This is my essay.



お台場の日本科学未来館の裏手

 11月23日の勤労感謝の日の朝、さて、自分の勤労を記念してきょうは何をしようかと思った。そういえば、きょうはハリーポッターの二作目の封切り日だった。いやいや、混んでいるだろうなぁと弱気になり、そこで思い立ったのが、東京のお台場の近くにできた、日本科学未来館である。2001年7月に開館したばかりで、まだ一年と少ししか経っていない。そういえば家内も、行きたがっていた、それでは一緒に行こうかというわけで、出かけてみた。

 実は私は欧米に行くと、この手の博物館や美術館を訪れるのを何よりも楽しみにしているのだが、国内の博物館には、その展示品や展示手法にがっかりさせられることばかりで、最近はほとんど行ったことがない。それでも2〜3年前に、上野の科学博物館は近くだからと入ってみたのだが、何というかその古さと展示品のお粗末さに辟易して、すぐに出てきてしまった経緯がある。そのような中で、今回のものは新しいし、先端科学の分野だから、少しは面白いかもしれないと、珍しく行ってみる気になったというわけである。

 行ってみた感想はというと、一言でいえば、とてもとても面白かった。展示品も工夫がしてあるし、あちこちにインタープリーターという展示解説員がいて、わいわいがやがや説明してくれる。だから、普通の博物館のように、プレートに、その展示品についてのお粗末な解説をちょっと付けてそれでおしまい、あとはご勝手に、というスタイルとは違うのである。中でも面白かった展示品は、次のようなものである。

1.インターネット物理モデル

 このモデルの全体像は、まずちょっとしたタワーがいくつかあって、その中では螺旋状のものが回っている。そのタワーどうしをステンレスの溝がつなぎ、その溝の中を白と黒の玉がいくつか並んで動いている。初めて見たときには、いったいこれとインターネットとはどういう関係にあるのかと疑問に思うが、答えはいとも簡単で、動かしてみるとその疑問はあインターネット物理モデルっという間に氷解する。まず、伝えたい文字と相手のターミナルの番号を選択し、その情報を16個の白と黒の玉に置き換える。最初の8個は相手のターミナルの番号を表し、後半の8個は文字を表す。そういえば、8ビットの世界である。それで出発させると、16個の玉は、お行儀よく並んで溝を動いていって、最初のタワーの中に入る。それが相手先を振り分けて、溝や次のタワーを経由して、最終的に目的のターミナルにたどりつくというわけである。
 結局、ターミナルはパソコン、溝は通信回線、タワーはルーター、白と黒の玉は0と1からなるコンピューターのデジタル情報というわけである。その最先端のテクノロジーを、よりによって最もローテクのこんなタワー、溝、それに白と黒の玉で表すなんて、知恵者がいるものだと感心した。その創意工夫に脱帽というところである。

2.地震源の立体地図と高性能地震計観測網

 次におもしろかったのは、日本列島の地震源の立体地図である。日本列島の立体地図に、震源をプロットしていくと、何とまあ、地下数百キロメートルのところまで、斜めにいくつかの震源の面のようなものが現れてくるのである。日本列島には、ユーラシア、太平洋、それにフィリピンなどのプレートが四つもぶつかっているが、それはそうしたプレートの境界面を描いているというのである。
 また、その横には大きな日本列島の地図があり、現在の日本各地の地面の振動をリアル・タイムで刻々と表示している。これは、全国各地に置かれた高感度の地震計600台以上がとらえた微かな振動をそのまま表示するものである。猫の歩く振動すら捉えられるという高性能地震計からの情報で作られた地図をじっと見ていると、たまたま、中部地方の飛騨高山あたりでわずかな地震があった。そこから発した振動は、その震源の周囲にどんどんと広がり、東方向では関東平野の端あたりまで到達し、それが終わると何事もなかったように、いつもの表示に戻った。それにしても、全国いつも、本当によく動いている。人間の体内の鼓動のようなものだ。ときどき、くしゃみや鼻水をすするのが、地震というわけか。

3.超伝導のピン留め効果

 超伝導のコーナーでは、話に聞いていたマイスナー効果を見た。まず、窒素で冷却した超伝導物質に対して、常温の磁石を近づける。そうすると、超伝導物質は、磁石を避けるように逃げていってしまうのである。次に、超伝導物質の上に、磁石を置く。その間には、断熱材の役割を果たすものを挟んでおく。その状態で超伝導物質を窒素で冷却し、十分に冷えたあとで、断熱材を取り去る。そうすると、磁石は1センチメートルほど、宙に浮いた。ここまでは、マイスナー効果としてよく知られているところである。

 しかし私はかねてから、このままでは、簡単に磁石が外れてしまって、超伝導列車には使えないのではないかと思っていた。しかし、まさに事実は奇なりで、そう簡単には外れなくて、むしろ磁石を動かすと超伝導物質も引きずられるように動くのである。これを超伝導のピン留め効果というらしい。ひとつ、勉強になった。

4.日本の宇宙実験棟の実物大モデル

 これも、非常に興味深かった。そもそも、宇宙基地の中の生活空間って、どうなっているのだろうかというのが素朴な疑問だった。その答えは、これを見たら簡単に出る。何のことはない、重力がないところだけは違うが、あとは地上と全く同じようにするよう配慮されている。つまり、無重力の中で自分の体を支えられるようにと、あちこちに足首をひっかけられるスリッパ状のものや、つかまるためのバーがある。それ以外はなるべく普通の生活を送れるようにと、配慮されている。居住スペースの寝室と机

 たとえば、各乗組員用の書斎のような小さな空間(カーテンで仕切られている)には、机とスタンド、外を覗き見るための10センチくらいの窓、それにパソコンまである。トイレは、足首用のスリッパのようなものとひざを固定するためのバーがあり、出たものはバキュームで吸い取り、パック詰めして最後には宇宙空間に投げ捨てるらしい。それでは、糞尿を線路にばら撒いた昔の黄害列車と同じではないかと思うが、さにあらず。結局は地上目指して大気圏突入をし、それで燃え尽きるらしい。

 また、宇宙塵対策もあった。外側を金属板で多い、その内側にクッション材を挟む。それで、外の金属板を突き抜けた直径1センチくらいの宇宙塵を防げるらしい。もっとも、全く同じところに別の塵が再び突き抜けられたりしたら、もうおしまいであるが、そういう確率は非常に低いというわけか。

5.ジオ・コスモス(地球の投影モデル)

 入り口にあるシンボル展示のジオ・コスモスも、見飽きない。球体に最新のLEDつまり発ジオ・コスモス光ダイオードが100万個も組み込んであり、宇宙から見た地球の生の映像が刻々と写し出されている。なかなか、きれいなもので、下にはそれを見上げることができるように、ベットのような寝そべって見られるところも用意されている。下から見上げるだけでなく、その周囲を大きく巡回して上や下の階にいけるような経路もあり、それをゆっくり歩きながらこの地球をじっくり眺めるのは楽しい。

 このジオ・コスモスに組み込まれた青色ダイオードは、特許料の支払いについて議論を呼んでいる中村教授と日亜化学のものが使われているらしい。

6.ロボット・ワールド

 ロボットといえば、ホンダのアシモくんだが、やはりここの主役は、そのアシモくんだった。歩くのをみると、いや早い早い。さっさっさ、という感じである。腕の動きも非常になめらかで、手や腕に表情すら感じられる。もちろん、すべてはあらかじめプログラムを組んホンダのアシモでいるのであろうが、こうした定型的な作業であれば、自然に動作ができるという印象である。ただ、その歩く恰好は、正面から見ると比較的自然であるが、横から見た場合は、ひざを曲げて、おじいさんのような歩き方をするのは、笑えてくる。背中にせおったリュックのような荷物が籠だとすると、これに鍬でも持たせれば、まるで農作業に行くお年寄りといった風情である。最先端のロボットとは言いがたいなぁという気がするのは、私だけではないだろう。こうしてひざを曲げるのは、転ばないためなのか。

7.昆虫のプログラム

 意外とむずかしかったのは、昆虫の遺伝子のプログラムをして、それを森に放すというゲームである。体の形をどうするか、目の大きさ、目と体の色などを決め、それから羽と足を生やす遺伝子の組み合わせを選ぶのである。たて3列、よこ10行に並ぶ遺伝子を操作して、うまく二つ以上の羽と六本の足を生やすことができれば、まあまあ生き残れる個体ができるはずである。

できた昆虫 ところが、これがなかなかうまくいかない。手当たり次第に遺伝子のオフ・オンをやっていくと、体の中央どころか、何と末端近くの羽が生えてしまうこともある。それに、ずっと離れていて、こんな遺伝子は関係ないだろうと思うものがも実は鍵となるものだったりして、試行錯誤の連続である。というわけで、ほうほうの体でやっと、普通にやっていけそうな個体を作り上げ、「ニュー」と名づけた。ニューは、森を飛び回って私も大いに満足したのである。ところが、ふと左のいすに座っている小学校低学年の坊やの方に目をやってみたところ、何と、私より立派な昆虫を作って、飛ばそうとしているではないか。ついさっき、来たばかりなのに。最近の小学生は、恐るべし。







(平成14年11月23日著)
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