This is my essay.



The color-changed ginkgo trees at the Tokyo University.

 外は、秋たけなわである。私のオフィス・ビルから下を見下ろすと、緑の街路樹も色づいてきていて、その黄色や赤色が美しい。さて、土曜日のランチ・タイムが来た。私の家の近くに東大があり、その銀杏並木が名物である。お昼を食べに行く途中で、それを眺めに行くこととした。

 ところが今年は、11月18日の時点ではまだあまり紅葉は進んでいなかった。強いていえば、4割程度というところだろうか。それでも、正門の右横にある銀杏は、見事に黄色くなっていた。面白いことに、学生の数より、それを見物に来ている人たちの数の方が多いようである。われわれもその一人であるが、カメラを抱えた中年夫婦が最も多く、また画板を抱えた熟年世代の女性も目立つ。

 葉の間からもれてくる秋の陽の光が、銀杏の木をますます立体的なものに感じさせる。銀杏並木の横を歩いていくと、プーンとぎんなんの臭いが漂ってくる。東南アジアにドリアンという果物の王様があり、くさったチーズのようなその臭いも強烈であるが、このぎんなんの臭いもそれに負けないほどである。銀杏は数々の氷河時代を乗り切ったいわゆる古木のひとつであるが、銀杏たちは秋になると、この臭いを遠くの古代からまき散らしてきたのであろうか。

The Forest Hongou Hotel
 東大の正門から出て、さあどこへ行こうかという話となった。「今の気分はフランス料理かな」というので、そういえば近くにプチ・ホテルの料理店があったことを思い出し、道を渡ってそこへ行った。フォーレスト本郷というこのホテルは、なかなか新しくて気持ちがいい。しかしどうもこのホテルは、元々本郷会館といって、文部省系の共済組合関連の施設らしい。でも、まあそれはともかく、近代的でしゃれたホテルの形態をとっている。

 一階のフランス料理は、表に看板が出ていて料理の内容がわかる。右手はお昼のコースで2〜3000円台、左手はランチで800円台である。しかし朝ご飯が遅かったので、左手をとった。明るい店内に入り、窓際に席を取ると、近くからはドイツ語が聞こえてくる。発音がやわらかいので、ドイツ南部のご出身であろう。もう2時近いので、店内には、あまり人はいない。われわれのような暇人の時間である。

The French Restaurant
 家内は、鴨胸肉のロティ、私は鰊の薫製と焼きトマトである。軽いサラダのあと、メインが出てくる。私のは、鰊二切れが×印のようにならんでいて、その横には焼いたトマトが置いてある。さあどうかと思って、まず鰊の方にナイフを入れた。ふうむ、なかなかおいしい。堅くはないのがうれしい。トマトをちょっとつまむと、その酸っぱさが心地よい刺激となる。これは成功した。

 一方、家内の方はというと、ピンク色の大量の鴨胸肉と格闘している。私が「鴨もいいけど、油っぽくて堅いから敬遠した」というと、家内は「そうね。ただ、これは堅くはないわ。むしろ、堅くなる前に火を止めたってことかしら。」という。そこで「どれどれ、交換しよう」ということになった。確かにこの鴨はあまりにも柔らかすぎて、火も十分に通っているとは言い難い。こちらは値段相応の料理で、ちょっと失敗かもしれない。しかし家内は「そうね、まあ、これが日本料理だったら、鴨南と鰊そばってとこね」などと冗談を言いながら、そのたくさんの鴨を平らげた。


The menu 
ウェイトレスさんは、まったくの素人らしいが、その笑顔がよい。それに見送られてこのレストランを出た。それから本郷通りに戻ろうと歩き出したところ、左手に古い古い店があった。「ははーん、これが例の店かい。」と家内に聞くと、「そうそう、レジスターが大正時代からあるという例のところね。いちど入ってみましょう。」とのご指示があった。

 すると、まあ、そのレトロなこと。左には丸いカウンターがあり、出口の手前には確かに古いレジスターがあった。私たちのすぐ隣には、若い学生さんがいて、カレーライスをバクついている。おばさんがやってきて、手にカレー用のスプーンを持っている。「いやいや、食事ではないんです。生ジュースをお願い」とあわてて言った。そこで、二人でその簡単なジュースをいただき、そそくさと出てきたのである。一度行けば、もう結構というところであるが、まあどういうものかを見ておくと、話の種にも・・・やっぱりならないか。今日は、銀杏、フランス料理、レトロの日であった。


(平成12年11月20日著)
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Thank you for reading my essay on Saturday lunchtime.