代の梅棹氏にインタビューした事を思い出し、俺たちは充実した知的経験をしてたんだな・・と妙に感心している次第です。

 わが蔵書は、文庫、ハードカバー取り混ぜて、@社会科学、歴史系、A文学系(意外と詩集多し)、Bミステリー、SF系(英米のホラーの翻訳はほとんど所有)C自然系、Dなつかしの漫画やコミック・・に大別され、幅1m、8−9段の本棚24本におさまっているのですが、さらにその半分くらいの冊数が本棚の前や間に積み上がっております。冊数は3−4万くらいでしょう。これをあと2年(72歳のうちに)で積み上げを解消するのを目標にしております。

 DVDは、@邦画、A洋画、B歌舞伎その他芸能、Cクラシック(主にオペラとバレエ)D宝塚歌劇、EアニメF和洋のテレビドラマG生物、自然科学系、H歴史や文化系に大別して、総計3万枚くらいです。只今重複を整理中ですが、こちらも72歳を期して増やさないつもりです。

 自分では、あと12年くらいまでにお迎えが来ると思っており、最後の数年は自選した書籍と映像に埋まって過ごしたいと考えております。

 皆さん、蟄居閉門を楽しむ方法を考えましょう。

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9.各国首脳のリーダーシップに感動

(1) 新型コロナウイルスは、2月頃に中国の武漢や韓国の大邱で猛威をふるった後、3月中旬頃から舞台は欧州各国に移り、アウト・ブレイクする兆しをみせた。そうした中で、イタリア、フランス、ドイツ、イギリスなど欧州各国首脳は外出禁止令を出し、国民に対して耐乏生活を呼びかけた。それが、実に心に響くもので、私は感動してしまった。

(2) ドイツのメルケル首相

 3月18日、ドイツのメルケル首相は、国民に対して「新型コロナウイルス感染症対策に関する演説」を行った。その一部を抜き出してみると、

「ドイツに広がるウイルスの感染速度を遅らせることです。そのためには、社会生活を極力縮小するという手段に賭けなければならない。・・・こうした制約は、渡航や移動の自由が苦難の末に勝ち取られた権利であるという経験をしてきた私のような人間にとり、絶対的な必要性がなければ正当化し得ないものなのです。民主主義においては、決して安易に決めてはならず、決めるのであればあくまでも一時的なものにとどめるべきです。しかし今は、命を救うためには避けられないことなのです。」

 周知の通り、メルケル首相は旧東ドイツの出身で、若い頃は基本的人権が非常に制約された生活を送っていた。そうした体験を踏まえて、このようなことを切々と語りかけると、国民は納得せざるを得ないと考える。実に良い演説だった。


メルケル首相コロナ演説


(3) フランスのマクロン大統領

 3月16日、フランスのマクロン大統領は、しっかりとテレビカメラを見据え、いかにも若くて元気のよい演説を行ったので、思わず見とれてしまった。

 曰く「明日正午から少なくとも15日間、われわれの移動は極めて大幅に限定されます。それはすなわち屋外での集まり、家族同士や友人同士の集まりが、もはや許されなくなるということです。公園や通りを散歩したり、友人と再会したりすることは、もはやできなくなります。家庭以外でのこうした接触を最大限に制限するということです。フランス全土の至る所で、本土でも海外領土でも、必要なルートのみ、規律を守り、最低1メートルの間隔を取りながら、あいさつの握手もキスもせず、買い物に行くために必要なルートのみにとどめなければなりません。治療を受けるために必要なルート、もちろん、在宅勤務ができないならば通勤するために必要なルート、軽く運動するために必要なルート、しかしここでも友人や近親者と会ってはなりません。

 すべての企業はテレワークしやすくするように態勢を整えなければなりません。それが不可能なら、ウイルス感染予防策を順守させるため、すなわち従業員を守るため、明日から組織を適応させなければなりません。フリーランスであれば、自分自身を守らなければなりません。政府は今夜、私の演説を受けて、これらの新しいルールの形態を明確化します。これらのルールに対する違反はすべて罰せられます。

 私は今夜、極めて厳粛な気持ちで申し上げます。医療従事者の言うことに耳を傾けようではありませんか。『私たちを助けたいのであれば、自宅にとどまり、接触を制限する必要があります』。これが最も重要なことです。当然のことながら、今夜、私は新しいルールを課し、われわれは禁止措置を課し、検問もあるでしょう。しかし最良のルールは、皆さんが市民として、ルールを自らに課すことです。私は改めて皆さんの責任感と連帯意識に訴えます。」


マクロン大統領コロナ演説


(4) ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事

 国の首脳ではないが、各国の知事も頑張っている。私が一番感心したのは、ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事である。これこそリーダーだと、男を上げている。毎日、定期的に記者会見を開き、データに基づいて科学的に冷静に説明する。その上で、テレビを見ていると、このような発言があり、いちいちそのたびに感激し、感動した。


アンドリュー・クオモ知事


「(州内の全労働者に自宅待機を義務づけたとき)、本件に関して、私が全ての責任をとる。誰かを非難するなら、私を非難してほしい。

「(人工呼吸器がない、ないと訴え)、人工呼吸器、人工呼吸器、人工呼吸器と3回繰り返す。(そして、とうとう自分で中国から1万3,000台を輸入して、それをトラックから降ろしてみせた。」

「(患者の7割が貧しい黒人層に偏っていることについて)公共交通機関の関係など、通勤をやむなくされているからだろうが、原因を究明する必要がある。

海軍の病院船をニューヨークに回航してくれとトランプ大統領に頼んだ(実現した。)」

「医療従事者が絶対的に足りないと全米に『もし、あなたのいる地域で医療崩壊が起きていないのなら、是非ニューヨークに来て助けてほしい。』と呼び掛けた。」


アンドリュー・クオモ知事


 まるで、西部劇の保安官のようなもので、誠に格好が良い。リーダーシップや正義感、マッチョの男に憧れるアメリカ人の心をしっかりと掴んでいる。

(5) 東京都の小池百合子知事

 そうかと思うと、日本では東京都の小池百合子知事が頑張っている。緊急事態宣言に基づく緊急事態措置の発表に当たり、国が経済への悪影響を懸念して「まずは外出自粛、2週間ほどその様子を見てから休業要請に踏みきるか決める」という腰が引けた態度だったのに対して、「同時にしなければオーバーシュート(爆発的に感染者が増える状況)に陥る。」として頑として譲らず、それを貫徹した。心から拍手を送りたい。

(8は、4月14日記。9は、4月20日記)

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10.それに対して、我が宰相は

(1) 星野源というシンガーソングライターが「うちで踊ろう」という自作の曲を歌って,外出禁止を呼びかけている。有名人がこれに応じて演奏したりしていたが、驚いたことに、4月12日、安倍晋三首相がその公式ツィッターにこれを取り上げた。画面の左側で星野源がギター片手に歌っていて、その右側に安倍首相が自宅でペットを撫でたり珈琲を飲んだりと、実に優雅に寛いでいる様子が投稿された。そして曰く「友達と会えない。飲み会もできない。ただ、皆さんのこうした行動によって、多くの命が確実に救われています。そして、今この瞬間も、過酷を極める現場で奮闘して下さっている、医療従事者の皆さんの負担の軽減につながります。お一人お一人のご協力に、心より感謝申し上げます。」


歌う星野源と寛ぐ安倍首相



 だれが見ても、これは国民の神経を逆撫でして、完全な逆効果であることは明らかだ。一庶民が寛いでいるのならともかく、首相は言うまでもなく国政の責任者である。しかも現下は緊急事態にあり、このたびの外出自粛や施設の使用制限によって多くの人が苦しんでいる。例えば、顧客を失ったレストランなどの小規模事業者、派遣切りにあった労働者、観光客が途絶えた旅館のオーナーなどだ。その人たちのことに思いを馳せず、まるで他人事のように、一人自宅で優雅にペットを撫でているときかと、国民は思ってしまう。そんな暇があるなら、メルケル首相やクオモ知事のように、蔓延防止のため一生懸命に仕事をしろと言いたくなる。取り巻きを含めて、そういう政治感覚が全然ないのだろうか。やることなすことが全くちぐはぐだ。これでは先行きが思いやられる。

(2) もう一つ驚いたことは、緊急経済対策を実現するための補正予算案に盛り込まれた「生活に困っている世帯に30万円を現金で支給する。」という施策が、公明党の申入れで、たった一夜で覆り、「国民一人当たりに10万円を現金で支給する。」に代わったことだ。そもそもこの30万円の支給案は、岸田文雄自民党政調会長との協議で決定したはずだ。その時、私はなぜ岸田会長が急に出てきたのか、後継者としてアピールするつもりなのかと訝しげに思っていたが、案の定、直ぐにひっくり返ってしまい、政治力のなさを天下に示してしまった。

 当初の30万円支給案が国民の2割程度しか行き渡らないし、月収が一定以上減収するなどの支給要件のチェックをする作業のために支給まで数ヶ月以上もかかるということが明らかになって、二階幹事長や与党の一角の公明党から、「もっとシンプルにした早く支給できる制度にした方がよい」という声が高まってきたからだ。もちろん、幹事長には政調会長へのさや当ての意図もある。その結果、4月16日に公明党山口那津男代表が首相に直接申し入れて、補正予算案の組み替えが決まった。こういうことは、前代未聞のことである。急がなければならないのに、このドタバタ劇で、補正予算の成立は1週間ほど遅れるだろう。

(10は、4月16日記)

我はマスク難民なり


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11.緊急事態宣言の対象を全国に拡大

 2020年(令和2年)4月16日、総理大臣官邸で第29回新型コロナウイルス感染症対策本部を開催された(基本的対処方針)。その議論を踏まえ、安倍首相は、次のように述べた。

 「本日、諮問委員会からも御賛同を頂き、4月7日に宣言した緊急事態措置を実施すべき区域を、7都府県から全都道府県に拡大することといたします。実施期間は、5月6日までに変更はありません。まず、北海道、茨城県、石川県、岐阜県、愛知県及び京都府の6道府県については、現在の対象区域である7都府県と同程度にまん延が進んでおり、これら以外の県においても、都市部からの人の移動等によりクラスターが各地で発生し、感染拡大の傾向が見られることから、地域の流行を抑制し、特に、ゴールデンウィークにおける人の移動を最小化する観点から、全都道府県を緊急事態措置の対象とすることといたしました。」

緊急事態宣言の対象区域を全国に拡大。7都府県に愛知県及び京都府などの6道府県加えて合計13都道府県を「特定警戒都道府県」とし、それ以外の34全県を緊急事態措置の対象にした

 つまり、緊急事態宣言の元々の対象だった7都府県に、愛知県及び京都府などの6道府県加えて合計13都道府県を「特定警戒都道府県」とし、それ以外の34全県を緊急事態措置の対象にしてしまった。ここで、「・・・しまった。」というのは、同特別措置法32条やその施行令6条の要件(注)からして、この全都道府県の指定は、この段階ではできなかったのではないかと考えられるからである。

(注) 改正新型インフルエンザ対策特別措置法特別措置法32条及び同施行令6条の要件

 (新型インフルエンザ等緊急事態宣言等)
特別措置法第三十二条
 政府対策本部長は、新型インフルエンザ等(国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあるものとして政令で定める要件に該当するものに限る。以下この章において同じ。)が国内で発生し、その全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがあるものとして政令で定める要件に該当する事態(以下「新型インフルエンザ等緊急事態」という。)が発生したと認めるときは、新型インフルエンザ等緊急事態が発生した旨及び次に掲げる事項の公示(第五項及び第三十四条第一項において「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」という。)をし、並びにその旨及び当該事項を国会に報告するものとする。
 一 新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施すべき期間
 二 新型インフルエンザ等緊急事態措置(第四十六条の規定による措置を除く。)を実施すべき区域
 三 新型インフルエンザ等緊急事態の概要
2 前項第一号に掲げる期間は、二年を超えてはならない。
3 政府対策本部長は、新型インフルエンザ等のまん延の状況並びに国民生活及び国民経済の状況を勘案して第一項第一号に掲げる期間を延長し、又は同項第二号に掲げる区域を変更することが必要であると認めるときは、当該期間を延長する旨又は当該区域を変更する旨の公示をし、及びこれを国会に報告するものとする。
4 前項の規定により延長する期間は、一年を超えてはならない。

 (新型インフルエンザ等緊急事態の要件)
施行令第六条
 法第三十二条第一項の新型インフルエンザ等についての政令で定める要件は、当該新型インフルエンザ等にかかった場合における肺炎、多臓器不全又は脳症その他厚生労働大臣が定める重篤である症例の発生頻度が、感染症法第六条第六項第一号に掲げるインフルエンザにかかった場合に比して相当程度高いと認められることとする。
2 法第三十二条第一項の新型インフルエンザ等緊急事態についての政令で定める要件は、次に掲げる場合のいずれかに該当することとする。
 一 感染症法第十五条第一項又は第二項の規定による質問又は調査の結果、新型インフルエンザ等感染症の患者(当該患者であった者を含む。)、感染症法第六条第十項に規定する疑似症患者若しくは同条第十一項に規定する無症状病原体保有者(当該無症状病原体保有者であった者を含む。)、同条第九項に規定する新感染症(全国的かつ急速なまん延のおそれのあるものに限る。)の所見がある者(当該所見があった者を含む。)、新型インフルエンザ等にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者(新型インフルエンザ等にかかっていたと疑うに足りる正当な理由のある者を含む。)又は新型インフルエンザ等により死亡した者(新型インフルエンザ等により死亡したと疑われる者を含む。)が新型インフルエンザ等に感染し、又は感染したおそれがある経路が特定できない場合
 二 前号に掲げる場合のほか、感染症法第十五条第一項又は第二項の規定による質問又は調査の結果、同号に規定する者が新型インフルエンザ等を公衆にまん延させるおそれがある行動をとっていた場合その他の新型インフルエンザ等の感染が拡大していると疑うに足りる正当な理由のある場合

 それにつけても思い出すのは、4月7日、政府が改正インフルエンザ対策特別措置法に基づき、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、大阪府、兵庫県、福岡県の7都府県を対象として緊急事態宣言を発出したときのことである。上記6.で述べたように、都道府県の指定は、「政府の基本的対処方針等諮問委員会は、『当該都府県内の(1)累計の感染者数、(2)感染者が2倍になるまでの「倍加時間」、(3)1日あたりの感染者数に占める経路を追えない感染者数の割合』の3つを基準にしている」とされていた。これは、同特別措置法32条やその施行令6条の要件を念頭に置いていることは明らかである。

 ところが今回、安倍首相によるこの全都道府県の指定の記者会見に際して、隣に諮問委員会の尾身茂会長がいたにもかかわらず、両者からこうした要件についての説明が全くなかったのには、驚いた。それどころか、なぜ決断したのかと記者に聞かれた安倍首相曰く「専門家によると、都市部からの人の移動でクラスターが各地で発生し、全国的な感染拡大の傾向が見られるとの見解だった。地方には重症化リスクの高い高齢者がたくさんいる。もし感染が広がれば医療提供体制に大きな負担になる。大型連休に旅行や帰省で多くの人が移動することが予想されるなか、人の移動を最小化するとの観点から全国を対象にした。」。それならそれで、法律の要件に書き込むべきだった。

 そして尾身会長も、「先行きについては、(宣言から)1カ月経ってみて『極力8割(の接触削減)』がどのぐらい達成されたのか、感染のカーブが当初に比べて平坦なのか、下がらないのか、我々が期待するような下がり方なのか、下がり方が緩やかなのか――といったことについて、5月6日ごろになると大体のことが言える。その評価を元に専門家として政府に提言したい。」(4月17日付け朝日新聞)などと、法律の要件とはまるで関係のないことを語っていた。

 ちなみに、前日16日午後8時半現在の感染者数(括弧内は緊急事態宣言を発出した4月7日の感染者数)の多い都道府県と少ない県は、次のようになっている。(4月17日付け朝日新聞)

最初からの特定警戒都道府県
 東京都  2595人(1,519人)
 大阪府  1020人(  616人)
 神奈川県  674人(  381人)
 千葉県   596人(  354人)
 埼玉県   528人(  285人)
 兵庫県   454人(  287人)
 福岡県   461人(  250人)
......................................


今回加わった特定警戒都道府県
 愛知県   370人(  301人)
 北海道   332人
 京都府   225人
 石川県   146人
 岐阜県   130人
 茨城県   123人
......................................


感染者の少ない県
 秋田県    15人
 佐賀県    15人
 鹿児島県    4人
 徳島県     3人
 鳥取県     1人
 岩手県     0人


 ここでは省略したが、感染者数50人未満の県は30、中でも岩手県はゼロ、鳥取県は1人だった。こういう県は、この時点では法律の要件には当てはまらないことから区域として指定できなかったはずなので、とりあえずは様子を見るべきであったと思う。案の定、知事の中には全国を指定対象としたことについて、「非常に驚いている」(鳥取県平井知事)、「想定していなかった」(新潟県花角知事)、「朝令暮改という言葉が浮かぶ」(愛媛県中村知事)、「大阪府などと同じことをする必要はなく感染者数といった県内の実態に応じて措置をする」(和歌山県仁坂知事)という感想を述べる人もいた。このように、現行の法律の規定を無視して、強引に当てはめようとする政権の姿勢には、一抹の不安を覚えるものである。これが他の分野で起こったら、重大な結果を招きかねないからだ。

 もっとも、今回の特別措置法は、法律の建て方がそもそも要請ベースであることから、法定の要件に外れるようないい加減な運用をしてもさほど目立たない。ところが、仮にこれが欧米のように外出規制や施設使用制限命令違反に直罰をかける法律であったとしたら、とてもこのようないい加減な運用では耐えられない。たとえ起訴されても、裁判所で無罪とされる例が続出するだろうと思う。

(参 考)
 「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020年4月22日)

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12.ステイ・ホーム週間の過ごし方

 4月24日、東京都の小池百合子知事が、「来週から始まるゴールデン・ウィークは、新型コロナウイルス対策のため、外出しないでお家にいるステイ・ホーム週間にしましょう。企業の方は、4月27日と28日も休んで、12連休にしてください。皆で命を守りましょう。」と呼び掛けている。

 私の法律事務所も閉鎖になった上に所内でも所外でも対面は禁止というので、全く仕事にならない。知事がそうおっしゃるので、安全が保証された「宇宙船」のような自宅にいて、時々「船外活動」と称して散歩や必需品の買い物に出掛けることにしている。近くの根津神社は散歩コースだが、今年は「つつじ祭り」が中止となり、つつじ苑も閉鎖されてしまった。ところが、季節は巡って咲く時期となり、ほとんど人がいない中で色とりどりの綺麗なつつじが派手に虚しく咲いている。好きな写真も、旅行や外出をしなければ撮れないものだから、もうダメだ。さりとて、日がな一日、宇宙船内で映画を見るのも飽きる。


綺麗なつつじが派手に虚しく咲いている


綺麗なつつじが派手に虚しく咲いている



 そういうことで、起床 → 朝食 → 専門書 → 散歩 → 昼食 → この悠々人生の手入れ → 散歩 → 過去の資料の整理 → 夕食 → 散歩→ NHK → 風呂 → 読書 → 就寝 という規則正しい生活を送っている。会食など全くないので、非常に健康的だ。当然のことながら、アイウォッチの健康アプリの三要素(消費カロリー、エクササイズ、スタンダップ)は、いずれもクリヤーしている。これからのステイ・ホーム週間も、特に出掛けることなく、同じように過ごすつもりである。

 ところで、私の親しい友人が、「さだまさしの関白宣言の替え歌があるよ。新型コロナウイルスを歌っている。面白いよ。」と教えてくれた。これがまた、非常によく出来ているのである。政府の広報以上の出来で、感心してしまった。誰の作か調べてみたが、結局わからなかった。 

 いま一つは、バンコク高架鉄道(BTS)の新型コロナウイルス・ダンスである。タイ語は全く分からないが、リズミカルに踊りながら、手を洗おうとか、皿を取り分ける時に専用のスプーンを使おうとか、手すりを掃除しようなどとかを訴えているようだ。手造り感いっぱいで、元気そのもの。ともかく、面白かった。


バンコク高架鉄道(BTS)の新型コロナウイルス・ダンス


(11と12は、4月25日記)

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13.新型コロナウイルスの伝播経路

 ここで、今回の新型コロナウイルスの由来に関する興味深い報告があったので、記録しておきたい。国立感染症研究所は、日本人の新型コロナウイルス感染者560人、世界の感染者4500人について、ウイルスのDNAを解析した。

 そうすると、新型コロナウイルスは、次の図の真ん中の武漢から端を発し、1月から2月にかけてダイヤモンド・プリンセス号や初期の日本に伝播した。そして、北米西海岸にも伝わった。ところが、このウイルスの株の流行は、そこで一旦は終息したらしい。代わって猛威をふるったのは武漢から欧州へ飛んだウイルスの株で、イタリア、スペイン、イギリス、フランスなど欧州各地で暴れまわった後、北米東海岸に飛んで、ニューヨークなどで大惨事を引き起こした。と同時にそのウイルスの株は欧州から日本に伝わって、最近の流行をもたらした。つまり、最近3月から4月にかけての日本での流行は、3月に欧州から帰国した者によってもたらされたというのである。


国立感染症研究所による新型コロナウイルス伝播DNA解析(漢字と矢印は、筆者の追加)


 ちなみに、日本国内におけるウイルスの遺伝子的な特徴を調べた研究によると、令和2年1月から2月にかけて、中国武漢から日本国内に侵入した新型コロナウイルスは3月末から4月中旬に封じ込められた(第1波)一方で、その後欧米経由で侵入した新型コロナウイルスが日本国内に拡散したものと考えられている(第2波)。(5月14日付け官邸対策本部資料10頁)


(13は、4月28日記、5月14日追記)

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14.決死の覚悟で病院へ

 ところで、この外出自粛の期間中、家内がどうしても病院に行く必要が生じてしまった。普段の持病の薬は、虎ノ門病院に電話してかかりつけの医師と話をさせてもらい、そこで処方箋を作成の上、自宅に送付したもらって、近くの薬局で入手することができたので、それは問題がなかった。ところが、連休の半ばに、家内が発熱したのである。37.2度くらいだから、大したことではないが、一瞬、新型コロナウイルスではないかとの疑念が頭をよぎる。家内は、私より若いが高齢者であることには違いなく、かつ持病があるので、高リスクだ。でも、症状をよくよく観察すると、風邪の症状は出ていないし、代わりに若干の腹痛を伴うので、これは2年前のこの同じ季節に罹ったあの病気ではないかと思い当たった。その時の記録を引っ張り出して読んでみると、やはりそうに違いないと確信した。

 弱ったことに、そうだとすると、病院に足を運んで抗生物質を処方してもらわないといけない。明後日から連休の後半が始まるから、明日5月1日の金曜日は最後のチャンスだ。もし病院に行かないまま連休中に悪化して救急車で運ばれても、熱があるので新型コロナウイルスと間違われて診察を受けられないというのでは困る。昨日は、救急車が搬送先の病院を探すのに50ヶ所も電話した事例があったそうだ。そうした状況は避けたい。ただ、明日に病院に行くのには間違いなく大きな危険を伴う。まるで、新型コロナウイルスの真っ只中に行くようなものだからだ。どうしたものかと思いながら、虎ノ門病院のウェブサイトを見る。すると、普段は午前8時半からの開院だが、午前8時から、全ての来院者に問診と体温測定を行うとして、次のような掲示があった。

 「緊急事態宣言の発令に伴い、新型コロナウイルス感染症対策のため、当院では全ての来院者に問診と体温測定を行うことになりました。問診、体温測定を行ってない方は院内へ入ることはできません。また、体温測定の結果37.5℃以上の発熱が確認された方・鼻水・のどの痛み・咳などの症状がある方は、当院にて症状に応じた診療を行うことにいたしますので、ご協力お願いいたします。」

 なるほど、病院の方もそれなりに警戒しているようだから、待合室で新型コロナウイルスに伝染るということはあまりなさそうだ。それではと、行くことに決めた。文字通り、必死の覚悟である。午前7時半に自宅を出なければならない。ただ、通勤時間に地下鉄を使うと危ないので、タクシーにした。そういうことで、当日は二人でタクシーに乗り込み、窓を開けて空気が流れるようにした。午前8時に病院に着いた。すると乗ったまま地下2階の入口に連れていかれて、そこで体温計を渡されて測り、問診票に記入させられた。問診票の問はありきたりのものだったが、最後の問にはビックリした。それは、「最近、永寿総合病院、慶応大学病院、墨東病院に行ったことはありますか。」というものだったからである。いずれも、院内感染が問題になっている病院だとはいえ、いささか露骨過ぎはしないか。

 そのスクリーニングが終わって、2階の受付に上がって行ったら、人が少ないのには驚いた。普段は高齢者でごった返しているというのに、空いていてガラガラだ。実感として4分の1ほどだ。それは待合室でも同じ。だから、予約外でも直ぐに診てもらえた。医師の診断は、やはり、2年前と同じ病気であった。抗生物質の処方箋をもらって、一件落着した。帰りは地下鉄で帰ってきたが、車内はガラガラだった。二人とも、新型コロナウイルスに罹っていないことを願おう。

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15.緊急事態宣言の延長直前の状況

 4月30日の時点で、PCR検査で陽性とされた世界の新型コロナウイルス患者数(うち、死亡者数)の累積をみると(ジョンズ・ホプキンス大学まとめ)、次のようになっている。

世界合計  3,156,136人(227,705人)

 アメリカ 1,040,488人(60,999人)
 スペイン   236,899人(24,275人)
 イタリア   203,591人(27,682人)
 フランス   166,543人(24,121人)
 イギリス   166,441人(26,166人)
 ドイツ    161,539人( 6,467人)
 トルコ    117,589人( 3,081人)
 ロシア     99,399人(   972人)
 イラン     93,657人( 5,957人)
 中 国     83,644人( 4,637人)
 ..............................................
 シンガポール  15,641人(    14人)
 オーストリア  15,402人(   580人)
 チ リ     15,135人(   216人)
 日 本     13,965人(   425人)
 ベラルーシ   13,181人(    84人)

 これを見ると、日本は患者数にして29番目の国となっている。もっとも、日本ではPCR検査を十分に行われていないので見かけの患者数が少ないという批判があるのはその通りであるから、あまり大きなことは言えない。いずれにせよ、医療崩壊が起こったアメリカ、スペイン、イタリア、フランス、イギリスの死者数の多さは目を覆うばかりである。これから日本がこの道を通るのかどうかは、まだ分からない。

 他方、日本においては、4月30日は、8日の緊急事態宣言から約3週間が経過した日になる。そこで、5月1日午前10時半現在の都道府県の患者数を見ると、次の通りである。(NHK調べ)


都道府県の患者数



 これによると、東京都の患者数が4,152人と、全体の3割を占めている。その東京都の日毎の患者数の推移を見ると、次のように、4月17日にピークに達した後、漸減傾向にある。やはり、外出自粛と施設使用制限の効果が現れていることは、明らかである。ただ、まだ46人という高水準である。仮にこれが、1日に1桁の数人というレベルにまで落ちれば、とりあえずは安心ということになるのだが、それが何時になるかは全く見通せない。いずれにせよ、当初の緊急事態宣言の期限である5月7日にはとても間に合いそうにないから、その延長は間違いないという状況になっている。

 3月31日  78人
 4月 5日 143人
 4月11日 197人
 4月17日 217人
 4月24日 161人
 4月28日 112人
 4月30日  46人


東京都の患者数



 ところで、緊急事態宣言が出てからの動きをいくつか記録しておきたい。政府の専門家会議の方針は、人出の8割削減を目標としている。東京都であれば大手町、丸の内、新宿、銀座、渋谷などの繁華街においては、確かにこの目標は、ほぼ達成できている。ところが、問題は、住宅地近くの商店街や公園については、かえって人通りが増えてしまっていることで、例えば、戸越銀座商店街、巣鴨商店街、駒沢公園、砧公園などだ。これは、在宅勤務の人達が飽きて繰り出したものと考えられる。次に、湘南や鎌倉、沖縄などに観光客が押し寄せることで、これも都会のウイルスを観光地に撒き散らすことになるので、各自治体の首長が「来ないでほしい」と呼び掛けている。常日頃とは全く反対なので、皮肉なものだ。

 パチンコ屋の営業も問題となっている。これは、もちろん施設の使用停止要請の対象として明示されているが、東京都では、これに応じずに引き続き営業をしていた店が10軒あった。これに対し、新型インフルエンザ対策特別措置法第45条第2項に基づいてもう一度要請をして、それでも応じてもらえない場合には、同条第3項に基づき指示を行うことが検討されたが、それに至るまでに営業を自粛したようだ。他方、茨城県、千葉県、神奈川県などでも営業をしているパチンコ屋があり、しかも駐車場には他の都県のナンバーが目立つというので、ますます問題になっている。こうした県では、店名公表まで踏み切った県もある。関東地方以外では、大阪府、京都府、兵庫県、愛知県なども店名を公表した。意外だったのは、店名を公表すると、パチンコ・ファンがそこが営業している店だと認識して押し掛けるという「逆効果」があったことだ。 なお、店名を公表しても、なお営業を継続している店があったことから、兵庫県、神奈川県などでは、5月1日、第45条第3項の指示を行った。

 この点につき、西村康稔担当相は、4月28日の予算委員会で「特別措置法について『強制力を持つ形で検討せざるを得ないということも考えている』と表明して罰則の適用を示唆し、内閣法制局とも相談する」という姿勢を見せた。仮にそうなると、本特別措置法の性格が大きく変貌することになる。

 5月1日の専門家会議がまとめた報告書の概念図は次のとおりで、この内容が緊急事態宣言の延長に際して考慮されるものと思われる。


専門家会議の提言


綺麗なつつじが派手に虚しく咲いている


(14と15は、5月1日記)

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16.緊急事態宣言を5月末まで延長

緊急事態宣言を実施すべき期間を5月31日まで延長

(1)4月7日の緊急事態宣言の元となった「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」(3月28日)は、5月7日までを期限としていた。ところが、昨今の感染症とその対策の状況を踏まえ、緊急事態宣言を見直して、期限を5月末まで延長するとともに、その内容に一部変更を加えるために、基本的対処方針が5月4日に変更された。その変更された部分の骨子は、次の通りである(5月4日対策本部総理発言)。

@ 政府や地方公共団体、医療関係者、専門家、事業者を含む国民の一丸となった取組により、全国の実効再生産数(ひとりの感染者が周囲の何人に感染させるかを示す数字)は1を下回っており、新規報告数は、オーバーシュートを免れ、減少傾向に転じるという一定の成果が現れはじめている。一方で、全国の新規報告数は未だ200人程度の水準となっており、引き続き医療提供体制がひっ迫している地域も見られることから、当面、新規感染者を減少させる取組を継続する必要があるほか、地域や全国で再度感染が拡大すれば、医療提供体制への更なる負荷が生じるおそれもある。このため、令和2年5月4日、法第32条第3項に基づき、引き続き全都道府県を緊急事態措置の対象とし、これらの区域において緊急事態措置を実施すべき期間を令和2年5月31日まで延長する。ただし、10日後の5月14日を目途に、専門家にその時点での状況を改めて評価をしてもらい、もはや緊急事態措置を実施する必要がなくなったと認められるときは、 期間内であっても速やかに緊急事態を解除する。


(次の表は、NHKニュースより)

13の特定警戒都道府県とそれ以外の県の差(NHKニュースより)



A 東京都や大阪府など13の特定警戒都道府県では、引き続き、極力8割の接触削減に向けた、これまでと同様の取組をする必要がある。一方で、それ以外の県においては、感染拡大の防止と社会経済活動の維持との両立に配慮した取組に、段階的に移行する。例えば、これまでクラスターの発生が見られず、3つの密(密閉、密集、密接)を回避できる施設については、感染防止対策を徹底した上で、各県における休業要請の解除や緩和を検討する。なお、国民の皆様におかれては、まん延防止の観点から、引き続き、不要不急の帰省や旅行など、都道府県をまたいだ移動は極力避けるようにお願いする。

B これからの1か月は緊急事態の収束のための1か月であり、次なるステップに向けた準備期間である。専門家からは、今後、この感染症が長丁場になることも見据え、感染拡大を予防する新たな生活様式の提案があった。様々な商店やレストランの営業、文化施設、比較的小規模なイベントの開催などは、この新しい生活様式を参考に、人と人との距離をとるなど、感染防止策を十分に講じながら実施して結構である。今後2週間をめどに、業態ごとに、専門家の協力を得ながら、事業活動を本格化させるための、より詳細な感染予防策のガイドラインを策定する。

(参 考)

 「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020年5月4日)


(2)専門家会議が提唱する新しい生活様式


○ 5月1日の提言では、感染の状況は地域において異なっているため、

@ 感染の状況が厳しい地域では、新規感染者数が一定水準まで低減するまでは、医療 崩壊を防ぎ、市民の生命を守るため、引き続き、基本的には、「徹底した行動変容の要請」が必要となる。
A 一方で、新規感染者数が限定的となり、対策の強度を一定程度緩められるようになった地域(以下「新規感染者数が限定的となった地域」という。)であっても、再度感染が拡大する可能性があり、長丁場に備え、感染拡大を予防する新しい生活様式に移行していく必要がある、と指摘した。

○ これまでの提言でも、感染拡大を食い止めるために徹底した「行動変容」の重要性を訴え、手洗いや身体的距離確保といった基本的な感染対策の実施、「3つの密」を徹底的に避けること、「人との接触を8割減らす10のポイント」などの提案を重ねてきたところである。今回の提言では、5月1日の提言を踏まえ、新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」を具体的にイメージいただけるよう、今後、日常生活の中で取り入れていただきたい実践例を次のとおり、整理した。


新しい生活様式



○ 新型コロナウイルスの出現に伴い、飛沫感染や接触感染、さらには近距離での会話への対策をこれまで以上に取り入れた生活様式を実践していく必要がある。これは、 従来の生活では考慮しなかったような場においても感染予防のために行うものである。

○ 新型コロナウイルス感染症は、無症状や軽症の人であっても、他の人に感染を広げる例がある。新型コロナウイルス感染症対策には、自らを感染から守るだけでなく、自らが周囲に感染を拡大させないことが不可欠である。そのためには一人ひとりの心がけが何より重要である。具体的には、人と身体的距離をとることによる接触を減らすこと、マスクをすること、手洗いをすることが重要である。市民お一人おひとりが、日常生活の中で「新しい生活様式」を心がけていただくことで、新型コロナウイルス感染症をはじめとする各種の感染症の拡大を防ぐことができ、ご自身のみな らず、大事な家族や友人、隣人の命を守ることにつながるものと考える


(3)業種ごとの感染拡大予防ガイドラインに関する留意点

○ 今後、感染拡大の予防と社会経済活動の両立を図っていくに当たっては、特に事業者において提供するサービスの場面ごとに具体的な感染予防を検討し、実践することが必要になる。

○ 社会にはさまざまな業種等が存在し、感染リスクはそれぞれ異なることから、業界団体等が主体となり、また、同業種だけでなく他業種の好事例等の共有なども含め、 業種ごとに感染拡大を予防するガイドライン等を作成し、業界をあげてこれを普及し、現場において、試行錯誤をしながら、また創意工夫をしながら実践していただくことを強く求めたい。

○ ここでは、各業種のガイドライン等の作成に当たって求められる基本的な考え方 や留意点の例をまとめた。また、実際にガイドライン等を作成するに当たっては、適宜、感染管理にノウハウのある医療従事者などに監修を求めることにより、効果的な対策を行うことが期待される。


○ また、新型コロナウイルス感染症から回復した者が差別されるなどの人権侵害を 受けることのないよう、円滑な社会復帰のための十分な配慮が必要である。

(リスク評価とリスクに応じた対応)
○ 事業者においては、まずは提供しているサービスの内容に応じて、新型コロナウイルス感染症の主な感染経路である接触感染と飛沫感染のそれぞれについて、従業員 や顧客等の動線や接触等を考慮したリスク評価を行い、そのリスクに応じた対策を 検討する。

 ・ 接触感染のリスク評価としては、他者と共有する物品やドアノブなど手が触れる場所と頻度を特定する。高頻度接触部位(テーブル、椅子の背もたれ、ドアノブ、 電気のスイッチ、電話、キーボード、タブレット、タッチパネル、レジ、蛇口、手すり・つり革、エレベーターのボタンなど)には特に注意する。

 ・ 飛沫感染のリスク評価としては、換気の状況を考慮しつつ、人と人との距離がどの程度維持できるかや、施設内で大声などを出す場がどこにあるかなどを評価する。

(各業種に共通する留意点)
○ 基本的には、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく感染拡大防止策を徹底することが重要である。例えば、人との接触を避け、対人距離を確保(できるだけ 2mを目安に)することのほか、以下のものが挙げられる。

 ・ 感染防止のための入場者の整理(密にならないように対応。発熱またはその他の感冒様症状を呈している者の入場制限を含む)
 ・ 入口及び施設内の手指の消毒設備の設置
 ・ マスクの着用(従業員及び入場者に対する周知)
 ・ 施設の換気(2つの窓を同時に開けるなどの対応も考えられる)
 ・ 施設の消毒(症状のある方の入場制限)
 ・ 新型コロナウイルスに関しては、発症していない人からの感染もあると考えられるが、発熱や軽度であっても咳・咽頭痛などの症状がある人は入場しないように呼びかけることは、施設内などにおける感染対策としては最も優先すべき対策である。 また、状況によっては、発熱者を体温計などで特定し入場を制限することも考えられる。
 ・ なお、業種によっては、万が一感染が発生した場合に備え、個人情報の取扱に十分注意しながら、入場者等の名簿を適正に管理することも考えられる。

(感染対策の例)
 ・ 他人と共用する物品や手が頻回に触れる箇所を工夫して最低限にする。
 ・ 複数の人の手が触れる場所を適宜消毒する。
 ・ 手や口が触れるようなもの(コップ、箸など)は、適切に洗浄消毒するなど特段の対応を図る。
 ・ 人と人が対面する場所は、アクリル板・透明ビニールカーテンなどで遮蔽する。
 ・ ユニフォームや衣服はこまめに洗濯する。
 ・ 手洗いや手指消毒の徹底を図る。
 ・ 美容院や理容、マッサージなどで顧客の体に触れる場合は、手洗いをよりこまめにするなどにより接触感染対策を行う。(手袋は医療機関でなければ特に必要はなく、こまめな手洗いを主とする。)


(トイレ)
 ・ トイレは、感染リスクが比較的高いと考えられるため留意する。便器内は、通常の清掃で良い。
 ・ 不特定多数が接触する場所は、清拭消毒を行う。
 ・ トイレの蓋を閉めて汚物を流すよう表示する。
 ・ ペーパータオルを設置するか、個人用にタオルを準備する。
 ・ ハンドドライヤーは止め、共通のタオルは禁止する。


(休憩スペース)
 ・ 休憩スペースは、感染リスクが比較的高いと考えられるため留意する。一度に休憩する人数を減らし、対面で食事や会話をしないようにする。 休憩スペースは、常時換気することに努める。共有する物品(テーブル、いす等)は、定期的に消毒する。従業員が使用する際は、入退室の前後に手洗いをする。


(ゴミの取扱い)
 ・ ゴミの廃棄で、鼻水、唾液などが付いたごみは、ビニール袋に入れて密閉して縛る。
 ・ ゴミを回収する人は、マスクや手袋を着用する。
 ・ マスクや手袋を脱いだ後は、必ず石鹸と流水で手を洗う。


(清掃・消毒)
 ・ 市販されている界面活性剤含有の洗浄剤や漂白剤を用いて清掃する。
 ・ 通常の清掃後に、不特定多数が触れる環境表面を、始業前、始業後に清拭消毒することが重要である。
 ・ 手が触れることがない床や壁は、通常の清掃で良い。


(その他)
 ・ 高齢者や持病のある方については、感染した場合の重症化リスクが高いことから、サービス提供側においても、より慎重で徹底した対応を検討する。
 ・ 地域の生活圏において、地域での感染拡大の可能性が報告された場合の対応について検討をしておく。感染拡大リスクが残る場合には、対応を強化することが必要となる可能性がある。
 ※ 業種ごとに対応を検討するに当たっては、これまでにクラスターが発生している 施設等においては、格段の留意が必要である。

(16は、5月5日記)

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17.出口戦略をめぐる鞘当てと各国の状況

(1)4月7日に緊急事態宣言が発出されて、かれこれ1ヶ月が経過した。この間、全国ベースでは、次のように1日当たりの感染者数は4月11日の719人をピークに5月6日には105人となり、4月7日の260人よりは減って、3月25日の96人くらいの水準になってきた。外出自粛と施設の使用制限は、明らかに効果を上げている。


1日当たりの感染者数の推移(NHKニュースより)


 それは良いことだが、その反面、この間の経済的な打撃は相当なものである。とりわけ街中の飲食店、商店街などの小規模零細企業の皆さん、観光地の土産物屋さん、旅館やホテル、旅行代理店、派遣労働者、アルバイトで生計をたてていた学生さんなどは、お客さんや観光客が来てくれなくなった結果、仕事がなくなって収入源を絶たれた。やがてこれが、個人事業主のみならず中小企業から大企業にまで及ぶと、破産が続出してそれこそ経済が破綻しかねない。そういうことで、経済界からは一刻も早く解除してほしいという圧力が高まる。その一方でせっかく押さえ込みに成功しつつあるのに、その効果を確かめないままに安易に解除すると、元の木阿弥になるという心配が付きまとう。

 現に北海道では、札幌雪まつりなどに来た武漢からの観光客を感染源とする2月19日から3月16日にかけての第1波を、鈴木知事の「政治決断」としての緊急事態宣言で押さえ込み、4月6日にはいったん患者数がゼロとなった、ところが、4月9日頃からまた第2波の流行が始まった。これは、ちょうど転勤の季節で東京から転勤者がどっと流入したこと、東京で大学生活を送っている子供たちが、春休みと授業がないので北海道に帰省したことなどから、東京で流行している新型コロナウイルスが持ち込まれたというのが定説である。今回の国全体の緊急事態宣言もこのようなことになれば、1ヶ月以上に渡る努力も水の泡となる。


北海道の1日当たりの感染者数の推移(NHKニュースより)



 かくして、緊急事態宣言からいつどのように脱して経済、仕事、学校、日常生活をいかに正常な姿に戻すか・・・これを「出口戦略」と称するらしいが・・・これが問題となる。これについて、内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室長から各都道府県知事あてに「緊急事態措置の維持及び緩和等に関して」という事務連絡が5月4日に出されている。その内容は実に色々なことが書かれているが、簡単に言えば、次の図のようなものである。つまり、13特定警戒都道府県とそれ以外の県とに分ける。前者の13は、外出自粛などを引き続き行い、施設の類型に応じて若干の緩和を行う。後者のそれ以外は、各県知事の判断でかなりの緩和も認めるというものである。


施設の使用制限に関する今後の方針



 そして、前述の通り、「10日後の5月14日を目途に、専門家にその時点での状況を改めて評価をしてもらい、もはや緊急事態措置を実施する必要がなくなったと認められるときは、 期間内であっても速やかに緊急事態を解除する。」という。ところが、この点につき、吉村洋文大阪府知事が噛みついた。曰く「『具体的な基準を示さず、単に延長するのは無責任だ。困っているのは大阪だけじゃない。(政府は)具体的な指標を全国に示してもらいたい』と指摘。大阪府の基準は、(1)感染経路が不明な新規感染者が10人未満(2)検査を受けた人に占める陽性者の割合(陽性率)が7%未満(3)重症病床の使用率6割未満――の3点。これを「警戒信号の消灯基準」とした。(1)と(2)の数値は日々の変動が大きいため、過去7日間の平均(移動平均)をみる。」(5月6日付け朝日新聞朝刊)

 何やら、緊急事態宣言発出時の緊急事態措置を巡っての4月8日から10日かけての国(西村担当大臣)と小池百合子東京都知事とのやり取りを彷彿とさせるものである。その時は、小池知事に軍配が上がった。しかし、今回は明らかに吉村洋文大阪府知事の方が誤っている。新型インフルエンザ対策特別措置法には、具体的にどのような「まん延の防止に関する措置」を講ずるかは特定都道府県知事の裁量の範囲内であるから、それを国に一律に決めて欲しいというのは、法律を読んでいない証左である。仮にそれが緊急事態宣言そのものの解除宣言(同法32条5項)というのであれば、それは政府対策本部長(総理)の権限であるから、府知事からとやかく言われる事柄ではない。若さによる勇み足だろう。

 案の定、西村担当大臣はツィッターで、「緊急事態宣言からの『出口』ということなら、国が専門家の意見を聞いて考える話だ」と述べた。これに対して、吉村知事もツィッターで「「西村大臣、仰るとおり、休業要請の解除は知事権限です。休業要請の解除基準を国に示して欲しいという思いも意図もありません。ただ、緊急事態宣言(基本的対処方針含む)が全ての土台なので、延長するなら出口戦略も示して頂きたかったという思いです。今後は発信を気をつけます。ご迷惑おかけしました」とした。

(2)ところで、各国の状況をみると、次のようだ。

 ドイツは3月16日から隣国との国境管理を強化し、18日に緊急事態宣言を発出して外出や営業の制限を行ってきたが、感染の状況が好転してきたことから、4月20日に小規模商店の営業を認めるなど一部を緩和し、引き続いて5月6日に完全に撤廃した。ただし、1週間に10万人当たり50人を超える感染者が出た地区には、再び制限をかけるという。

 アメリカでは、トランプ大統領と共和党が経済に与える打撃を懸念して、都市封鎖の早期解除を各州に働きかけている。共和党の知事にはこれに呼応して緩和する動きがある。ところが全米で最大の感染者を出しているニューヨーク州のクオモ知事は慎重である。それというのも、新規感染者の数が5月5日には2239人、新たに入院した者が601人と、3月下旬の水準まで減少してきているとはいえ、絶対数がまだまだ多い。日本ならびっくりするような数字だ。そういう意味で、経済活動を再開するには、感染者と入院患者の数を大幅に減らす必要があると考えているからだ。

 マレーシアは、3月18日に東南アジアで初めての活動制限令(MCO)を出してロックダウンに踏み切った。その活動制限令は3回にわたって延長され、最終の延長による期限は5月12日までとなっていた。ところが、5月1日に突如として活動制限令の大幅緩和が発表された。政府が定めた規制内容(SOP)を遵守するという条件付きながら大部分の企業、工場、商店、レストランの操業が認められようになった。その背景には、活動制限令が功を奏して新規感染者が激減していると同時に、その弊害として経済的損失が1日当たり24億リンギット(590億円)と見込まれているからだという。規制の導入も早かったが、規制の撤廃も早い。さて、この判断が吉と出るか凶と出るか、今後の推移に注目したい。


(17は、5月7日記)

我はマスク難民なり


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18.日本の出口戦略と緊急事態宣言の解除

(1) 4月7日の緊急事態宣言時には、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、大阪府、兵庫県、福岡県の7都府県を対象にしていた。その後、4月16日に政府は「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」を見直して、これに北海道、茨城県、石川県、岐阜県、愛知県及び京都府の6道府県を加えて13都道府県とする一方、宣言の対象を全都道府県に拡大し、5月6日までとした。そしてゴールデンウィーク後半の5月4日、その13特定警戒都道府県では、外出自粛などを引き続き行いつつも、施設についてはその類型に応じて若干の緩和を行う。それ以外の県では、各県知事の判断でかなりの緩和を行うことを認めるようになった。

39県については、緊急事態措置を実施すべき区域としない

 その上でゴールデンウィーク明けの5月14日には、政府は再び「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」を見直して、「北海道、埼玉県、千葉県、 東京都、神奈川県、京都府、大阪府及び兵庫県については、直近1週間の 累積報告数が10万人あたり0.5人以上であることなどから、引き続き特定警戒都道府県として、特に重点的に感染拡大の防止に向けた取組を進めていく必要がある。上記以外の39県については、緊急事態措置を実施すべき区域としないこととなるが、これらの地域においても、基本的な感染防止策の徹底等を継続する必要があるとともに、感染の状況等を継続的に監視し、その変化に応じて、迅速かつ適切に感染拡大防止の取組を行う必要がある。」とした。

 つまり、特定警戒都道府県だった13のうち、茨城県、石川県、岐阜県、愛知県及び福岡県の5県を特定警戒都道府県から除外した。そして従来から特定警戒都道府県ではなかった34県とともに、合計39県について、「緊急事態措置を実施する必要がなくなった」として、速やかに当該措置が解除された。これにより、緊急事態措置を実施すべき区域は、「北海道、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、京都府、大阪府及び兵庫県」だけとなったのである。

(2) NHKニュースサイトで関連する次のデータを見ると、まず、日本全国の1日当たりの感染者数は、4月11日の720人が最大で、多少の揺り戻しはあるものの、全体としてはそれから漸減している。もはや最大の危機は去ったと思って良いだろう。感染者の累積グラフも、次第に平らかになりつつある。問題は、新型コロナウイルス対応のベッド数で、入院患者による占有率を見ると、北海道は71%とかなり高い。それに比べて、例えば、山形空港で旅行客、そして県境で県外ナンバーの車のドライバーの体温をチェックしていた山形県は、わずか7%ではないか・・・騒ぎすぎだ。それより、東京都のこの数字は何だ。126%ということは、入院待ちが26%もいるということか。こんなところで患者になったら一大事だ。石川県が61%だと?何故だ。吉村知事が活躍している大阪府は35%か。これなら、まあ大丈夫だろう。というわけで、問題は、東京都と北海道だということがわかった。


日本国内の感染者数(1日当たり)

日本国内の感染者数・重症者数、死亡者数

日本国内の感染者数(累計)

都道県別感染者数(累計)

新型コロナウイルス対応病床数・入院患者数・ベッド占有率・軽症者はホテル

全世界の感染者数(累計)

全世界の感染者数(5月25日現在。専門家会議資料)


(3) 5月20日の報道によると、緊急事態宣言を継続している8都道府県につき、政府は21日に解除できるかどうかを決定することとしており、その際の目安は、@ 感染の状況、A 医療提供体制、B PCR検査などの監視体制だという。特に@は、直近1週間の新規感染者数の累計が人口10万人あたり0.5人程度以下とのことである。


(4) 5月21日、政府は、新型コロナウイルス感染症対策本部を開いて再び「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」を見直し、次のように決定した。「北海道、埼玉県、千葉県、東京都及び神奈川県の5都道県については、直近1週間の累積報告数が10万人あたり0.5人以上であることなどから、引き続き特定警戒都道府県とする。それ以外の42府県については、緊急事態措置を実施すべき区域とはしないこととするが、感染の状況等を継続的に監視し、その変化に応じて、迅速かつ適切に感染拡大防止の取組を行う。中でもオーバーシュートの予兆が見られる場合には迅速に対応し、直近の報告数や倍加時間、感染経路の不明な症例の割合等を踏まえて、総合的に判断する。」

42県については、緊急事態措置を実施すべき区域としない

 そして、安倍首相は、同日の記者会見で「関東の1都3県と北海道については、緊急事態が続くこととなりますが、新規の感染者は確実に減少しており、また、医療のひっ迫状況も改善傾向にあります。そのため、週明け早々、25日にも専門家の皆様に状況を評価していただき、今の状況が継続されれば、解除も可能となるのではないかと考えて」いると述べた。出口戦略が加速しているという印象を与えた。

(5) そういうことで、まだ緊急事態措置が続く東京都(小池百合子知事)は、「新型コロナウイルス感染症を乗り越えるためのロードマップ」を公表して、次のような説明をしている。これが、なかなか分かりやすいので感心した。すなわち、

 @ 緊急事態宣言下においては、外出自粛等の徹底を通じて、感染を最大限抑え込む。(緊急事態宣言下では自粛要請を維持。STAY HOME ・ STAY in TOKYO)
 A 適切なモニタリング等を通じて、慎重にステップを踏み、都民生活や経済社会活動との両立を図る。(感染状況や医療提供体制などの観点から7つの指標を用いて常にモニタリング。2週間単位をベースに状況を評価し、段階的に自粛を緩和)
 B 状況の変化を的確に把握し、必要な場合には「東京アラート」を発動する。(感染拡大の兆候を把握した場合には、「東京アラート」を発動し、都民に警戒を呼び掛け、それでも再要請の目安を上回った場合などは、必要な外出自粛・休業を再要請し、感染拡大防止を徹底)
 C 今後、発生が予想される「第2波」に対応するため、万全の医療・検査体制を整備する。(迅速に検査を受けられる体制を充実 ・症状に応じた医療提供体制を整備するとともに、患者情報を的確に把握し、モニタリングを強化)
 D ウイルスとの長い戦いを見据え、暮らしや働く場での感染拡大を防止する習慣 =「新しい日常」が定着した社会を構築する。(都民や事業者に向けて「新しい日常」の考え方とそれを支える施策を提示)

 この東京都のロードマップを見ると、感染の第2波が必ず来るので、それに備えて万全の医療・検査体制を敷くことと、感染防止のための「新しい日常」に慣れることが強調されている。そして、当面は3段階に分けて徐々に緩和していくこととする。解除していない現在の状況をステップ0とすると、

 ステップ1は、博物館、美術館、図書館を再開し、飲食店等は、営業時間の一部緩和(夜8時までから、10時までへ)。50人までのイベントも認める。

 ステップ2は、劇場、映画館、展示場なども、 入場制限や座席間隔の留意を前提に再開し、100人までのイベントも認め、商業施設も再開する。(その後、状況が好転したとして、6月1日にこのステップ2に移行したが、早くも翌2日には、東京アラートの発令に至ってしまった。)

 ステップ3は、ネットカフェ、漫画喫茶のような遊興施設、パチンコのような遊戯施設も入場制限を前提に再開する。飲食店等は、営業時間を一部緩和し、夜10時までから12時までへ。1000人までのイベントも認める。ただし、クラスターが発生した施設、すなわち接待を伴う飲食店、ライブハウス、カラオケ、スポーツジムはまだ認めない。


東京のPCR検査陽性者

東京のロードマップ

東京のモニタリング指標

外出自粛、休業要請等の緩和措置の内容

施設別の休業要請の緩和ステップ

第2波に備えた検査・医療等の体調整備

医療提供体制の整備

暮らしや働き方の「新しい日常」


(6) 西の雄、大阪府(吉村洋文知事)は、この5月21日より緊急事態宣言の対象から外れたわけであるが、実は5月5日頃から「大阪モデル」と言われる独自の基準で感染拡大状況をモニタリングしてきた。それが、とても良く工夫されたもので、なかなか面白い。それによると、

  感染拡大状況を判断するため、府独自に指標を設定し、日々モニタリング・見える化した。また、各指標について、「感染爆発の兆候」と「感染の収束状況」を判断するための警戒基準を設定した。その上で、以下の@〜Bの警戒信号全てが点灯した場合、府民への自粛要請等の対策を段階的に実施する。以下のA〜Cの警戒信号全てが原則7日間連続消灯すれば、自粛等を段階的に解除する(病床使用率以外の指標は7日間移動平均)。

 (1) 市中での感染拡大状況
   @ 新規陽性者における感染経路不明者の前週増加比
   A 新規陽性者におけるリンク不明者数
 (2) 新規陽性患者の発生状況 検査体制の逼迫状況
   B 確定診断検査における陽性率
 (3) 病床のひっ迫状況
   C 患者受入重症病床使用率

 これらの指標を追いかけていくと、大阪府が緊急事態宣言の対象から外れた5月21日の時点では、上記@からCまでの指標が、確かに緑に点灯していた。

 ところで、新型コロナウイルスに関する国、東京都、大阪府のそれぞれの対策本部のホームページを見ていて、面白いことに気が付いた。まず国は、そのほとんどが文章で、図表があるのはきわめて稀だ。東京都は、もちろん文章が多いが、それと同じくらいに図表がある。ところが大阪府は、文章はほとんどなくて、その大半が図表ばかりなのである。なんとまあ、対照的なのだろう。ひょっとして、大阪の人は、文章だと読む気にならず、図表だと読む気になるのかという仮説を立ててみたが、どうもよくわからない。どなたか、教えていただければ幸いである。


大阪府新型コロナ警戒信号

大阪府新型コロナのモニタリング指標



(7) 緊急事態宣言の解除

 4月7日に行われた新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言は、その後、事態の改善によってもはや緊急事態措置を実施する必要がなくなったとして、約1ヶ月半後の5月25日、「緊急事態が終了した旨の宣言」が行われた。(基本的対処方針

緊急事態宣言の解除

 その時点での人口10万人当たりの新規感染者の数は、首都圏1都3県が0.32人、うち東京都は0.34人であったが、神奈川県が0.62人、北海道が0.80人と、目安の0.5人を上回っていた。この点、慎重な意見もあったと聞くが、いずれも感染源が追えているとして、同時に解除されることとなった。


人口10万人当たりの新規感染者の数(5月26日。NHK調べ)


 5月26日午前0時の日本国内の感染者数は、1万6,632人(前日より21人増)、死亡851人(同13人増)、退院1万3,612人となっている。軽症の人なら退院まで2週間程度、中等症の人で2〜3週間、重症の人なら4週間前後で退院するのが普通である。その点、4月7日の緊急事態宣言から既に1ヶ月半と、その頃の入院であればそれなりの日時が経過しているので、退院した人の数がこれだけ増えているのは、誠に慶賀の至りである。

 毎日の感染者の数を見たところ、感染者のピークは4月10日前後で、そこからすると緊急事態宣言が同月7日と、やや出遅れた感は拭えないが、それでも医療崩壊がギリギリのところで避けられたのは事実である。やはり、緊急事態宣言と緊急事態措置の効果は、確かにあったと認められる。


日本国内の感染者数・死者数(5月26日。NHK調べ)

日本国内の感染者数(5月26日。NHK調べ)

日本国内の感染者数累積(5月26日。NHK調べ)

都道府県別の感染者数累積(5月26日。NHK調べ)

東京都の感染者数の推移

北海道の感染者数の推移

神奈川県の感染者数の推移


 また、感染が収まってきたことは、東京都におけるPCR検査の陽性率からしても、よくわかる。4月10日から15日にかけては、30%を超す日が多かった。ところが、24日には、それがわずか1.3%となっている。医療従事者の皆さんは、ほっと胸を撫で下ろしているだろう。

東京都のPCR検査の陽性率

 次の課題は、遅くとも今年の秋にも来ると思われる感染の第2波に、どう立ち向かうかである。しかもその頃には、冷え込む経済との両立が課題となるだろう。この新型コロナウイルスは、これに感染しても8割ほどの人が無症状で、それでいてウイルスを排出して周りの人に感染を拡げてしまうという困った性質がある。だから、発熱や咳のような症状が現れてどうやら感染したらしいと判明しても、感染を防止するにはもはや遅いのだ。

 ところで、スウェーデンは、公衆衛生庁の方針で、集団免疫戦略でもって対抗しようという戦略をとっている。人々に対しては、@発熱や咳があれば自宅療養、A他人とはソーシャルディスタンスをとる、Bできれば在宅勤務、C70歳以上は他人と接触しないなどを「要請」するが、その他は普段通りにしてよい。そのうちに気づかないで新型コロナウイルスに罹った人が人口の6割程度を占めれば、そこで感染は自然に収束するというのである。しかし、人命第一の観点からすると、その戦略が奏効しているかといえば、そうでもない。人口が1,023万人の国で、感染者数34,440人、4,120人もの死者を出した。人口が半分の北欧諸国でいずれも都市封鎖に踏み切ったデンマークがそれぞれ11,428人、563人、ノルウェーが8,383人、235人というデータを見れば、やはり失敗したのではないかと思われる。

 実は、イギリスも最初は集団免疫戦略の考え方だったが、感染があまりに急拡大するものだから、3月23日、遂に耐えきれなくて都市封鎖に踏み切った。それでも、5月25日現在の感染者数265,227人、死者37,048人となっている。イギリスの人口は6,665万人と、スウェーデンの6倍だから、その比でいくと、イギリスに相当する死者の数は約6,000人になる。それが現実には4,120人と3分の2になっているのだから、スウェーデンは、かなり抑え込んでいるのかもしれない。ただ、社会防衛という観点からはそれでよいかもしれないが、可能な限り死者の増加を防ぎかけがえのない人命を守るという観点からは、経済を多少犠牲にしてもまずは都市封鎖で感染を防止するという日本を初めとする主要国の新型コロナウイルス対策は、間違っていなかったと思う。

(18は、5月15日、20日、23日、26日記)

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19.世界の感染者数と死亡者数の考察

(1) さてここで、全世界の新型コロナウイルスの感染者数と死亡者数の統計(5月20日現在)を見てみよう。次の表は、ニューヨーク・タイムズのもので、流行期まで分かる。これによると、アメリカとヨーロッパ主要国が軒並み酷くやられている。中でもアメリカは、感染者が153万人、死亡者が9万人と、目も当てられない状況だ。その一方、最初の発生地である中国は武漢の都市封鎖で完全に制圧したかのように見える。世上、押さえ込みに成功したとの評判が高い韓国と台湾の死者が非常に少ない。韓国は263人、台湾に至っては(余りに少ないことからこの表には載らないが)、わずか7人だ。それにどういうわけか自粛要請が奏効した日本は韓国と台湾に近く、感染者数は1万7千人、死亡者数は778人だ。


全世界の新型コロナウイルスの感染者数と死亡者数(5月20日現在。ニューヨークタイムス紙のサイト)


 人口10万人当たりの感染者数は、アメリカやスペインは500人弱、イギリスやイタリアは375人程度、ドイツやフランスは210人強である。これに対し、韓国は22人、日本では13人、中国ではたった6人と、大きな差がある。同じく人口10万人当たりの死亡者数は、アメリカでは28人、イギリス、スペイン、イタリアでは50人台、フランスでは42人、ドイツでは10人である。それに対して、日本、中国、韓国では1に満たない。

 概して、感染者数と死亡者数が欧米主要国ではとてつもなく多いのに、東アジア諸国の日本、中国、韓国ではそれほどでもない。これは一体なぜだろうという素朴な疑問が浮かぶ。特に日本の場合は、強制措置を伴う都市封鎖(ロックダウン)ではなく、外出自粛などの弱い措置だったのに、なぜ被害を最小にとどめたのか、外国メディアでは「不可解な謎」、「ラッキーなだけなのか、政策が優れていたからなのか見極められない」と表現する向きもある(注)。

(注)5月26日付けの朝日新聞は、次のように報じている。

 「 新型コロナウイルスを抑え込んだかに見える日本の状況を、海外メディアは驚きと共に伝えている。強制力のない外出自粛やPCR検査数の少なさにもかかわらず、日本で感染が広がらなかったことに注目し、「不可解な謎」「成功物語」などと報じている。

 米誌フォーリン・ポリシーは日本の新型コロナ対策について「何から何まで間違っているように思える」と指摘した上で、それでも現状は「不思議なことに、全てがいい方向に向かっているように見える」と伝えた。「日本がラッキーなだけなのか。それとも優れた政策の成果なのか、見極めるのは難しい」との見方も示した。

 「不可解な謎」と題した記事を配信したのは、オーストラリアの公共放送ABCだ。公共交通機関の混雑ぶりや高齢者人口の多さ、罰則を伴わない緊急事態宣言を「大惨事を招くためのレシピのようだった」と表現。「日本は次のイタリアかニューヨークとなる可能性があった」と指摘した。

 海外ではこれまで、英BBCが「ドイツや韓国と比べると、日本の検査件数はゼロを一つ付け忘れているように見える」と報じるなど、日本のPCR検査数の少なさを疑問視する報道が相次いでいた。米ブルームバーグ通信はこの点について、「第1波をかわしたのは本当に幸運」「(第2波が来る前に)検査を1日10万件できるように準備しなくてはならない」という専門家の話をまとめた。

 英ガーディアン紙は「大惨事目前の状況から成功物語へ」とのタイトルで、日本人の生活習慣が感染拡大を防いだとの見方を伝えた。マスクを着用する習慣▽あいさつで握手やハグよりお辞儀をする習慣▽高い衛生意識▽家に靴をぬいで入る習慣などが、「日本の感染者数の少なさの要因として挙げられる」と指摘している。」



 先ほどの「全世界の新型コロナウイルスの感染者数と死亡者数の統計」の表の話に戻りたい。もちろんこの統計は、いい加減なものである。まず、感染者数はPCR検査をどれだけ、またどんな方法で確認しているかで月とスッポンの差があるから、当てにならない。日本では、当初から5月7日まで「37.5度以上の熱が4日続くこと」などという現実離れした基準を作って意図的に検査をサボって多くの国民に迷惑をかけたほどだ。検査そのものも、日本の専門家に言わせれば検体を取るのに技術が要り、検査にも熟練が必要というから、もしそれが本当なら他の国はどうやってこの感染者数を出しているのか、疑問だらけである。

 他方、死亡者数はまだ信頼できる気がするが、それも、陽性をちゃんと確認した人たちから出た死者なのか、それとも陽性を確認しないまま医師が症状から判断した死者数を新型コロナウイルスによる死者数としているのか、その厳密さが国によって異なる。その他、イギリスなどは途中まで介護施設での死者数をカウントしていなかったほどだ。それに、日本では、町で行き倒れた死者にたまたまPCR検査をしたら陽性だったというケースも散見されたので、本当に新型コロナウイルスで死んだ人の数は、もっと多いはずだ。これを正確な数字とするために例年同時期のトレンドと比べて超過死亡者数がどれだけあるかと調べていくアプローチもあるが、もちろんそれも推計に過ぎない。

(2) そういうわけで、いい加減な統計に基づいてあれこれ考えをめぐらすのもどうかとは思うが、でもこれしかないのだから、仕方がない。まずこの表から思うのは、なぜ、欧米諸国では多くの人が死んでいるのに、日中韓の東アジア諸国では死者の数が桁違いに少ないのだろうかということである。遺伝学的な差異か、社会的な違いか、それとも環境が異なるからか、これからの科学的な解明が待たれる。でも、現段階で、これを説明するアプローチとして、人種的な差、政治体制の差、人口構成の差、医療機関の差、基礎疾患や体型の差、社会的習慣の差、BCG仮説、感染源対策と国民意識の差などがある。ただ、いずれもごく一部しか説明することができない。

@ 人種的な差

 要は遺伝子レベルの差異で、調べようと思ったらこれはもう人種別にDNAを比較するほかない。そのうち緊急事態が去ってよほど暇になったらやればよいが、何もこの時期に取り組む課題ではないだろう。それよりも、新型コロナウイルスに取りつかれたときに、8割の人が無症状である一方、直前まで普通だったのに、突然に重症化し、あるいは死に至ることがあると報告されている。どういう遺伝子の違いがあると、そうなるのかということをDNAレベルで調べた方が良さそうだ。(注)

 その有力な候補として、ヒト白血球抗原(HLA)を調べるプロジェクトが発足したそうだ。これは、免疫反応をつかさどる司令塔の役割を果たす血液中の因子で、これを重症化した患者と無症状の患者とで比べて特有の遺伝子を見つけるというもので、同じ調査研究を諸外国で行って比較すれば、因子をあぶりだすことができる。これが上手くいけば、あらかじめ血液検査で重症化の危険性を把握して、感染した場合に備えることができるし、創薬にも役立てることが可能となる。

(注)5月28日、NHKは、次のように報じている。

 「アメリカの民間の調査団体によりますと、今月26日の時点で、全米の40州と首都ワシントンでは、人口10万人当たりの死者は、白人が22人、アジア系が24人、ヒスパニック系が24人であるのに対し、黒人が54人と、ほかの人種と比べて黒人の死亡率が2倍以上になっています。

 また、感染がもっとも深刻なニューヨーク市が発表した調査によりますと、人口10万人当たりの死者数は、アジア系が100人、白人が106人なのに対し、黒人は214人、ヒスパニック系は225人と黒人やヒスパニック系の死亡率が白人の2倍に上っています。」


 ということは、アジア系の死者数は白人とほぼ同じだ。つまり、欧米諸国の国民と東アジア諸国の国民との間には、新型コロナウイルスに対する免疫力の人種的な差はないことになる。イタリアやスペインなどで起こった医療崩壊は、日本でも容易に起こりうるということだ。そうすると、彼我の死亡率の差は、@人種的な差に求めることはできず、次のA以下の理由に求めざるを得ないものと思われる。



A 政治体制の差

 これは、西側の自由主義国家と旧東側の一党独裁制国家の比較である。中国が感染者数8万9千人、死亡者数4千人台にとどまっているというのは、まさにそれだと思うが、「こんなに少ないわけがないだろう、正しい数字を隠している。」と言われている。その一方、ロシアが感染者数29万人とヨーロッパ主要国並みなのに死亡者数は2千8百人と、これら主要国の10分の1になっている。しかし、これは中国と同じで、政治的に介入された結果、統計が歪められたと思っている人が多い。

 逆にシンガポールの感染者数2万8千人に対して、死亡者数はわずか22人というのは、どう解釈すべきか。これは非常に少ないと思いがちだが、実はシンガポールは当初からその警察力を駆使して街灯のカメラを使ったり、スマートフォンのアプリを通じて濃厚接触者を追うなどして、感染の押さえ込みに成功したと考えられていた。事実、感染者の数はずーっと千人台に押さえられていた。ところが、つい最近になって居住環境が悪い外国人建築労働者の間で急速に蔓延するようになった。この人たちはまだ若いので、幸い今の段階では死亡するには至っていないからだと思われる。

B 人口構成の差

 ところで、人口構成の差は、死亡者の数を各国比較をする上で大事な要素である。4月17日の少し古い統計ではあるが、新型コロナウイルスに感染した日本人9027人のうち、死亡率は、全体で1.6%だが、30歳代0.2%、40歳代0.1%、50歳代0.4%、60歳代1.5%、70歳代5.6%、80歳以上11.19%と、高齢者になるほど死亡率が上がっている。ということは、国民の人口構成が若いほど死亡者の数が少ないことを意味する。これは、諸外国でも同じ傾向にある。2月17日の古い統計だが、中国では、30歳代までは0.2%、60歳代は3.6%、70歳代は8%、90歳代は15%となっていた。

 感染者数が5万9千人のサウジアラビアは、若い世代が多いから、死亡者数が329人と少ないのかもしれない。もっとも、別の見方をすれば、この国も外国人労働者が多いので、さきほどのシンガポールと同じタイプなのかもしれない。マレーシアも若者主体の人口構成であるし、医療もそれなりに整っているから、感染者数6千百人、死亡者数114人となっている。

 その割には、高齢化社会である日本が、感染者数1万7千人、死亡者数718人に抑えているというのは、なかなか頑張っている数字ではないかと思われる。これは、次に述べる医療機関の数や優秀さのおかげなのかもしれない。

C 医療機関の差

 未だ有効な薬やワクチンがない中で、これだけ猛威を振るう強烈な感染症に対抗するには、優秀な医療機関で適切な処置を受ける必要がある。ところが、そういう環境にない国や人々では、死につながりやすい。アメリカでは、所得が低くて簡単には医療を受けられない黒人などの死亡率が高いといわれている。

 また、ヨーロッパ主要国では、あまりに短期間で急速に流行したため、イタリア、スペイン、フランス、イギリスでは、患者が病院に次々に運び込まれた。ところが、ベッド数が足りないものだから廊下にそのまま放置され、そこで亡くなることも多々あったという。これが「医療崩壊」というもので、今回の流行の当初に中国湖北省武漢で起こった悪夢を再度見ているような気がした。その点、ドイツは、患者数は他の近隣主要国並みなのに、ICU(集中治療室)と人工呼吸器などの施設設備や治療看護体制を十分に用意したので、医療崩壊は起こらず、その結果、ドイツの死亡者数は8千人と、他のヨーロッパ主要国の3万人程度と比べて4分の1程度になっている(しかし、それでも日本の死亡者数778人の10倍だ!)。

D 基礎疾患や体型の差

 新型コロナウイルスでは、経験的にみて、糖尿病、心血管疾患、慢性肺疾患、喫煙による慢性閉塞性肺疾患、免疫抑制状態等の基礎疾患のある患者とともに、高齢者、肥満、喫煙者が重症化しやすいというのは、ほぼ定説となりつつある。こうした患者や高齢者や喫煙者は、危ないだろうなということは、薄々わかる。ところが、肥満体の人がなぜ重症化するのか、まだよく分からない。

 そう言えば、欧米主要国には、本当に肥満体が多い。それも、小錦レベルのもの凄い肥満体である。現地で地下鉄に乗ったり、レストランに入ったりしたときの実感では、4割近い人が肥満だ。しかも不自然に太っている。よくあれで歩けるなぁと思うほどだ。こういう人々は、東アジア諸国では、まず見かけない。

 だから、新型コロナウイルスがこのような肥満体の人に取り付いたら重症化しやすいというのなら、死亡者数の彼我の差は、ある程度、説明できそうだ。

E 社会的習慣の差

 ヨーロッパでは、特にイタリアで最初の感染爆発が起こった。イタリアでは、握手は言うに及ばず、さほど親しい間柄ではないと思われるのにハグしたりキスしたりと、人と人との接触が非常に密接である。かつて私の一家がイタリアに行った時、娘がまだ小さくて(それなりに)可愛かったせいか、あちこちでキスやハグをされそうになり、娘は嫌がって逃げ回ったほどである。

 また、イタリアでは家族の間柄が非常に密接なので、週に一度は祖父母の家に集まって皆で食事をするという習慣があるが、実はこれが裏目に出て、新型コロナウイルスが一気に蔓延してしまった。それに対して、日本人は挨拶と言えばお辞儀だから、握手、キス、ハグのような肉体的接触を伴う挨拶はない。これも感染予防に大いに役立っているのかもしれない。

 それに、なんと言ってもマスクの効果は無視出来ない。水野康孝医師のおっしゃるように、マスクにはウイルスの侵入を防ぐ効果はないかもしれないが、自分が感染者の場合に周りの人にウイルスを感染させないためにはマスクが実に効果的である。ということで、日本にはマスクを着用する習慣があり、人々は自然にそれを受け入れている。それだけでなく、たまたま2月から4月にかけては花粉症の季節だったので、日本人の2割とも3割とも言われる花粉症の方は、ごく自然にマスクをしていた。だから、この新型コロナウイルスの話を聞いただけで、ほとんどの人がマスクを着用するようになった。

 これに対して、欧米では、新型コロナウイルスの流行前は、マスクをするのは(潔癖症などの)よほどの変人か、あるいは本当に具合の悪い病人かというのが常識だったので、マスク着用が遅れたものと考えられている。

F BCG仮説

 このほか、結核を予防するBCGワクチンが新型コロナウイルスに有効だったのではないかという仮説がある。結核と新型コロナウイルスとは全く無関係だが、しかしBCGワクチンは一般に免疫作用を促進するので、新型コロナウイルスにも効くというのである。なぜそういう説が出てきたかというと、日本、中国、韓国はBCGワクチンの定期接種国であるのに対して、感染爆発が酷いアメリカやイタリアは、定期接種国ではないからではないかというのである。ただ、この説は検証されていない。それどころか、イスラエルでBCGワクチンを受けた群とそうでない群を比較してみたところ、有意な差はなかったという報告があるそうだ。

 なお、BCG仮説を検証するため、ドイツでは、遺伝子組み換え技術を利用した新型BCGワクチン「VPM1002」ならば効くのではないかと考えて、5月に入って、新型コロナウイルスに対する免疫反応を強化するかどうかの臨床試験が始まっている。

G 感染源対策と国民意識の差

 日本では、流行の当初から、保健所が「濃厚接触者の調査」をしっかりと行い、感染源の追跡を行ってきた。これは、中国、韓国、シンガポールなどで行っている最新のGPS、クレジットカード利用履歴、防犯カメラなどのハイテクによる追跡と比べて、アナログそのものである。しかし、流行の当初はかなり有効で、その拡大防止にとても役立ったと言われている。ただ、感染規模が大きくなると、とても追いつかなくなった。これからは、やはりハイテクによる追跡を導入せざるを得ないだろう。

 もうひとつは、いわゆる「三密(密閉、密集、密接)すなわち(@密閉空間(換気の悪い密閉空間である)、A密集場所(多くの人が密集している)、B密接場面(互いに手を伸ばしたら届く距離での会話や発声が行われる))」という感染対策のスローガンで、今回の新型コロナウイルスのような特徴の感染症対策には、非常に有効であった。

 最後に、日本では2月初頭のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」で起こった集団感染事件で、新型コロナウイルスとはこれほどまでに恐ろしいものかという記憶が国民に刻まれた。だから、日本で流行が始まり、(罰則を伴う強制的な都市封鎖ではなく)色々と自粛が呼びかけられたときに、国民が進んで協力しようという意識が自然に生まれたのではないかと考えている。法律による緊急事態宣言は4月7日と出遅れたが、結果的には上手く押さえ込んだと思われる。ただし、これはあくまでも第1波に過ぎないから、手放しで喜ぶにはまだ早い。

H 麻生太郎の民度説

 麻生太郎財務大臣は、6月4日の財政金融委員会で、次のような自説を述べていた。「死亡率が一番問題なんです・・・人口比で100万人当たり日本は7人ですよね。こういうのは結果は死亡者ですから。戦争も何もみんな、最終的に死亡者が何人でその戦争が勝ったか負けたかって言われるような話になりますんで。『なんかお前らだけ薬を持ってるのか』ってよく電話がかかってきた時、私どもとしては、これ、そういった人たちの質問には、『お宅とうちの国とは国民の民度のレベルが違うんだ』と言って、いつも、みんな、絶句して黙るんですけれども。このところ、その種の電話もなくなりましたから、何となく、これ定着しつつあるんだと思います・・・やっぱり島国ですから、なんとなく連帯的も強かったし、国民が政府の要請に対して極めて協調してもらったっていうことなんだと思います。」

 要は、「民度」という言葉を使って「あなたの国の国民と、日本国民とでは、そもそも出来が違うんだ。」などと、かなりひどい言い方の麻生節で説明したわけである。相手の外国人が「絶句して黙」り、二度と電話をかけてこないわけだ。もう少し外交的で、洒落た言い方はなかったものか。

I 国民皆保険、マスクの習慣、衛生意識

 舘田一博 東邦大学医学部微生物・感染症学講座教授(日本感染症学会理事長)は、インタビュー記事(注)で、次のように語っている。
(注)2020年6月21日付け。朝日新聞デジタル

 「5月に欧州であった感染症の国際会議のウェブセミナーで、日本の状況を説明した。向こうの人は、どうして日本は死者が少ないのかと不思議がられた。日本はPCR検査が少ないといわれ、実際弱点だった。最初のころは1日千件ですよ。

 でも、日本は国民皆保険で、みんなが医療にアクセスできる。当たり前のように思われているけど、ほかの国ではなかなかない。普段からマスクを着ける習慣があるのも大きかった。衛生に対する意識も高い。そういうことの重なりが、今の状況につながっているのではないかと思います。

 クルーズ船ダイヤモンド・プリンセスの集団感染を経験したことも大きかった。船内で感染が広がり、毎日報道されるようになった。対応には色々反省すべき点はあったが、国民への注意喚起になって、心の準備、行動の準備ができていたということがあるのかもしれません。」



 同様の趣旨をシカゴ・グローバル評議会ブライアン・ハンソン副会長が新聞紙上(注)で語っている。
(注)2020年6月18日付け。日本経済新聞

 曰く「日本は新型コロナウイルス対策に戦略性も一貫性もないように見えるのに、感染の拡大を抑えることができた。政策と現実とのギャップがこれほど大きい例はほかにない。・・・成功例から得られた教訓をあげるとすれば戦略と明確な目標が必要だということ。対策が超党派の支持を得ることも大切だ。日本は例外で、何が起きたのかは謎に包まれている。

 おそらく、成功をもたらしたのは政府ではなく国民ではないか。新型コロナの流行前から日常的にマスクを着けているし、あいさつの時に握手をしない。政策よりも人々がこうした習慣の延長線上で、行動に注意を払おうと決めたのが奏功したと考えられる。」
。要は、政府は役立たずだったが、国民が偉かったということか。

(19の@からFまでは5月22日、Gは5月25日、Hは6月5日、Iは6月21日記)

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20.閑 話 休 題

(1)ナイトクラブの新型コロナ対策

 今回の緊急事態宣言は、旅行、観光、小売、レストラン、製造業などの幅広い業種に大きな影響を与えた。東京都は、5月25日に緊急事態宣言が解除されてもステップ3として、クラスターが発生したことがある「接待を伴う飲食店等、カラオケ、ライブハウス、スポーツジム」については引き続き自粛要請を継続する姿勢である。

 先日、NHKテレビを見ていたら、団体「日本水商売協会」というものがあって、妙齢の女性たちが記者会見を開いていた。それにしても、そのものズバリの単刀直入な名前だなぁと思って見ていたら、何とこれが一般社団法人なのだそうだ。ひと昔前だと、とても認可されなかったと思うので、これにはビックリした。これも、社団法人改革の「成果」なのだろう。この法人は、東京都内のナイトクラブやキャバクラ店で働く女性たちによって構成されているそうで、今回の自粛要請により生活が厳しいと訴えている。

 それには同情を禁じ得ないが、「経営が厳しく休業要請の解除を待たずに営業を再開する店もあるとみて、専門家の監修を受け、独自に感染対策のガイドラインを作成した。」というのは、いただけない・・・それはいわゆる自粛破りではないか・・・。それに、あまり早まって営業を再開して、先日の韓国のナイトクラブでの206人もの集団感染のように、万が一、クラスターが発生したら、誰も来なくなるのではないだろうか。

 ところでそのガイドラインを見たところ、例えば、@マスク着用。飲み物を飲む時以外は外さない。A検温による入店規制体温計(非接触型が好ましいが、接触型の場合、人ごとにアルコール消毒)、B感染拡大大国からの入国後14日以上経過していない方の入店規制、Cソーシャルディスタンス(キャストとお客様のペアごとに1卓分あけて着席)、Dできれば、接客のキャストはチェンジなしの固定(接触者をできるだけ減らす目的)などとある。

 いずれも、まあ常識的な内容だが、ナイトクラブでホステスさんがマスク姿というのは、これで商売が成り立つのかという気がする。マスク姿でお相手ができるのか、せめて透明なフェイスシールドにすべきではないか・・・ちょっと余計なことかな・・・などと思っていたら、記者会見に出たキャバクラ店の経営に関わる女性が、このように話していた。「やむをえなく営業する場合でもマスクを外すわけにはいきません。いつかマスクを外して『こういう感じの女性だったのか』という日が来るのを楽しみにしてもらいたいです」と。なるほど、ものは言いようだ・・・夜目、遠目、傘の内、そしてマスクの中か・・・しかし、そう上手くいくだろうか。ともあれ、ポスト・コロナの時代には、夜の世界も容易には立ち直れないほどの打撃を被りそうだ。


(2) 必要は発明の母というが、外出と営業の自粛で客も仕事もなくなってしまった「スナック」について、「オンラインスナック横丁」なるものを考えた人がいる。なかなかの知恵者というか、よほどスナックがお好きなのだろう。朝日新聞夕刊(6月15日付け)によれば、全国のスナック約500軒を訪ねたことがある五十嵐さんという方で、5月中旬から北は北海道、南は九州、海外もアメリカの10軒で始め、それから1ヶ月後には20軒余に拡大した。


オンラインスナック横丁


 利用方法は、「店を選び、『1対1』『ほかの客と相席』『グループ貸し切り』の3種あるチケット(いずれも1時間3千円前後)を購入し、タブレットなどの画面越しにママと向き合い、おしゃべりしたり、お酒を飲んだり」ということらしい。意外なことに、「利用者はスナック初心者が7割で、女性の一人客が4割を占めるという。『楽しかったから』と、再開した実店舗を女性客が『再訪』する現象」する見受けられるというから、新しい客層を開拓したことになる。


(3)トランプ大統領が抗マラリア薬を摂取

 5月18日のトランプ大統領の記者会見をテレビで見ていて、驚いてしまった。トランプ大統領は、「(抗マラリア薬の)ヒドロキシクロロキンを2週間ほど前から飲んでいる。いろいろと良い効果があると聞いているから。問題ない。まだ、ここに、こうしている。」と述べたのである。

 確かに、新型コロナウイルスについては、治療薬を新規に開発する時間的余裕がないため、既存の薬で効果のあるものはないかと世界各国で探索が続いている。ヒドロキシクロロキンもその一つで、もしかすると効果があるかもしれないということが言われている段階に過ぎない。そんな海のものとも山のものともわからない段階のものを、事もあろうにアメリカ大統領たる者が、何の科学的検証もせずに飲むものか、これは常識というものだ。こんな人が、核大国として核爆弾の鍵を握っていて、大丈夫なものだろうかと思ってしまう。

 ちなみに、この報道があったその直後の23日、BBCによると、「英医学誌ランセットは、ヒドロキシクロロキンを新型コロナウイルスの患者に投与しても、治療効果は見られなかった」と報じている。それどころか、「投与された患者は入院中に死亡する確率が高く、心拍異常がみられた」という。世界保健機構(WHO)も、新型コロナウイルス治療にヒドロキシクロロキンの使用を推奨する臨床結果は一つもないと表明している。

 6月15日、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、ヒドロキシクロロキンは新型コロナウイルスの治療にも、感染防止にも効果はなかったとして、治療への緊急使用許可を取り消した。感想を求められたトランプ大統領は、「2週間使って気分は良かった」と述べた。

(4)作りすぎた人工呼吸器の処分先

 笑い話のようだが、安倍首相がトランプ大統領と電話で連絡を取り合ったとき、大統領から「人工呼吸器を作りすぎたので、日本で引き取ってくれ」と頼まれたそうだ。アメリカでは、GMなどの異業種の企業に対し、戦時の法律を適用して「人工呼吸器を作れ」という大統領令を出して大いに作らせたのだが、感染の進行が一段落してそれが大きく余ってきたとのこと。日本側は、「足りているから・・・」と言ったのだけど、最終的には引き取ると約束したという。

(20(1)と(3)は5月25日、(4)は同31日、(2)は6月15日記)

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21.専門家による緊急事態対応の総括

(1)5月29日の専門家会議

 日本では、5月25日に緊急事態終了宣言が行われ、これで日本はとりあえず新型コロナウイルスの第1波を凌ぐことができたといってよいと考えられる。それでは、日本の専門家はこれについてどう考えているのか、5月29日の専門家会議の資料を読んでみた。これは、日本が講じてきた対策を総括するもので、そのさわりの部分は、次の通りである。

 (1−1) 現時点において、欧米の先進諸国などと比較して感染者数・死亡者数が低水準であることの主な理由として、

 @ 国民皆保険制度による医療へのアクセスが良いこと、公私を問わず医療機関が充実し、地方においても医療レベルが高いこと等により、流行初期の頃から感染者を早く探知できたこと、
 A 全国に整備された保健所を中心とした地域の公衆衛生水準が高いこと
 B 市民の衛生意識の高さや元々の生活習慣の違い、及び、政府等からの行動変容の要請に対する協力の度合いが高かったこと  C ダイヤモンドプリンセス号への対応の経験が活かされたこと
 D 緊急事態宣言やその前からの自主的な取組の効果によって、新規感染の抑制がなされたことなどが挙げられる。

(注) 台湾は、2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)対応の際に、医療関係者を中心に数百人の感染者と70人以上の死者を出した反省と教訓があったほか、 @欧州等からの人々の移入の規模が台湾の方が少なかったこと A台湾の方がより早く水際対策による対応(2月6日に中国全土からの入国を禁止、3月19日からはすべての外国人の入国を禁止)を講じたこと。これに対し、日本では、2月1日に中国湖北省からの入国を禁止したが、イタリアの全域、ドイツ、フランス等欧州の大部分の入国を禁止したの は3月27日、米国や英国、中国全域等からの入国禁止は4月3日からであったことなどが要因として挙げられる。

 (1−2) これらに加えて、我が国が実行したクラスター対策の取組が感染拡大を抑える上で効果的であった。クラスター対策とは、積極的疫学調査を実施することで、クラスター感染(集団感染)発生の端緒(感染源等)を捉え、早急に対策を講ずることにより感染拡大を遅らせたり、最小化させたりするためのものである。我が国では、「効果的なクラスター対策」の実施によって、次のような効果が得られたと考えられる。

 @ クラスターの連鎖による大規模感染拡大を未然に防止できた。
 A 初期の積極的疫学調査から多くのクラスターを見つけ、それに共通する「3密」の場や、歌うこと・大声で話すこと、といった特徴を指摘することができた。これにより、クラスター感染(集団感染)が生じやすい環境をできるだけ回避するための対応策を市民に訴えることができた。
 B クラスターを中心とした感染者ごとのつながり(リンク)を追うことにより、地域ごとの流行状況をより正確に推計することができていた。つまり、リンクが追えない「孤発例」が増加することは地域で感染拡大を示すものと判断することができ、地域での早期の対応強化につながった。


 要は、国民皆保険制度による医療へのアクセスが良いこと、全国に整備された保健所による公衆衛生水準が高いこと、クラスター対策が功を奏したことなどを指摘している。いささか自画自賛的で、本当かという気がしないでもないが、一面は真実なのだろうと思う。それにしても、これだけITやAIが発達した世の中だというのに、クラスター対策のごとき100年前の古い手法がそのまま役に立つとは、何ともはや、面白いことである。

 ちなみに、この専門家会議は、次なる波に備えるため、以下のようなモニタリング体制の整備、医療提供体制の整備、保健所の強化などを提案している。感染の中休みのような今、こうした対策を着実に準備しておくことが大切である。


モニタリング体制の整備、医療提供体制の整備、保健所の強化などを提案

モニタリング体制の整備

各種検査方法の比較

医療提供体制の整備、

保健所の強化など

治療法の開発



(2)お隣の韓国は、携帯電話、クレジットカード、防犯カメラなどを通じて新型コロナウイルス感染者と濃厚接触者を徹底的に追跡することにより、感染拡大を4月中の早い段階で押さえ込んだとして、国際的に評判が高い。ところがそれでも、第1波の感染が沈静化して約1か月後の5月6日、ソウルの梨泰院(イテウォン)と江南(カンナム)にある複数の風俗店で集団感染が発生した。中でも、クラブ・キングという性的マイノリティが集うクラブでは、20歳代のたった1人の感染者(スーパー・スプレッダー)から290を超える人に感染が拡大し、7次感染と認められる例があったという。ところが、そういう場所であるために身元が知られないよう携帯電話の電源を切っていたりしたことから、韓国得意のITを活用した追跡が難しかったとのことだ。

 また、日本でも北九州市は約1ヶ月ほど感染者の発生はなかったが、突然、感染が確認されるようになり、5月31日現在、この9日間で91人がPCR検査で陽性となった。しかもそのうち、34人について、感染経路が不明である。これについて北九州市長は、「第2波の感染の真っ只中にある」と語っている。

 これはまだ一地方都市の出来事に過ぎないが、私は、遅くとも今年の秋にも、全国的に感染が再び拡がる第2波に襲われるという気がしてならない。よほどの幸運が重ならない限り、全世界の人々に打つワクチンの開発には少なくとも3年から4年はかかるだろうから、それまではロックダウンや外出自粛のような措置で対応するほかない。もちろん、来年の東京2020オリンピックも、かなり危ないと思っている。そうした中、一庶民としては、感染防止のための「新しい生活様式」に慣れ、何とか罹患しないようにやっていくしかない。

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22.新型コロナウイルス診療の手引き

 厚生労働省が、「新型コロナウイルス感染症 診療の手引き(第2版)」を公開したので、それでこの病気の特徴を勉強させてもらっている。

(1)伝播様式

 【感染経路】 飛沫感染が主体と考えられ、換気の悪い環境では、咳やくしゃみなどがなくても感染すると考えられる。また、接触感染もあると考えられる。有症者が感染伝播の主体であるが、無症状病原体保有者からの感染リスクもある。

 【潜伏期・感染可能期間】 潜伏期は1〜14日間であり,曝露から5日程度で発症することが多い(WHO)。発症時から感染性が高いことは市中感染の原因となっており、SARS や MERS と異なる特徴である。感染可能期間は、発症2日前から発症後7〜14日間程度(積極的疫学調査では隔離されるまで)と考えられる。SARS-CoV-2 は上気道と下気道で増殖していると考えられ、重症例ではウイルス量が多く、排泄期間も長い傾向にある。発症から3〜4週間、病原体遺伝子が検出されることはまれでない。なお、血液、尿、便から感染性のある SARS-CoV-2 を検出することはまれである。

(2)臨 床 像

 多くの症例で発熱、呼吸器症(咳嗽、咽頭痛、鼻汁、鼻閉など)、頭痛、倦怠感などがみられる。下痢や嘔吐などの消化器症状の頻度は多くの報告で10%未満であり、SARS や MERS よりも少ないと考えられる。初期症状はインフルエンザや感冒に似ており、この時期にこれらとCOVID-19を区別することは困難である。嗅覚障害、味覚障害を訴える患者さんが多いことも分かってきた。イタリアからの報告によると約3割の患者で嗅覚異常または味覚異常があり、特に若年者、女性に多い。中国では発症から医療機関受診までの期間は約5日、入院までの期間は約7日と報告されており、症例によっては発症から1週間程度で重症化してくるものと考えられる。さらに重症化する事例では10日目以降に集中治療室に入室という経過をたどる傾向がある。

 【重症化のリスク因子】 高齢者、基礎疾患(糖尿病・心不全・慢性呼吸器疾患・高血圧・がん)、喫煙歴のある患者では、致死率が高い。

 【合 併 症】 若年患者であっても脳梗塞を起こした事例が報告されており、血栓症を合併する可能性が指摘されている。また、軽症患者として経過観察中に突然死を起こすことがあり、これも血栓症との関連が示唆される。小児では、川崎病様の症状を呈する事例もあることが欧米から報告されている。


新型コロナウイルス感染症の経過

年齢別にみた新型コロナウイルス感染症の致死率


(3) その他、色々な雑誌や新聞記事などを総合した結果をとりまとめておきたい。

 新型コロナウイルスは、初期の段階では「新型コロナウイルス肺炎」とされ、肺炎を引き起こす病気だと思われていたが、最近ではそれに加えて、血管中の血栓を引き起こす全身性の病気だと認識されるようになってきた。そのため、脳や目の粘膜、肝臓や腎臓、手足の指などに炎症を引き起こす。

 それには、サイトカインストームという現象が関わっている。サイトカインとは、ウイルスが侵入してきた時に免疫系が分泌するたんぱく質で、他の細胞に命令を伝えてウイルスに対抗する役割を果たす。ところが、これが数多く分泌されてしまって嵐のような状態(サイトカインストーム:免疫の暴走)になると、正常な細胞まで傷付け、それが血栓になることから、臓器に多くの障害が発生するという仕組みである。

 新型コロナウイルス重症患者の2割から3割に、血栓が見られるという。そういう場合には、上記の診療の手引きでも、「Dダイマー」の指標が正常値を超えていれば、血液が固まるのを防ぐ「へパリン」を使う治療を勧めている。(23ページ6.)

 中国での疫学調査によると、新型コロナウイルスに罹っても、8割の人が軽症か中程度で、入院を要するのは2割、そして重症化するのは5%だという。

 アメリカの科学雑誌「サイエンス」によると、感染者の咳やクシャミの飛沫中に含まれる新型コロナウイルスが、鼻や喉から人体に取り込まれると、その辺の細胞の表面に沢山ある受容体の「ACE−2(アンジオテンシン転換酵素2)」に取り憑いて細胞に侵入してくる。そしてどんどん増殖していって、発熱、空咳、味覚や嗅覚の喪失を招くという。

 さらにウイルスが侵入していって肺に達すると、肺細胞にはACEー2が多いので、これを足掛かりにどんどん侵入されて大きなダメージを受ける。 ACE−2は、血管、脳、目、肝臓、腎臓、腸にも多く、これらに侵入されて全身性の多臓器不全を引き起こす。また、手足の指にも血栓ができて、霜焼けのような症状を引き起こし、欧米では子供に川崎病のような症状が見られることがあるとのこと。

 なお、ACE−2は、子供にはあまり多くないので、子供が新型コロナウイルスに罹っても、ほとんど重症化しないし、現に死者もゼロに近いと言われている。重症者や死者の大半は、65歳以上である。

 BBCによると、イギリスのオックスフォード大学の研究チームによると、「安価で手に入りやすいステロイド系抗炎症剤『デキサメタゾン』が重症患者に効果・・・人工呼吸器を必要とする重症患者の致死率が3割下がり、酸素供給を必要とする患者の場合は2割下がった。」ということで、サイトカインストームを抑える役割をしているようだ。(なお、日本の臨床では、前述のように血液をサラサラにする「ヘパリン」を投与して効果を上げている。)

(21・22は、6月1日記)

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23.東京アラート初の発令

 東京都は、新型コロナウイルスによる休業の自粛要請を緩めていく計画を予め「新型コロナウイルス感染症を乗り越えるためのロードマップ」として示し、その中で3段階で緩和することとし、その施設の種類を5月26日に公表していた。同日からの緊急事態宣言の解除を受け、まずステップ1として、博物館や図書館への自粛要請を解除した。感染状況が落ち着いてきたことから、当初の予定に沿って6月1日からステップ2に移行することを決定した。その中には、学習塾、スポーツジム、商業施設が含まれている(スポーツジムは、当初のステップ3から2になった。)。おかげで、私も今週から室内テニス場に通えることになり、本日3日から早速プレーをしに行ってみることにした。ところで、夜の歓楽街の接待を伴う飲食店やライブハウスは、ステップ3に位置づけられており、未だ解除されていない。

 そういうことで、やっと自粛要請が解除されたばかりだというのに、早くも6月2日には、感染者の数が1日で34人と、それまでの概ね1桁台から跳ね上がってしまった。このため「東京アラート」を初めて出すことを余儀なくされた。大阪府が解除した時に大阪のシンボルである通天閣をグリーンにライトアップしたのに向こうを張って、東京都では、新宿の東京都庁舎のみならず、お台場に繋がるレインボーブリッジを真っ赤に点灯した。(注)

(注) 時事通信マレーシアによると、大阪府が通天閣を新型コロナの感染者数に基づいてライトアップしているのに倣って、ペナン州政府が同様にしてペナン島の世界遺産地区ジョージタウンにある商業施設「コムター・タワー」について、ライトアップを始めた。感染者がゼロはグリーン、20人まではイエロー、40人まではオレンジ、それを超えるとレッドだそうだ。ちなみに、現在はグリーンだという。こんな所にまで、日本の「大阪文化」が輸出されているとは思わなかった。

 ところでこの「東京アラート」(注)、これが出されたからといってまた自粛要請に直ちに繋がるものではない。その時点で都民に警戒を呼び掛けるものに過ぎないが、気になるのは、これが既に感染者が出ている病院のほか、新宿などの夜の歓楽街を中心に出ていることである。とりわけ夜の歓楽街は、韓国の例を見るまでもなく、感染者の追跡が難しい。6月2日までの1週間で判明した新規の陽性者数合計114人のうち、夜の繁華街が感染源とみられるのは32人で、その3割近くを占める。その他の指標は、週単位で比較した陽性者数で、これは前週の2倍強である。また、直近7日間平均での感染経路不明率は50%となっている。


(注)東京アラート (東京都のHPより)
 @ 「東京アラート」は、都内の感染状況を都民の皆様に的確にお知らせし、警戒を呼び掛けるものです。
 A 都民の皆様は、夜の繁華街など、3密のリスクが高い場所には十分ご注意ください。
 B 手洗いの徹底とマスクの着用、ソーシャルディスタンスの確保、「3つの密」を避けた行動など、「新しい日常」を徹底して実践してください。
 C 事業者の皆様には、都や各業界団体が策定するガイドライン等を踏まえて、適切な感染拡大防止対策の更なる徹底をお願いいたします。また、出勤に当たっては、テレワークや時差通勤の活用をお願いいたします。


検査陽性者の状況、新規患者に関する報告件数の推移

モニタリング指標(1)新規陽性者数

(2)新規陽性者における接触歴等不明率、(3)週単位の陽性者増加比

(4)重症患者数、(5)入院患者数

(6)PCR検査の陽性率、(7)受診相談窓口における相談件数

(23は、6月3日記)

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24.愛知県知事知事が東京と大阪が医療崩壊と酷評

 愛知県の大村秀章知事は、記者会見で、「東京と大阪では医療崩壊が起きている」と何回も指摘している。もう、酷評といってよい。とりわけ5月11日の記者会見では「病院に入れないということと、それから救急を断るという、この二つはやっぱり医療崩壊ですよ。それが東京と大阪で起きているわけですから、それはですね、よその国の話ではないんですね。ですから、私は、絶対に起こしちゃいかんと。起こしたらやっぱり負けだと思いますよ、僕は。行政としては負けですよ、それは。何をうまいこと言い繕ってもね、結果ですから。」などと述べていた。また、緊急事態宣言が解除された26日には特に首都圏や大阪圏について、「病院で受け入れ困難だった感染者数や救急件数などの情報公開と検証が必要とし、ひと山越えて目出たしではない。検証しないとまた同じことになる。」とも述べた。

 他の県のことまで失礼なことを言うものだと思っていたところ、その一方で大村知事は、「愛知県は入院やクラスターの状況を日々情報公開しているが、こういう対応をしているのは私たちだけだ。予想される第2波に備え、既存の施設を活用した新型コロナ専門病院を計画し、増床準備をしている。」などと語っているから、東京と大阪の状況を引き合いに、愛知県の対策を自画自賛しているもののようだ。

 案の定、そこまで貶された大阪府の吉村洋文知事は黙っていない。翌27日、ツイッターで、「大阪で医療崩壊は起きていません。何を根拠に言っているのか全く不明です。一生懸命、患者を治療する為、受け入れてくれた大阪の医療関係者に対しても失礼な話です。東京もそうですが。根拠のない意見を披露する前に、県は名古屋市ともう少しうまく連携したら? と思います」と投稿した(注)。

(注)この最後の名古屋市との連携部分には、笑ってしまった。大村知事は、河村たかし名古屋市長との間で、昨年の「あいちトリエンナーレ2019」を巡る紛争その他諸々の事件を抱えているので、その状況を大きく皮肉ったからである。

 すると更に翌28日に大村知事は、「私は公表されている厚生労働省の公表データや報道された内容をデータを元にしている・・・病院に入れていない、救急を断るという状況を医療崩壊。間違いなく東京と大阪はそういう状況にあった。事実関係を検証し、二度とそういうことがないようにやっていただくことが必要と申し上げている。もし違うというなら、データを持って、言わなければいけない。もっともっと事実関係を公表した上で、ものを言われたほうがいい。そうでなければただ単に言い訳をしてるだけにすぎない。」と述べた。同格の知事に対して、まるで学校の先生が生徒を諭すような調子で、かなり上から目線だ。

 もちろん、吉村知事は黙っていない。その当日、記者に対して「感染症が広がったとき、医療状態が逼迫したのは事実です。これは東京、大阪に限らずです。医療崩壊が起きて、きちんと看なければいけない人を看ることができていない状況ではない。なぜ、そういうことをおっしゃったのか、理解不能ですので、あんまり相手せんとこ」とまで言う。「相手にせんとこ」という大阪弁がこれまた面白い。

 吉村知事と同じ「日本維新の会」の松井一郎大阪市長もこの論戦に参入し、「救急受け入れを止めた病院はあるが、一般の重症患者さんは他の医療機関を受診してもらっただけだ。(大村知事は)愛知全体の危機管理をやればいい」と語った。一方、東京都の小池百合子知事は「ほかの自治体の方がどうおっしゃるのかについて、一つ一つお答えする気はない。東京に集中したい」と、大人の対応をみせた。

 そうこうしているうちに、話はどんどん大きくなり、6月2日、地元の美容外科院長の高須克弥氏が大村秀章知事の解職請求(リコール)運動を始めると発表した。理由は、昨年のあいちトリエンナーレと今年の新型コロナウイルスへの対応だという。報道によると、吉村知事も賛成、河村市長も応援の立場だそうだ。

 なお、愛知県の新型コロナウイルス感染症に関する問題とは、5月5日の午前中の45分間、県のウェブページ上に、県内発生事例1例目から495例目までの患者に関する非公開情報を誤って掲載した事件である。その誤って掲載した内容は、「患者の氏名、入院先医療機関、入院日、転院先医療機関、転院日、退院日、発生届提出保健所、クラスターの名称及び分類」というが、原資料そのものを掲載したため、中には「恋人」「愛人?」などという機微な人間関係にまで言及していた例もあったというから、穏やかでない。個人情報の漏洩もここに極まれりだ。愛知県も、他県のことをとやかく言う前に、まずは自らの足元を固めることが先決ではないか。

愛知県の新型コロナウイルス感染症に関する情報漏洩のお詫び

(24は、6月4日記)

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25.特別定額給付金

(1) 今回の新型コロナウイルス対策の第一次補正予算を使い、4月20日の閣議で「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」が決定され、そのうちのひとつの施策として全国民に一律10万円を支給する「特別定額給付金」が決定された(注)。元々の案として支給対象を絞って一世帯30万円を支給するはずだったところ、連立与党の公明党からの強力な申入れで、このような形になったものである(10(2)参照)。そのときの外向きの説明は、「そんなことをしていたら審査に時間がかかって支給が遅れてしまう。緊急経済対策なのだから、全国民に直ちに届けられるようにすべきだ。」というものだった。それもあってか、郵送での申請方式に加えて、マイナンバーカードの所持者ならオンラインでの申請方式も使えるし、その方が早いという触れ込みだった。


特別定額給付金パンフレット表

特別定額給付金パンフレット裏


(注) 特別定額給付金の概要

 令和2年4月20日、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」が閣議決定され、感染拡大防止に留意しつつ、簡素な仕組みで迅速かつ的確に家計への支援を行うため、特別定額給付金事業が実施されることになり、総務省に特別定額給付金実施本部を設置いたしました。

 (1)施策の目的

 「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」(令和2年4月20日閣議決定)において、「新型インフルエンザ等対策特別措置法の緊急事態宣言の下、生活の維持に必要な場合を除き、外出を自粛し、人と人との接触を最大限削減する必要がある。医療現場をはじめとして全国各地のあらゆる現場で取り組んでおられる方々への敬意と感謝の気持ちを持ち、人々が連帯して一致団結し、見えざる敵との闘いという国難を克服しなければならない」と示され、このため、感染拡大防止に留意しつつ、簡素な仕組みで迅速かつ的確に家計への支援を行う。

 (2)事業費(令和2年度補正予算(第1号)計上額)12兆8,802億93百万円

   給付事業費 12兆7,344億14百万円、事務費 1,458億79百万円

 (3)事業の実施主体と経費負担

   実施主体は市区町村、実施に要する経費(給付事業費及び事務費)については、国が補助(補助率10/10)

 (4)給付対象者及び受給権者

   給付対象者は、基準日(令和2年4月27日)において、住民基本台帳に記録されている者    受給権者は、その者の属する世帯の世帯主

 (5)給付額 給付対象者1人につき10万円

 (6)給付金の申請及び給付の方法

   感染拡大防止の観点から、給付金の申請は次の(1)及び(2)を基本とし、給付は、原則として申請者の本人名義の銀行口座への振込みにより行う。なお、やむを得ない場合に限り、窓口における申請及び給付を認める。その際、受付窓口の分散や消毒薬の配置といった感染拡大防止策の徹底を図る。

   @ 郵送申請方式・・・市区町村から受給権者宛てに郵送された申請書に振込先口座を記入し、振込先口座の確認書類と本人確認書類の写しとともに市区町村に郵送
   A オンライン申請方式(マイナンバーカード所持者が利用可能)・・・マイナポータルから振込先口座を入力した上で、振込先口座の確認書類をアップロードし、電子申請(電子署名により本人確認を実施し、本人確認書類は不要)


(2) それで蓋を開けてみたら、市役所や区役所などの地方自治体の窓口が大混雑となった。緊急事態宣言下で「3密(密閉、密集、密接)」は避けよということになっているのに、まさにその3密そのものの風景が各地の窓口で現出し、広く報道された。一体、何をやっているのかというと、まずはオンライン申請をするために、この際、マイナンバーカードを作ってもらおうという人たちだ。そもそも、この騒ぎが始まる頃までに、マイナンバーカードの保有率は、全国民のうちわずかに15%しかいなかった。その残る85%の人の一部が押しかけてきたのだから、それは混雑するはずだ。ただ、こんな混雑時にカードを発行してもらうには、早くて1ヶ月半、普通なら2ヶ月もかかると聞いて、諦めた人も多かったと言われている。

 次に、既にマイナンバーカードを保有している人たち、つまり15%のうち、申請に必要な暗証番号を忘れた人たちが、窓口でそれを聞こうと集まってきているのである。こんな外出自粛の非常事態宣言下で、まるで趣旨に反することが行われている。こういう事態になったのも、マイナンバーカードの使い勝手が悪くて、誰も持つ必要性を感じていなかったからだ。数年内に、健康保険証として使えるようになるというが、それまでは身分証明書として使う以外には、メリットが全く思いつかない。

 ちなみに、私と家内は、マイナンバーカード制度が始まってから1ヶ月経たないうちに二人で区役所に行って、作ってもらった。発行用の区役所のパソコンが時々フリーズする中だったが、それでも1週間ほどで入手できた。それ以来、使ったのは税務署にe−Taxで確定申告するときだけで、それも医療費領収書などの書類の保管が面倒に感じて、また紙ベースに戻してしまった。

(3) ところで、私のようにマイナンバーカード保有者は、今回の特別定額給付金を受けるためには、マイナンバーカードと自分の銀行口座を紐づけないといけない。税務署に申告するときは、税金を納付したり、納めすぎの税金の還付を受けたりするときに、自分の銀行口座を申告しているし、その情報は地方自治体の課税当局にも行くから、その口座を使ってくれるのかと思いきや、どうも法律で雁字搦めに用途を絞っているために、そんな融通無碍なことは出来ないようだ。アメリカの場合は、社会保障番号と銀行口座が紐づいていることから、決定からわずか2週間で振り込まれたそうだ。

 これというのも第一に、行政の電子化といっても既存の仕組みをそのままにしてバラバラに電子化を進めてきたために、情報が横断的に使えないからだ。第二に、個人情報保護を過度に恐れすぎて、電子化自体に消極的になっていることだ。台湾は、マスクを配給制にするときに、全国民に配布しているカードを利用した。エストニアは、行政手続の99%を電子化している。もっとも、それぞれ隣国の中国、ロシアという潜在的脅威の存在があったからこそできたものかもしれないが、日本もこれからの人口減少や高齢化の時代に、行政効率を飛躍的にあげるために必要な施策だろうと思う。

(4) 特別定額給付金は希望者にのみ配付されることから、別に困っていなければ、貰わないという選択肢もある。しかし、今や私も「年金生活者」だし、これまでせっせと納税してきたことから、「貰う」ことに決めた。そうしたところ、たまたま、文京区役所から「固定資産税・都市計画税納税証明書」が届いた。それがまるで図ったように「97,600円」と、ほぼ10万円だったのには参った。なるほど、国も地方も、転んでもただでは起きない。うまい仕組みになっている。この際、国が発行した国債で国民に10万円を配るが、それがそのまま地方公共団体の財源になるということだ。これは一種の地方交付税交付金なのである。ぬか喜びをしてしまった。

(5) 特別定額給付金の申請には、郵便による方式とマイナンバーカードを使ったオンライン方式があるというので、早そうなオンライン申請を試してみようとした。しかし、その頃からオンライン申請の方が時間がかかるという報道が溢れるようになった。なぜなら、オンラインで二重に申請してきたり、同居者を間違えたり、振込み口座番号を書き間違えたりするのが多くて、それを人海戦術で住民票などと照らし合わせ、必要なら本人に電話する作業でてんてこ舞いだというのである。

 私は、てっきりオンライン申請は住民票データベースと紐付いていて、そんな作業は自動的に行われるに違いないと思っていたけど、とんでもない。総務省の特別定額給付金アプリケーションと、住民票データベースとはプッツンと切れているのだ。こんな「名ばかりオンライン」では、時間がかかるわけだ。それに、二重申請をチェックできないなんて、初歩的なミスとしか言いようがない。なお、中には「二重」どころか、「十五重申請」というのもあったそうだから、そんなことをする申請者の方も、どうかしている。

 結局、郵送での申請が早そうだと思い、オンライン申請はやめた。そして、待っていたら、ようやく6月6日になって文京区役所の「緊急経済対策推進室」から、書類と返送用封筒が送られてきた。その内容を確認し、「要」のところに丸を付け、印鑑を押し(これだけ印鑑を止めようという時代なのに、まだ、印鑑を求めている)、それに運転免許証と銀行預金通帳のコピーを貼って送り返した。さて、今月中に送金されてくるだろうか。

記入要領 1

記入要領 2

(25は、6月7日記)

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26.パルスオキシメーター

 私が初めて「パルスオキシメーター(酸素濃度測定機器)」という医療用器具の名前を知ったのは、4月24日のニューヨークタイムスの記事だった。それは、ニューヨーク在住で、30年間救急医療に携わっている現役医師によるドキュメンタリーものだ。ちなみにそのときは、新型コロナウイルス感染症の病態がどういうものか、まだ明らかになっていない段階のときだった。

 その医師は、「肺炎では患者は通常、胸部の不快感や呼吸時の痛みなどの呼吸障害を発症する。しかし、新型コロナ肺炎の場合、当初患者は酸素量が低下しても、息切れを感じない。しかしその間、驚くほど酸素濃度が低下し、中等度から重度の肺炎(胸部X線写真で見られる)になっていく。正常な酸素飽和度は94%から100%だが、私が見た患者の中には、酸素飽和度が50%にまで低下していた例もある。」という。

 そして、「新型コロナ肺炎を患う患者をより多く迅速に特定し、それらの患者をより効果的に治療するひとつの方法がある。その方法では、病院または医院でのコロナウイルス検査を待つ必要はない。普及型の医療器具を使って無症候性の低酸素症を早期に発見することが求められる。その器具とは『パルスオキシメーター』であり、ほとんどの薬局で処方箋なしに購入できる。パルスオキシメーターは、体温計と同様、複雑なものではない。この小さな機器はボタン1つで起動する。利用者が指先に装着すると数秒で、酸素飽和度と脈拍数を表す2つの数字が表示される。パルスオキシメーターは、酸素化障害および高心拍数を検知する器具として非常に信頼度が高い。」とのこと。

 私はこれを読んで、早速、アマゾンのサイトを見てみた。すると、「パルスオキシメーター」なるものがあるではないか。あれ、どこかで見たことがあると思ったら、義理の母が老人ホームで毎日測ってもらっていたあの器具だ。大型のクリップのような形をし、クリップ部分を開いたときに指先を突っ込んで血管中の酸素濃度を測るのに使い、98%とか何とかやっていたあれだ。値段は、2,865円とある。これは安い。我が家では、家内に基礎疾患があって、薬の副作用で免疫が低下しているから、もし新型コロナウイルスに罹患したとすれば命に関わる危ない状況だ。それでは、買ってみようかという気になった。注文したら、配送は、何と6月中旬になるという。1ヶ月以上先だ。それまで、新型コロナウイルスに罹らないようにしなければならない。

 ちなみに、一般社団法人「日本呼吸器学会」のHPを見ると、パルスオキシメーターについて、次のような説明があった。

「 皮膚を通して動脈血酸素飽和度(SpO2)と脈拍数を測定するための装置です。赤い光の出る装置(プローブ)を指にはさむことで測定します。

 肺から取り込まれた酸素は、赤血球に含まれるヘモグロビンと結合して全身に運ばれます。酸素飽和度(SpO2)とは、心臓から全身に運ばれる血液(動脈血)の中を流れている赤血球に含まれるヘモグロビンの何%に酸素が結合しているか、皮膚を通して(経皮的に)調べた値です。プローブにある受光部センサーが、拍動する動脈の血流を検知し、光の吸収値からSpO2を計算し表示します。

 酸素飽和度(SpO2)は肺や心臓の病気で酸素を体内に取り込む力が落ちてくると下がります。主に病院や在宅治療の患者さんで、必要に応じて測定します。睡眠時無呼吸症候群の簡易診断にも利用します。加齢によってもある程度低下し、労作時にも変動します。

 一般的に96〜99%が標準値とされ、90%以下の場合は十分な酸素を全身の臓器に送れなくなった状態(呼吸不全)になっている可能性があるため、適切な対応が必要です。慢性に肺や心臓の病気のある患者さんでは、息苦しさや喘鳴などの症状が強くなり、SpO2が普段の値から3〜4%低下した場合は、かかりつけ医に連絡するか受診をしてください。

 操作自体は簡単で、家庭での購入も可能ですが、測定値のもつ意味はその人の状態やかかっている病気によっても異なるため、測定値の判断は主治医など医療専門の方の指導を仰ぐことをお勧めします。」


 その後、5月2日に、「新型コロナウイルスの感染拡大で、血液中の酸素濃度を測るパルスオキシメーターと呼ばれる医療機器が不足し始めていて、メーカーは、感染の有無を判断できる機器ではないとして、一般家庭での購入はできるだけ控えるよう呼びかけています。」という記事が載ったが、もう取り消せない。だいたい私が注文したのは中国製のようだから、少なくとも国内メーカーの製品の需給には、むしろ緩和する方向に働くはずだ。

 それから、まだ来ないなぁと首を長くして待っていたら、6月6日になってようやく配送された。中国からの直送だ。包装を解いてみると、どうもチャチな製品だと感じる。外から配線が丸見えだ。これで得られる数字は、信頼できるのかとすら思う。ええっと、標準値は96%から99%か・・・ではまず最初に、万が一感染したら危なそうな家内の指を測ろう。

 電池を入れ、白い頼りない電源ボタンを押し、家内の人差し指をちょっと挟む。全然痛くない。表示がピコピコと動いて、98、72という数字が出てくる。ははぁ、酸素飽和度が98%というわけか、96%〜99%の範囲内だ。72というのは、脈拍だ。結構、結構。では次に、私の番だ。ピコピコと動いた後に出た数字は、98、77だった。これ以降、毎日の朝晩の検温の際に、併せてこの酸素飽和度も測ることにしている。確かに、96%〜98%の範囲内で推移しているので、今のところ安心だ。


パルスオキシメーター


それにしても、この酸素飽和度と心拍数の表示はなぜ縦向きで、横向きにしなかったのだろうか?

(26は、6月8日記)

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27.新型コロナ川柳


近所に咲く凌霄花の花




 COVID-19とは 俺のことかと コロナ言い

ギョエテ並み


 エレベーター 肘で押すのが 上手くなり

ボタンは感染源


 朝昼晩 女房と食う 三度の飯

仲が良いのか迷惑か、外出自粛


 帰りがけ 一杯の酒なし 小遣い余る

外出八割減、飲み屋十割減


 在宅も ズームズームで 飽きてきた

在宅テレワーク勤務疲れ


 おやお宅も コロナ太りで 体重計

在宅勤務で平均2キロ増


 アベノマスク 洗ってしまえば コドモノマスク

ただでさえ小さい


 十万円 マイナンバーで 大混雑

自治体職員の悲鳴、特別定額給付金




近所に咲く紫陽花の花


(27は、6月12日記)

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28.東京アラート解除・ステップ3へ緩和

(1) 東京都は、6月11日、新型コロナウイルスの感染状況が落ち着きつつあることから、2日に出した警戒情報「東京アラート」をこの日をもって解除し、それとともに翌12日から、休業要請の段階的な緩和措置につき現状の「ステップ2」から「ステップ3」へ移行することにした。これにより、飲食店に求めていた午後10時までの営業時間制限がなくなり、カラオケ店、遊園地、ゲームセンターなど遊興・遊戯施設への休業要請もなくなった。NHKの統計などは、次のように伝えている。


東京都の日ごと感染状況(6月11日まで)

東京都の累積感染状況(6月11日まで)

東京アラート解除の指標

ステップ3へ(6月10日まで)

政府の方針



(2) 新型コロナウイルス感染防止から、外出自粛や施設使用制限で傷みに傷んだ経済の正常化へと大きく舵を切ったものだ。しかし、未だに有効な治療薬やワクチンがない中、感染の再拡大を懸念する声が多いのも事実である。現に世界を見渡してみると、早目に都市封鎖を解除したイランでは、第1波を上回る感染拡大の波に襲われている。

退院基準等

WHO(世界保健機関)の退院基準等


(3)6月11日に東京アラートが解除されたというのに、東京都内、特に新宿歌舞伎町などの夜の繁華街を中心として、新たな感染者が相次いでいる。14日には東京都で47人が判明し、そのうち歌舞伎町の同一ホストクラブで働くホスト18人だという。しかもほとんど自覚症状がない人ばかりというから恐ろしい。東京アラートの解除が早すぎたのではないかという批判がある中、西村康稔担当大臣が「接待を伴う飲食店などでの感染防止を図るためのガイドライン」を公表した。(民間のナイトクラブ・ガイドライン

 それは次の通り共通の対策と3つの業種別の対策から成るが、これは大変だ。たとえ法律をもってしても、守ってもらうのは難しいと思われるものばかりだ。結局、「そんなことをしてまで夜の町に行きたいのですか」ということになりそうだ。しかし、それでも、好きな人は行くに違いない。まさに、「死ななければ治らない」ということか。

【共通の対策】
 @ 店内においては対人距離を確保し人数を制限(できるだけ2メートル、最低1メートル確保)
 A 飛沫防止のためテーブルやカウンターへのアクリル板やビニールカーテン等の設置
 B 客や従業員へのマスクやフェイスシールドなどの着用に努める
 C 店内の換気や消毒を徹底
 D 客に名前や連絡先の記入を求め、当面の間、保存する


【キャバクラやホストクラブ、スナック等接待を伴う飲食店】
 @ 利用者の横に着いて一緒にカラオケやダンス等を行うなどの接客は、当面の間、自粛
 A 利用客の近距離で行うライブ、ダンス、ショー等は当面の間、自粛
 B 利用客同士のお酌、グラスのまわし飲みは避けるよう注意喚起

【ライブハウス】
 @ 出演者(演奏者・歌唱者等)と観客の間の距離は、なるべく2メートル確保し、それができない場合には、飛沫が拡散しない対応をする(発声場所を中心に、遮明の遮蔽物を設ける等)
 A オンラインチケットの販売やキャッシュレス決済を推奨
 B 公演前後および休憩中に、人が滞留しないよう段階的な会場入り等を工夫。


【ナイトクラブ】
 @ 過度な大きさ・頻度の声出しの禁止を促す
 A 飛沫の過度な拡散を制御するため店内の音量を必要最小限に調整
 B 多くの人を集めるイベントは、当面中止ないし延期
 C 感染追跡アプリ運用が始まれば、導入を入場条件にする
 D 当面の間、都道府県をまたぐ来店は遠慮してもらう


(28(1)〜(3)は6月11日、(4)は6月14日記)

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29.新型コロナウイルスによる後遺症など

(1) 6月14日の夜、NHKのドキュメンタリー番組で、職場で院内感染した40歳の男性医師の話が報じられていた。この医師は、1週間ほど意識がなく、ECMO(エクモ:体外式膜型人工肺)でようやく命をとりとめたそうだ。そして、PCR検査で陰性となって退院したものの、病気の後遺症で、歩いたり階段を上ったりすると息切れして、以前のような勤務はできないという。おそらく、肺が傷ついて肺細胞が繊維化してしまったものと思われる。そうだとすると、もう元には戻らないだろう。新型コロナウイルスからの回復者の中で、こうした何らかの後遺症を抱える人の割合は、日本では7%だという。やはり、新型コロナウイルス感染症は、ブラジルのボルソナロ大統領が言う「単なる風邪」どころか、相当恐ろしい病気だと考えざるを得ない。

(2) あるスペインの女性(35歳)の話では、新型コロナウイルス感染症の症状が出たものの、自宅療養で意外と簡単に症状は収まり、PCR検査でも陰性が確認された。ところがそれ以来、掃除や皿洗いでも息切れして続けられない。そのうち胸の傷みに襲われて、病院で調べてもらうと、心臓の膜が傷ついているとのこと。フランスでの調査によると、新型コロナウイルスから回復しても、10%ないし15%の人に何らかの後遺症が残る。しかも、後遺症を訴える患者の3分の2が女性である。免疫が過剰に働いて、自分の身体を攻撃しているのではないか。免疫異常の割合は、元々、女性に多いという。

(3) このように、第1波が去った後、この病気について色々と分かってきた。後遺症の話以外に、6月19日の朝日新聞夕刊にはこういう報道が載っていた。欧州の研究チームがスペインとイタリアの感染者のゲノム解析をしたところ、新型コロナウイルスに感染した人のうち、血液型がA型の人は重症化するリスクが5割ほど高くなり、反対にO型の人はそのリスクが5割ほど低く、B型とAB型では、有意な差はなかったという結果が出た。これは血液型ごとに異なる生まれつき持つ抗体が関係しているか、遺伝子の違いで生じる血液を固める因子の働きなどが影響している可能性があるという。

(20(1)は6月14日、(2)と(3)は同19日記)

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30.接触確認アプリ(COCOA)

 厚生労働省は、アップルやグーグルと提携して、6月19日に「新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)」(COVID-19 Contact Confirming Applicationの略)を公表し、国民にそのダウンロードを促すようになった。これは、新型コロナウイルス感染症の感染者と、「1メートル以内で15分以上」接触した可能性について、通知を受け取ることができるスマートフォンのアプリである。

接触確認アプリ(COCOA)

 同種のものはシンガポール政府も用意しているが、強権的で知られているかの国と違って、日本のこのアプリは、「アプリにより、利用者のデータを利用し、収集することはありません。利用者に氏名・電話番号などの個人情報を入力いただくこともありません。」というから、個人情報の保護の度合は、より一層高くなっている。ただ、どちらもスマホの近接通信機能(ブルートゥース)を利用して常時通信しているので、スマホの電池の消耗は激しいようだ。普及率は少なくとも6割にならないと実用的ではないというが、日本で最も普及しているあのLINEですら6割なので、COCOAがそれ並みになるというのは、あまり現実的ではないと思われる。

 Q&Aで「陽性者との接触の可能性が確認されたとの通知を受けたら、何をすればいいですか。」という質問に対する答えは、「アプリの画面に表示される手順に沿って、ご自身の症状などを選択いただくと、帰国者・接触者外来などの連絡先が表示され、検査の受診などをご案内します。」とある。

 こういうところの設計が、実に不十分だと思う。例えば、このアプリで陽性者との接触の可能性が確認されたとの通知を受け、心配しながら近くの保健所に行ったとする。そうしたら、まず何よりもPCR検査を優先的に受けられて、確定診断までどうすべきかのサジェスチョンをもらい、ついでに検査費用とそれに基づく診察を無料にするくらいのささやかな「特権」でも用意してさしあげないと、国民はあまりメリットを感じないからあまり普及しないのではなかろうか。また、陽性と判明した者には強制せずに任意の登録に任せるというのも、システムとして全く使い物にならないという気がする。

 なお、私の場合はiPhoneなので、COCOAをダウンロードしようとApple Storeを開いてみたが、直訳風の訳のわからない説明が出てきたので嫌になった。それでも、6月19日の配信開始から3日経った22日午後5時現在のCOCOAのダウンロード数は、326万だったというから、悪くはないと思う。こういうアプリは、作って配信して終わりというものではない(注)。1ヶ月後には大幅に更新されるらしいから、それまでにもっと親切で使いやすいものに仕上げてほしい。私はそうして改良されてからインストールすることにしよう。要は、官と民の良いとこ取りを狙ったつもりが、「官製の使いにくさ、民製の無責任さ」にならないようにしてもらいたい。

(注)COCOAアプリの提供を始めて4日目の23日午前9時には、ダウンロード数が371万に達したが、案の定というかやはりというか、アプリに決定的な欠陥が見つかった。感染を自己申告すると保健所から「処理番号」が届くのでそれを打ち込まないと登録されない仕組みのはずだった。ところが、どんな番号でも打ち込みさえすれば「完了しました」と表示されるという。そんなことなら、処理番号を発行する意味がない。成りすまして登録を乱発することも可能となる。早急に修正しているとのことである。

(本文は6月21日、注は23日記)

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31.上野動物園が再開された

 上野動物園は、新型コロナウイルスの影響で2月末から休園していたが、ようやく6月23日から4ヶ月ぶりに再開された。そこで、近いこともあり、行ってみる気になった。インターネットで整理券を取得しなければならないという。iPhoneを使って3回目に、ようやく午前10時45分からの番号をもらった。実は私の家から不忍口まで歩いて7分ほどなのだが、入るのは正門だけだというので、蒸し暑い中を上野桜木町方面へトコトコと歩いて行った。

順番待ちの列


 着いてみると、入園を待っている人がそれぞれ1mのソーシャルディスタンスをとっているので、延々と長い列を作っている。周りを見回すと、パンダの絵柄のあるポストがある。面白いことに、その口にマスクが付けてあった。誰か奇特な人がやっているのかと思ったら、朝日新聞によると、都内に住む40代の男性で、「子どもたちに着用を促しつつ少しでも癒やしになればと考え、4月下旬からパンダの口元に手作りでビーズを施したカラフルなマスクを数日おきに付け替えている。ポストが傷付かないよう磁石を使って取り付けている」(6月22日付け)という。

パンダの絵柄のあるポスト


 やっとのことで動物園の中に入ると、すぐにパンダ舎に通じる道を歩かされる。悲しいかな、混雑防止のため写真撮影は禁止とのこと。これでは、何のために一眼レフを持って行ったのか分からない。それでも、3歳になったばかりのシャンシャンが、こちらに寄って来てくれるなど元気に動いているのがとても良く見えたので、それなりに満足した。もう、体重が既に80キロもあるそうだ。竹ばかり食べて、よくそんなに重くなるものだ。

 爬虫類館などの室内展示施設は、三密を避けるために展示は中止。だから、楽しみにしていたミーアキャットには会えなかった。ほかは、ほぼ普段通りである。ただ、入園者の数が相当少ないと思ったら、一日当たり4,000人に制限しているそうだ。

スマトラ・タイガー


 次にスマトラ・タイガーを見ようと虎舎に行ったら、ちょうどよい具合に大きな石の上に雄のタイガーがちょこんと乗っていたので、それを撮ることにした。ところが、ガラスに私の背の高さまでフィルムが貼ってあって、それが白く曇っているので、そもそも焦点が合わないではないか。困ったなぁと思って、そのフィルムを避けるために両手を上げてカメラの位置を高くして試しに撮ってみた、すると、なんとか撮ることができた。ただ、後からパソコンで写真をよくよく見たところ、そのタイガーさん、眠そうで眠そうで、ほとんど目を閉じている。何十枚も連射して、やっと数枚、目が開いていて何とか使えそうな写真があった。野生動物を撮るのには根気がいるし、たくさん撮って「下手な鉄砲かずうちゃ当たる」を実践するしかない。

 ゴリラは、展示がお休み中だ。ヒトと近縁種だから入園者から新型コロナウイルスを伝染されてはたまらないということか。仕方がないので、猿山に行く。あれ、これもほとんどお猿さんが見当たらない。昼寝中かそれとも感染を恐れて数を絞っているのか、目の前にはわずか4匹しかいないではないか。写真を撮るどころではない。気のせいか、どのお猿さんも、どこか虚ろな目をしている。

象は撮りやすい


 猛禽類は興味深いが、ゲージの中なので檻の格子が写りこんでしまい、写真にならない。象のところに行く。ノッシノッシ、グルグルと歩いてくれるので、写真を撮りやすい。気のせいか、笑っているような表情を見せるので、面白い。ただ、撮影がガラス越しのときは、よく撮れたと思っても、家に帰ってパソコン画面でよくよく見ると、画面の一部に風景が映り込んで使い物にならなかった。

不忍池の方を見下ろすと、辺り一面の蓮の葉っぱ


 さて、イソップ橋を通って、西園の方に行く。このモノレールは、車両が老朽化したが高額の費用のために更新がかなわず、昨年10月から休止している。このままいくと、どうやら廃線になるらしい。初孫を連れて何回も乗ったのに、誠に残念なことだ。歩く途中、イソップ橋から不忍池の方を見下ろすと、蓮の葉っぱで辺り一面が覆われていて美しい。そろそろ、蓮の花の季節だ。また、あの池に朝早く撮りに行こう。

ハシビロコウ


 西園に降りてきたところで、まずはハシビロコウのところへ行く。この鳥は、丸一日でも立ったまま動かずに近寄ってきた魚を狙うという忍耐強いハンターだ。でも、あれ?今日は座り込んでいる。この環境に慣れて、だんだんズボラになってきたのかもしれない。これでは写真にならないので、フラミンゴのところに行く。

手前でフラミンゴ2羽が羽根を広げて追いかけっこ

奥の方にいるフラミンゴの群れ


 あれあれ、手前でフラミンゴ2羽が羽根を広げて追いかけっこをしている。それを撮ってみたのだが、鳥かごの手前の網が画面に写りこんでしまって、絵にならない。試しに、奥の方にいるフラミンゴの群れにレンズを向けると、幸いなことに手前の網は写らなかった。焦点が奥なので、網は画面上からは消えてしまう。光の屈折効果だ。これというのも、APS−Cサイズで300mmだからこそ、できる技だ(フルサイズで450mmに相当する)。キリン舎でも、キリンが奥の方にいるときは、同じように手前の檻の格子を消すことができた。

 そこから、不忍口から出て帰宅したが、ともかく暑くて湿気の高い日だった。パンダのシャンシャンが中国との取り決めで今年いっぱいで中国に帰るというので、それまでにまた何度か会いに来ようと、入園するときに年間パスポートを購入した。だけど、パンダの写真が撮れないとは、残念なことだ。ともあれ、緊急事態宣言で数ヶ月の蟄居生活の後なので、久しぶりにすっきりした。

 ところで、東京ディズニーランドとディズニーシーは、7月1日から営業を再開するそうだ。ただし、感染対策のために入場者の数を通常の2割に絞るとともに、パレードは中止、レストランも半分くらいは閉めるという。なお、感染の終息が早かった大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンは、既に6月8日から再開している。


(31は、6月23日記)

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32.専門家会議が突然廃止される

(1)6月24日、西村康稔担当大臣は、新型コロナウイルス対策の専門家会議を廃止し、それに代わるものとして「新型コロナウイルス感染症対策分科会」を新たに設置することを表明した。従来の専門家会議は、新型コロナウイルス感染症対策本部の下に設置されていて、「厚労省のアドバイザリーボードのような位置付けの感染症の専門家の皆さんの会議」(西村大臣)だった。それに対して新しい分科会は、「改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく有識者会議の下部組織として位置付け、感染症専門家のほか、地方自治体の代表や危機管理対応の専門家らの参加も求める。」という。

 これは関係者にとっては寝耳に水の発表で、現にその当日、たまたま日本記者クラブで記者会見を開いていた専門家会議の尾身茂副座長(地域医療機能推進機構理事長)らはこの件について記者に聞かれ、「今、大臣がそういう発表をされたんですか?」と困惑し、「私はそれは知りません」と語った。新型コロナウイルス感染症対策の中心となっていた専門家会議を廃止して大きく衣替えするというのに、その専門家の中心人物たちに何の事前連絡もなく勝手に決めてしまうというのは、大変失礼な話である。一体どういうことが起こったのだろうか。

(2)話は、5月のNHK報道番組を見ていたときに遡る。日比谷公園に面した中央合同庁舎5号館(厚生労働省と環境省が入っている)の11階と12階に、狭い会議室がそれぞれ1つずつあり、「厚生労働省クラスター対策班」のいわゆる「タコ部屋」となっていた。一方は東北大学大学院押谷仁教授がチーフとなる東北大学・新潟大学・長崎大学などのグループである。当初は、各県の保健所などから上がってくる報告を元に全国の感染状況を把握し、厚生労働省から各地へ「クラスター対策班」を派遣して鎮火に努めていた。ところが3月中旬以降、感染が急拡大してクラスター対策が追いつかなくなると、次の西浦グループの立てた戦略に基づいて、接触機会の8割削減という方針転換を主導していった。もうひとつのその西浦グループは、北海道大学大学院医学研究院西浦博教授をチーフとする数理モデルを駆使した理論疫学の北海道大学のグループである。

 その2つのグループが、日付が変わる頃まで、調べ、議論し、悩み、呻吟してクラスター対策や予測に没頭する様子をNHKが報道していた。私はこれを見て、ご苦労さまという気持ちとともに、大いなる違和感を感じた。それは何かというと、これは学者のやるアドバイザリーボードではなく、行政官の行う行政そのものではないかと。早い話、感染者数が激増してクラスターの追跡どころではなくなったら、一体どうするのか。緊急事態宣言の発出をしなければならないと考えるが、同時に宣言による政治経済への打撃が懸念されるから、各方面への調整が必要となる。そんなことまで、組織の一員でもなく、ましてや政治的責任をとる立場にないこうした学者が、できるはずがない。ところが、政治が手をこまねいていることもあって、こうした専門家会議が表面に押し出されてきた。

 緊急事態宣言は、結局4月7日に発出されるが、その前の2月24日、専門家会議は「今後1〜2週間が感染拡大のスピードを抑えられるかどうかの瀬戸際だ」という見解を示した。私は、この頃はまだ専門家と政治の棲み分けはできていたのではないかと思っている。ところが、これを契機として、次第に専門家が国民への説明の前面に立つようになった。そして、5月25日に緊急事態宣言が解除されるまでの間に、専門家会議は見解を3回、要望を1回、提言を7回も出し、その度に尾身茂副座長を中心に懇切丁寧で中身のある記者会見を開くものだから、国民の関心も高まり、自ずと新型コロナウイルスに関する政策が、あたかも専門家によって決定されているように思われるようになった。


専門家会議の活動



(3)そんなクラスター対策班の中にあって、ユニークな存在は西浦博教授である。数理モデルを駆使した理論疫学の専門家だという。接触機会の8割削減などを明瞭に主張し、そのユニークな容貌とキャラクターと相まって、専門家会議の記者会見ではかなり目立った。それだけでなく、大阪府の吉村知事に説明して隣県兵庫県との往来の自粛を語らせたかと思えば、東京都の小池知事には気に入られて記者会見に何回も同席するなど、活動も活発であった。私が驚いたのは、4月15日の「個人的な見解」と称する記者会見で、「接触を減らすなどの対策を全くとらなければ、国内で約85万人が重症化し、うち約42万人が死亡する恐れがある」という試算を公表したことである。

 6月25日現在でアメリカの感染者数は242万人、死者数は12万人であることからすれば、これらの数字は荒唐無稽なものではない。しかし、それにしても、どういう計算式といかなる根拠でそのように試算したのかくらい明らかにされていないと、いたずらに国民の不安を煽るだけの結果になりかねない。だから、普通の行政官であれば、簡単には公表しないはずなのに、どうなっているのかと思った記憶がある。

(4)そのような一連の流れからすると、今回の出来事は、さもありなんという気がする。専門家が舞台から引きずり降ろされ、今まで、日々急激に進行していくあまりに深刻な感染状況にオロオロしていた政治家と厚生労働省が、感染がいったん落ち着いたので、ここからようやく気を取り直すことができて本来の任務についたということだ。

 西村康稔担当大臣は、専門家会議をなぜ廃止したのかと問われて、「会議は法律に基づくものでなく、位置付けが不安定だった・・・今後はワクチン接種の優先順位なども課題になるから、・・・感染症の専門家だけでは決められない事柄も出てくる」と話した。でも、専門家会議が法律に基づくものでなかったのは、最初からだ。そういう宙ぶらりんの立場の専門家会議に、政府の新型コロナウイルス対策の司令塔のような役割を果たさせる一方、自分たちはその陰に隠れて、事態が落ち着くまで表にほとんど出て来なかったのは誰なのかと反省すべきである。

(32は、6月25日記)

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33.各国の超過死亡数の比較

 日本で新型コロナウイルス感染症が猖獗を極めていた今年の春、4月7日から緊急事態宣言が発出された。それから約1ヶ月半で解除されたのであるが、感染が最も多かったのは4月初旬から中旬にかけてといわれる。そこで、特に4月の「超過死亡数」つまり例年と比べた死亡者数の増分が相当多いのではないかと思われていた。その背景として日本は、他国よりPCR検査の数が桁違いに少ないし、検査漏れで亡くなってしまう人が、「新型コロナウイルスによる死亡」ではなく「自然死」として扱われた例がかなり多いのではと考えられていたからである。

 BBCによると、各国の超過死亡数と考えられる数字は、次の通りである。

 アメリカでは、平年より16%高く、97,300人も多く死亡
   (2月16日〜5月2日)

 イギリスでは、平年より43%高く、64,500人も多く死亡
   (3月7日〜6月5日)

 フランスでは、平年より25%高く、28,400人も多く死亡
   (3月2日〜5月10日)

 イタリアでは、平年より40%高く、42,900人も多く死亡
   (2月24日〜4月26日)

 スペインでは、平年より50%高く、42,900人も多く死亡
   (3月2日〜5月14日)

 ドイツでは、 平年より 4%高く、 7,100人も多く死亡
   (3月9日〜5月10日)

 ところで、感染者数はPCR検査の対象を人為的に変えられることから、その統計数値は実態を表さないことが多いと思われる、その点、死亡者数は事情が異なり、これは人為的な操作はなかなかできないので誤魔化せるものではない。その死亡者数がこれほど平年より多くなっている要因は、おそらく新型コロナウイルス感染症によるものと考えて間違いない。もっとも、新型コロナウイルス患者で病床が逼迫して、そのため他の病気の患者が十分な治療を受けられなくて死亡したという事例もありそうだが、統計上で把握するのは困難である。

 といういわば「常識」を踏まえると、6月26日に日本の厚生労働省が発表した今年4月の人口動態統計速報には、知る人全てが本当に驚いたのではなかろうか。死亡が113,362人で、昨年4月が112,939人だから、わずかに423人しか増えていないのである。これくらいなら誤差の範囲内で、つまり新型コロナウイルスによる超過死亡は、ほとんどなかったのではないかと考えられる。また一つ、日本のミステリーが増えた。そういうことで、

 日 本 では、平年より0.4%高く、  423人が多く死亡
   (4月1日〜4月31日)

(33は、6月30日記)

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  【 続く 】



(注) 表紙の写真は、米国立アレルギー感染症研究所 ニュースリリース2月25日に掲載された新型コロナウイルス





(令和2年4月4日から6月30日にかけて著)
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悠々人生エッセイ





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