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![]() 1.アンダリゾートは面白い (1)海はダメ、山が良いと注文 私は今、都心在住なので、自家用車は不要だから、とうの昔に売り払ってしまった。だから、以前のように車で気楽に田舎へ行けない。伊豆半島に行くには、伊豆急行だけが頼りとなる。ただ、下田や河津や今浜へは何回となく行ったので、今回は仲間と伊東や伊豆高原に行くことにした。 ただ、昔々の伊東への旅行で、皆とボートで海釣りに出掛けたことがある。その時は、生憎の悪天候だったのに、出航を強行した。乗っている小さなボートが木の葉のように揺れる中を釣り針に餌をつけようとしたら、船酔いで気持ちが悪くなった。これには参った。 だから今回は友達仲間に「海はダメだ、山が良い」とお願いして交通手段や宿の手配を任せていた。いざ乗ってみると、特急列車はサフィール踊り子号という全車グリーン車両の豪華なものだったし、何よりその宿には驚かされた。 後期高齢者の我々が通常イメージする宿といえば、浴衣に着替えて豪華な夕食を兼ねた宴会、後は温泉に入ってダラダラと過ごすというものだ。しかし、この宿「アンダリゾート」は一風変わっている。 (2)アンダリゾートのコンセプト 玄関には、アジア風の二重の傘があり、カエルの置き物が迎えてくれる。入ると「ポンコ、ポンコ」という緩い音楽(ガムラン)とともに、「お帰りなさい」というレセプションの声がけから始まる。これは、「異国情緒と癒やしの非日常(サナトリウム・リゾート)空間を演出するための仕掛け」なのだそうだ。
(3)オールインクルーシブで楽 館内は、いわゆるオールインクルーシブだから、エステ以外は飲み物を飲もうが、パターゴルフ、ダーツ、ビリヤードなどの遊びをしようが、バーやカラオケで好きなだけ遊ぼうが、お金は取らない。その上、2ヶ所の大浴場をはじめ館内8ヶ所の貸切風呂も無料となっている。 酒が無料というので、酒飲みは喜んだが、ほとんど飲まない私には無関係だし、貸切露天風呂というのもおじいさんの団体には無縁と思っていた。ところが、朝晩の人のいない時間帯に風呂へ一人でふらっと行ってみると、何しろ露天の個室風呂だから、目の前は木々とそよ風、遠くには海と大島の絶景で、まあその解放感たるや、他の温泉に比べるべくもない。木には野生のリスまでいて、眺めると実に可愛いい。これは良かった。何回も入ってしまった。
(4)ホールインワンを達成したものの また、パターゴルフをやってみると、屋外の7番ホールでいきなりホールインワンを達成し、気をよくして8番ホールに進むと、ここはそもそもボールを置いても転がり落ちるほどの斜面になっている。案の定、OBが連続して8個も叩いてしまった。もうがっかりで、天国から地獄への気分だ。
室内には卓球台があり、これもそれなりに打てるのだが、最近のテニスと同じく直ぐ目の前にボールが来た時の距離感の調整が間に合わずに空振りしたりした。年相応に、動態視力が落ちているらしい。 ダーツもあった。3投ずつ15回投げて、スコアを競う。我ながら、最初は良く当たった。でも、中心より下半分ばかりだ。それで、的の上半分を狙うようにしたら、力が入ったのか、枠に当たって失敗が3回続いた。そこで、山なりに投げるのではなく、直線的に投げるようにしたところ、上手くいき、的の中心近くに当たったこともある。こんな遊びでも、工夫次第だと思う。
(5)ライブラリの正体は何ともはや ライブラリという部屋があったから、さぞかし立派な本が置いてあるのだろうと思ったら、何とまあ、漫画ばかりで拍子抜けした。私は親から「漫画なんて読むとバカになる」と言われて育ったものだから、忌避感が先に立つ。
最新は79巻(今年の5月19日刊)が出ているらしいが、ここでは第1巻から77巻までが欠けずに揃っている。試しに47巻を取り出して読んでみたら、朱海平原の戦いが描かれている。実写やアニメはまだここまで至っていない。読み進めるべきか、実写版やアニメが出来上がるまで待つか、思案のしどころである。 (6)来たお客さんの感想はというと レセプションのところにお客さんの感想が貼ってある。ほとんどが「日頃の喧騒を離れて、癒されました。また来ます」というものだが、中には曰く 「グランピングも欲しいな冷暖房」 「虫との戦いグランピング」 というのがあって、笑ってしまった。それにしても、前者のように冷暖房付けたらグランピングにならないではないか。 平日だったので、お客さんは概ね二つのグループに分かれる。一つは、学齢期前の子供を連れた若い夫婦である。まあ、これは分かる。いま一つは、我々のようなおじいさんグループだ。ロビーで外を眺めながら、聞くつもりもないが、自ずと耳に入ってくるのは、学生時代にいかに遊んだかとか、職場でのエピソードなどだ。 (7)夕食コースはとても美味しい さて、夕食の時間になった。午後5時からと、7時半からの二つのグループに分かれている。会場のメインのダイニングルームに行き、決まった席に案内される。ちゃんとしたフルコースで、どちらかというと、フランス料理である。ただ、金目鯛などが出てくるので、材料は地元産だ。予め別料理として鮑ステーキを頼んでいたが、これもすこぶる美味しい。総じて、味は合格点だ。
お客さんの中には、年老いた両親を連れてきた男性がいる。我々は「孝行息子」と呼んでいたが、両親が歩く時には手を引いてあげたり、食事の後には庭でパターゴルフで一緒に遊んであげたり、それはもう孝行の星のような献身ぶりだった。見習わなければならない。 ところが残念なことに、私の場合、「孝行したい時には親はなし」の状態だ。それでも、父が存命の時は両親と一緒に神戸へ行き、父が亡くなってからは、母や妹達と神戸と福井県に行ったので、最低限のことはしたのではないかと思っている。 2.大室山と一碧湖の自然美 (1)伊豆半島の成り立ち 日本列島の南側には、地下にフィリピン海プレートという海洋プレートがある。これが年に数cmという速度で北(北西)に向かって動いている。ほんの僅かな動きだが、これが百万年単位となると、数千kmもの移動距離になる。 太古の昔、このプレート上に、火山活動によってできた島々や海底火山群が存在していた。それがプレートの動きに乗って北上してきた。そしてまず約500万年前に、この火山島群が日本列島(北米プレート)に激しく衝突した。 南から押し寄せる強大な力によって、火山島群は本州側にめり込み、激しく隆起して現在の丹沢山地(神奈川県西北部)が形作られた。丹沢山系を調べると、かつて南の海底火山だったことを示す枕状溶岩や、暖かい南の海で育ったサンゴや貝の化石が多数見つかっている。 こうして丹沢が衝突したあと、同じフィリピン海プレートに乗って、さらに後ろから追いかけてきたのが伊豆の島々(伊豆微地塊)である。 約100万年前の出来事とされる。 先に衝突して本州の一部になっていた丹沢山系のさらに南側に、伊豆の火山島群が激突した。これによって、火山島だったものが本州と陸続きの伊豆半島となり、本州側は押し上げられて箱根火山や富士山の形成や活動に大きな影響を与えた。 伊豆半島は今でも年に数cmの速さで本州を南から北へと押し続けている。伊豆地方で地震が多いことや、豊かな温泉、天城山などの険しい地形は、この衝突のエネルギーが現在も続いている証拠だとされる。 (2)緑のお椀を伏せた大室山 伊豆高原のシンボルである大室山(おおむろやま)は、緑の芝生に覆われて、お椀を伏せたような美しい形をしている。地質学的には「スコリア丘(Scoria cone)」と呼ばれる非常に珍しい火山である。
約4,000年前のたった一度の噴火活動によって、わずか数ヶ月の短い期間で一気に大室山が出来上がった。なぜその年代が分かったかというと、噴火で黒焦げになった倒木が発見され、年代測定が行われたからである。 山がスコリアの重みで成長していくと、ガスが抜けた重い溶岩は山頂から溢れるのではなく、山の重みに耐えかねて山の麓を突き破って周囲に流れ出した。東へ流れた溶岩は、なだらかな台地(現在の伊豆高原)を作り、 さらにそのまま海へと流れ込み、断崖絶壁の城ヶ崎海岸を作り出した。 通常、スコリアだけでできた山は脆いもので、雨風で侵食され、やがて崩れてしまう。大室山が4,000年もの間、これほど完璧な形を留めているのには、実は人間の営みが関係している。 それは、毎年2月に行われる山焼きの伝統行事で、700年もの歴史がある。この山焼きは、屋根の茅葺きや家畜の餌に使う茅を採草するためのものだったが、これを行うことによって、茅(ススキなど)の若芽が育ち、強固な根が山肌をネットのように覆うことで、雨による土壌の侵食を防いでくれる。農事として長年行われてきたが、茅の需要がなくなった今では、観光行事として引き続き行われている。 (3)大室山ロープウェイ 大室山の麓の鳥居がある地点が、ロープウェイの出発地点である。そこから、二人乗りのゴンドラで、ブラリブラリと、標高580mの山頂に向けて上がっていく。
(4)一碧湖は伊豆の瞳 「伊豆の瞳」とも称される美しい一碧湖(いっぺきこ)は、今から約10万年前の火山活動によって生まれた火口湖である。すぐ近くにある大室山が「スコリアが降り積もってできた綺麗な山(スコリア丘)」であるのに対し、一碧湖は 「激しいマグマ水蒸気爆発によって地面が大きくえぐれてできた巨大な穴(マール:Maar)」に水が溜まった湖である。同じ火山活動によって誕生した地形であっても、両者は全く異なるタイプのもので、いわば、大室山が「凸」であるのに対し、一碧湖は「凹」というわけだ。かくして大室山と一碧湖は、その噴火した時代も、その噴火の形も異なるため、車で10分ほどの距離でありながら、全く対照的な美しい景観が並ぶことになった。
(5)一碧湖畔を散策する 一碧湖に着き、湖畔にある「TERRACE CAFE IPPEKIKO(テラスカフェ一碧湖)」 で、いろいろな観光用ボートが借りられる。それを借りて、湖の向こう側にある赤い鳥居まで行って来ようかと思ったが、何しろボートなどには何十年も乗ってないし、オールで手のひらの皮が剥けても困るので、自重した。
(令和8年6月1日著) (お願い 著作権法の観点から無断での転載や引用はご遠慮ください。) |

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