悠々人生エッセイ



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1.開会式まで

(1)新型コロナウイルス感染が収まるどころか急拡大している。そうした中、2021年6月26日・27日に朝日新聞が東京都民を対象として世論調査を行った。それによると、東京オリンピックについて、(1)今夏に開催する38%、(2) 延期すべき27%、(3) 中止すべき33%であった。つまり、国民に全く歓迎されないオリンピックとなってしまった。しかも、4度目の緊急事態宣言が出された7月8日には、ほぼ無観客となることが決まった。

 そして日はどんどん過ぎていった。東京都内での新型コロナウィルス患者数があれよあれよという間に激増していく中、7月23日、とうとう東京オリンピック開会の日を迎えた。私も、新型コロナウイルスがこんな状況なのに本当に開催するのかという感が拭えないまま、テレビ座敷で開会式を見物することになった。

(2)開会式は、天皇陛下のご臨席の下、23日午後8時から始まった。お国柄が出て面白かった各国選手団の行進を別にすれば、これは面白いと印象に残ったのは、(1) 50のピクトグラムパフォーマンス、(2) 歌舞伎の隈取りを施した市川海老蔵、(3) 大阪ナオミによる聖火の点火、そして最後の(4) 空中に浮かんだ1,824個のドローンによるオリンピックのエンブレムと地球の立体画像の4つである。

 逆にこれはダメだと思ったのは、(5) 大勢の人が好き勝手に踊り回る冒頭のパフォーマンス(何を表現したいのか意味不明だ)、(6) 木遣り(→小池百合子東京都知事の支持団体という噂があるが、あの広い国立競技場では小さすぎる。秋田の竿燈や青森のねぶたなどの見栄えのする大物を持ってくるべきだ)、(7) 森川未来のダンス(→意味がよくわからないし、印象が暗い)、(8) MISIAの君が代(→歌は普通だったが、あの色付きかき氷のようなドレスはよろしくない。和服にすべきだった)、(9) 全体の印象は、ゲームの音楽を使ったりして軽薄な印象だ。和風の琴を奏でるということがあっても良かった。各セクションの繋がりがバラバラで統一感が全くない、(10) 天皇陛下が開会のお言葉を述べ始めてから、菅首相と小池都知事が慌てて立ち上がった(→作法がなっていない)、というわけで、総じて評価は低い評価しか与えられない。

(3)それもそうだろう。オリンピックの中で麻生太郎がつい漏らしたように「呪われた」とまで言うつもりはないが、これほど不祥事が続いたオリンピックはなかった 。振り返ってみると、次から次にこんなことがあった。

 まず招致から今年の春までの間に生じた不祥事

 @ 国立競技場の設計コンペがあり、女性建築家ザハ・ハディッドが作ったデザインが選ばれた。ところが、斬新で良かったのだが、巨大過ぎる、費用がかかりすぎる、キールアーチの建築が困難などの理由で、採用されずに、代わりに隈研吾のデザインとなった(2015年→ザハの作品は奇抜すぎて実際には建てられないことがあるので、「建たずの女王」という称号があるにもかかわらず、なぜそんな建築家を選ぶのか)。

 A 佐野研二郎作のオリンピック・エンブレムが、ベルギーのリエージュ劇場のロゴに類似しているなどの盗用疑惑で、本人が取り下げた(2015年→盗用疑惑が囁かれている中、なぜ選んだのか)。

 B 日本オリンピック組織委員会の竹田恒和会長がオリンピック招致時に贈賄があったのではないかと、フランス当局の捜査対象となる(2019年→国の恥だ)。

 C 日本オリンピック組織委員会の森喜朗会長が女性蔑視発言で辞任に追い込まれる(2021年2月→本人が少しも反省していないところが、もはや全く救いようがない)。

 次に開会式そのものについての不祥事

 D 開会式と閉会式の演出を統括する佐々木宏チーフディレクターが女性タレントを豚に例えて侮辱したとして辞任に追い込まれる(2021年3月)。

 E 開会式の音楽を担当する小山田圭吾が、雑誌にかつて学生時代に虐めた経験を語ったとして辞任に追い込まれる(2021年7月)。

 F ショー・ディレクターの小林賢太郎が、かつてユダヤ人に対するホロコーストを揶揄したコントを作ったということで、解任される(2021年7月)。

 @からFまで、どれもこれも、よくもまあこんなことがあるものだと呆れるほどである。しかも、DからEまで開催直前になって開会式の関係者が3人もいなくなった。これでは、開会式がまとまりのないものになってしまったのは、むべなるかなという気がする。だいたい、これらの3人は、どういう選考基準でいかなる経緯を経てこの職に付いているのか、全く不透明である。おそらく、仲間内のやり取りで決まって行ったのだろう。

 しかも最大の問題は、

 G 新型コロナウイルスの感染急拡大が続く中で、見切り発車という形で東京オリンピック開催が強行された(2021年7月23日)ことである。

 小学生の「ボクの運動会が中止されたのに、なぜオリンピックは開かれているの」という素朴な疑問には、菅首相は全く答えられない。また、4次にわたる緊急事態宣言が出されて、事態は少しも改善されないという状況には、国民はもう飽き飽きしている。

 中でも、飲食店での酒類販売自粛や営業時間の短縮などの措置は、なぜそれが必要なのか、国民を納得させる理由やデータを政府首脳や都道府県知事が示したことはない。それどころか政府は金融機関や酒の卸売業者を使って自粛要請を振り切って営業している店に圧力をかけようとして、国民の反発を招き、一夜で撤回に追い込まれた。そんな状況なのに、相変らず飲食店に漫然と自粛要請を続けるものだから、それを守る店と守らない店が出てきて、政府や都道府県に従った店が損をするというおかしな現象が生まれている。もう滅茶苦茶、支離滅裂としか言いようがない。


2.前半戦(7月23日〜31日)

 東京オリンピック前半戦の様子を見ていると、これは喜ばしい誤算というか、日本が金メダルをたくさん取ったので、びっくりしたというのが正直なところである。そうした試合を上げていくと、次の通りである。


【7月24日】

 男子柔道60キロ級では、高藤直寿が金メダル。指導3の反則勝ちということで、見ていてよくわからなかった。どうも柔道の技は、巴投げ、大外刈りはともかく、総じて分かりづらい。


【7月25日】

 柔道では、阿部一二三(男子66キロ級)と阿部詩(女子5分0キロ級)の兄妹がいずれも金メダルを獲得した。兄弟で同じオリンピックの金メダルを獲得したのは、日本では初めてのことらしい。

 スケートボード競技だが、私の若い頃はこんな遊びは「不良」がやるものと思っていたし、それが今回、五輪競技になったとは知らなかった。それどころか、アメリカではプロが成立していて、今回金メダルをとった日本人の堀米雄斗選手(22歳)は、高卒でアメリカに渡り、努力して上達した苦労人で、スポンサーが付いてロサンゼルスに練習場付き数億円の豪邸を建てたという。競技の中の一発勝負ベストトリックでは、よくあんなことができるものだという技を連発していた。

 水泳では、大橋悠衣選手がまず400メートル個人メドレーで金メダルを獲得した。次いで、28日には200メートル個人メドレーで再び金メダルをとった。日本競泳女子で、初めて同一大会で2個の金メダルとなった。なお、大橋選手は他の選手が2時間で7〜8000メートルを泳ぐところを、5000メートルしか泳がず、その代わりに自分のフォームのビデオをよく見て、直すべきところを研究していたという。スポーツも、やはり頭を使わなければダメなのだ。


【7月26日】

 それにしても、前日の男子に引き続き、この日の女子スケートボードを見ていて、本当に驚いた。わずか13歳の少女、西矢椛(もみじ)が金メダルをとって史上最年少、銅メダルが16歳の中山楓奈(ふうな)だったからだ。中学生と高校生ではないか。

 男子柔道73キロ級では、大野翔平が金メダルだった。実はこの人、私の親類の人によく似ていて、同じ顔といってもよいくらいだから、テレビを見ていて親近感が湧いてきた。

 日本の卓球混合ダブルスにとってはもう歴史的な出来事と言ってもよいと思うが、水谷隼(32歳)と伊藤美誠(みま・20歳)組が、世界最強の中国の許マ・劉詩ブン組を破って初めて金メダルを獲得した。見ていて感動した。サーブの時など、正に殺気を感ずるほどの真剣勝負だった。実はこの二人は、歳は12歳離れているが、静岡県磐田市の同じスポーツ少年団で腕を磨き、水谷選手の両親の指導を受けたそうだ 。


【7月27日】

 男子柔道81キロ級では、永瀬貴規が金メダルだった。いかにも、やってやるぞという頼もしい面構えだった。

 女子ソフトボール決勝では、日本はアメリカに2対0で勝ち、13年前の北京大会以来となる金メダルを獲得した。これは、一発のファインプレーが勝利を分け 、まさに薄氷を踏む思いであった。日本は、北京オリンピック以来のエース上野由岐子投手が先発して5回を無失点に抑え、新鋭の後藤希友投手に交代した。日本は、4回と5回に1点ずつ入れて2対0となった。6回のアメリカの攻撃で、打者チデスターの放った強烈な打球が三塁手山本優を襲い、山本はこれをグラブに当てて左にはじいた。直ぐにそれをショート渥美万奈が「空中で」拾って打者をアウトにし、そのまま二塁に投げて二塁走者を刺してダブルプレーにした。こんなミラクル・プレーは見たことがない。仮にこれが抜けていれば、アメリカに1点が入るし、おそらく走者2塁になって、勝敗の行方が分からなくなったはずである。正に値千金のファインプレーだった。


【7月28日】

 体操男子個人総合の橋本大輝選手が金メダルを獲得した。床などは、空中を飛んで捻って、また捻って、更に一回転して着陸したり、鉄棒も同様にカッシーナ、コールマンなどのアクロバット的な動きで点数を重ねていった。凄いとしか、言いようがない。感動した。橋本選手は、中学まで佐原の廃校の体育館で練習したそうだ。

 女子柔道70キロ級では新井千鶴選手が金メダルだった。


【7月29日】

 男子柔道100キロ級では、ウルフ・アロンが金メダルだった。この人は葛飾区新小岩で生まれ、父は米国人、母は日本人。春日柔道クラブで柔道を始め、文京第一中、東海大浦安高、東海大学を出たらしい。父は英語教師だが、ウルフ本人は英語は話さないという。

 女子柔道78キロ級では、浜田尚里が金メダルだった。

 ちなみに、この日までにオリンピック関係者198人が新型コロナウイルス陽性で、うち選手は、28人だった。

 金メダルではなくて、銅メダルに終わったが、卓球女子シングルスの伊藤美誠が日本勢初のメダルを獲得したのには驚いた。世界最強の中国選手を相手に、見ているこちらが苦しくなるほど、本当に息詰まる熱戦を制した。ちなみに、伊藤は、中国では「大魔王」と言われているそうだ。

 同様に銅メダルではあったが、バドミントン混合ダブルスで、香港ペアを破った東野有紗渡辺勇大組も、よく頑張った。世界ランキング一位の桃田が予選すら通らないなど失速した日本バドミントン界で、唯一メダルを手にした。


【7月30日】

 日本男子フェンシングの「エペ」団体で、日本が金メダルを獲得した。山田優(27歳)、見延和靖(34歳)、加納虹輝(23歳)、宇山賢(29歳)の4人である。フェンシングは、全身を攻撃できる「エペ」、胴体だけを攻撃できる「フルーレ」、上半身だけを、攻撃できて「突き」のみならず「斬る」のも有効な「サーブル」の3種目があるという。その中で、「エペ」は、日本ではマイナーだが、世界ではメジャーだそうだ。その「エペ」で金メダルをとったのだから、これは画期的なことである。私などは昔のフェンシングしか知らない。昔は、各選手がワイヤ(電線)に繋がれて競技していたから、まるで遠隔操作のロボットみたいだった。ところが今は、おそらく、WiFiで繋がっているのだろうか、ワイヤがなくなった。その代わり、先に突いた方のヘルメットが緑に点灯するから、ああやっぱりロボットのようなのは、変わらないとおかしかった。

 女子柔道78キロ超級では、曽根輝が金メダルだった。


【7月31日】

 柔道の男女混合団体選で、日本は金メダリストを揃えたのに、決勝でフランスに負けて銀メダルだった。

 サッカーの準々決勝ニュージーランド戦で、0対0のままPK戦となった。日本の森保一監督は、名乗り出る者に蹴らせた。最初に名乗り出たのが、FW上田綺世である。実は上田は、チームの初戦である17年の国際大会の決勝でPKを外している。その雪辱というわけだ。蹴って、首尾よくゴールの右隅に決めた。そして、相手の2人目のキックを日本のゴールキーパー谷晃生がコースを読み切って見事にはじいた。それから、上田に続いてDF板倉滉中山勇大が決めた。ところが相手の3番目は、球が浮いてゴール上に行ってしまった。そこで、次のキッカーDF吉田麻也が成功すれば、日本が勝つ。祈るような瞬間、キックされた球は飛んでいき、見事にゴール左隅に突き刺さった。


3.敗者の記録

(1)バドミントン

 世界ランキング1位の桃田賢斗をはじめとして世界ランキング上位選手が綺羅星のごとくいて「史上最強」のはずだったバドミントン日本代表であるが、全くの期待外れで、わずか銅メダル1個(混合ダブルスの東野有紗渡辺勇大組)に終わった。男子シングルスで桃田はまさかの1次リーグ敗退。常山幹太はベスト16、女子シングルスで奥村希望、山口茜はベスト8にとどまり。男女ダブルスもベスト8だった。新型コロナウイルス禍で国際経験もさほどないまま、国内だけの練習に終始して、いわば「井の中の蛙」になっていたのだろう。

(2)陸上男子の短距離走

 陸上男子100メートルで日本の3人は、いずれも予選すら突破できなかった。山県亮太は10秒15、多田修平小池祐貴は10秒22というタイムだった。前回のリオデジャネイロのときは10秒20も出せば予選を通過できたが、世界のレベルは上がり、それどころではなくなった。今や9秒台を出さなければ世界で勝負はできない時代である。決勝は、イタリアのラモントマルチェル・ヤコブスが9秒80で優勝した。

 陸上男子400メートルでは、バトン練習を繰り返したというわりには、第1走者の多田修平から第2走者の山県亮太にバトンが渡らず、あえなく敗退した。第3走者の桐生祥秀、第4走者の小池祐貴には幻のリレーとなった。

(3)男女競泳

 水泳も、今回は全くの期待外れだった。スターと言われていた400メートル個人メドレーの瀬戸大也、200メートル自由形の松元克央は、決勝にすら進めずに予選で敗退した。中でも瀬戸は、予選で300メートルまではトップだったのに、最後の100メートルで後々の試合に備えて余力を残そうとしたのか力を抜いて遅くなり、気が付いてみれば予選すら通らなかった。予選を突破できなければ決勝にも進めないのだから、本末転倒だ。日本国内ではお山の大将なのだろうが、国際レースを甘く見ていたとしか言いようがない。

 白血病で一時は選手生命を危ぶまれた池江璃花子が参加した女子400メートルメドレーリレーは、日本チームは決勝には進んだものの、レース結果は最下位の8位であった。しかしながら、池江は病気に打ち勝ち、よく復活してオリンピックの舞台に立てたということを褒めてあげたい。

 それやこれやで、金メダルは大橋悠衣の2個どまり。これは前回リオデジャネイロの2個とたまたま同じであるが、その他のメダルは男子200メートルバタフライの本田灯の銀メダルのみと、前回リオの7個から激減した。入賞数は前回21の半数に満たない9であるから、日本の競泳界は一体何をやっていたのか。

(4)ゴルフ

 ゴルフは、日本人初のマスターズ・チャンピオン松山英樹がメダルをとるのを期待して見ていた。松山は3日目を終わった時点でトップと1打差の2位であった。最終日の最終18番。これを決めれば銅メダル獲得となる約4メートルのバーディーパットは、無情にもカップの縁をかすめて通り過ぎた。その結果、銅メダルを巡る7人によるプレーオフに突入した。しかし松山は最初のホールでボギーをたたき、4位タイで終わった。7月初めに新型コロナウイルス感染が分かり、10日間ほど療養した。一時は五輪の出場も危ぶまれたほどなので、体調は万全ではなかったのだろう。本人曰く「悔しさしか残らなかった」。


4.後半戦(8月1日〜7日)

【8月1日】

 この日は、日本には金メダルはなく、体操の男子種目別あん馬で萱和磨(かや かずま)がこの種目では17年ぶりとなる銅メダルを獲得した。

 重量挙げ女子87キロ超級にニュージーランドのローレル・ハバード(43歳)が出場した。実は彼女は、男性から女性へ性別を変更した人で、いわば元男性なのだが、そういう人がオリンピックに女性として出てくるのは如何なものか、不公平だという議論がある。私は、性別変更を認める法律があるので、男性から女性へ性別を変更すること自体には異論があるわけではない。しかし、性転換といってもそれは外見だけにとどまる上、スポーツの世界で競技中に男性と女性を区分することは、女性を保護する意味があるのだから、女性から男性であれば問題ないが、その逆のこの場合はその選手に不当に有利になると思われるので、出場を認めるべきではないと考える。ちなみに、このハバード選手は、重量挙げを3回とも失敗して会場から去って行った。

 ナミビアの女性クリスティン・エムボマベアトリス・マシリンギが男性ホルモンであるテストステロンの血中濃度が男性同様に高いという理由で世界陸連の規定により、女子400メートルには出られず、その制約のない女子200メートルに回った。上のニュージーランドの選手のケースと問題の本質は似通っている。このケースでは公平性を担保するために世界陸連の規定という制約が設けられているのだから、このニュージーランドの選手の場合も、同様な制約を設けてもよいのではないかと考える。


【8月2日】

 体操の村上茉愛(まい 24歳)が、床運動で銅メダルで、オリンピックの個別種目において日本女子では初めてのメダルを獲得した。素晴らしい。序盤で空中に高く飛んでH難度の大技「シリバス(後方抱え込み2回宙返り2回ひねり)」を決めるなど、ほぼミスのない完璧な演技で、思わず見惚れてしまった。それにしても接戦で、金メダルはアメリカのジェイド・キャリー(14.366)、銀メダルはイタリアのバネッサ・フェラーリ(14.200)、銅メダルは村上茉愛とロシアのアンジェリーナ・メルニコワが同点(14.166)だった。この同点というのがまた凄い。

 レスリング男子グレコローマンスタイル60キロ級の文田健一郎が、銀メダルを獲得した。決勝でキューバのオルタ サンチェスに敗れたのであるが、手首を掴まれてほとんど試合をさせてもらえなかった。相手の作戦勝ちである。文田もよく頑張ったが、及ばなかった。それにしても、直後の記者会見で泣くな・・・まあ気持ちは分かるけど。

 まだ準々決勝だが、野球でアメリカに勝った。北京オリンピックでは銅メダルを賭けてアメリカと戦って敗れたので、その意趣返しというべきか。試合は、最初からシーソーゲームで見ていてとてもスリリングで面白かった。日本が3回裏に2点とったら直ぐ4回表に3点とられ、その裏に1点とってイーブンになったと思ったら、5回表にホームランで派手にまた3点とられ、その裏に2点とったので、日本は1点ビハインドで6回以降は動かず、このまま6対5で負けてしまうかと思った。ところが、最終9回裏、日本はしぶといヒットで1点とってようやく追い付いた。そして、ノーアウト1塁2塁から始まるタイブレーク制での延長戦に入り、10回表を日本は栗林良吏投手が頑張ってゼロに押え、10回裏となって甲斐拓也選手がタイムリーヒットを放って日本は7対6でようやく勝利した。


【8月3日】

 ボクシング女子フェザー級で入江聖奈(せな、20歳)が金メダルを獲得した。この人、「笑う門には福来る」ではないが、ともかくいつもニコニコとしているのが特徴で、勝った瞬間、笑顔でぴょんぴょんとカエル飛びをし、試合の相手も拍手していたのが面白かった。ちなみにこの人、カエルが大好きだという。持ち物には全てカエルの絵が描かれていたから、徹底している。試合が終わったとき「今日だけはトノサマガエルになれた」と語った。鳥取県出身で初の金メダリストらしい。ユニークなキャラクターだ。これで、有終の美を飾ったので、大学を卒業したらIT会社に就職するそうだ。どこまでも異色のアスリートである。

 橋本大輝は、体操男子鉄棒個人の種目で、ライバルが次々に落下する中、カッシーナ、コールマン、着地は伸身月面と、全ての技を美しく着実に決めていって、一人だけ15.00点台を出し、見事に金メダルを獲得した。橋本はこれで、体操男子個人総合種目に続いて、個人種目2個目の金メダルとなった。もはや内村航平に代わって、日本の体操界の第一人者になった。

 男子グレコローマンスタイル77キロ級の屋比久翔平が3位決定戦に勝ち 、銅メダルを獲得した。屋比久は沖縄出身で初の銅メダリストとなった。

 サッカーは、日本はニュージーランドを破って準々決勝に進み、欧州の強豪スペインと当たった。試合は両チームともなかなか点が入らなかったが、延長の5分、レアル・マドリードでプレーするスペイン選手に1点を入れられて負けた。日本は、銅メダルをかけて予選リーグで勝ったメキシコと戦う。なお、日本は、53年前には伝説のストライカー釜本邦茂を擁してメキシコに勝って銅メダルを獲得したことがあるので、その再現を期待したい。


【8月4日】

 いや、これは驚いた。スケートボードで先日の男子ストリート競技に引き続き、女子パーク競技で四十住さくら(よそずみさくら19歳)が金メダル、開心那(ひらきここな12歳)が銀メダル、岡本碧優(みすぐ15歳)は惜しくも4位と、大健闘した。

 しかも、銅メダルのスカイ・ブラウンは宮崎県出身の13歳のイギリス代表だが、母は日本人、父はイギリス人でカリフォルニアに在住。競技後のインタビューで「めっちゃ嬉しい」と日本語で話していた。日英どちらからでも出場できたが、より自由の効くイギリス代表となったというから、1位から4位まで日本人が占めたようなものだ。

 試合は、3回の試技で最も高い点数となる。四十住はなかなか賢くて、予選は難しい技を出さずに4位で確実に通過した。そして本番の第1回目で難度の高い540を2回も見せて60点を超す高得点をマークした。他の選手が驚いてこれを上回ろうと難度の高い技に挑戦して次々に落下した中、四十住自身も残る2回は落下したもののそのまま押し切って、金メダルとなった。次いで銀メダルは開(ひらき)が獲得したが、中学生になったばかりのわずか12歳。最年少のメダリストとなった。この分野の先駆者である岡本も健闘したが、残念ながら4位に終わった。

 なお、同じスケートボードでも、先日のストリートは階段や手すりのようなレールを使う競技であるが、この日のパークは大きな凸凹のあるお椀のような会場を使ってジャンプの高さや空中でのテクニックを競うもので、なかなかダイナミックでスリリングな競技である。

 レスリング女子62キロ級で、川井友香子が金メダルを獲得した。57キロ級で戦う姉梨紗子がいる。梨紗子はリオデジャネイロオリンピックの金メダリストで、本日現在、決勝まで駒を進めている。姉妹で金メダルをとる事ができるかどうか。

 ボクシング女子フライ級準決勝で並木月海(つきみ)は、銅メダルを獲得した。

 ということで、この日の日本のメダリストは、4人とも全て女性だった。女性蔑視発言で辞任した森喜朗前JOC会長の感想を聞きたい。

 この日の野球の準決勝の相手は、13年前の北京オリンピックで苦杯をなめた韓国である。ちなみに日本の稲葉篤紀監督は、北京では5番ライトとして出場していた。それが今度は監督として日本チーム(侍ジャパン)を率いている。試合は、2対2の同点となって8回を迎えた。満塁となって、打席に立った山田哲人選手が思い切りよく一振りすると、打球はもう少しでホームランとなる当たりでフェンスに当たり、走者一掃となる2塁打で、韓国を突き放した。これで、決勝に進み、銀メダル以上が確定した。

 バスケットボール女子は、日本は準々決勝まで歩を進め、この日はベルギーと対戦した。敗戦が濃厚だったが、試合終了間際に林咲希の驚くべき3点シュートが決まって86対85で劇的勝利を収めた。びっくりするほど鮮やかな勝ち方だった。明日は、フランスとの準決勝である。

 この日、女子ソフトボールで金メダルの後藤希友投手が名古屋市役所を訪問したとき、河村たかし市長は、なんとまあ、手にした金メダルを突然口に入れて噛んだ。ただでさえ「金」は傷つきやすいものだし、選手にとっては宝物なのだから、そんなことはやってほしくない。あまりの暴挙に、市民から抗議の電話が殺到したそうだ。さもありなん。そんなことをしてはダメですよ。名古屋弁でタワケだ、市長。


【8月5日】

 空手がオリンピック競技となっているのは知らなかった。それがもの凄いのだ。空手着を身に付けた女性が最初に何かを・・・「ギヤー」としか聞こえなかったが・・・大声で叫んでから、突き、払いなどの演技に入る。これがまた、格好がいいこと。しかし、「組手」のように相手が居ないので、これは「形」なのだ。それを演じた清水希容は、銀メダルを獲得した。身体の軸がブレず、全て完璧な伝統的型だったが、外国人選手の中には身体を斜めにするなど面白い型の人もいて、素人目にはその方が面白かった。

 ボクシング男子フライ級の準決勝で田中亮明が銅メダルを獲得した。私は、格闘技はあまり趣味ではないので見なかったが、ともあれ頑張ったのだろう。

 涼しいと思って選ばれた札幌で男子20キロ競歩が行われた。ところが気温が30度を超す猛暑で、選手が可哀想だった。途中で中国の選手が飛び出したが、体力を使い果たしたのかそのうち失速し、先頭集団7人の中からイタリア人と日本人2人がするすると出てきて、そのままフィニッシュ。池田向希が銀メダル、山西利和が銅メダルを獲得した。

 こんな競技があるのかと思ったのがスポーツクライミングで、リード種目を見ると覆いかぶさった壁のあちこちにカラフルな突起(ホールド)があり、それをよじ登る。上に行くほど壁が手前に覆いかぶさってくるから、ぶら下がり状態になる。そんな体勢でどうするのかと思うところだが、それを何とかしてよじ登るのだから、凄いとしか言いようがない。3つの種目があり、その総合点で決まる。NHKの解説によれば、種目は次の通り。

 (1) ボルダリングは、壁の高さは約4メートルで、制限時間は4分間。競技の途中で落下しても、制限時間内であれば何度でも挑戦できる。複数のコースを順番に登り、いくつクリアできたかを競う。

 (2) リードの壁の高さは15メートル以上で、制限時間は6分間。競技の途中で落下したら、そこで終わり。ひとつの壁を1人ずつ登り、到達した高さを競う。同じ高さだった場合は、到達タイム順位となる。

 (3) スピードの壁の高さは15メートル。2人同時にスタートし、先に頂点に到達した選手が勝つトーナメント形式で行われる。


 ボルダリングとリードはホールドの配置が毎試合異なり、競技直前にしか見ることができないそうだ。この時に、どういう登り方をするか、各選手はイメージを作る。スピードはホールドの位置や角度が国際規格で統一されていて、どの試合でも同じ。それを6分あまりでするすると登るのだから、まるで忍者だ。見ていると、わずか1センチにも満たないホールドを掴んで全体重を預けるのだから、指の力が相当強くないと、この競技はできないと思った。

 体操などの採点競技はそもそもいかなる技があってどういう基準で評価されるのかよくわからないことが多々あるし、レスリングで1点リードなどといわれても、どんな技だったのか素人には理解しにくい。その点、このスポーツ・クライミングは単純明快であって、ボルダリングとリードは落ちたらそこで終わり、スピードは一番早ければ勝つというわけで、素人にも納得しやすい。

 この日のスポーツ・クライミング男子複合の結果、日本の楢崎智亜は、残念ながら4位に終わった。しかし、よく健闘したと思う。

 レスリング女子57キロ級で川井梨紗子が2大会連続の金メダルを獲得した。ちなみに前日に女子62キロ級で優勝した妹の友香子選手とともに、姉妹で金メダルを獲得となった。

 卓球女子団体は、日本は中国との決勝戦まで歩を進めた。しかし、中国の壁は厚く、0対3で完敗した。でも、最近の卓球はあんなに激しいものとは知らなかった。チキータなどの初めて聞くサーブがあったり、まるで格闘技のようで、見ていてこちらが苦しくなるほどの展開だった。石川佳純、伊藤美誠、平野美宇の3選手は、よく頑張った。本当にご苦労さまだったと申し上げたい。


【8月6日】

 空手の男子形で喜友名諒が金メダルを獲得した。喜友名(きゆな)は沖縄県出身であり、これで全都道府県で金メダリストが揃ったことになるそうだ。試合の最初に何か大声で叫ぶのは、「形名」というらしい。ともかく、裂帛の気合いから始まり、一挙一投足が存在感抜群で、剣にたとえれば、「抜かずして相手を圧倒するかのごとく」である。いやはや、ともかくビックリした。優勝するのは、宜なるかな。

 朝日新聞によると「空手は、もともとは琉球王国時代(1429〜1879)の士族のたしなみだったとされる。明治以降、沖縄出身の空手家が関東や関西の大学で指導したり、出稼ぎで県外に出た人が広めたりした。今や世界中に1億人を超える愛好者がいると言われる」とのこと。柔道は講道館の嘉納治五郎であるが、空手は沖縄が発祥の地だったとは、全く知らなかった。

 レスリング女子53キロ級の向田真優が中国選手を破って金メダルを獲得した。これで日本は、女子レスリングで3日間連続の金メダルである。

 卓球男子団体戦は、日本は韓国との3位決定戦に臨んだ。これは見ていて本当にスリリングだった。第1試合はダブルスで、丹羽孝希水谷隼のペアが3対1で韓国に勝った。第2試合はシングルスで、張本智和がエース同士の対決を制し、見ていてしびれた。第3試合は負けたので2対1となる。次の第4試合のシングルスは、苦戦の末キャプテン水谷が勝ち、これで日本が3対1で韓国を下して銅メダルを獲得した。この水谷が勝った時には、思わず張本が駆け寄って水谷に抱きついたのには感激した。よほど嬉しかったのだろう

 スポーツ・クライミング女子複合は、なんとまあ日本の野中生萌(みほう)が銀メダル、野口啓代(いくよ)が銅メダルを獲得した。私は予選から見ていたが、2人とも3種目をバランスよく得点し、決勝の最後に出てきた韓国の選手次第で銅メダルがとれるかどうかという状況だったが、彼女がボルダリングの途中であえなく落下したため野中の銅メダルが決まった。薄氷の勝利ではあったが、良かった。ちなみに野中は、この試合を最後に引退するそうだ。

 サッカー男子は、メキシコとの3位決定戦に臨み、前半で3点を入れられた。後半で1点を返したものの、結局、3対1で負けてしまった。選手はそれぞれ頑張ったが、あまり良いところがなかった。守備は良かったものの、またいつもの通り攻撃力が決定的に欠けていた。メダルには届かなかったが、良く頑張ったと思う。

 この日、珍しいことが起こった。男子走り高跳びで、ジャンマルコ・タンベル(イタリア)とムタズエサ・バルシム(カタール)の2人がともに金メダルを獲得した。というのは、2人とも2メートル37センチを飛んで、決勝となった。次に2メートル39センチに挑戦したが、2人とも失敗し、順位を決める「ジャンプ・オフ」をするか、それとも2人とも金メダルにするかという選択になり、以心伝心で、2人とも金メダルを選んだ。実はこの両者はジュニア時代からの親友で、どちらか一方が怪我をしたら片方が励ましてきた仲なのだそうだ。


【8月7日】

 先日のゴルフ男子は、期待されていたマスターズチャンピオンの松山英樹がメダルなしに終わった。そこで、本日のゴルフ女子の日本人選手がどこまで頑張ってくれるか、その活躍が大いに期待された。なかでも伸びてきたのが稲見萌寧(もね)で、前日まで3位、トップのネリー・コルダ(アメリカ)と5打差である。

 稲見は、前半で2打伸ばして折り返し、後半は12番ホールからの4連続バーディーで首位まであと1打差と猛烈に追い上げた。この調子では首位になるかもしれないと期待が高まる。ところが最後の手前の17番ホールでグリーン上でアプローチしたところで雷雲の接近により小1時間ほど中断した。これが吉と出るか凶と出るか心配したが、再開後あっさりバーディを奪い、首位と並んだ。素晴らしい。このまま行くかと思ったところで、最後の18番ホールで2打目をグリーン手前のバンカーに入れて万事休す。スコアを1打落として金メダルはネリー・コルダ(アメリカ)に譲った。

 ところが、リディア・コ(ニュージーランド)がスコアを伸ばしてきて稲見と並び、銀メダルをかけたプレーオフになった。18番を使った1ホール目で稲見がパーで銀メダル、コがバンカーに入れてパーパットを外し銅メダルとなって決着が付いた。いやもう手に汗を握る素晴らしい試合だった。ちなみに、コは、韓国系のニュージーランド人、リオデジャネイロオリンピックでは銀メダル、米ツアー16勝の強者、元天才少女である。そのプレーヤーに勝った稲見は、これまでプレーオフでは負けたことがないそうだ。頼もしい。こういう強心臓の人が、日本人には少ない。貴重な存在だ。

 試合後のインタビューで、稲見は、プレーオフについては「集中して勝ちに行こうと話していた。相手がパーパットを決めて、プレーオフが続くと思っていたので、銀メダルが決まった時は驚きました」と振り返り、「オリンピックは夢の舞台で、出場できたことが自分にとって奇跡でしたが、いい夢の舞台で終わらせることができてよかった」とのこと(NHK)。ともあれ、良かった。良かった。

 レスリング男子フリースタイル65キロ級で、乙黒拓斗が金メダルを獲得した。本人に自分のスタイルに聞くと「スピード、パワー、技術、タックル、投げ技、寝技、守備とオールマイティーです。人間ではできないような、空中で戦っているみたいな動きを見てほしいです」とのこと(NHK)。正に名人にしか語れないコメントで、これには感心した。

 レスリング女子50キロ級で、初出場の須崎優衣が金メダルを獲得した。須崎は開会式で八村塁とともに日本選手団の先頭で旗手を務めていた。ちなみにこの人、「2015年の全日本選手権の決勝で初めての敗戦を経験した際、『2位の表彰状』を天井に貼って毎晩、寝る前に悔しい気持ちを呼び起こし、さらなる練習に励みました」とのこと(NHK)。正に、臥薪嘗胆そのものである。

 野球の決勝で、日本はアメリカに2対0で勝ち、金メダルを獲得した。私は最初から見ていたが、日本は危なげなく勝ったという印象で、アメリカに対して平気で勝てる時代になったのだと感慨深いものがある。もっとも、現在シーズンが真っ盛りの大リーガーは大谷翔平も含めて有名どころは出ていない。代わりに日本でプレーしているアメリカの選手もいたりして、そういう意味では失礼ながら二流クラスではある。

 試合は、最初から投手戦だったが、投げては森下暢仁投手が5回を無失点に抑え、3回には村上宗隆が左中間へソロホームランを打って1点を先制した。8回になって1アウト2塁で吉田正尚がセンター前にヒットを打ち、相手のエラーもあって2点目が入った。6回以降、投手は千賀滉大、伊藤大海、岩崎優が小刻みに継投して無失点に抑えたところで、9回に真打の栗林良吏投手が登場した。ランナーを1人出したものの、後続をピシャリと抑えて日本が勝利を収めた。

 空手の男子組手75キロ超クラスで、荒賀龍太郎が銅メダルを獲得した。空手の組手では日本選手で初めてのメダルという。

 アーティスティックスイミングでは、日本はチームでウクライナの後塵を拝して4位となった。金メダルはロシア、銀メダルは中国、銅メダルはウクライナである。日本とウクライナと比べてみて、どう見ても、ウクライナの方に歩があった。まず、全員が大柄な美女ばかり、これは致し方ないとして、それがよく揃って演技するから、実に「華」がある。それに比べると、日本の選曲や演技が空手だったりお祭りだったりと、ジャポニズムは良いとしても、場の雰囲気と全く合わず、もう少し何とか工夫ができなかったものかと思った。


【8月8日】

 オリンピックも、とうとうこの日が最終日である。朝早くから札幌で行われた男子マラソンを見ていた。ケニアのエリウド・キプチョゲが金メダルを取った。世界記録保持者だから当たり前と言えば当たり前で、30キロ過ぎから独走だった。日本の大迫傑は、先頭集団からも遅れてようやくついて行くという状態で、その名の通り最後に大きく迫るかと思ったが全然そういう場面もなく、結局6位入賞だった。それでもタイムは2時間10分41秒で、3位とは41秒差である。

 マラソンの次には、自転車の「オムニアム」を見た。そもそも、「オムニアム」とは何かというと、次の通り(伊豆市のHPより)。普通の競輪とは違って、種目とその説明は大変面白かった。それにしても解説者による「まくる」、「刺す」 、「追い込む」などの競輪用語は、もう少し品が良くできないものか。

 1人の選手が短距離から持久系種目までこなすオムニアムは、全てに優れた能力が求められる。1日間で次の4種目を行い、各種目の順位によって与えられるポイント(1位40点、2位38点、3位36点)の合計が1番高い選手が勝利となる。ただし、最終種目のポイント・レースでは、レースの得点がそのまま加算される。

 @スクラッチは、定められた距離(男子10km、女子7.5km)を走り、ゴールの順位を競う。時速50kmを超えるスピードでアタックが繰り返されるため、スピード感と迫力あるレース展開がみどころ。

 Aテンポ・レース(男子10km、女子7.5km)は、5周目以降、毎周1位の順位の選手に1点が与えられる。その他周回アップ(1周回って主集団に追いつくこと)をした選手には20点が与えられる。最終順位は、ポイント合計で決まる。

 Bエリミネーションは、最大スタート人数は24名で、2周ごとに最後尾(後輪後端で判定)で通過した選手が1名ずつ除外(エリミネイト)されていき、残り3名となった周で最後尾の選手が除外され、2名の選手が残ると、最後の1周で早くフィニッシュラインを通過した選手が1位、遅く通過した選手が2位となり、競技が終了する。3位以下は除外された順番で順位が決まる。

 Cポイント・レース(男子25km、女子20km)は、10周ごと(約2km)にポイント(得点)周があり、その周の順位によってポイントを得る(1位通過:5点、2位通過:3点、3位通過:2点、4位通過:1点)。また、周回アップ(1周回って主集団に追いつくこと)をした選手には20点が与えられる。最終順位は、ポイント周において獲得した点数と、周回アップにより獲得した点数の合計で決まる。


 自転車の女子オムニアムで、梶原悠未が銀メダルを獲得した。オリンピックの自転車競技で日本の女子選手がメダルを獲得するのは、初めてのことだという。最後のテンポ・レースで落車したのに、本当によく頑張ったと思う。ちなみに梶原選手の身長は、155センチだそうだ。山椒は小粒でもぴりりと辛いというわけか。

 この女子自転車を見て手に汗を握っていたために、ついつい大事なバスケット女子決勝アメリカ戦を見逃してしまった。チャンネルを回したところ、日本はアメリカに75対90で敗れて、銀メダルとなった。残念だが、よく決勝まで来たものだ。オリンピックのバスケットで日本がメダルを獲得するのは、男女を通じて初めてのことらしい。素晴らしいことだ。

 新体操決勝のダイジェスト映像を見た。金メダルはブルガリア、銀メダルはロシア、銅メダルはイタリアで、日本は8位にとどまった。それも仕方がない。フープ・クラブでは2回もフープを転がしてしまい、基本の反復練習ができていないように見受けられる。怪我で一人交代した影響があったのかもしれないので、やむを得ない。3年後のパリを目指して、また頑張ってほしい。選手の皆さん、ともあれ、ご苦労様。


5.宴のあと

 オリンピックという宴(うたげ)は、終わった。この日のために刻苦精励してきた世界中のトップアスリートの皆さんが、その力を存分に発揮して、見応えのある試合を見せてくれた。私も当初は、新型コロナウイルス第5波が文字通り猖獗を極めている昨今の状況からして、東京オリンピックの開催には懐疑的だった。ところが、いざ始まってみると、さすがに一流選手が激突する素晴らしい熱戦が連日行われていて、私はテレビ桟敷で思わず見入ってしまった。プレーが凄いというだけでなく、勝利の雄叫びを上げる選手、悔し涙にくれる敗者など、正に人間ドラマの連続だったからだ。

 今回とても嬉しく、また驚いたことは、日本選手が大きく活躍し、中でも金メダルの数がアメリカ、中国に次いで3位だったことだ。ホスト国だったので、強化にかなり力を入れたからだろうが、それにしても前回リオデジャネイロ・オリンピックの時の金メダル12個(メダルの総数41個)に対して今回の金メダル27個(同58個)というのは、倍増以上の驚異的な数である。それだけ、選手の皆さんが頑張ってくれたというわけだ。

  合計
米 国 38 39 33 110
中 国 38 31 18   87
日 本 27 14 17   58
英 国 21 21 22   64
ロシア 20 27 23   70
豪 州 17   7 22   46


 ところで、官邸はこのオリンピック効果で菅内閣支持率が上がることを期待しているようだ。しかし、それはとんでもなく甘い。新型コロナウイルス第5波を抑え込めていないどころか、オリッピック直前から国内の患者数が急増し、緊急事態宣言を発出せざるを得なくなった。しかしそれでも効果が見られず、患者数の累計が8月7日にとうとう100万人を超えてしまったからだ。むしろ、東京オリンピックが終わったことで、国民の関心が新型コロナウイルスに再び向くことが容易に想定される。政府のコロナ対策が大きく綻びを見せている中、内閣が無傷に終わるはずがない。何やら政変の予感がする。



(令和3年8月8日著)
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