ゴルフ日記





 私は、30歳代の前半から40歳代の前半までの約10年間、休みの日といえばゴルフに熱中したものである。普通の日でも真夜中まで働き、時には明け方にまでなるという過酷な勤務を続けている中で、家族との語らいのほかはゴルフが唯一の息抜きの場であった。都会の喧噪を離れて、緑また緑のコースを回る快感は、何ものにも代え難いものである。

 ところが、私は40歳代の半ば頃から、テニス党に転向した。その経緯はまた別の機会にお話したいが、いずれにせよ、「遠い・高い・朝早い」のゴルフより、テニスは「近い・安い・朝遅い」うえに、家内や近所の方たちと気軽に楽しめる。そういうわけで、これが私の主なスポーツとなったのである。

 その結果、私がゴルフをプレーするのは、実に稀なことになってしまった。どうしても断れない場合とか、あるいは皆が参加するので、私ひとり欠席であるといささか問題であるような場合である。しかしそれも、私がゴルフをやめたという噂が広まったせいか、ひとつ、またひとつと機会がなくなり、結局現在では、わずかに年に一回だけとなった。

 さて、その一年に一回の貴重なゴルフの日が今年も巡ってきた。夏の暑い日々も過ぎ、秋もまさにたけなわといったところである。三日前に宅配便でゴルフ・バッグを送り、その前の晩には、念入りに準備をして必要なものはボストン・バッグに詰め終えた。目覚ましをかけてやや早めに床に入った。以前の場合であれば、「明日のスウィングはこうしよう、いや、グリップのチェックが必要だな、ああそれから前回はスタンスの取り方がまずかった」などと考えが次々に浮かんで、なかなかすぐには寝付けなかったものである。まるで遠足前夜の小学生のようだと自分で苦笑したこともある。しかし、最近のようにあまりゴルフに熱心ではなくなると、すぐに寝入ってしまった。

 翌朝はきっちり5時半に起きて、家内の準備してくれた食事をし、6時15分頃に出かけた。途中、眠くてしかたがないので、ゆっくりと歩いた。地下鉄の駅に着いてほっとして、何気なく、足下を見た。そのときである。ゴルフ靴を持ってくるのを忘れた! あわてて、走って取りに帰った。家に着き、何事かと唖然としている家内に説明するのももどかしく、急いで靴を持って駅にとって返した。時間にして5分間の早業だった。こういうとき、家が近くて助かる。

 まだか、まだかと地下鉄の来るのを待ち、ようやく6時25分に来たので飛び乗った。確か、お茶の水駅では6時34分の中央線だったと思いだし、まあ、ぎりぎりに間に合うと考え、走った直後でパクパクとている心臓を鎮めようとした。お茶の水駅に着き、長いエスカレーターをトントンと飛ぶように駆け上がり、地上へ出て、すぐにJRの駅へ走り込んだ。そのときは6時33分、階段を降りたら中央線のオレンジ色の電車がちょうどドアを開けているときで、それにやっと飛び乗ることができた。

 ところが、その中央線の電車は、各駅停車だったのである。その一分後に、私が乗るべき中央特快の高尾行きというのが来ていた。事前に渡された時刻表のコピーでは、そんな鈍行電車があるとは書かれていなかったではないかと思ったが、もう後の祭り。水道橋駅、飯田橋駅と過ぎたところで、無情にもその中央特快の電車に追い越されてしまった。本当にJRの時刻表はけしからん、利用者不在ではないかと思いつつ、意気消沈してその悪態をついた時刻表のコピーをつくづく眺めた。すると、これから新宿駅で京王線の高尾行きに乗るという手があったが、また駅で走る羽目に陥りそうであるのでやめた。次の中央特快は40分近くもあとで、これでは間に合いそうもない。しかし、このまま鈍行に乗って八王子で7時52分の横浜線に乗ると、八王子みなみ野駅というところでクラブバスに間に合いそうである、よしこれだと思って、その方針で行くことにした。

 幸い、電車を変わる必要がないので、とても楽である。そのまま、気持ちよく寝入ってしまった。国立駅を過ぎると、いろいろな制服を来た生徒で車内は込み合いだした。コトコトという電車の音が心地よい。ある駅に着いた。相当の数の人が入ってきたと思うと、かすかに立川というアナウンスが聞こえた。まだまだだと思って次のアナウンスを聞くと、「多摩行きです。次は西立川」などといっているではないか。もしやと思って時刻表を見ると、高尾方面にはそんな駅はない。あっという間にドアは閉まり、無情にも電車は多摩方面に向かっていった。再びがっくりとして、次の西立川駅でとって返した。

 やっとの思いで立川駅まで戻り、高尾方面の電車に乗り直した。ほうほうの体で八王子駅に着き、何とか横浜線乗り場に行ってみた。もちろん、予定の7時52分は既に出発済みであり、さらに次の電車に乗った。八王子みなみ野駅というのは、二つ目の駅である。到着して、タクシー乗り場に走って行った。運良くたった一台だけそこにいて、あわてて飛び乗った。運転者さんはゆっくりと走り出し、どうなるかと思ったが、10分もしないうちにゴルフ場に到着し、スタート10分前の滑り込みセーフであった。

 そんなことで、せっかくの年一回の楽しかるべきゴルフであったが、出発前に既に体力と気力を消耗し、スコアは最初からめちゃくちゃとなる。ドライバーは左にひっかけ、寄せは大きくグリーンをオーバーし、パットも元気よくあらぬ方にころがって、3オーバーとなる。ハーフ70台も覚悟したが、何とか途中で持ち直して、結局前半は52に収まった。後半は盛り返そうと意気込んだものの、終わってみれば全く同じ52で、計104という情けないスコアとなった。それでもまあ、一年間全くクラブを握っていなかったことを思えば、良しとするべきか。ともかくこの日は、出だしが悪かったのである。ゴルフというより、時刻表とJRに振り回された長い長い一日であった。ともかく、中央線というのは、法律なんぞよりはるかに難解である。




総武CC

平成12年
10月28日

Net 104
Par 72
Pat 34
OUT
 

 

 

 

 

 

 

 

 
52
36 16
Par   Pat
I N
 

 

 

 

 

 

 

 

 
52
36 18
Par  Pat
10 11 12 13 14 15 16 17 18

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