仕事で忙しくなると、全く別のことで気を紛らわせたくなる。人によっては、それは読書だったり音楽だったりする。かつてはそうだった私も、近頃では、パソコンのホームページやプログラム作りが十分に気晴らしとなっている。プログラムといっても、昔のフォートランやコボルなどの古典的なものとは全く違って、最近の HTML 文書で動く Javaというプログラミング言語は、たとえていえば馬鹿チョンカメラのようなものなのである。つまり、大それたことを考えない限り、お仕着せの部品を集めれば、いつの間にかできてしまう代物で、コンピューターの出始めの頃に大変な目に遭った先人たちの苦労に思いを馳せれば、果たしてこんなことでいいのかと思うくらいである。 試しに私のホームページで、何か新しいことをやりたいなと思ったりする。たとえば今回の場合には、「そうだ、写真が相当たまってきたので、それを一覧できるものがいいな。できれば動くものがよろしかろう・・・」とまあ、そんな調子で思いつく。そして、手持ちのソフトやインターネットいろいろと調べてみると、公開されて使用してもよい部品が容易に手に入る。それを、ちょこちょこっと組み込んで、すぐに出来上がりというわけである。小難しい知識は何にもいらない。 さて、それを動かすと「あれあれっ。だめだ。途中で実行が止まってしまった。なぜか・・・」などと(いつものことだと)思いながら、辛抱強くプログラムを一行ずつ見ていくと、その中ばを過ぎたところで、あった、あった。「"」が抜けていたり、あるいは「.jpg」とすべきところの「.」がなかったりというバグを3つ見つけた。たったこれだけでプログラムは動かないのである。こういう融通の利かないところは、昔とまったく変わらない。しかし、それにしても、バグ(虫)とは、よく名付けたものだと思う。 これらを直してっと、・・・それで再び、実行させてみた。すると嬉しいことに、期待通りに始まったではないか。「おおっ動いた、動いた。思った以上の出来だ」と喜ぶ・・・。これがプログラム作りの楽しさである。何度やっても、気分はいいもの。今回のプログラムは、画面上で写真が縦横無尽に飛び回る仕掛けである。あまりに多くの写真がぶんぶんと飛んで回ってめまいがするほどだが、じっくり見たいときには、画面をクリックすれば、個々の写真が大きくなって表示される。また、一度に20枚しか表示できないという限界があるものの、真ん中の丸をクリックすると、別の20枚が出てくるという仕組みである。ふむふむ、よく出来ている。 ここで多少、ぼやきを言わせてもらえば、最近のプログラムの部品は、小憎らしいほど実によく考えられていて、しかもお手軽に利用でき、しかもあっという間に出来てしまうから、本当に味も素っ気もないほどなのである。いや確か、同じことを昔も感じたなあ、というわけで、手作りの模型とプラモデルのことを、ふっと思い出した。 私が小学生の頃には、男の子の間で模型作りが流行っていた。猫も杓子もその辺のありあわせの材料で、船やら戦車などの不細工な木製の模型を、それぞれたっぷりと時間をかけて作っていたものである。ところがちょうどその頃、プラモデルなるものが市場に出回り始めた。それは、どんなに複雑な模型でもあっという間に簡単に作れ、しかもとっても美しく出来上がるものだった。私も欲しくてたまらなかったが、何しろ立派な値段で売られていたものだから、小学生のお小遣いの範囲ですぐ買えるわけにはいかなかった。しかしそこを何とかやりくりしてようやく貯めて、待望の潜水艦を買った。ところが、それはわずか十数分で組み立て終わってしまった。作ったというか、むしろ組み立てたあとで、何だかとても損をした気分になったのである。それが私の記憶の箱から蘇って、ちょっとほろ苦い気分がした。 まぁ、それはともかくとして、せっかくこれをホームページに組み込んだのだから、ついでにこれを超小型化したような「動くアイコン」を作ろうっと・・・。というわけで、そのうち10枚ほどの写真をさらに小さくし、それを斜めに積み上げて・・・、50x50ピクセルの画像を何枚か作り、その上を徐々にずらせて動かし・・・うーん、これは細かい仕事だけれど・・・、それで最後に一枚のgifファイルにしてと、さあこれで出来上がり。走らせてみると、動きはじめた。ただその何というか、小さな画面中で動き回りすぎて、せわしないのが難点である。完全に満足のいくものではなかったが、まあしかし、少なくともアイコンの役目は果たしていると思う。 これらを私のホームページ・アドレスにアップロードし終わり、これで閲覧できるかどうかという段階だが・・・。お気に入りからクリックすると、まずインデックス・ページが立ち上がり、そしていよいよ今回の新機軸であるこの動き回る写真集、名づけて「飛翔する表紙写真」をクリックした。すると、いやあ、うまくいった。ちゃんと動いている。左下の三角マークをクリックすれば写真が斜めに飛来してくる。マウスを使うとちゃんとその動きに反応して速度が変わる。そしてまた左下の丸い地球儀のようなマークをクリックすると、今度は写真がぐるぐる回り始めた。これで、完璧である。 ところがそのあとで大変な問題が起こった。ブラウザのインターネット・エクスプローラーを閉じようとすると、画面が一挙に青くなり、白い文字が現れてあっという間に消えた。つまり、Windows XPが、強制終了されてしまったのである。そうこうしていると、自動的に再び立ち上がってきて、「システムは深刻な被害から回復しました。レポートを送信しますか?」などというのが出てくるのである。そして、そのマイクロソフトに対してレポートの送信をし終わると、新たな画面が出てきて、「デバイス・ドライバーが原因ですが、具体的な原因は特定できません」とくる。「全く、何だこれは」と言いたくなる。 ここで、考えこんでしまったが、どうにも原因はわからない。とりあえず、そのままとして、翌日別のパソコンで私のホームページをチェックすることにした。そして翌朝、「飛翔する表紙写真」をクリックしたところ、正常に動き、パソコンも普通通りに終了できた。念のため、実家のパソコンでもそれを見てもらったが、正しく表示されてWindowsも修了できた。ただし、親が言うには、飛び回る写真を見つめていたら目が回ったとのこと。これは余計だが、いずれにせよ異常なのは、どうやら私のパソコンだけの現象らしい。一般のパソコンで見られるならいいか、というわけで、しばらくそのままにしていた。 しかし、自分のパソコンで自分のホームページの一部が見られないというのは、たいへん不便である。そこで、原因となるものを考えていくことにした。いろいろとパソコンを動かしてみたところ、この現象は、新たな Java Applet を Internet Exploror で動かしたときだけに起こる。だから、 Java Applet の問題らしい。だからというわけで、「Java」と「マイクロソフト」で検索をかけてみた。すると、思いがけないことがわかった。 「2003年2月3日以降 Microsoft は、Javaをサポートしなくなった」というのである。そもそも、Java言語というのは、OSやハードに依存しないプログラムということで、Sun Microsystems社によって開発されてきた。それを Microsoft社 も Sun Microsystems社と契約することによって使用してきたのである。しかし、Microsoft社は WindowsというOSを独占的に供給することによって多大な収益を上げてきた会社であるから、そんなOSに依存しないプログラムが普及してしまうと、独占的地位が揺らいでしまう。そうしたことから、あるとき以降、Microsoft社は、同じ Javaでも、それを改変してしまって独自の Microsoft流Javaなるものを出した。これをSun Microsystems社が契約違反だと訴えて1997年に裁判が始まった。これが第一次 Java戦争で、和解によりMicrosoft社が Sun Microsystems社に対して、2000万ドル支払うことで終結した。それが、1998年11月のことである。そして、その問題となった契約が切れたあと、Microsoft社は Javaを見切ってしまった。どうやらそれが、上記の「Javaをサポートしなくなった」という結果となったらしい。いわば、第二次 Java戦争のとばっちりというわけである。 なるほど、と感心した。しかし、面白がってもいられない。何とかしないと、自分のパソコンでは、ホームページを永久に見られないではないか。そこでさらに調べたところ、結局、Sun Microsystems社のホームページに、ブラウザ上でJavaを動かす補助ソフト、つまりJavaプラグインが入手できることがわかった。早速その「Java 2 Runtime Environment SEv1.42_03」なるものをダウンロードした。それで、私のパソコンから自分のホームページを開き、問題の飛翔する表紙写真をみてからシャットダウンした。すると、強制終了されずに、すべてがうまくいったのである。 いずれにせよ、国際企業間の争いが、私の小さなパソコンにも影響していたというわけだ。小さなプログラムから始まった今回の小事件だが、マイクロソフトの独占問題にまで飛んでしまった。ミクロからマクロへ、パソコンの世界は、実に奥が深いではないか。 【後日談】 その後、私もJavaへの関心を高め、写真集を中心にいろいろなJavaScriptを、、様々なホームページからダウンロードしてきて、それを使わせてもらっている。現在では、Javaがないと、私のホームページは誠に寂しいものとなっていただろうとつくづく思う。その過程で、特に参考にさせていただいたホームページとして、「とむやん君」などあるので、引き続きコツコツと勉強させてもらっている途中である。プログラムの作成も、一部を間違うと全体が動かなくなったり、あるいはすぐれた方程式のようなものを作って多くの対象を一挙にかつ正確に処理できることなど、法律の条文と非常に共通しているところがあって、とてもおもしろい。 ところで、同じ「Java」といっても、実は「Java」と「JavaScript」の二つがあり、この両者は混同しやすい。いずれも、OSに依存しないもので、言語構造も似ているものであるが、開発した会社、開発の経緯などが全く違っていて、要するに全く別のものなのだという。 まず、Javaは、Sun Microsystems社が開発したC++ に近いプログラミング言語で、これに「Applet」という小さなアプリケーションを付けて動作させるものである。Java Appletは、クラスファイル(.class)を必要とし、HTML文書の中で、<APPLET code="...">〜</APPLET> というタグを挿入して動作させる。ちなみに、このページの冒頭で動くものは、このJavaである。しかし、「コンパイル」作業が必要であること、読み込みに時間がかかることから、最近では、もっと手軽なJavaScriptが使われることが多い。 そのJavaScriptであるが、これはNetscape社とSunSoft社が共同開発したスクリプト言語で、簡易ワープロで簡単に作ることができるし、もちろん「コンパイル」作業は不要である。HTML文書の中で、<SCRIPT type="text/javascript">〜</SCRIPT> というタグを挿入して動作させる。そういうメリットがあるので、最近ではこちらの方がよく使われている。 (平成16年2月14日著、5月16日加筆) (お願い 著作権法の観点から無断での転載や引用はご遠慮ください。) |
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