悠々人生エッセイ



金宝樹(ブラシの木)




        目   次
   PCR検査とは
   厚生労働省はPCR検査を制限
   アメリカからも嘲笑される
   専門家会議の見解
   総理の認識は「目詰まり」
   遅きに失した厚生労働省の方針転換
   PCR検査以外に抗原検査と抗体検査
別冊    新型コロナウイルス緊急事態宣言
別冊    新型コロナウイルス記事
別冊    我はマスク難民なり


1.PCR検査とは

 私は、この新型コロナウイルスの問題が起こった時から、PCR検査をどんどんやって感染者を把握し、その追跡を行って感染拡大をしっかりとコントロールすべきだと思っていた。敵がどこにいるのか見えないままだと、戦えるはずがない。まずは、あぶり出すのが先決だと考えたからである。

 PCR検査の「PCR」とは、「Polymerase Chain Reaction」(ポリメラーゼ連鎖反応)の略で、ウイルスの遺伝子を増幅して検出する方法をいう。医師が患者の痰や鼻の奥を拭って検体を取り、それに試薬を加えて検査装置にかけ、このウイルス特有の遺伝子配列があるかどうかを調べるというものだ。所要時間は6時間ほどで、検査には熟練を要するものの検査結果そのものは正確だ。ところが、患者から検体を取る場所やタイミングによっては、擬陽性や擬陰性が出る可能性があるから、感染してからまだ早い段階の陽性判定率は7割程度と言われている。しかし、全世界で標準的に採用されている判別法である。


2.厚生労働省はPCR検査を制限

 ところが、厚生労働省が集めた専門家たちの考えは、どうやら全く違うものだ。逆に、PCR検査を抑制しないと、保健所も追跡調査をしなければならないし、病床があふれて困るからという信じがたい理由で、PCR検査をできるだけしないという発想なのである。だから、保健所にはこの検査を受けるためのスクリーニングとして、「37.5度以上の熱が4日以上続くこと」などという現実離れした基準を指示した。しかも、保健所の「帰国者・接触者相談センター」を通さないと指定医療機関での受診をさせないようにしたのである。

 もう少し正確に言うと、2月17日に政府の専門家会議がまとめ、厚生労働省が都道府県などに通知した「保健所などの相談センターへの相談・受診の目安」は、「風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く方、あるいは強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある方」というものであったが、現場の相談センターでは、後者の方は無視され、前者のみが受診を断る口実にされた。

 それでどうなったかというと、かかりつけ医が、PCR検査が必要と認めて医師自らが同センターへ電話しているのに、断られる例が続出した。また、このセンターへの電話が殺到してなかなか繋がらず、中には2日がかりでやっと繋がったものの、出てきた保健師に「37.5度以上の熱が4日以上続いていない」と冷たく断られる、そうこうしているうちに、突然息苦しくなる肺炎の症状を呈して救急車で運ばれる、中には埼玉県で検査を受けられないまま死亡し、その後の調べでやはり陽性だったという事例すらあった。

 私がこれはひどいと思ったのは、4月10日、さいたま市保健所長が記者団にふと漏らした本音の言葉である。曰く「病院があふれるのが嫌だったので、少し厳しめに、本当に陽性になりそうな人だけを検査する方針があった」と言うのである。事実、そのときまでの2ヶ月間にさいたま市が実施したPCR検査の数は、わずかに170件だったという。市民の健康管理の責任者が、こういう体たらくでは、誠に遺憾としか言いようがない。

 日本医師会によると、「PCR検査が必要と判断されながらも保健所などの検査実施につながらなかった『不適切事例』が26都道府県の医師会から2月26日から3月13日までの2週間に290例も報告された」という。


3.アメリカからも嘲笑される

 このように、日本がPCR検査をちゃんとやっていないという事実は、国際的にも知れ渡って、嘲笑の的になっている。4月3日に東京のアメリカ大使館領事部が自国民に対して発出した健康への警告文には、このようにある。「米国市民が米国に戻ることを望む場合・・・米国への即時帰国を手配する必要があります。(中略)米国とヨーロッパの陽性例と入院の数と比較して、日本で報告されたCOVID-19の数は比較的低いままです。広くテストをしないという日本政府の決定は、COVID-19有病率を正確に評価することを困難にします。」

 つまり、「日本政府はPCR検査をちゃんとやっていないからその新型コロナウイルスの有症率の統計は低く押さえされているので、そんな国に留まっていては危ない。だから、直ちにアメリカへ帰国することを勧める」という趣旨の勧告だ。ちなみに、この勧告が出る直前の4月2日現在の感染者数と死亡者数は、日本がそれぞれ3,495人と84人であるのに対して、アメリカは21万6,721人と5,137人であった。ところが、1ヶ月後の5月8日現在の感染者数と死亡者数は、日本がそれぞれ1万5,663人と607人であるのに対して、アメリカは128万3,929人と7万7,180人である。つまり結果的にはアメリカに帰国した方が、かえって危なかったのではないか。だから、そんな国からどうこう言われたくなかったという気がする。


4.専門家会議の見解(PCR検査の対応に関する評価)

 ともあれ、なぜPCR検査をどんどん行う方にはいかないのか、その理由の一端が緊急事態宣言の延長の根拠となった5月4日の専門家会議の報告書の末尾にあった。ここでは、「補論 PCR検査の対応に関する評価」として、その分析が行われている。


人口10万人あたりの検査数


 まず、前提として各国、地域におけるPCR等検査数の比較を行っている。図1をみると、人口10万人あたりの検査数は、アメリカ全体で1,752件(ニューヨークだけだと4,484件)、イタリア3,159件、ドイツ3,043件、スペイン2,224件、シンガポール1,708件、韓国1,198件であるのに対し、日本は何と一桁違って187件である。異常な低さだ。

日本の検査陽性率はイタリア、シンガポール、アメリカ、スペイン、フランス、イギリスよりも十分に低くなっている


 もっとも、図2をみると、「検査陽性率はイタリア、シンガポール、アメリカ、スペイン、フランス、イギリスよりも十分に低くなっている。したがって、これらの国々と比較して、潜在的な感染者をより捕捉できていないというわけではない」とし、また図3をみると、「新型コロナウイルス感染症による人口10万人あたりの死亡者数は、日本は欧米の10分の1以下となっている」とするが、なぜそうなっているのか、そもそも統計に信頼が置けるのかが不分明である。ともあれ、その上で曰く、

新型コロナウイルス感染症による人口10万人あたりの死亡者数


日本において PCR 等検査能力が早期に拡充されなかった理由

〇 PCR等検査がなぜ早期に拡充されなかったか、についても考察を行っておく。

〇 日本の感染症法対象疾患等の感染症に対する PCR等検査体制は、国立感染症研究所と地方衛生研究所が中心となって担ってきており、COVID-19 の国内発生に当たっても、既存の機材等を利用した新型コロナウイルス PCR検査法が導入された。また、国内において SARS や MERS、ジカ熱のなどの新興感染症の PCR等検査を用いた病原体 診断は可能となっているが、国内で多数の患者が発生するということはなく、地方衛生研究所の体制の拡充を求める声が起こらなかった。COVID-19 流行開始当初は、重症化の恐れがある方および濃厚接触者の診断のために検査を優先させざるを得ない状況にあったのは、こうした背景が影響した可能性がある。

〇 なお、韓国・シンガポールに関しては、SARS・MERSの経験等を踏まえ、従前から、 PCR等検査体制を拡充してきた。この差が、これまでの経過に影響している可能性が ある。

〇 加えて、地方衛生研究所では、麻疹やノロウイルス、結核など、感染症法で規定されている疾患の検査を主として実施している。しかし、今回のような新しい病原体について、大量に検査を実施することは想定されておらず、体制が十分に整備されていなかったことも影響していると考えられる。

〇 そのような背景を踏まえて、2月24日の専門家会議、第一回目の提言(見解)において、「PCR等検査は、現状では、新型コロナウイルスを検出できる唯一の検査法であり、必要とされる場合に適切に実施する必要がある」、「急激な感染拡大に備え、 限られた PCR等検査の資源を、重症化のおそれがある方の検査のために集中させる 必要がある」と述べた一方で、3 月初旬からは政府等に対し、COVID-19 に対する PCR等検査体制の拡充を求めてきた。

〇 この間、国も、2月20日以降、大学、医療機関、検査会社に対してもCOVID-19に対する PCR等検査に必要なノウハウと試薬等を提供し、精度の高い統一的な方法による検査の拡充に努めるとともに、民間市場の拡充の観点から 3 月 6 日には PCR等検査の保険適用を行うなどの取組を実施してきた。

〇 しかし、3月下旬以降、感染者数が急増した大都市部を中心に、検査待ちが多く報告されるようになった。PCR等検査件数がなかなか増加しなかった原因としては、
 @ 帰国者・接触者相談センター機能を担っていた保健所の業務過多、
 A 入院先を確保するための仕組みが十分機能していない地域もあったこと、
 B PCR等検査を行う地方衛生研究所は、限られたリソースのなかで通常の検査業務も並行して実施する必要があること、
 C 検体採取者及び検査実施者のマスクや防護服などの感染防護具等の圧倒的な不足、
 D 保険適用後、一般の医療機関は都道府県との契約がなければ PCR等検査を行うことができなかったこと、
 E 民間検査会社等に検体を運ぶための特殊な輸送器材が必要だったこと、またそれに代わることのできる輸送事業者の確保が困難だったこと、などが挙げられる。

国や都道府県においては、以下の対応が求められる。
 @ 保健所及び地方衛生研究所の体制強化及び労務負担軽減
 A 都道府県調整本部の活性化(重点医療機関の設定や、患者搬送コーディネーターの配置など)
 B 地域外来・検査センターのさらなる設置
 C 感染防護具、検体採取キット、検査キットの確実な調達
 D 検体採取者のトレーニング及び新たに検査を実施する機関におけるPCR等検査の品質管理
 E PCR等検査体制の把握、検査数や陽性率のモニターと公表

〇 さらに政府に対しては、PCR等検査を補完する迅速抗原診断キットの開発及び質の高い検査の実施体制の構築を早急に求めたい。」



5.総理の認識は「目詰まり」

 5月4日に、緊急事態宣言を1ヶ月延長することを発表した直後の総理記者会見で、PCR検査について、次のやり取りがあった。

(記者)NHKの松本と申します。よろしくお願いします。
 PCR検査についてお伺いします。政府の方は、能力拡充を図ってきているとしていますけれども、なかなか実施件数自体は伸びてこないという現状があります。こうした中、果たして感染の全体像がつかめているのかどうかとか、あるいは把握できない感染が広がっているという国民の不安もあるかと思います。

 この検査の運用は、医師が必要と判断した人が受けられるようにするといったことになっていますけれども、こうした運用の見直しを図りまして、また、より検査が受けられやすいようにしていくという、その改善点についてどのようにお考えかお伺いしたいと思います。


(安倍総理)PCR検査の数と実際の感染者数との関係においては、尾身先生からお話を頂きたいと思いますが、では、このPCRの検査の数が諸外国と比べて日本は少ないのではないかという御指摘もあります。また、私もずっと、医師が判断すればPCR検査を受けられるようにすると申し上げてきましたし、その能力を上げる努力をしてきました。

 ただ、8,000、1万、1万5,000と上げても、実際に行われているのは、7,000、8,000レベルでありまして、私も何度もそういう状況について、どこに目詰まりがあるのかということは申し上げてきているわけでありますが、本日の専門家会議の分析、提言では、東京などを中心とした大都市部を中心に検査待ちが多く報告をされまして、検査件数がなかなか増加しなかった要因として、各自治体における保健所の業務過多や、検体採取の体制などが挙げられています。

 現在は、こうした状況を踏まえまして、地域の医師会にも御協力を頂きながら、全国で20か所、主にやはり東京でそういうことが起こっておりますので、東京で12か所のPCRセンターが設置されまして、PCR検査体制の強化が図られてまいりました。東京などの大都市圏を中心に対策を徹底していきたいと思っています。


(尾身会長)今の、よく一般の方で、PCR検査が日本で比較的少ないので、感染の実態を十分つかんでいないのではないかということですが、実は、今日、私ども専門家会議がこれから記者会見をしますが、そのときに詳しく申し上げようと思っていますけれども、歴史的に見て、確かに日本はPCRのキャパシティーを上げるということが他の国に比べて遅れた。それは様々な理由があります。

 元々、衛生研究所とか国立衛生研究所は、感染法の中で、行政の検査をやるということで、1つがありますね。それから、日本の場合には幸いなことにSARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)がなかったために、少しやはりPCR体制というものを組むということが、そういう経過があって、なかったと思います。

 しかし、そういう中で、実は当初はPCR検査を、重症化を防ぐために限られたキャパシティーを集中せざるを得ないという、これは事実でございました。しかし、だんだんと感染者が増えて、死亡者も増えるという中で、2月の20日頃から、大学とか他の医療機関に試薬を送るとか、検査をする。それから、3月6日にはPCRの保険適用が、そういうことが様々にありましたけれども、実は、なかなかうまく思ったほどのスピードで上がらなかったのは事実で、その理由はいろいろありまして、大体6つぐらいありますが、保健所の業務の過多とか、それから入院先をしっかり示す仕組みがない、それからPCR検査を行う地方衛生研究所のリソースが極めて少ない。人員のカットなどもありますし、そういうことがあった。それから、検体採取及び実施体制のマスクや防護服、それから一般医療機関は都道府県との契約をしないとこういう検査ができないという今までの仕組みがあった。それから、検体を取ったら運ぶということに、これに様々な障害がありました。そういうことでありまして、なかなか他の国よりは確かに少なかった。

 しかし、それと同時に、死亡者という、重症化で、本当に肺炎で亡くなったような人については、もちろん最近、報道で、残念なことに路上で亡くなって、後でPCRで分かったという人がおりますけれども、基本的には、日本の医療体制というのは、肺炎を起こしたような、日本の場合には肺炎のサーベイランスをやってきましたから、肺炎を起こすような人はほとんどがCT検査とかをやられて、その多くはPCR検査をやられてきて、そういう意味では、死亡者のようなものは大体正しい件数がピックアップされていると思います。

 それで実は、今日の専門家会議でも、我々、その中に書いてあって、また今日の記者会見で申し上げますけれども、実は、他の国に比べたら件数が足りない、少ないことは確かですけれども、今の状況を見ますと、徐々にではありますけれども、検体数は増えているのです。その中で、PCRの陽性率というのは下がっています。そういうポジティブなところがありますが、しかし、実際にまだまだ、私自身あるいは専門家委員会としては、PCRのキャパシティーを、必要な人に、もう少し私はできるようにスピードアップする必要があると思います。

 そのためには、幾つか、これも6つぐらい課題があると思いますけれども、保健所の強化、それから都道府県調整本部の活性化、それから地域の外来、これは医師会なんかがやってきて、いろいろセンターをつくっていますけれども、これがまた始まったばかりです。これをもっとしっかりやる。それから感染防護具とか、そういうキットの、これが調達がまだ足りません。それから検査をするといってもそう簡単ではない。トレーニングも必要です。それから実は、特に都道府県においてはPCRの実態の把握と、それから問題点が、何をするということは、これは前から基本的対処方針でお願いしています。これは知事のリーダーシップで、一体のこういうことが、更に私はしっかりと必要な人にPCR検査が受けられる体制を示すためのチャレンジであると思います。」



6.遅きに失した厚生労働省の方針転換

(1) 要は、各地の保健所や衛生研究所などの現場レベルで、普段の業務に加え、新型コロナウイルス感染症の増加に伴う相談業務などにてんてこ舞いであり、加えてPCR検査で陽性が判明すれば感染経路の追跡調査までしなくてはならないことから、パンク状態にある、それだけでなく、保健所から厚労省への報告様式が相変わらず紙や電話に限られていてオンライン化されていないことも、現場の業務を煩雑にしているという。

 これにしびれを切らした東京都医師会などは、都内において自前でPCR検査を行う体制を整えたし、江戸川区では独自に「ドライブスルー方式PCR検査」の導入を行っている。慈恵医大では、即日1件700円のPCR検査をしている。これらは全て、遅遅として進まない官製検査へのアンチテーゼである。

(2) こうした批判の高まりを受け、ようやく厚生労働省は重い腰を上げ、5月8日に各都道府県に対して「新型コロナウイルスに関する相談・受診の目安について」を発出し、2月17日の通達の該当部分を次のように訂正して37.5度のような定量的な表現をなくした。

 少なくとも以下のいずれかに該当する場合には、すぐに御相談ください。(これらに該当しない場合の相談も可能です。)

 ☆ 息苦しさ(呼吸困難)、強いだるさ(倦怠感)、高熱等の強い症状のいずれかがある場合

 ☆ 重症化しやすい方(※)で、発熱や咳などの比較的軽い風邪の症状がある場合   (※)高齢者、糖尿病、心不全、呼吸器疾患(COPD 等)等の基礎疾患がある方や透析を受けてい る方、免疫抑制剤や抗がん剤等を用いている方

 ☆ 上記以外の方で発熱や咳など比較的軽い風邪の症状が続く場合 (症状が4日以上続く場合は必ずご相談ください。症状には個人差がありますので、強い症状と思う 場合にはすぐに相談してください。解熱剤などを飲み続けなければならない方も同様です。)


 そもそも、2月時点で厚生労働省や専門家が想定していた感染経路の追跡によるクラスター対策などというものは、これだけ感染が増えるともはや不可能となってしまった。かくなる上は、全国民に対してPCR検査を行うつもりで徹底的に感染者をあぶり出して隔離対策を行う必要がある。

(3) この方針転換を余儀なくされた加藤勝信・厚生労働相は、5月8日の閣議後会見で、「目安が相談や受診の基準のようにとらえられていると指摘し、『我々から見れば誤解だ』と語った。自治体に『幾度となく通知を出し、相談や受診は弾力的に対応していただきたいと申し上げてきた』と強調した。」というが(2020年5月8日付け日本経済新聞)、今更取り繕うなと記者団の失笑をかっていた。


7.PCR検査以外に抗原検査と抗体検査

(1) また、必ずしもPCR検査だけでなく、「抗原検査」CT検査とを組み合わせる方式も有効だそうだ。このうち抗原検査とは、新型コロナウイルス特有のたんぱく質(抗原)を検出するもので、やはり鼻の奥の粘液などを綿棒で採取して検査する。問題は精度が低い点であるが、メリットは、結果が分かるまで、PCR検査は6時間程度にかかるのに対し、抗原検査はその場で数十分ほどですむという点である。他方、人口百万人当たりのCTの数は、日本は国際的にみて最も多く米国や韓国の3倍近くある。新型コロナウイルスによる肺炎は、肺に磨りガラスのような病巣が現れるのだが、これがPCR検査の前検査として、非常に有効だという。

 このほか、PCR検査そのものの効率化や迅速化も進展しつつある。富士フイルムは、「検体を装置にセットするだけで全自動で調べられるPCR検査用の試薬を開発した。検査時間も従来の4〜6時間から約75分に短縮できる」という。また、島津製作所が約1時間で済むキットを開発しているそうだ。(2020年5月8日付け日本経済新聞)

(2) これらとは別に、5月13日、みらかホールディングス子会社の富士レビオ(東京・新宿)の製品で、新型コロナウイルスの感染の有無を15分程度で簡易診断できる「抗原検査」キットが、薬事承認された。(2020年5月11日付け日本経済新聞)

(3) 新型コロナウイルスに関する検査には、本命のPCR検査とそれとほぼ同等の抗原検査以外に、「抗体検査」というのがあるが、これは新型コロナウイルスに感染したことがあるかどうかを調べる検査である。爆発的感染を招いたニューヨーク市では、抗体を保有している人の割合は、19.9%である(5月21日現在)。歌手のマドンナも、その一人という。

 6月初旬から厚生労働省が東京都、大阪府、宮城県で7,950人を対象に行ったところ、抗体を保有している人の割合は、東京0.1%、大阪0.17%、宮城0.03%だった。つまり、日本人の大半が抗体を保有していない(すなわち、新型コロナウイルス感染症に罹ったことがない)ことが明らかになった。これは、第2波が、いつ襲ってくるかわからないという危ない状況であることを意味する。なお、抗体がどれくらい身体の中にあるのか、また、抗体によって次の感染を防ぐことができるのかという点については、6月17日現在、未だわかっていない。

(4) 抗体の第2報である。そのうち詳細な報道がされると思うが、断片的な話によると、新型コロナウイルス感染症に罹って抗体ができたとしても、わずか2〜3か月しか続かないそうだ。もしそれが本当だとしたら、ワクチンの効果はそれぐらいの期間しか継続せず、つまりはほとんど効果がないということだ。これは、悪いニュースである。東京オリンピック2020も、来年の開催がますます危うくなった。



(1から6までは令和2年5月10日、7(1)から(3)までは6月17日、(4)は18日著)
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