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甥一家・・・といっても私の甥ご夫婦とその一粒種の1歳半になる男の子の三人だが・・・このたび私の家の近くに引越してきた。そして、しばしば私の家に遊びに来てくれるものだから、この子を相手に楽しい時間を過ごしている。かつての私自身の初孫や孫娘・直系とのふれあいを彷彿とさせる。
ところで、この男の子は私の甥の子だから、辞書によると「又甥」あるいは「姪孫(てっそん)」と称するそうだ。そこで、以下、「又甥くん」と言うことにしたい。先に述べたように年齢は、まだ1歳半だから、全くの幼児である。名前はKちゃんなので、別名Kザウルスと呼ばれている。 短いガニ股の足で、家の中をヨタヨタと歩き回る。実に可愛い。そして、家中のボタンというボタンを押して行く。時にはご飯を炊いている途中の炊飯器のボタンを押すものだから、ご飯が全部食べられなくなったこともある。それくらいならまだ良い方で、ある時はベランダに洗濯物を干しに出たお母さんの後ろから引き戸の鍵を掛けてしまい、お母さんをベランダに閉じ込めてしまった前科もある。 まあ、その調子で色々とやらかしてくれるから気が抜けない。自宅では、手の届く所に危ない物を置かないようにしたり、テーブルクロスを引っ張って上の物を落とさないようにとテーブルクロスそのものを取っ払ったりしたりして、注意を怠らないようにしているとのこと。 それでも、先日は自宅で観音開きのドアをバタンバタンと開け閉めしているうちに、「うぇーん」と泣き出したそうだ。ママがふと見ると、小指の爪が剥がれている。慌てて、近くの整形外科に10件近く電話したが、金曜日の夜とあって何処も見てくれない。仕方なく薬局で消毒薬を買うついでに薬剤師に相談し、「この程度なら、薬で消毒し包帯で巻いておいて化膿しないようにして、明日の朝、病院に行って診てもらえば良いでしょう」ということになり、翌朝、大病院で3時間も待ってようやく診てもらえたそうだ。幸い、順調に治りつつある。 それにしても、又甥くんは男の子だけあって、力が強い。先日は、その怪我のこともあって、絶対に開けさせないというつもりでテープで封印したはずの観音開きのドアを、そのテープをバリバリと破って開けてしまい、パパとママを唖然とさせた。 ただまあ、乱暴なだけではない。意外と気が回るところがある。例えば、家で私がスリッパを寝室に置いたままで居間でくつろいでいると、それを見た又甥くんは、そのスリッパをわざわざ寝室まで取りに行って、私の足元に置いてくれる。まるで木下藤吉郎のごとくだから、私は勝手にK吉郎と呼んでいる。このK吉郎は、聞き耳を立てることもする。例えば、大人達が「さあ、出かけようか」と話すのを聞き、テコテコと玄関先に歩いて行って、そこで待っている。 言葉といえば、やっといくつかの単語を発することができる程度だ。最初に覚えたのは、「ワンワン」で、犬のことである。乳母車に乗って散歩中、犬を見かけると、指をさして「ワンワン」、家に帰ってきて犬のぬいぐるみを見つけるとまた「ワンワン」、パンダのぬいぐるみを見つけても「ワンワン」という調子だ。どうかすると、私を指さして「ワンワン」とやるから、「ちょっと待て、それは違うだろう」と言いたくなる。 でも、それは2週間ほど前の出来事で、最近は物の認識能力が格段に良くなった。親が、ぬいぐるみをたくさん並べて、「パンダはどれ?」、「シロクマはどれ?」、「ドラゴンはどれ?」などと聞くと、ちゃんと指差しに行く。それが正しいから、ママは大喜びだ。 また、ちゃんとした言葉も発さないというのに、「あーぁ」という嘆息の言葉の使い方は実に上手い。例えば、自分が食べているパンを落とすと、「あーぁ」と言ってテーブルの下を覗き込む。ママがカゴから洗濯物を落とすとその横で「あーぁ」、パパが運んでいるものを落としてもまた「あーぁ」と絶妙のタイミングで言うものだから、皆大笑い。そして、一体、誰の真似なんだろうとまた笑う。 大きさと色違いのカップが幾つかあり、それを下から順に積み上げて行って一番上にアンパンマンの頭を載せるおもちゃについては、最初は出来なくて途中で癇癪を起こして倒していたが、ついこの間、やらせてみたら、たちどころに正しく積み上げることができた。子供の成長は、本当に早い。 だから、認識能力は問題ないのだが、語彙に未だに混乱があるのは事実だ。この間、次のような事があって笑ってしまった。又甥くんが母親のところに両手を広げて向かっていって、こう言ったのである。 又 甥「ばあば」 母 親「私はママよ、ばあばではないよ」 又 甥「ばあば」 母 親「うん、、、もう!」 などと、、よほど、「ばあば」つまり祖母が好きなようだ。これを聞いた祖母は、「どうせなら、どちらもママと呼ばせようかしら」などと、大人の思惑が重なって事態はますます混沌としてくる。そうかと思うと、寝室に置いてある私の写真を指差して「パパ」というから、えらく混同している。 又甥くんは、ともかく良く食べる。特に好きなのはウドンと豆腐、大根と人参、ご飯に味噌汁、パンと白身の魚にフルーツで、要はほとんどの食物を食べられる。好き嫌いがないのは、誠に結構だ。おかげさまで、同年代の子より身体がかなり大きく、保育園では初対面の人に3歳児にも間違えられる。それはそうだ。ウドンは、ひと玉をあっという間に平らげてしまうからなぁ、、、。 面白いのは、大人の食物に興味を示すことで、例えば私が食後に干しぶどうを口に入れていると、欲しそうな素振りを見せる。手にそっと二粒握らせてあげると、嬉しそうに口に入れて、もっとくれと催促をする。あんぽ柿も、いちごもそうだ。ただし、いちごは、あまり甘くないものは、口に入れても顔をしかめてすぐに吐き出す。結構、味がわかっている。 子供用のスプ一ンとフォークを器用に扱ってヨーグルトを食べる。もちろん、あまり上手くはないから、口の回りにヨーグルトが白く点々と付く。まるで、サンタさんの白い髭のようだ。いやはや、とても可愛い。この調子で、すくすくと育って行ってほしいものだ。 でも、近く最大の試練が訪れる。ママの育児休業の関係で、又甥くんはどこかの保育園に入らなければならない。いくつか下見に行っているが、彼らの家がある文京区は、下手すると待機になるほど保育園の激戦区らしい。できれば、区立のちゃんとした保育園に入りたい。それも、自宅の近くが有難いなどと、希望を出しているようだが、はてさて、どうなるだろうか、、、。 先日、デパートに行くと、LOVOT(らぼっと)という癒し型ペットロボットの展示を行っていた。又甥くんは、それを見るなり指さして「ワンワン」と叫びながらスっ飛んで行く。そして、頭を撫でたり、手を握ったり、話しかけたりして熱心に遊んでいる。やがて疲れたのか、遂には、しゃがみこんでもなお眺めている。とっても可愛い。かねてより、愛情は、親から受け取るだけでなく、他人にもそれをいっぱい注げる人間になってほしいものだと思っていたが、もう既に大丈夫のようだ。 ![]() (令和7年2月20日著) (お願い 著作権法の観点から無断での転載や引用はご遠慮ください。) |
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