悠々人生のエッセイ








 パソコン関係の機器やソフトというのは、よくわからないものだ。私はパソコンをもう9年近くもやっているが、今度の出来事だけは、一体全体どうなっているのか、さっぱりわからなかった。事の始まりは、家庭内で無線LANを作ってみようと思い立ったことである。それまでは三台のパソコンが家庭内のあちこちに分散し、各自てんでバラバラにインターネットをやっていた。それを、私のノートパソコンを基点として、家内と子供のパソコンを無線で繋げれば、それぞれがADSLの高速インターネットを楽しむことができるということになる。

 思い立ってさっそく、いつも贔屓にしている有楽町のビックカメラに行き、無線LANの機器を探してみた。すると、3万円程度で手頃なものが見つかった。「確か、去年の11月頃には5万円くらいしたのに、何という価格低下だ、これじゃデフレになるのも無理はない」などと思いつつ、それを買って帰った。とりあえず、私のパソコンを有線で繋げ、家内のものを無線で繋いで、両方がうまくいったら、私と子供のパソコンを無線化するという算段である。

 メルコのエア・ステーションという商品で、箱をあけてみると、意外と小型であった。私の家はスペースの狭いマンションなので、こんなつまらないことでうれしく思えてくるのも、いささか浅ましい限りである。それはともかくとして、この機器には、あるべきマニュアル本がない。ざっとしたことが書いてある一枚の紙があるだけである。それには、付属のCDにマニュアルが載っているとのこと。そこで、それを入れて「マニュアル」をクリックすると、アクロバット・リーダーが立ち上がり、それがマニュアル本となっていた。これも安価になった代償かと思いつつ、それに従って本体機器と無線LANカードをインストールする。緊張する一瞬だが、うまくいった。インストール成功と出てきた。次に、家内のパソコンを開き、無線LANカードだけをインストールし、それで動かしてみた。うん、これも成功。ブラウザを起動してみたところ、おおっ、インターネットに繋がった。よかった。所要時間はわずかに20分。いとも簡単なものだった。

 というわけで、その日以降、私と家内は、夕食を食べたあと、ひとつテーブルのあちらとこちらで、それぞれが勝手気ままにインターネットを楽しむ環境になった。いいことか、悪いことかはともかく、これで一台のパソコンの使用を巡って遠慮しなくて済む。無線LANも相当なスピードだし、ブラウザがサクサクッと動く。高速ネットによるウェブ・サーフィンをそれぞれが楽しめるようになった。

 ところが、そうして一週間くらい経った、とある日のことである。夕食後に私のパソコンを開けたところ、あれっ、インターネットに繋がらない。あちこちいじったところ、ようやく繋がった。家内のパソコンはというと、無線なのにちゃんと繋がっている。おかしい、私のは有線であるにもかかわらず、繋がらないのは、どうしたことか。最初に思ったことは、有線のケーブルが切れてしまったのではないかということである。別のケーブルを買ってきた。しかし、それでも駄目だった。ポートを変えても何をしても、全然繋がらない。これは、おかしい。試しに、従来通りの電話線で試みた。ああ、こちらの方は、ちゃんと繋がったではないか。すると、問題は、無線LAN機器か、こちのパソコンの問題たとえば何らかの拍子でLANのモデムのドライバーがおかしくなったのかもしれないと思った。ただ、デバイス・ドライバー一覧では、正常に動いている。すると、後者の可能性は低い。しかし、家内のパソコンが動いているのだから、前者もあまりありそうもない。

 などをいろいろと考え、またあちらこちらをいじくったところで、ギブアップした。そして結局、私のパソコンについてウィンドウズXPを再インストールして最初からやり直すべきだと考えたのである。そういえば去年11月のXP発売時には、パソコン・メーカーのヒントも指示も全くないままに自分で勝手にMeからXPにバージョンアップしてしまい、本来なら、パソコンが動く時の基本であるBIOSを変えなければいけないところ、それを自己流で適当に制御してやってきたという経緯があった。これが以前から相当気になっていて、機会があれば、BIOSを含めてXPを再インストールすべきだと思っていたのである。

 そうと決めたら、手早くやってしまおうと、既存ファイルのバックアップ、Meの再インストール、BIOSの入れ替え、XPとバッティングするソフトの削除、XPの上書きインストールなどを一気に済ませた。とはいっても、丸二日かかってしまい、それも二日目の日付が変わりそうな時刻に、やっと仕上がったのである。さて、というわけで、無線LAN機器からもってきた有線ケーブルを接続した。私としては、大いなる自信をもってブラウザを動かしたのである。ところが驚いたことに、まったく繋がらない。うんともすんともいわない。これには驚き、非常に困った。そうなると可能性は、無線LAN機器が壊れていることぐらいしか、思いつかない。でも、家内のパソコンは、ちゃんとこの機器を通じてインターネットを楽しんでいる。ううーむ。わからない。なぜだろう。

 そこで、いろいろと思いを巡らせた挙げ句、ひとつだけ思いついたことは、私の使っているヤフーのADSLの場合は、ときどき壊れてインターネットに繋がらないことがあるが、そういう場合には、いったん電源アダプターをコンセントから引き抜き、1〜2分して再びコンセントに差し込むと、うまくいく場合があるということだけだった。まあ、簡単なことだし、ダメモトでやってみようかという気がして、無線LAN機器の電源アダプターを引き抜き、再びコンセントに差し込んだ。すると、びっくりしたことに、何とインターネットに繋がってしまったのである。これは一体どういうことか。それならなぜ、家内のパソコンは同じ無線LAN機器で常に繋がっていたのだろうか。真夏のミステリーというか、珍事であった。









(平成14年 7月 20日著)
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