悠々人生エッセイ



ストレリチア




1.3度目の緊急事態宣言下の散歩

 新型コロナの変異型ウイルスが大流行し緊急事態の再々宣言が行われてはや2週間経ったが、収束の兆しすら見えない。それどころか5月7日、当初11日までだった宣言の期限が5月末まで延長されてしまった。私のテニス場も、引き続き休業を余儀なくされ、もちろん、法律事務所も出勤停止でリモート形式だ。だから、することがなくなってしまった。

 そこで、昨年春の第1回緊急事態宣言時と同じように、人のいない日中の時間帯に、ご近所を歩き回ることにした。すると、昨年出会った「禁葷酒」の碑のように、色々と面白い発見があった。


2.ど根性サツキ

 最近は本郷の近くを歩き回り、樋口一葉の足跡をたどっている。昨日、みずほ銀行と三菱UFJ銀行の間の路地を歩いていた。すると、冒頭の写真の通り、電線の黄色いプラスチック・カバーの上に、ちょうど花束のようにサツキがこんもりと咲いているのに気が付いた。

 あれ、これはどうなっているのだろうと一瞬思った。よく見ると、これは50センチほどの高さしかない街路樹のサツキの一部が、2メートルほどのプラスチック・カバーの中を這い上がって外に出て、そこで花を咲かせているのではないか。いやまあ、これはすごい生命力だ。しばらく、感激をしつつ眺めていた。昔、「ど根性ガエル」という歌があったように覚えているが、まさに「ど根性サツキ」である。

ど根性サツキ



3.極楽鳥花の魅力

 近くの家に、ストレリチア(極楽鳥花)が咲いていたのを見つけた。私が初めてこの驚くべき形の花を見たのは、今から23年前の1998年2月に、南アフリカを訪れた時のことだ。現地のヒルトンホテルの玄関を入ったところ、目の前にこの花がたくさん活けられていたのに、目を奪われた。鮮やかなオレンジ色の羽のように見えるのは萼で、青いのは花弁だそうだ。これらが合わさると、まるで鳥が羽ばたいているように見えるではないか。世の中に、こんな鳥そっくりの花があるのかと、まだ若かった私は、ともかく感激した。

極楽鳥花


 この花は、南アフリカ原産、英語は「Bird of Paradise」で、その名の通り、ゴクラクチョウ科「Strelitzia reginae」に属する。私が初めて見てから数年後、今度は東京の生け花展で、またこれを見かけた。それ以降、ホテルなどでよく目にするようになったが、今やまさかご近所の家が植えるほどポピュラーな花になっているとは思わなかった。


4.谷中のヒマラヤ杉

 谷中の「みかどパン店」の角に有名なヒマラヤ杉の大木がある。大正時代には鉢植えの可愛いものだったのが、100年も経って、今や堂々の大木になり、近所の人に親しまれている。ところが、今回行ってみたところ、すっかり剪定されてしまい、かつてのような勇姿ではなくなった。昔は、こんもりとした「森」のようだったのに、これではそこらの木となんら変わらない。とても残念だ。聞いてみると、昨年秋の台風19号の強風で枝が折れ、危なかったそうだ。そこで、昨2020年11月、やむなく剪定したという。

谷中のヒマラヤ杉



5.ドロボウ侵入禁止

 そのヒマラヤ杉の直ぐ近くに看板があり、「ドロボウこれより先 侵入禁止」と書いてある。下谷警察署、谷中南町防犯部だそうだ。まさか、泥棒がこんな看板を見て侵入をためらうとも思えないので、意味不明のおまじないのようなものかもしれない。いかにも、寺の町、谷中らしい。

ドロボウ侵入禁止



6.有クイバ貸間

 根津駅の南出口の不忍通りに面したところを歩いていると、小さな駐車場がある。そこに「有クイバ貸間」と書いてある。いやいや、「有クイバ貸間時」だ。「それにしても、『貸間』はわかるが、『有クイバ』とは、はてこれは面妖な・・・有限会社クイバかな」と思ったところで、ハッと気が付いた。「なんだ・・・これは。『時間貸しバイク有り』ではないか」。ああ、つまらないことに時間を使った。最後に「り」を付けてほしい。

有クイバ貸間



7.とんちゃんの看板

 またこれも、根津駅の南出口近くにある看板の話である。トンカツ屋の店先にある豚のシェフ像だ。とんちゃんの看板とでも言っておこうか。とっても面白い。ところが、風の強い日には、この豚さんの頭が外されて、胴体だけになっていたから、びっくりしてしまった。風で飛ばされるのを警戒していたようだ。

とんちゃんの看板



8.谷中キッテ通りの絵

 谷中に、南北に走る不忍通りと並行して通称「キッテ通り」という道がある。そこをブラブラと歩いていると、とある民家の壁に面白い絵が飾られていた。これが、まあ何と言うか、地元密着型の実に摩訶不思議な題材なのである。

谷中キッテ通りの絵


 正面左には、外国人女性らしき日本髪の着物姿が描かれ、その右手にはジョン・レノンのような長髪と髭の男性がいる。どちらも何の関係もないかと思いきや、そうでもなくて、肩に猫がいるということだけは共通している。その他、絵の中には大勢の人物が描かれているが、特段のモデルはいないようだ。

 背景に目をやると、これはもしかすると谷中を代表する名所「夕焼けだんだん」の階段の上から、夕日を眺めた風景なのかと思われる。沈みゆく大きな太陽、あちらこちらで空を区切る電信柱や電線、それに聳え立つ無粋なマンションなど、正にあそこからの景色そのものだ。

 絵の中をよく見ると、猫がいる。ああ、あそこにも、ここにも・・・谷中は「寺の町」とよく言われるが、猫がたくさんいるから「猫の町」としても知られている・・・というわけで、暇に飽かせて数えてみた。正解は、こちらの絵である。それにしても、谷中というのは、どこか浮世離れした不思議な町なのだ。




(令和3年5月10日著)
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