This is my essay.





 鳩が好きな人が多い。そのひょこひょこ頭を動かして歩く姿はかわいいし、平和の象徴でもある。公園で群れている鳩さんたちに、餌をやりに行くことを楽しみにしているご老人もたくさんいる。ところが、私の回りには、その鳩による公害で悩んでいる人が多いのである。

 かくいう私も、数年前に新築マンションに入居したのであるが、その当初、鳩さんたちの洗礼を受けたことがある。春のうららかなある日に仕事から帰ってきたところ、玄関のちょうど前のところに鳩のふんが飛び散っていた。「これはやられたなあ」と思い、水で洗い流した。まだあまり時間がたっていなかったので、比較的簡単に流すことができた。それにしても、こんなに人の通るところで、大胆な鳩さんだと思ったものである。ところがその翌朝の8時頃、玄関でククー、ククーッという声がした。「また来ちゃったな、どこにいるのだろう」と扉を開けても、どこにもいない。ところが再び鳩のふんがちゃんとしてあった。

 水を持ってこようとして扉を閉めると、またククー、ククーッと鳴く。再び扉を開けて回りを見たところ、やはりどこにもいない。ところが、ふと上を見上げたところ、小太りの鳩と目と目があってしまった。何と、玄関横のケーブル・テレビの端末ボックスの箱の上にいたのである。向こうもびっくりしたらしいが、そのまま居座る様子である。こちらは困って、片手でしっしっとやっても、おいそれとは動く気配がない。こちらは、両手を振って「どこかへ行ってくれ」と叫ぶと、ようやく動き出し、私をにらみつけるようにして飛び立ってくれた。

 確かにこの端末ボックスの箱の上は、上に10センチほどの空間があるし誰も来ないので、鳩さんには絶好の隠れ場所である。しかしそうかといって、玄関先にこんなに毎日ふんを出されてはたまらない。そこで、どうにかしてこれを塞ぎたいと考えた。何か材料はないかと思って東急ハンズに行き見て回ると、あったあった。造花を置いてしまえば、遠目では美しいし、鳩も居座ることもできない。それを台所用のステンレス製お皿置きにくくりつけ、これに磁石をくっつけて出来上がった。その端末ボックスの箱は鉄製であり、磁石を使うと汚さないで簡単に設置できるのである。その成果がこの写真で、まあまあの出来だった。しめて、約一万円の出費である。そのときは、いささか高くついたのではないかと反省した。

 ところが、これは決して高くも間違いでもなく、最も安くて効果的な対策であったのである。その頃あたりから、6階から10階くらいまでの中層階の部屋に、鳩さんがよくやってくるようになった。もう私の部屋の端末ボックスの箱には留まることが出来ないので、両隣に行き、そこの玄関のランプの上でまた、ふんを垂れ流し始めたのである。お隣さんも堪忍袋の緒が切れてしまい、まず、鳩が嫌うというスプレーを噴霧した。しかし、当初は効果があったものの、鳩はすぐに慣れてしまった。次に、鳩が苦手だという大きな目玉の風船を置いた。でも鳩には、あまり効果がなかった。そこで、お隣さんは、ピアノ線をめぐらした。ところがこれは全く効果なしであった。鳩はいとも簡単にピアノ線をくぐり抜けたのである。とうとうお隣さんは、私と同じように、その場所に物理的に障害物を置いて、やっと鳩さんを撃退することができた。思えば高くて長い回り道をしたのである。

 それからは、われわれの階には鳩さんはあまり来なくなり、われわれより下の階で、ふたたび同じような戦いが繰り広げられるようになった。the battle of Britainならぬ、 the battle of Pigeon というわけであるる。この頃になると、管理人が各人に効果的な鳩対策を伝授できるようになり、対策がとられた結果、ようやく我がマンションから、鳩さんは駆逐されたのである。ここに至るまで、2〜3ヶ月もかかってしまった。鳩軍団は、なかなか手強いのである。

 家内によれば、マンションによく来る鳥を観察していると、どうも鳥によってなわばりがあるらしい。5階以下の低層階には雀が来ている。6階から10階くらいまでの中層階には既に述べたように鳩が来て、11階以上の高層階にはカラスが来てしまうのである。また、たとえばベランダに何か鳥の気を引くものがあれば、立ち寄って勝手にふんを垂れ流されたりする。たとえば、洗濯ばさみに赤や黄色のものを使ったりすると、たちまち鳥がやって来ることがわかった。だから私の家の洗濯ばさみはすべて青色で統一している。青い実は食べられないからである。これは、鳥にもわかるらしい。

 ベランダから下に広がる風景を見ていると、電線に鳥がとまっていることが多い。朝夕は、やはりカラスが目立つ。一羽がカアカアと叫ぶと、それをリレーするように次から次へと同じように叫ぶので、あたかも狼煙のようである。どういうシチュエーションでどのように叫ぶのかを研究したりすると、案外これは人間と同じような言葉かもしれない。カラスは頭がいいのである。

 ところが、わが鳩さんは、残念ながらあまり頭がいいとは思われない。日がな一日中、頭を振り振りひょこひょこと歩き回るのみである。近くに神社があり、そこには多くの鳩が住み着いている。鳩は、もともとユーラシア大陸の広大な草原地帯に住んでいたようで、平野部に所々残っている荒れ山の崖のところに巣を作っていたらしい。そういえば、神社の神殿のような高い建物の中で、人の手が届かない軒下などは、そういう彼らの出身地帯の巣のあった場所とそっくりである。そこに住み、人間があげる餌を食べていくと、生活には困らないという。

 広島の平和公園では、鳩の数が増えすぎて困ったらしい。そこで、鳩が一日に人間からいただく餌のカロリーを計算したところ、必要量をはるかに超えていたという。これでは鳩の数が増えるわけだということで、それから観光客などに自粛を呼びかけて、その個体数をコントロールしているとのこと。浅草寺、上野公園などが近くにあって定住する鳩が多いこの辺りでも、そういう手段が必要ではないかと思うのである。

 イタリアのヴェニスにあるサンマルコ寺院を訪れたときのこと、家内が、「この寺院は何かなつかしい気がするけれど、なぜかしら」とつぶやいた。そういえば、私もそんな気がしてきたのである。ところが、それがなぜかはなくわからない。そうこうしているうちに、その頃はようやく学齢期に達するか達しないかであった私たちの二人の子供が、「ワーッ」と喚声を上げて駆け出したのを見て気が付いた。たくさんの鳩がいて、観光客の周りで餌をねだっている。まるで浅草の浅草寺とそっくりの風景だったのである。

(平成12年11月22日著)


さて、その後、平成15年10月29日午前0時頃からのNHKの番組を見ていたら、鳩の対策として、非常に良い提案があったので、備忘録として、それを記しておきたい。

対策1 釣り糸を屋根又はベランダに張ること

 釣り糸(5号又は6号)を、鳩がとまりそうな壁面上部の最も外側に張る。高さは、場所によって、(屋根の場合は)8センチ又は(ベランダの場合は)3センチ間隔で、複数の糸を張る。ピーンと張るのがコツで、緩いと鳩が通り抜ける。その場合、糸を支える支柱の一方に、バネのようなものを入れてもよい。支柱の間隔は、2メートルが適当。これは、鳩が侵入するときに、翼が引っかかることになり、鳩にとって不愉快な経験を与えることになるからだという。

 なお、CDや動くキラキラしたものなどを吊しておいても、すぐに慣れてしまって、効果は長続きしない。

対策2 鳩が嫌がる植物の鉢植え

 ローズゼラニウム(注)又は薔薇の鉢植えをベランダに置いておくこと。これは、鳩は体が傷つくのを恐れているため、トゲのある植物のにおいに敏感なためだという。

 (注)http://www.yumegarden.com/herbroom/geranium.html

参考1 鳩の生態に着目して対策をとること

(1) 鳩は、まず建物の屋上の端にとまり、それから下のベランダにおりていく。したがって、最初にとまる屋上の端に、釣り糸を横に張ってとまることができないようにすれば、下のベランダにもおりていかない。

(2) 各戸のベランダのみに絞って対策をとるには、まず鳩の侵入経路を確認する。まずベランダの上にまってから内部に侵入するので、そのベランダの上のところに釣り糸を張ること。

参考2 鳩が住み着かないようにすること

 鳩は、一時立ち寄り → エサ場の待ち → 休憩休息 → 巣作り
という段階を踏んで侵入してくるので、絶対に最後の巣作りをさせてはならない。いったん巣作りをすると、その巣を動かしたり、卵を獲ったりすると、鳥獣保護法で処罰される。

(平成15年11月1日著)

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