This is my essay.


一斉射撃直前の戦車隊

 もう、8月の末のことになるが、富士山の麓で陸上自衛隊の演習があるというので、行ってみた。東名で御殿場まで行き、それから野原のような山道に分け入ってしばし走ると、ロープで区切った駐車場に着いた。さらにそこからバスに乗り、自衛隊の駐屯地の中を横切って、その見物の席まで連れていってもらうのである。

 到着すると、周りは自衛隊の迷彩色の車両ばかり。まあ、この日の趣旨からして当然であるが、何だか緊張してしまう。それで案内されたのは、仮設の大きなスタンドである。それはそれは大きくて、スタンドだけでも、2万人は居ようかという規模であり、それに目の前の地面の上のシートに座っている皆さんの数を入れれば、3万人は下るまい。

 見物席には、どういうわけか、あの長島茂雄さんがいて、真っ白なブレザーを着ていたのがやけに印象に残った。しかも、彼の周りに中年女性たちが群がるように集まってきて、「長島さーーん」などと叫んでいた。この人の野球解説は何を言っているのか容易にはわからないが、こういう人たちの間ではまだ相当な人気があるようだ。それはともかく、それからしばしの間があって、海自、空自の幹部が着き、やがて陸自の幹部に囲まれて防衛庁長官が到着して、それで演習が始まった。攻撃用ヘリコプター

 要するに、大砲、ロケット砲、戦車砲、ヘリコプター搭載機銃、ロケット弾などを、はるか向こうの標的めがけて、あたりかまわず打ちまくるのである。数百メートルは離れているというのに、ダダタッ、ボガッ、ボ・ボッ・ボンーなどという音とともに砲弾が発射されるたびに、あたりの空気が切り裂かれ、それが直接われわれの体に響いてくる。とりわけ一斉射撃ともなると、まるで体を殴られているような感覚になる。それほど実弾の威力は強烈なのである。最初は、慣れないので怖いくらいであるが、そのうち、「チリ・チリ・チリッ」という戦車が動く音がし、それが停まったら何秒かの間隔を置いて戦車砲を発射するので、その直前に思わず体を硬くするということまで覚えてしまった。ところが、火砲などはそういう前兆もなく、しかも一斉射撃をするので、急に頭をひっぱたかれるような気すらした。見物人の中には、小さなお子さんを連れてきている方もいたようで、その子たちがこわがって、わあわあ泣き出す始末である。

 いやいや、これが戦闘か、こんなことに巻き込まれるのは真っ平ごめんだな、戦後の平和主義は間違っていなかったという気がするし、その一方では、やはり自衛力というものも大事だことだと再認識をした次第である。
ふわりふわりと降りてくる落下傘部隊員
 落下傘の降下があり、10数人の自衛隊員が大空をふうわり、ふわふわと降りてきた。しかしその中でただ一人が、小さな落下傘で、サーッと早めに降りてきた。あんなに早くて大丈夫かと思ったが、やはり、救急車が駆けつけてきて、すぐに運び去った。どうやら、主パラシュートが開かずに、補助のもので降りてきたらしい。後から聞くと、やはり怪我をしたとのこと。それも、訓練している落下傘部隊員だから、さほど大した怪我ではなかったが、これが普通の人だったら、重傷を負っただろうとのこと。まあ、危険はつきものとはいえ、隊員の日頃の訓練と努力に敬意を表したい。

  蛇足ながら、演習の最後にアナウンスがあり、「本日の砲弾やロケットの価格は、合計で約3億7000万円」とのこと。お金がかかるものだ。



(平成15年10月25日著)
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