This is my essay.


? その七つの不思議 ?

ホテル・ミラコスタから、プロメテウス山と港を望む

 夏のある日、家内がディズニー・シーの中にあるホテル・ミラコスタに泊まろうと言い出した。でも、夏休みに入ってからの、しかもこんなハイ・シーズンではとても無理だろうと思っていた。ところが家内は、泊まりたいと思ったその日曜日の前々日の朝に、インターネットと電話を駆使して、奇跡的に予約をしてしまったのである。あぁこれは大変、ではなかった、さあ楽しみができた。日曜日の宿泊なので、私は翌日の月曜日に休みをとった。一緒に泊まるうちの子は、月曜日は、舞浜から出勤となる。

 実のところ、私は遊園地やショーというのには、国内ではあまり行ったことがない。外国に出たときは、ミュージカルとかオペラとかを見たりするが、日本では、この手のものには非常に好き嫌いがある。たとえば宝塚劇場などは、入場してたった五分後には舞台に嫌気がさして、家内と子供を残して劇場から出てきてしまったことがある。ああいう男か女かわからないような雰囲気は、まったくもって、性に合わないのである。それから、しいて言うと、歌舞伎もこれまた苦手である。たとえば藤原の鎌足が、なんで江戸の時代に出てくるのかと考えただけで、頭がバラバラになりそうだし、加えてあの、とろんとして眠たくなる雰囲気も、さっぱり駄目なのである。話は変わるが、日本の在来の遊園地も、小さい子供がいたころは行く気もしたが、遊具もお粗末だし、切符切りのおじさんも不愛想だし、夏の暑い日などは特に、こんなところは金輪際来るものかと思わされるところばかりである。

 ところが、そういう私でも、ディズニーは嫌いではない方で、振り返ってみると、これまでロサンゼルスのディズニーランドには三回も行ったことがあるし、東京ディズニーランドも、二回ほど遊びに行ったことがある。その清潔な点、年齢を問わずお客を楽しませる点、合理的な点など、何やら私の心と頭に、ぴったりくるのである。一言でいえば、どれをとっても「知性」が感じられるのである。

 まあ、それはともかく、ディズニーといえども要するに遊園地なのだから、進んで行こうと思ったのはせいぜい30代までで、子供が大きくなったあとは何やら億劫で面倒で、そもそも行きたいという発想すら湧いてこなかった。ところが最近、家内が両親孝行をしようと、体力の落ちたお年寄りでも一緒に楽しめる都内の施設として、ディズニー・シーなら、その構内にホテルがあるということで、予約して行ってみたのである。そうすると、施設もいいし、従業員の態度もいいということで、非常に楽しんで帰ってきた。それを私や子供が聞いて、行きたい、行きたいと念仏のように唱えていたところで、突然、予約が取れたというわけである。

 私は、ディズニーには、
七不思議があると思っている。その第一は、ディズニー・シー内も、ホテル内も、従業員教育が行き届いているのがいい。これ、いったいどうやっているのだろうか。まず、スマイルがあり、それから何を聞いてもとりあえず的確な答えが返ってくる。お客が暇そうにしていると、何か話しかけてくる。カメラを持っていると、「二人をお撮りしましょうか」と聞いてくる。こまごまと買ったディズニー・グッズをどうしようかと辺りを見回すと、ホテルの部屋にちゃんと紙袋が置いてあって持っていってくださいと言わんばかりになっている、といった具合である。要するに、お客にフラストレーションを感じさせないだけでなく、お客が何を望んでいるのかということを先回りして考えて、対応策を用意しているのである。

 ところで、ホテル・ミラコスタの朝食のレストラン、BellaVista Loungeからの眺めは絶品である。見上げるとプロメテウス火山は火を吹くわ、正面のハーバーでは、次々に出航する船を見ていて飽きることがない。加えて、眼下にどんどん入場してくる人々がいる。これを見下ろして、「いやあ、きょうは一杯だ。おお、どんどん増えてる。こんなに暑くて、家族連れの皆さんは大変だ」などと思うし、室内には蝶々夫人のオペラが流れるしで、まるで別世界の優雅な一日の始まりである。

 もっとも、きのうの日曜日は、けっこう大変忙しかった。最初は、あまりの広大な眺めにぼんやりとしていたが、Medditerranean Harborではいきなりショーが始まった。それに見とれていたら、私の前をさっさと歩いていた家内がそのままどこかへ行ってしまうし、日焼けを気にするうちの子が、建物の中に入ってしまって、これまた視界から消えてしまうしで、すぐにばらばらになってしまった。というわけで、昼食と夕食には予約したレストランに集合しようということにして、あとは各自勝手に自由行動ということにした。ただ、要所要所では、携帯電話でいまどこにいるという調子で連絡を取り合った。

 このようにやってみたところ、おもしろいことに、うちの子よりも、行く先々で家内と出会ったのには、お互い笑ってしまった。どうやら、考えが似ているらしい。まず、どの出し物を見ようという趣味が一致しているのと、それからいろいろな予約時間や開催時間をすべて考慮して、その順序を合理的に組み立てると、同じような道順と時間になるのである。たとえていうと、数学の問題の解答のようなものである。もっとも私の場合は、単に勘で動いていただけなのだか・・・。

 園内は、日差しを遮るものがないから、とても暑い。食事時は別として、こういう場合には、観劇が一番である。なかでも面白かったのは、アンコールというニューヨーク・ブロードウェイのミュージカル作品で、ある作曲家が作った一連の音楽をダンスと歌で紹介するもの。タップ・ダンスもあれば、じっくりラブソングを聞かせる場面もあるし、クラシック・バレーそのもののような場面もある。動きが早いから、万人向けでわかりやすい。あの作曲家は、何という名だったかなあと、口の喉元まで出かかったが、ついに思い出せなかった(後から思えば、「フレデリック・ロウ」か?)。これって、案内書には何も書いていないが、もう少しそういった説明を加えてくれれば、お客も興味を持つと思うのだが、そうした文化的な説明がないのが残念である。ただ、「どこをどう行くと何のアトラクションやショーが何時からある」という説明のみである。運動会のスケジュールではあるまいし、ちょっと無味乾燥すぎはしないか、他の分野では、痒いところに手が届くようなことまでやっているのに。これが
第二の不思議である。

 いたく感心したのは、ファスト・パスというシステムである。これを予め切符の形でもらっておくと、各アトラクションで長蛇の列を作っていても、その横をすいすいっと通してくれて、優先的に乗ることができるというもの。これさえあれば、たとえ一時間待ちでも、わずか10分もかからないで乗ることができる。そのかわり、一度これを取得すると、たとえば三時間後でないと、次のファスト・パスを取得することができない。これは良いシステムだと思う。どのアトラクションでも一時間待ちということになれば、嫌になって、ひとつも見る気が起こらない人もいるだろう。その場合に、これを取得すれば、少なくとも一日に2〜3回くらいは、待たなくて乗れるというわけである。

 そういえば、もう30年近くも前になるが、大阪で行われた万博では各パビリオンで、どこもかしこも長蛇の列で、ほとほと嫌になった。それ以来、こういう乗り物はただ待つものというのが常識化していたのであるが、考えてみれば、これほどお客を馬鹿にしていることはない。私などいつぞやは、家族連れで横浜博に行ってはみたものの、あまりの混みようで、結局乗り物には何も乗れずに帰ってきたことがある。その点、ファスト・パスというシステムを考え出したのは、実に結構なことである。このカードは誰でも取得できるから、ふつうに列を作って待っているお客も納得できる。こういう分野でも、技術というか、ノウハウの進歩があるものだ。これは、どこで誰が発明したのだろうか。
第三の不思議である。

 それにしても、各出し物というか、ショーやアトラクションにはそれぞれスポンサーが付いている。しかし、それにしては企業の宣伝くささが全くない。ただ、案内書にだけは、どこの会社がスポンサーだと書いてあるのみである。これは一体どうなっているのか。広告主にとって、あまりにも割が合わないと思うのだが、各社をどうやって納得させているのだろうか。
第四に不思議に思うところである。

 ディズニー・シーでは、従業員がともかく若い。どこを見渡しても、従業員に年寄りは全く見ないのである。オリエンタル・ランドがいかに若い会社でも、ちょっと極端にすぎるほど、表に出ているのは若い従業員ばかりである。これは、どうなっているのだろうか。私の
第五の不思議である。

 
第六の不思議は、ディズニー・リゾート・ラインという周回電車である。10分か15分程度でディズニーランドとディズニーシーの周りを時計回りとは逆の方向で周回するモノレール電車であるが、お台場のゆりかもめと全然違って、結構早いのである。これら二つを取り替えたいくらいである。切符代わりに地下鉄のカードも使えるというが、こんな立派な電車を作ってしまって、うまくやっていけるのだろうか。

 東京ディズニー・リゾートは、イクスピアリという商業施設を運営しているが、
第七の不思議は、これに関するもので、これ、何のために作ったのだろうか。もちろん儲けようとして計画したのだろうけど、残念ながらあまりお客も入っていないし、構造が開放的すぎて、このシーズンは、その中の廊下部分にいると暑くてたまらない。シネマ・コンプレックスもあるようだが、ディズニー・ランド全体としては、こんな物販施設は失敗なのではなかろうか。ディズニーに来るお客は、ディズニーという雰囲気を味わいたいのであって、何も映画を見たり、ふつうの品物を買いにくるわけではないと思うのだがどうか。

 ということを考えながら、あちこちのアトラクションを巡り、ショーを見、ミッキーマウスの腕時計まで買って、家に帰ってきた。道中に思いだ上記のような屁理屈はともかくとして、とっても面白かった。それにしても、自分の家からわずか40分のところに、こんなものがあるとは。まだ、呑気なあの音楽が耳に付いて離れない。それにしても、どなたか、七つの不思議に関する私の質問の答えを教えていたただけないだろうか。


 最後に、次回行ったときのために、まだ行っていないものに◎印を付けておいた。うーん、この一日で、かなり行ったではないか。遊びすぎだ。しかし、考えてみると、また来ようという気持ちを起こさせることこそが、ディズニーが成功した理由かもしれない。まんまと、はまってしまった。おや、寝るのには、いささか早すぎる。撮ってきたデジカメの録画を使って、ちょっとした記録映画を作ってみよう。

           
写真参照

(平成14年 8月12日著)
(お願い 著作権法の観点から無断での転載や引用はご遠慮ください。)


(後 記) その後、日本航空の機内紙で、イタリア・ヴェネチアの特集をやっていた。上空からのヴェネチア市内の俯瞰写真があったが、これがなんとディズニー・シーのホテル・ミラコスタからの眺めとうり二つなのである。プロメテウス火山を除けば。

 あの丸い屋根は、どうやらサン・マルコ寺院らしいし、細かくマッチ箱のように連なる家々はミラコスタと同じで、さらにびっくりしたことに、五つばかりの灯りがぶらさがっている街灯も、これまたそっくりなのである。

 われわれ一家もヴェネチアを訪ねてサン・マルコ寺院に行ったことがあるが、確かに近くから見上げるのと、俯瞰するのとでは風景が違うようだ。しかしそれにしても、そのときの旅の興奮が意識下で呼び起こされたのだろうか、そういえばあのとき子供が漕がせてもらったゴンドラを含めて、どことなく懐かしい気がしたのである。






東京ディズニーシー


1.Medditerranean Sea
 (乗) Disney Transit Steamer Line
 (観) Porto Paradiso Water Carnival
 (食) Magellan's
 (泊) Hotel Miracosta
 (食) BellaVista Lounge
 ◎ (観) Disney Sea Symphony
 ◎ (乗) Venetian Gondolas
 ◎ (歩) Fortress Exploration
 ◎ (食) Ristorante di Canaletto

2.Mysterious Island
 (乗) Journey to the Center of the Earth
 (乗) 20,000 Leagues Under the Sea
 ◎ (食) Volcania Restaurant

3.American Water Front
 (乗) Disnet Sea Electric Railway
 (観) Encore!
 (観) Sail Away
 (食) SS Columbia Dining Room
 ◎ (食) Cape Cod Cook-off

4.Port Discovery
 ◎ (乗) StormRider
 ◎ (乗) Aquatopia
 ◎ (食) Horizon Bay Restaurant

5.Lost River Delta
 (乗) Indiana Jones Adventure: Temple of the Crystal Skull
 (写) Expedition Photo Archives
 ◎ (乗) Mystic Rhythm
 ◎ (食) Miguel's El Drado Cantina

6.Arabian Coast
 (乗) Caravan Carousel
 ◎ (乗) Sindbad's Seven Voyages
 ◎ (乗) The Magic Lamp Theater

7.Mermaid Lagoon
 ◎ (観) Mermaid Lagoon Theater



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